中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

上質をコンパクトに

2020年12月28日 | コロナの時代を生きる
今年も押し詰まってまいりましたが、工房は今日が仕事納めとなります。

今年もいろいろとお世話になりありがとうございました。

コロナ禍の大変な年となりましたが、そんな中でもみなさんが紬きもの塾へ参加してくださったり、工房展へお出かけいただいたり、半巾帯プロジェクトへ参加してくださったり、着ることや、作ることに関心を寄せていただき心強く仕事をさせて頂きました。心より感謝を申し上げます。

コロナの時代を生きる中で、‟上質をコンパクトに”という言葉が浮かんできました。
半巾帯連作プロジェクトのパンフレットの副題として使いました。

名古屋帯の装いももちろんいいのですが、日々あわただしく、心落ち着かない中、コンパクトな装いとして半巾帯も見直したいところです。でも質は落とさずに。
また結び方や、手と垂れを替えられるなど、使い手にゆだねられた‟創造性”が半巾帯にはプラスされます。

創造性と言えば、外出の自粛が強いられた中、私は出会った何点かのアート作品を買いました。高価なものは買えませんが、気持ちは十分に満足できる作品たちです。
もともとアートは好きで、時折ブログでも紹介していますが、心の置き場所としての床の間スペースにも、必ず何かしら飾り、また植物を添え、眺めてきました。


狭い住宅事情であっても、どこかにスペースを作ります。これもコンパクトでもいいと思います。
もちろん立派な床の間のある方は、そちらを活用してもいいのですが、自分の仕事場や、居間の中にもコンパクトな飾る場があるといいですね。チェストの上でも十分です。

上の作品は北海道在住の井上まさじさんから頂いたもので、小学生と一緒にワークショップを開いた時の作品で、ボール紙をカッターで削って彩色されていますす。12月の間、掛けていました。暖かな気持ちになります。
今までに何点か作品は購入させて頂き、よく床の間の方に掛けているのですが、こんな小さな作品も上質なコンパクト作品です。

井上さんは今年の秋、公私ともにパートナーだった方を亡くし、お辛いことと思います。
まだ私よりも若い方で、お優しい方でした。かける言葉も見つかりませんが、こうして作品を見ながらお二人のことを思うしかできません。
安らかに。 合掌


冬枯れの庭のに、小菊がまだ咲き残っていました。ビオラと取り合わせて。

花器は洋白素材の今は亡き濱口惠作。
少し斜めにひしゃげたように加工された箱。磨くと光るのですが、そのままにしています。

紬のマットは修業時代に織らせて頂いた布を母がコースターに縫ってくれたもの。定番の柄の着物で、何反か織らせて頂きました。

今年はアート作品に安らぎや愛おしさ、心の拠り所をより強く感じたように思います。
アートとは広い意味合いを持っていて、ジャンルやプロ、アマの区別もなく、自分の腹に落ちるよきものかどうかだけ。
また、床の間には飾れませんが、身を飾る着物関連も私の場合はアートに入れてます。

見るだけでもいいのですが、買うとなると人は真剣勝負、もっと自分を追い詰めて見ていくものです。
身銭を切るというのはとても大事なことです。自分を見つめることになります。また、手元に置くことで鑑賞を深められます。
自分とは何者かをアートを通して探っていけると思います。

先日アシスタントがある人形を買いました。決して高額なものではありませんが、経済的弱者にとってはそれなりに高価です。
でも、そうやって思いつめながら作品と向き合い、自分や暮らしと向き合い生きていくことは、選ぶこと自体がとても大きな財産になるのだと思います。
「もの買ってくる、自分買ってくる」河井寛次郎

世界が色々な意味で縮小しなければならない時代に入っています。
以前と同じ暮らしに戻ることはできないし、そうしてはいけないのです。
変わらなければならない大きな時代の転換点だと思います。
今はコンパクトな暮らしが必要だと思います。でも心は豊かにありたいです。

人は自然の摂理を無視し過ぎました。今後生き延びられるかどうかは足元や身近の自然、人間関係をもう一度見直し、再構築することではないかと思うのです。
コロナに打ち勝つ!ではなく、コロナの教訓に学び、新たな生き方、暮らし方を模索する時です。またコロナ禍ゆえの再発見の生き方、暮らし方もあると思います。

来年も厳しい年になりそうですが、感染しない、させないよう気を付け、自分にできること、そして人に喜んでもらえる仕事を工夫していくことが大事だとつくづく思います。


上の写真は櫻工房の大きくなった桜を今年はかなり切り詰めました。
コンパクトになりましたが、冬芽をたくさんつけていますので、また来年枝葉を広げて伸びていくでしょう。

工房は12/29~1/3まで冬休みです。
HPの華かさね帯の着姿集、 
Instagramも更新しています。

読者のみなさまもそれぞれのよいお年をお迎えくださいませ。




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半巾帯連作プロジェクト進捗状況・その1

2020年12月24日 | 紬の上質半幅帯
今日はクリスマスイブですね。
特に何もしませんが、何となくクリスマスっぽいメニューの夕食にしようかな‥ぐらいです。

あとはクリスマスキャロルを習ったばかりでやっと歌えるようになりましたが、歌ってみようかな…(^o^♪
「The  First Noel」はクリスマス商戦の曲としか思ってませんでしたが、
YoutubeのThe First Noel、この黒人女性のソロのところはジーンと胸にきます。(´∀`)
いい曲ですね。。デュエットのところは男性の声量を少し抑えてほしかったですが、、。

上の写真の素朴な陶人形は父が学会で南米を訪問した際のお土産でした。
キリスト降誕のシーンです。初めて飾ってみました。(^^;ゞ
裂き織り卓布、ミニ額の詳細はインスタグラムをご覧ください。

・・・・・・・
さて、半巾帯連作プロジェクトは、たて縞のグループと、よこ段グループ計10点の連作となります。

着尺で言うと4反分近くの長さが必要になり、久々の2反整経×2になります。
中腰での整経はかなりきついと予想されますが、腰の調子を整えてておかなければ、、と思っています。

染の仕事もようやく一段落して、構想もほぼ決まり、
あとは具体的に糸の長さや本数を決める織り物設計に入ります。


まずは糸巻に入る前の糸のさばき、

糊付けで余分な糊を絞っているところ。たくさんつけ過ぎると風合いが悪くなり、少ないと節糸の毛羽を抑えることができず織りにくくなります。

糊付けの後は綛を振りかざし、

下に打ちつけ糸をばらばらにほぐすと同時に糸本来のウェーブを取り戻します。
糊付けなども次につながる大事な仕事ですが、経糸ほぼ終了しました。

記録、分類など、事務的なことが苦手な私ですが、アシスタントにサポートしてもらったことで、無事、糸質、番手、染材名、媒染材などのタグを付けて、わかりやすくしました。


これで安心して設計に入れます。(*‘∀‘)


私は基本はデザイン画を書きません。大まかなイメージだけ決め、糸綛を見ながら、糸の本数で進み、徐々に詰めていきます。

半巾は結びによっても柄の出方が違ってきますので、いろいろ想定しながら柄を入れる場所を考えます。

ただ、全通柄ではつまらないので、要所要所は決めながらも余白の美しさも残し、柔らかな頭のまま、織る直前まで可能性を探っていきます。

いろいろ予定と違うことも出てくるかもしれませんが、良い方向へ向かうためには、先に決めすぎないようにします。

今回は連作であること、セミオーダー的要素も少しあり、いつも以上に難しい仕事です。
参加者の皆様のご要望やお手持ちの着物のことも配慮しながら、オーダーとも違う、双方の新たな発見の場になったらよいと思っています。

糊付けを終え、冬の陽を浴びている経糸たち。



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第5回 紬きもの塾「自然で楽な着方」― 名古屋帯の結び方・半衿の付け方など

2020年12月16日 | 紬きもの塾’17~’20
半巾帯プロジェクトの染めの作業に集中していて、紬塾の報告がすっかり遅くなりました。

先月、工房の山茶花(御身衣)も見頃の時に行われました。
この日の私の着物は薩摩絣の袷です。帯は段柄の良く使っている紬帯です。
帯揚(梅染)も帯締めも良く使う、心落ち着く好きな取り合わせです。

楽で時間のかからない着物の着方を学びます。
私は着付け教室には行ってませんし、普段着、洒落着の楽な着方のお話のみしています。

長襦袢の上に伊達締め(麻)1本、着物の腰紐1本(メリンス)、着物の胸紐または伊達締め1本。
帯枕にガーゼではなくストッキング。帯板はボール紙1枚。
補正下着やタオル補正なしで私は着つけます。
ゆるい着方ですが、、早くて楽です。


今期の方はみなさん着物を自分できちっと着ることのできる方ばかりでしたが、帯結びは仮ひもを使う方が多かったので、使わずに捻じるだけの簡単なやり方を致しました。本当に簡単ですよ!
手と垂れを捻じるだけ。すぐにのみこんで頂けました。

自然布とか、固い生地の場合は仮ひもで畳む方が良いと思います。
着慣れている方もいつもと違うこんなやり方も参考になるかと思います。

衿芯に半衿を先に付けてから襦袢に取り付ける、自然な衿の形を作る方法もお話しました。


また、名古屋帯の前柄をどこに合せればよいのかよくわからないという方もいまして、帯の柄が入る位置についても説明しました。
上の写真の方は(着物は中野作です)斜めに区切られた面的な柄付けの染帯の前柄、太鼓の柄の出し方が良くわからないということでしたので、帯を解いて柄の中心を測ってみました。

見た感じで決めればよいのですが、一応寸法も測って、制作者はどこを中心にしたのか確認するのは良いことだと思います。

この帯の場合は前柄がもう少し左にズレる(本人の右脇)ように設計はされていました。そうすると太鼓の柄も引き上げられて良い位置になっていました。

ただ、中心を左右に少しずらせる場合は、着物や季節との関係で、
鏡の前でよいと思われるところへ1~2寸(4~8cm位)ずらす調整は可能です。

帯の寸法、柄の位置を把握しておくことは大切です。

紬塾の基礎コースはあと1回で終了なのですが、コロナのことでスタートが遅れ、
詰めての開催でしたが、また感染拡大の状況の中、乾燥した真冬はエアロゾルや、
換気もしづらくなりますので、来年3月まで延期と判断しました。

3月の最終回は半巾帯を愉しむです。着物の寸法の話も。
無事終了式ができますように!(*˘人˘*)









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