中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

 紬きもの塾'14 第2回「糸の力、色の神秘」

2014年05月06日 | 紬塾 '13~'16
石楠花の赤い花が咲き始めました。

さわやかな薫風の吹きぬける中での第2回紬きもの塾、今回も熱く盛り上がりました。

糸についての話は蚕が吐き出す糸の形をトックと見てもらい、色についても工房の新緑を見ながら「なぜ緑色は草木から容易くは染まらないのか?」など、色とは何か?
固定された色サンプルの記号のような色のイメージから一度離れて自然を見つめてみることが大切などと話しました。
また毎回テキストに使っている幸田文『きもの』から興味深かった箇所をお一人から発表してもらいました。
Mさんが指摘した箇所は――

るつ子の母親が病いに臥し、看病のためるつ子は傍らで本を読んでいる。しかし、そのあいだに静かに息を引き取ってしまいます。単行本ではP.211~218あたり(文庫ではP.213~220)です。

ここに書かれている、人が最後に着る着物のことや、見送る側は何を着れば良いのかについて祖母、二人の姉、るつ子の間で交わされる“着るもの”についてのやり取りが、現代の私たちにも考えさせられることがたくさんあるのです。Mさんは何度もここを読み返したということでした。時に涙して・・

自分の身に置き換えてみんなで活発に意見が交わされました。
喪服の話、またそれに代わるものについて、少し前の時代には結婚のときには親がひと揃えを持たせたけれど、実はそれはそれで合理的な考えのもとではなかったのではないか。

健康なときに揃えておかないとタイミングを失してしまうこともあります。
もちろんそのまま今に適用できるということでもないのですが、必ず訪れる死に向き合いその上で生きていく覚悟を若い時から親が自然に導いていく。
避けて通れるものではないので、タブー視せずに自分の最後の着るもののこと、見送る時の着るもののことも考えておきたいと思います。

るつ子の母の最後の着物は祖母が見立てた秋草の柄の浴衣、るつ子が母が着るのに糊は嫌だろうと糊抜きをし、仕立てたものだった。その日の朝着替えさせてあげたものだった。
大正生まれの私の母はタンスに父の分と最後の浴衣(寝巻き)を早くから用意してありました。

参加のもうお一人から「食育という言葉はよく聴かれますが、衣服に関して私たちは教えられもせず、また子供に教えることもなく生きている。そういうこともこの本は気付かせてくれている」という感想も出ました。
核家族になり暮らしの中の衣食住、大切なことが伝承されにくくなってしまいました。

紬の着物に限らず人が着るということ、装うということは、自分のためでもありますが他者のため、他者との関係性を築いていくことでもあります。

布や着ることの大切さをこの塾で回を重ねるごとに深めていきたいです。

今日の私の出で立ちは・・藍の小格子単衣に灰桜色の絞りの半幅帯で、帯締めも使わずに軽やかに・・(*゜▽゜*) 色の褪色も進んできましたが、藍染の浅葱色の褪色についても実作で見てもらい説明しました。
帯板は最近購入したものですが跡が出てしまいますね。。やはり今まで通りボール紙の方が良さそうです。






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