中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

9月の紬の装い

2017年09月27日 | 着姿・作品


お彼岸期間中に着物で外出しました。
自作の単衣紬にシナ布の八寸帯。表が紺、裏が深緑の柳縞
文紋紗の羽織を塵除けとして着用しました。

羽織紐は少し上目についていますが、肩から八寸五分の標準寸法になっています。
最近帯を下目に締めるようになってきたり、衣紋を今までより抜くようになったので羽織の乳(ち)の位置は次の仕立では三分下げようかと思います。

羽織紐が帯締の方までかかるのは帯回りがうるさい感じがして好みではないのと、これは長羽織ではないので上目でいいか、、と思います。
羽織の乳の位置は着方や羽織丈、羽織紐のタイプによって変わってきますね。



9月の取合せはその日の天候により微妙なのですが、この日は夏日で暑かったので、帯締はブルーグレーと焦げ茶の二色使いで涼し気な色にしました。帯揚げは柿で染めた茶味のグレーで科布の渋めの自然な色に合わせました。
この微塵格子のシナ布は透け感が少ないので今月いっぱいは使えそうです。

着物は桜染の此の手縞で本当によく着ています。
一時、大きな赤ワインのシミを付けてしまい押し入れの奥に丸洗いした状態で数年しまわれていたのですが、、、ダメ元でカラー漂白剤に浸けたり、炭酸塩のアルカリで後媒染したりして生き返らせた着物です。^_^;
表裏も返して仕立て直しました。決してオススメはしませんが、紬はタフですね。(^^ゞ

夏の名残と秋の気配が行き交うこの時期、着物には難しい時期ではありますが、自然の声を聞いて取合せを愉しみたいと思います。
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第6回紬きもの塾――織物設計

2017年09月22日 | 紬きもの塾’17~’20
染織実習コースの方4名と次回の紬布を織るための緯糸のデザイン設計をしました。
自分で紬いだ糸は前回柿でベージュに染めてあり、それを全部使い切ってもらいますが、9寸幅で3寸の長さを織るためには他の色も混ぜながら織らなければ足りません。

私の方で用意してある糸からプラスする地糸を選び、更に色糸を加えることもできますので、糸の本数を考慮して各自2時間ほどかけて方針を決めていきました。それぞれの糸をベタ使いだけではなく、混ぜていく箇所を必ず作ってもらうようにしています。
織物は糸を混ぜることで生まれてくる色があり、それが布の奥行きや陰影、風合いを生み出すからです。

限られた糸ですので糸量を掴まなければなりませんが紬糸は太細もあり、ゲージをきっちり出すことができません。また紬糸は弾力が大きく長さもきっちり出すことができません。
紙の上に鉛筆で描くように、定規で測ったようにはいきません。大まかに掴みつつ、実際の時には臨機応変に対応するということも含め話しました。


上の写真は上から順番に第1期から昨年の第8期までの42名の方が織った布です。織られたものから1寸5分程の幅で資料として残していただいています。真綿の糸を中心とした風合いの良い布が出来ることを確認してもらいました。


経糸に節糸や紬糸があることで、この立体感や存在感が生まれるということも見てもらいました。殆どが身近な植物の色です。皆さんも一人ひとりの布を引き込まれて見ていました。

同じ条件でも、プラスする地糸も数種類しかありませんが、随分違ったよこ段柄になります。
はっきりした色使いのもの、柔らかな色調のもの、可愛らしいもの、クールな感じ、シックな感じ、シンプルなもの、複雑なもの、様々です。3寸ほどの小さな布ですが、初めての方にもかなり高度なことを体験してもらいます。


さて今期の方の布はどんな布になるのでしょう、、。
上の糸の写真は4名の方が真綿から手つむぎした糸に柿の枝で染め、布海苔と生麩で作ったうす糊を付けたもの。
各自、色糸印でわかるようにしてあります。この写真の部分だけで見ると右端の方のがやや細めの糸に見えますが、織ってみるとどうなんでしょう、、、。(^^)

絹糸は叩くと伸びてしまいますので、私はタテ・ヨコ共に糸は叩きません。むしろ縮める工程を加えています。
糸巻きしにくいですが、風合いは格段に良くなります。
糸のウェーブはお蚕さんのいのちの“かたち”ですので。

自分で紬いだ立体的な糸が力強く生かされたデザインになるように考えてください。


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長谷川沼田居美術館を訪ねて

2017年09月12日 | かたち塾、アート鑑賞いろは塾
                                        
                           「かきつばた抽象」1965年頃(長谷川沼田居図録より)

初秋の一日、足利市にある長谷川沼田居美術館を訪ねました。

一昨年、渋谷区立松濤美術館「スサノヲの到来」で、また昨年少しまとめて足利市立美術館特別展示室で拝見しました。
また、同市ある長谷川沼田居美術館も是非訪れたいと思っていました。

そしてこの度のかたち塾としての開催になりました。
かたち塾の笹山さんのブログでも作品について書かれています。

そこは東武線足利市駅から車で15分くらいの浄徳寺というお寺の一角にある小さな美術館です。
沼田居は実力は認められながらも中央の画壇とはほとんど関わらず、生まれ故郷足利で無名のまま生きた画家です。いわゆる売り絵をしなかった画家ですので世の中に名が広まりませんでした。

1965年右目を摘出。ほとんど目が見えなくなり、73年全盲。83年78歳で亡くなります。90年に遺作保存会を中心とする多数の方々の寄付で美術館は建てられたそうです。現在も日曜日だけボランティアの方たちで開館しています。

まずは20点ほど(年4回の展示替え)の展示作品を各自じっくりと拝見し、その後、以前「塩香」を作るかたち塾で講師をしてくださり、「スサノヲの到来」にも出品していた造形作家の栃木美保さんのご紹介もあり、足利市立美術館学芸員で2002年の同館の「心眼の画家 長谷川沼田居」展の企画に携わった江尻潔さんに沼田居の画歴や師のこと、回りの人々との交流エピソード、作品などについて解説をしていただきました。

      図録表紙(二曲屏風「八手」1944年頃、とタイトルに有るのですが、実際は芙蓉が描かれてます)

絵の素晴らしさに加え、沼田居の魅力を江尻さんが図録(2002年足利市立美術館発行)も交えてわかりやすく端的に伺えたことがとても良かったのです。観賞を深めることが出来ました。

市の限られた予算で美術企画を立てるのも大変ということですが、こんなに素晴らしい心ある学芸員さんがいらっしゃるということを知り、嬉しく興奮を覚えました。

上記の図録はまだ在庫があるようです。実作を観るのが一番ですが、図録だけでも取り敢えずご覧になられるのもよいと思います。図版も文章もとても良いです。こちらから電話でのお申込み。
またいつの日か全国を巡回するような展覧会が開催されることを願いたいと思います。

沼田居の作風は多岐にわたります。作品は怖いぐらいの深い闇にたどり着くような凄みがあるものもありますが、初期~中期の作品はのどかな山水や鉛筆画で植物や身近な風景を書かれていたり、軽やかなほのぼのとしたイラスト風のもの、着物の図案のようなもの、抽象、半具象など部屋に飾って愉しみたいような作品も多いです。庭の草花を自ら育て絵に描いています。とは言え作品について簡単に書けるものではありません。

ただ、天賦の才能と、強靭な精神の持ち主であったこと、対象物を真摯に自分の血肉になるまで見つめていたのではないか、、とは思えるのです。

水墨画、日本画、洋画、墨、水彩、インク、鉛筆、クレヨンなど様々な技法や筆具のチャンネルを複数持っていたこと、だから全盲になってからも筆を折らず描けるもので描き続けることが出来たのではないかと江尻さんも話されていましたが、私もそう思いました。
画家として持つべき基礎があった。鍛え方があった。対象の見つめ方があった。

今回の美術館訪問で見た「霖雨(う)」と書かれた書。ピンぼけですが許可を得て撮らせてもらいました。図録には収められていません。

単に絵を描こうとしたのではなく、対象の本質を見つめ筆を、ペンを走らせ続け、肉体、精神の苦しみを乗り越えた身体――全身全霊で今を生きる最先端で、最前衛で描き続けた画家であったと思います。

沼田居を支えた夫人、お寺のご住職など遺作保存会の方々、足利の人々のお陰で今日こうして埋もれようとしていた作品に出会えたことにもこころから感謝をしたいと思います。

ものを創る端くれにいる私自身もその作風、生き方に突き動かされるものがありました。
素晴らしい芸術家はたくさんおられますが、沼田居は私の胸に深く刻まれたことは間違いありません。

沼田居美術館で絵葉書を購入してきました。1000円/8枚入

浄徳寺境内にある大イチョウの木。雷除けとして植えられたそうです。銀杏もなっていました。

樹勢はだいぶ弱っているということですが、根元から新しい幹が出てきています。沼田居も風景の中に描いています。

その後は足利市美、大川美術館をめぐりました。
刺激的でフルボディの味わい深い一日でした。帰りの東武線車中では缶ビールを飲みながら余韻に浸りました。
機会がありましたらご覧いただきたいと思います。

今回ご協力くださいましたみなさま、ご参加のみなさま、ありがとうございました。

さて、次回かたち塾は五感の探索シリーズ、「味覚のシンフォニーを愉しむ 」10月21日(土)昼食を共にいたします。小さな席数の限られた日本料理店での開催となります。こちらは完全予約ですので早めにお申し込みください。かたち塾もあと2回で終了となります。

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櫻工房の実りの秋――リンゴ、梨、柿、柿酒

2017年09月01日 | こぼれ話

櫻工房のリンゴの木に今年は5個の果実が付きました。
4~5年前から1つ、2つと実がつくようになりました。多分品種は“ツガル”と思います。
ほったらかしの自然農です。消毒もしていません。


リンゴの収穫!?です。高枝鋏で釣り上げました!落とすと反対側は急斜面なので緊張の一瞬です。


無事穫れました。ツヤツヤで可愛いいです!!!


まだお尻は青いのですが、鳥との競争なので少し早めの収穫です。
この状態でもパリッとした食感で甘酸っぱく美味しかったです。


一番赤かったのはやはり鳥ちゃんに先を越されていました。
なので餌台の釘に刺しておきました。「お食べ!」


梨の木にも2個実がついたのですが、先日の剪定で1個は切り落とされてしまったのです~~。残念!!!


残った1個は二股の間に挟まって窮屈そうです。今日は向きを変えてあげました。そろそろ収穫です。


柿も色付き始めました。今年は表年で豊作です。柿酒を今年も作ろう!


昨年初めて作ったのですが、美味しくて1月に入ってから毎晩食前に飲んでしまいました。ビタミンCのせいか冬の間、風邪も引かなかったです。


砂糖を使わないで作れます。よく洗って皮ごとくし切り。あれば葉っぱも3枚ほど入れて3ヶ月で飲めます。

リンゴも梨も柿も染めに使わせてもらい、春には花を愛でさせてもらい、柿の葉は夏の日除けの役割もしてくれます。
更に秋には実も美味しくいただき幸せです。自然の恵みに改めて感謝です。

紬塾の方には10月の織り実習の時に食べごろになっていれば、、、お福分けします。



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