中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第2回紬塾「糸、色、織について」

2023年05月25日 | 紬塾’21~’24
第2回はいつものように、紬の一番基本となる、糸や草木の色、織物の経糸の重要性、堅牢性など、繭や真綿から糸を引き出すワークショップ付きで講義をしました。

紬と言っても使われている糸は様々で、その特徴をよく見て選んでいくと良いと思います。
生糸系、玉糸系、節糸系、真綿系、そのブレンド等、風合いも着心地も様々ですが、専門知識がなくとも、「違いがある」ということをまず頭に置いて、触れたり、纏ったりしてみるとよいでしょう。

トップの写真はお湯で煮た繭から1本の糸を引き出していくワークショップの、最初の糸口を引いているところ。
この後、みなさんに順番で黒い紙に巻き取ってもらいました。
蚕は頭を左右に大きく振りながら糸を吐き出しますが、それをゆっくり繭から解いてゆく体験です。ただ糸が細いというだけでなく、吐き出した時の糸のかたち、ウェーブが見てとれます。繊細な命の営みのかたちです。


みなさんが引き出した後、私が残りをゆっくりと木枠に巻き取ったものが上の写真。小さな綛になりました。


真綿からも、太腿の上で糸を纏めながら、少し太めの糸をつむいでもらいました。原初的なずりだし方式です。
この方法は、道具に頼らない分、技量が問われます。

他にも私が10丁の杼を使い、柔らかなよこ段を織っている映像を見てもらいながら、織り方の重要な点を説明しました。
着る人こそ、経糸の重要性、バイアス(密度)、反物の耳の重要性なども知ってもらいたいと思います。

後半は、草木の色のこと、染のこと、盛りだくさんでしたが、講義の内容は過去の当ブログ、カテゴリー「紬塾」も参考にしてください。
次回、最初におさらいと、話し足りなかった点を補足をします。




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経糸のかたち

2023年05月18日 | 制作工程
着尺用の経糸を巻いてます。

紬は経糸の仕事(糸選び、精練、染色、糊付け、糸巻、整経、経て巻)が織り物の善し悪しの7~8割を決めてしまうものだと思います。機に掛けるまでが、緊張の連続です。

今まで400反以上織ってきましたが、どれだけ座繰り機を回したでしょう。
左右の肩の四十肩、五十肩を何度もしてしまいました。
50歳を過ぎた頃、痛みで右手が使えなくなり、それでも仕事を休むこともできず、左手で巻くこともありました。



ただ、こんなに巻いても節糸や真綿の糸は表情があり飽きることはありません。
ネップ(節)の形や硬さを見ながら取り除いたり、残す判断をしたり、形を整えたりします。取り除けばいいというものではありません。
糸を見ながら、指の腹で糸を確認しながら巻くので、スルスルは巻けません。
一綛に半日かかることもあります。



手間はかかりますが、糸巻を電動に変えるつもりはありません。
蚕の吐き出した波状の糸のかたち、人が繭を目で管理し、繰りながら糸にするかたち。それを損ねないよう、人の身体の速度で巻き取っていく仕事です。

一つとして同じ糸はありません。毎回新たな気持ちで糸と向き合い、この糸がどんな布になって表情、風合いをつくるのかを想像しています。

2回目の紬塾で、糸について、繭や真綿から糸を引き出すワークショップ付きで詳しく解説します。
紬の布を見る時の参考にもなります。

以前の2015.12.292013.7.1のブログにも経糸の大切さ、綴っています。



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