中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

櫻工房展「紬の会'17―着る愉しみ」お知らせ その3

2017年05月24日 | 紬の会
 
                桜染め縞単衣着物「野薔薇」+灰緑段帯「緑蔭」

先日の大塚文庫展で着ておりました、桜染め縞単衣着物「野薔薇」は織で使う経糸で洒落紋を入れていただいたものです。
野趣のあるバラにしてくださいと10色ほどの糸をボール紙に巻きつけ職人さんにお渡ししましたが、快くお引き受けいただき、紬として違和感ない感じで上がってきました。

着物の地糸は桜のアルミ媒染による赤みを含んだ黄茶で、細い縞は灰汁媒染による赤茶で織り出したごくシンプルなものです。
タテ・ヨコ節の少ない玉糸だけで織った試織用の着尺を自分用にしました。
バラは春、秋、二度咲きますのでサラッとした春、秋単衣にしています。
真綿系が普段は中心ですが、こういうのもまたやってみようかと着てみて思いました。

 
工房の桜の若葉もいつの間にか鬱蒼として木蔭を作ってくれています。

「緑蔭」と題した帯は、細めの真綿紬糸と太い節糸を使い、平織りと七子織の段です。
着尺を織った後に帯を織れるよう長く整経したものです。
この帯はグレーとベージュの組み合わせで何気なくて気張らずに様々な紬に馴染んでくれてこころ強いです。
帯芯が薄めの仕立てで始めは締めにくかったのですが、手が慣れたのかそれなりに締めやすくなってきました。
ちなみに本体の着物は単衣に仕立て、お客さまの元へ。この時期お召いただいてますでしょうか?
ホムページの着姿ページを少し更新しておりますのでこちらもご覧ください。

紬も様々な糸使い、撚糸、練り加減で四季を通して創ることも出来ます。
ただ、経てに生糸(絹糸)だけの紬(?)を織ることはしませんが。。。

礼装や、いわゆる染めの生地と違い、洒落着の紬に関しては一枚の単衣着物を帯を替え、小物を替え、襦袢を替え、羽織を替え、長く着て愉しむのもよいことです。
ただ、紬は染生地以上に糸質、太さ、織密度も様々です。
生地によって色によっては、袷向き、春秋単衣向き、3シーズン着られる単衣向きなどそれもいろいろです。

この気候変動の中、未だに単衣はいつから?などの決まりごと??にこだわっているのは、生地質を見ていないのではないのでしょうか?
洋服でも地厚の麻のシャツは重ね着などして長いシーズン着ることが出来ますし、麻と言っても様々です。
洋服の感覚も参考になります。五感と季節感と大事ですよね。(^_^;)

今週末からの工房展「着る愉しみ」ではこんなことも含め、いろいろお話ができればと思います。
ご予約はこちらから。

※28日(日曜)の4時頃から軽くビールやお茶など飲みながら「紬談義」(会費1,000円)をしませんか? (展示スペースはこの時間もご覧いただけます)
こちらも予約フォームから「紬談義」明記の上、お申し込み下さい。


桜の木の根元にある楚々としたヤマアジサイも花を咲かせてきました。
梅雨入り前のひと時、ご来房お待ちしております。(*^^*)





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第2回紬きもの塾「糸の力、色の神秘」

2017年05月13日 | 紬きもの塾’17~’20


ご報告が遅くなりましたが、先月末に第2回の紬塾が行われました。
いつものように蚕の糸の神秘、自然色の合理などお話しました。

この話の先に織物や着物の文化の話が始まります。

さて、塾を行う和室は南東に向いて、一間半の掃出し窓があるとはいえ、午後は薄暗くなってきます(この日は晴れていましたが)。
しかし和室の明かりは付けずに夕方まで過ごしました。

人工灯の影響を受けずに自然光だけで染める前の糸や染められた糸を見てもらいました。
煌々とした明かりのもとでなくても桜で染められた様々な色を呈している糸は美しい光を色を発していました。
みなさんも無言になって見飽きぬ感じで見ていました。

デザイン関係の仕事をしている方が、パソコンで色を作っているけれど、色の三原色を使っても作れない色だとつぶやいていました。

植物は自分を成り立たせるために無限の色素を持っていますし、季節でも変化します。光の環境でも様々に見えてきます。
色を何色とか限定するのはどうなんでしょう?
便宜上数値化したり、色名をつけたりすることはありますが、本当にわずかな差異を人の目は見分けることも出来ます。
色名や色数にとらわれるより、自然なものの色は単純な色素構造から成り立つのでもなく、例えば絹なら絹の物質自体の構造ともかかわり、また節糸や真綿紬糸のように立体的なウェーブを残している物理的糸の複雑な反射、また光源によっても変化することを知ることが大事です。


私は着物でも帯でも例えばベージュやグレー系の無地系のものを織る場合でもかなりたくさんの色を混ぜて織ります。
糸だけの色ではなく、経糸や隣り合う色の影響を受けながら色は生まれてきます。
綛の状態で見てほとんど違わない糸を緯糸として使ってみるとはっきりその差がみえてくることもあります。

伝統色とか和色も便宜上役に立つこともありますが、固定された色など無いと思います。
経年の古色を帯びたいろなどもそれ自体に何色と名前をつけることも出来ません。
伝統とか和をこと更に掲げるものほどその本質は近代的だったりもします。

創るにせよ、観るにせよ、使うにせよ、とらわれない目を持つことが生きた色の瞬間の表情に出会えるのです。

上の画像は節糸や真綿引き出し糸で織られた布。
染材はヤマモモ、カキなど。写真で色を再現できてはいませんが。。









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「紬の会'17-着る愉しみ」展 (大塚文庫)終了しました

2017年05月09日 | 紬の会

                   会場入口に展示していた公募展へ出品していた頃の作品で着物の袖部分

昨日、自由ヶ丘の大塚文庫に於いての「紬の会'17-着る愉しみ」展が無事終了しました。
ご来場下さいましたみなさまありがとうございました。
サブコーナーへご出品頂きました林まさみつさん、小川郁子さんにも心から御礼を申し上げます。

今回もドラマチックな場面などがありました。また初めてご覧いただく方もあり、有意義な時間を共にさせていただきました。

会場の様子などのスナップを幾つかあげておきます。

また5月27日~6月1日まではいつものように「紬の会」の櫻工房版展示と着物に関するさまざまな相談事など承りますのでこちらへもご来場下さい。詳細は後日お知らせします。



林さんの竹バッグと大塚文庫玄関ポーチにて。着物生地を傷つけけたりしない丁寧な作りで美しさと安心感があります。


小川郁子さんの新作帯留をさせていただいて・・


カッコイイ!!です。このカットは難しかったとのことでした。


ミニ紬塾は1時間半以上の濃厚な内容となりました。 
障子越しの光に慣れてくると暗さをかんじません。落ち着いて集中して話をすることが出来ました。
戦国時代に茶の湯が尊ばれ、小さな空間で亭主と客が向き合い、多くを語らずも気持ちのやり取りをしていたことが忍ばれます。
一座建立でした。

取り合わせの話では茶室の取り合わせも参考にさせてもらいながら着物の日本的な取り合わせワークショップをしました。
みなさん真剣に考えてくださいましたが、同じものはなく、とても良かったです。


予定外で最後に笹山さんがさらに現代美術における用と美の考え方や、ジャコメッティの初期の作品を例にとって説明してくださいました。重い作品集をジャコメッティの彫刻のように細い体で持ってきてくれて、この方は本当に工芸の本質を一般の方に伝えたいのだと改めて思いました。
このプラスαのこの時間もとても良かったです。


ミニ塾へ参加くださった方が私の紬を着てきてくださいました。帯揚げ、帯締(糸染)も私の作です。更にはずっと以前に買っていただいた出袱紗と小袱紗までわざわざお持ちくださり、写真を撮らせてもらいました。若かりし頃の力を感じました。


初めてご覧頂いた30代の方が「ほんとうに綺麗」と自然な色や風合いに感激されていましたので、肩にかけて更に身につけた時の目線でもご覧いただきました。


お茶のお稽古の帰りに素敵なお召し物で夕方ご来場くださった方には外光で布の見え方を確認していただきました。
光によって随分見え方が違いますので驚いておられました。


座り込んで布と近づいた目線でご覧いただきました。


笹山さんがオニタビラコを活けてくれました。花器は瀬沼健太郎作、卓布は中野作です。


日を替えて青もみじと。


花/笹山央 花器/松原成樹 卓布/中野みどり


一日だけ袷の紬を着ました。暑かったので襦袢は半襦袢にしました。
帯は御所解文様八ツ橋。杜若とともに桃、松、笹などが配されています。
しかし紬の袷は5月はもう着れませんね。。。


引き続いての櫻工房展も楽しみにお出かけ下さい。詳細は後日。


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