中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第2回紬塾「糸、色、織について」― 紬織りの糸・草木の染色・織の映像を交えて

2021年06月24日 | 紬塾’21~’24
紫陽花の咲く中、第2回目の紬塾開催となりました。

いつものように私が紬に使う糸や真綿をじっくり見てもらい、感触や、糸の観察から始めてもらいました。
繭一つから糸を繰り出すことと、真綿から糸を引き出すことも体験してもらいました。一筋の糸の形も見てもらいました。

糸の種類や名前を覚えるということよりも、糸の形を見ることや感触の違いがわかるということは着物を選ぶときの参考になります。
紬塾を修了した方で「着物を見るときの見え方が以前と変わった」と話してくれる方がありました。今までは色や柄の美しさに目を奪われていたけれど最近は布自体を見るようになったという趣旨のことをお会いした時に伺ったことがあります。更に着てみればその風合いの違いなどもわかってくると思います。

そして草木の生木で染めた糸も見てもらいました。この日は曇りでしたが、部屋の明かりを消したり付けたり、窓際へ近づけて見てもらったり、光と色の関係なども体感してもらいました。

「手織り、紬、草木染め」などの世間一般に流布している言葉の本当のところを先入観を持たずに素直に実感として学んでもらえると良いと思います。
色名なども、実際は無数にあるので、何色と名づけられないのです。


次は機のそばで、織り機の基本的な名称を知ってもらいました。
上の写真は、たまたま織りあがったところでしたので、最後の織り捨て分(経て継ぎに使うために残す8寸ほど)となる糸の束も見てもらいました。

今までの300反以上の織り捨て糸は保管してあります。
経て継ぎ後には5~6寸の短い糸ですが、時々繋いで帯や袱紗などに交ぜることもあります。
以前「白露」と題した着尺に使ったこともありますが、とてもとても大変でした。。

繋ぐ手間は大変で、新しい糸で織る方が早いのですが、繋ぎ織りの偶然性と、意図的に繋いだ時の面白さは格別です。
いつか体験してもらえる機会が持てたらと思います。

あとは織りの映像(6~7分)を見てもらいながら織り方の説明もしました。
皆さん2回見ましたが、興味深く「飽きない‥」とおっしゃり、ご覧頂きました。
単純作業のように思われるかもしれませんが、実は絶え間なく糸の状態を見たり、たて糸のテンションや筬打ちの音を感じたり、細かな杼の扱いもあったり、結構神経を行き渡らせています。


緯糸は織るごとに、糸の太さにより、色の違いにより角度(傾斜をつけて通常は糸を入れる)を変えます。
※ビデオから写真に切り取ったもの


経糸のテンションはケンヅナで微妙に調整します。ギア付きの機ではいい織り物は織れないと思います。



さて、この日の私の装いは、いつもの紬にいつもの半巾帯ですが、(^-^;
桑染のグリーングレーの絽縮緬の帯揚げも使って締めてみました。



暑い時には帯揚げはない方が涼し気ですが、前から見ると名古屋帯ですね、と参加の方から言われました。
少し改まりたいときや、着物と帯の繋ぎに一色足したいときなどには有効です。
深い青緑の帯締め一本で、蒸し暑さを少し和らげるような気がします。
着物の取り合わせは何と奥深いのでしょう。

次回は「とことん着尽くす」です。


工房の白い紫陽花。花と思われているところは萼で私たちは萼を鑑賞して喜んでいる珍しいタイプの植物ですね。
紫陽花の枝葉は煮だしてもほとんど色素が出てこないのです。不思議です。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「半幅連作プロジェクト――上質をコンパクトに」お披露目&作品解説の会お知らせ

2021年06月12日 | 紬の上質半幅帯
「半幅連作プロジェクト――上質をコンパクトに」織りあがりました!

変奏曲5本、連歌5本、無事6月上旬に織りあがりました。
昨年10月の説明会から8ヶ月、この仕事に打ち込んできました。
みなさんのご協力の下、やり終えることができました。
ありがとうございました!

今まで染めためてきた糸と新たに染めた糸で織りましたが、各帯に20~40色は使っています。合わせ糸(2本取り、3本取り)も何度も試し織りをして、決めていきました。

今までの染糸の多種、多様性が無かったらこの帯たちは生まれてこなかったでしょう。糸選びに手間がかかりますが、均質な機械的なものとは違う帯になりました。

現在は仕立てに出しております。全部上がってくるのは6月末になります。

つきましては、7月4日に小田急線の鶴川駅近くのポプリホールにて、お披露目&作品解説の会を下記の通り行います。

プロジェクトに参加の方以外も、上質の半巾帯や、私の紬の仕事、草木の染にご関心を持って下さる方には是非ご覧頂き今後の参考にしていただければと思います。

また、少しですが草木染帯揚げも販売いたしますのでご覧ください。

時節柄、会場には定員を設けてあります。ご予約の上ご来場ください。
定員になり次第締め切らせて頂きます。

**************************************
【日時】 7月4日(日) 午後1時40分開場  定員18名(要予約)
【会場】 ポプリホール鶴川 小田急線鶴川駅近く (ご予約の際に詳細ご案内いたします)

午後2時より列品解説を始めます。
解説の後には、プロジェクト参加者に半巾帯を締めて頂き、完成の姿もご覧頂きます。
また、草木染めの帯揚と帯締も夏から秋向けをセレクトし販売いたします。

【ご予約】
お名前、お電話番号、メールアドレス、ご住所を明記の上、メールにてお申込み下さい。ふ

HPからお申し込みください。→

****************************************


この半巾帯は一応手先と垂れの設定はあるのですが、逆から巻いても大丈夫なように設計されています。
同じ感じにならないように柄のないところも効果的に使えるよう考えました。
無地のところもとてもきれいなのです。
赤城の座繰り糸を中心とした風合いは帯にはかなり勿体ない感じですが、それがこの半巾帯の格を上げてくれています。

ただ、逆から巻くと結びの皺が出てきますので、使ったら必ずスチームアイロンを当てて頂きたいと思います。
風合いや仕立ての立体感をつぶしてしまわないようアイロンのかけ方も当日お話しします。

仕上げの後に、反物の状態で撮った作品の部分写真を一部アップしておきます。

「連歌Ⅰ」


「連歌Ⅲ」

トップは「連歌Ⅴ」


「変奏曲Ⅰ」



「変奏曲Ⅱ」



「変奏曲Ⅳ」

それぞれには銘もありますが、4日に公開いたします。

お披露目会では、結びも何か一種類だけでもみなさんそれぞれにやってもらおうと思っています。
結び方によっても柄の出方が違います。
ワンパターンではないので、使い手の創意工夫もかなり要求される、ある意味で難しい帯かもしれません。

このプロジェクトは、オーダーでもなく、私の単なる創作でもなく、使い手と作り手のやり取りから生まれてきました。私も頭に描いたデザインが思いがけない展開になっていき、まさに連歌の展開のようでもありました。

バックボーンには私の創作姿勢の“侘び”の考え方があり、自然の美しさ、自然のありのままを受け入れながら、前向きに自由に生きていく私たち市井の人々の姿を反映させたものかもしれません。
疫病の最中でありますが、自然の美しさや足るを知るということを改めて大切にしていきたいと思います。

また会場でゆっくりお話したいと思います。








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第13期「紬きもの塾’21」が開講しました

2021年06月05日 | 紬塾’21~’24
第13期の「紬きもの塾’21」が開講しました。
今期もコロナ禍での開催で、4名で行います。
7回を6回に減らし、時間も30分短縮して行います。

換気は勿論ですが、空気感染(エアロゾル)予防のために、みなさんには不織布のマスクをフィットさせ、適切にしてもらっています。
私達にできることは予防のマスク、手洗い、換気などしかありません。

さて、紬きもの塾も13年目に入ります。よく続いてきました。。
私が紬織の修業に入ってから10月下旬で丸44年、45年目に入ります。
よくも飽きずに続けてきたものだと思いますが、今も新たなことに出会い、修業を続けています。
紬塾開催も私にとっては自分を磨いていく修業の場、学びの場です。

参加の皆様の熱心さがあったからこそ、私もいい内容にしていかなければと一生懸命考えてやってきました。
皆さんに実のあることをお伝えできたらと考えています。

副読本として、幸田文『きもの』のおばあさんの力も借りて着物文化の根源的なところへ少しでも迫っていけたらと思います。
6回の講義は12月までとなります。半年間、どうぞよろしくお願いいたします。

初回の内容はいつものように盛りだくさんでしたが、興味のある方は詳細は過去の紬塾ブログを参考になさってください。

いつものように1986年に発刊された『宗廣力三作品集』をみなさんに見ていただきました。
私の紬織の原点は宗廣先生の仕事から学ばせてもらったことにあります。

洗練された手結い絣で人間国宝に認定されましたが、紬糸の風合いを大切にしつつ、デザインや色に溺れることなく、紬の本質を追求した方だと思います。

トップの暗い写真は、私物の黄色系とピンク系の単衣紬を見てもらっているところですが、途中で照明を消して、仄暗さの中で、淡いけれど力のある色を見てもらいたかったのです。
身近な植物の中にあるごく普通に染められる色です。共に桜染めです。

今は昼でも蛍光灯を点けてものを見るのが当たり前になっていますが、写真を撮る時にも、曇っていても照明無しの方が自然な色に撮れます。
自然の光、普段の暮らしでも大事にしたいです。

これら2枚の着物を羽織ってもらい、鏡の前で一瞬マスクを外して、肌の映りを見てもらいました。
誰にでも似合う、無理のない色です。みなさんの笑顔をお見せできず残念です。

似合わない方はいらっしゃらなかったのですが、雰囲気は黄色系、ピンク系でかなり変わります。
このことは次回以降に話をする、草木の色のこと、取り合わせのことに繋がっていきます。

今期も、みなさんとても気持ちの良い方々で、着物には親しんでいる方ばかりですが、更に深く学びたいということで参加してくださいました。
昨年の秋号の『美しいキモノ』半巾帯特集を見て、私のことや、紬塾を知り、来てくださった方もいます。

お一人、藍の縞木綿に丹波布の八寸の格子帯で来てくださいましたが、
帯揚げは私がリンゴで染めた淡いピンクベージュの、以前にお求め頂いたものを取り合わせてくださいました。

紬塾は普段着の着物を着る機会にもなりますので、無理のない範囲で、よかったら着物でご参加下さい。

さて、感染力が強い新型変異株も市中に拡大しているようです。
そんな中、オリンピック開催も国民の多くの反対の声を押し切って進められています。
リモートワークだ、人の流れを抑えろと言ってたかと思えば、真夏にパブリックビューイングで人を集めるそうです。(-_-;)
代々木公園会場は樹木の強い剪定などもあり、世論の反対の声、反対署名も多く、ワクチン接種会場にするとか言い出しましたが、実際はどうなるのでしょう。。

五輪開催とワクチンで選挙に勝とうと思っているのでしょうけれど、本当に国民の声、科学者、専門家の声を無視の政権です。
根拠なき「安心、安全」を呪文のように唱えるばかりのリーダーに、不安になるばかり、ついていけません。

今後の感染拡大状況、変異株がどう変異していくか不安ですが、状況を見ながら紬塾は無理のないように進めていきます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする