中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

特別展「女わざと自然とのかかわり」―農を支えた東北の布たち―

2015年11月24日 | 女わざの会


東京農業大学の食と農の博物館で開催されている、「女わざの会」の展示のお知らせです。

特別展「女わざと自然とのかかわり」―農を支えた東北の布たち―
「食と農」の博物館 1階企画展示室
~3月13日(日)まで。詳細はリンク先をご覧下さい。

森田珪子さんをリーダーとした女わざの会の展示を観てきました。
とても良い展示でしたので興味のある方はお出かけください。期間も3月までです。
入場は無料です。

撮影は禁止でしたが館の方に許可をいただいて少し写真を撮らせてもらいました。





















東北地方で使われてきた古い布団側や継ぎあてのある布や足袋などを捨てられず、森田さんのところへ持ってくる方が多く、そういうものを含めたコレクションです。
以前にも女わざの会のことはブログにも書きましたが、地に足をつけた活動に学ぶことが多いです。
この展示でも、裂き、織り、継ぎ、繕い、とことん使われた布たちは、その土地で苦労しながら生き抜いた女性たちの生きた証を見るようで胸に迫るものがあります。
ただ、そこにあるのは、貧しさや、苦しみだけではなく、生き生きと布と関わる女たちの喜びや愛情も感じられるのです。
前回のブログで靴下の繕いのことを書きましたが、繕いの喜び、家族への愛情、モノを慈しむ気持ちが私の中にも、誰にでもあるのだと実感するのです。買ったほうが早いとか、安いとか、それだけで片付けられない人に備わった精神だと思います。
こういうものを過去のものとしてだけ見るのではなく、大事にしたいことがあると思いました。
それから岩手の女わざの会のメンバーを中心にして織られた古い布団側などを裂いて製作した裂き織りタペストリー(トップの写真)も展示されています。以前、岩手でも見たことがあるのですが、今回もとても興味深く拝見しました。
農大の野良着のコレクションも展示されています。

11月28日(土)には岩手から80歳を過ぎた森田さんがまたいらしてくださり「バイアスの不思議」と題して、講演もあります。

日本の手織りの小幅をバイアス状に使って袋や腰紐を縫ったのです。一度縫い方を教わったことがあります。そんな話も聞けるのではないかと思います。
私ももう一度、是非伺いたいと思っています。







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第7回紬きもの塾――取合せについて

2015年11月21日 | 紬塾 '13~'16
11月初旬に行われました紬塾の報告が遅くなりました。
いつものように取合せについての話とワークショップ、そして着物を着る以前の足袋や下着類の素材、選び方などについても話ました。

日本の取合せ文化は異なる素材や質感、形、色などを絶妙のバランス、ハーモニーで重ねていきます。よくある色の単純なコーディネートとは違います。ものの力を合わせる点も重要です。

手織りの紬にいわゆるファブリック類を合わせたりするのは、布についてよくわからない初心者がやることではないように思います。もちろん服地など上質の物なら帯として使うことも可能ですが、よくわかってやらないといけないですね。着物の世界は意外性だけではもたないです。

着物、帯、帯揚げ、帯締めをいつ、どこで、誰がなどシチュエーションを決めて実際にやってもらうワークショップでは、参加者から「つい無難な線でまとめて冒険はできない・・」という発言もあったのですが、「思い切って冒険しました!」と嬉しそうに帯揚げ帯締めを合わせられたのですが、なかなか良かったと思います。

「破調の美」にも触れたのですが、ぶち壊してしまう破壊ではなく、むしろ調子を破ることでものの部分と全体が生き生きと見えてくるような感じになると最高かな、、と思います。
難しくて私もあわてて着物を着るときなど無難な線になってしまうことがよくあります。(^_^;)

時間があるときによく取り合わせを考え、小物も少しずつでも吟味して帯締めや帯揚げを増やしていくことも大事ですね。取合せは奥が深いですから。でも、そのことが一枚の着物をとことん着こなすことになると思います。

下着類はよく素材を吟味して選ぶことで着やすさにもつながります。
襦袢こそいいものを選びたいです。

足袋の話の中では自分のサイズにあったものを選び、多少価格は高いですが国内産の縫製のものを繕いながら使っていくことも話しました。

私は普段から足袋や気に入った靴下を継ぎを当てながら履くのですが、それが楽しいのです。
今までの作品!?写真に撮っておけばよかったのですが、、家族が今履いているものの一例を画像でご紹介します。


これはウール素材が多く入っていて破れやすく何度も継ぎをしています。今回はかかとが大きくうすくなったので私が以前履いていたモミの木柄のソックスの一部分を切り取ってかかとに当てかがっているところです。私が履いていた方も継ぎを当てていたのですが、口ゴムがダメになり当て布用に使っています。靴下の中に白熱灯を入れてやるとやりやすいです。


5本指ソックスの指先は継ぐのも面倒なのですが、やはり指の中に筒状のものを入れておいて繕うとやりやすいです。どの指に力がかかっているのかチェックもできますね。


あまりに穴を開けるので今度は穴を生かして周りだけかがるカットワークの方法もしてます。もっと過激なのがあるのですが、ヒンシュクをかいそうなので画像はやめておきます。(^ヮ^;

 
母が編み物をした人で、たくさん残り毛糸がありそれを使っています。
色を楽しみながらカラフルにすることもあります。

足袋もそうですが、継ぎを当てることでそのものの価値が高まるようなこともあります。
継ぎあてをマイナスイメージに捉えるのではなく、ものを大切にし、深く関わっていきたいと思います。

このことは紬きもの塾の趣旨でもあります。


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