中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

2つの現代美術展――西村陽平展、井田照一展を観て

2012年05月24日 | 工芸・アート
中野みどりHP

2つの現代美術の展覧会を観てきました。

まず、5月27日までですが、愛知県陶磁資料館で行われている西村陽平展はお奨めしたい展覧会です。
2時半ごろ会場に着いたのですが、観る時間が足りませんでした。。。
作品点数が多いということもあるのですが、その場にずうっといたい感じで、午前中から1日いても大丈夫な感じでした。
目の見えない子供たちに造形の指導もされていて、そのビデオも全部は見れなかったのですが、よかったです。
人はものの本質を見失いがちになるけれど、目の前にある1冊の本を焼いてみると見えてくるもの、
気付かされるものがあるのだと思います。
いろいろなものを焼いた作品があるのですが、最後の部屋で見た文庫本、新書本200冊を焼いた作品は圧巻で、
本とは何か、本の本質に迫るように思えました。1点1点が尊い存在として浮かび上がっているようでした。

織物も着物もそうですが、すり込まれた観念から解放されなければ自由な仕事はできないと思います。

もう一つは作品集『樹の滴』でも触れられている井田照一さんの回顧展です。
私は京都市美術館を観てきましたが、22日からは京都国立近代美術館でも始まっています。

モノを見る目がフラットで、鋭い方でした。決して現代美術だ着物だというくくりを持たない方でした。
生前、井田さんの展覧会場に作品集の表紙カバー裏に出ている藍の着物で伺った時に、
その着物を見ながら「中野さんのこういう仕事を見ると僕らの仕事は何なんだろう?と思ってしまう。僕らのはスクラップだから…」
しんみりとつぶやかれたのす。その気持ちが私にはよく理解できるのです。
先入観を持たない方だからこそできる発言だと思います。

でも私は井田さんの仕事に尊敬の念を持っています。気品と、そして深い優しさに溢れているからです。
観終わって、井田作品に「ありがとうございました」と一礼をして会場をあとにしました。

そういえば、先日5月4日のブログでご紹介しましたが、染色家の仁平幸春さんが私の作品について言及した
仁平さんのブログのコメントのところで「静かに、破壊的」という表現をされていて、その意味をご本人にうかがったところ、
「破壊がそのまま創造であるのが自然界。花の蕾が殻を破って花を咲かせるように」というお話でした。

「破壊がそのまま創造」といえば、西村さんの創作にも井田さんの創作にも通じているように思います。
ものの遷り変りを静かに見逃さずにいたいです。

是非ご覧いただきたい展覧会です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第2回紬きもの塾 糸のかたち 

2012年05月13日 | 紬塾 '9~'12
中野みどりHP

当紬塾の最も重要な話である紬で使う糸の説明を中心に行いました。

まずは1粒の繭から蚕が吐き出した1本の糸の形を見てもらいました。
なんだか人の頭ばかり写っているようですが・・・



アップにすると・・黒い紙に蚕が吐き出した1本の糸を巻き取っています。とてもきれいです。



また真綿からも糸をずり出してもらいました。



座繰りの節糸のかたちや蛹の脱皮殻を見てもらいました。




またテキストの幸田文「きもの」を読んでの気付きなどの発表もしてもらいました。
これは毎回一人ずつ順番にしてもらいます。
今回のNさんの発表では震災時における木綿の着物の底力について書かれたところ、主人公るつこはセルの着物が好きではなかったところなどでした。
日常に着物があった時代の話から学ぶ点もあると思います。

1度読んだだけではピンと来ないところもあるかもしれませんが、着始めてから読み返すたびに新たな発見もあり、深読みのできる本だと思います。

今期の方は特に質問も多く、とても熱心です。時間いっぱい話をしました。

次回は実際に織るための糸をつむいでもらいます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする