中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

「着る」ことについて

2023年06月01日 | 着姿・作品
紬塾では、毎回着物でみなさんをお迎えしますが、個人的なお洒落のためだけに着ているわけではないのです。
私が着ている紬は各回の内容に即して選んでいます。このことも具体的な実例として、参考にしてもらえたらと思っています。
なので、ほぼ着る着物は決まってしまうのです。帯だけなるべく変えるようにしています。

先日の紬塾でも、布のバイアスが綺麗に出る着物は着やすいことなども、私の着姿も参考にしてもらいました。色の話では褪色のこともでましたが、藍の褪色についても話題に上りました。


密度高く、固く織られた紬はつっぱって美しいバイアスは出ません。密度が緩すぎれば、ドレープの山は崩れ、お尻や膝がすぐ抜けてしまいます。柔らかくて、でもしっかりしている生地は着やすいのです。
以前、お客様から「中野さんの着物は体調の悪い時に着ても楽だ」という趣旨のことを言われたことがあります。
私自身も本当に調子の悪かった時に自作の紬に半巾帯で凌いだことがあります。安らぐ感じがあります。本来の紬は体に馴染む着やすいものだったはずです。

なぜ、柔らかさと、堅牢性を保てるのかも紬塾で話ました。
私の仕事の核となるものですので、ここでオープンにもできませんが、ヒントはブログや作品集「樹の滴」に散りばめているつもりです。

布の端、耳もきれいに織るための工夫があります。風合いも1種類の糸を機械的に入れて織るだけでは生まれません。
私が10丁の杼を使い、柔らかなよこ段を織っている映像を見てもらいながら、その説明もしました。
10丁の杼でも、杼の置き方を工夫すると、耳をきちっと絡めるように織ることができます。
耳がわかめのような着尺をインスタなどでよく見かけますが、あれでは仕立の方は苦労されるでしょうし、仕上がりは美しくなりません。何より背縫いの経糸が定まらず、地の目が割れることもあります。
もう見るに耐えかねるものを販売して、お金を払った方が損をするようなことはあってはならないと思うのです。
何よりせっかく買っても着にくさでがっかりして、着物を離れてしまう、そして作家ものはダメだということになってしまいます。
着尺の基礎をきちっとわかって仕事して欲しいです。
自家用のものなら多少の不出来は構いませんが、お客様に販売するものはそういうわけにはいきません。

また、大枚を投じて着る人も、色や柄だけに囚われず、経糸、バイアス(密度バランス)、反物の耳、手触りなども見てもらいたいと思います。

この日の着物は色褪せた単衣の浅葱色小格子です。何度もブログに登場していますし、作品集の中でもエピソードを交えて紹介している、独立間もない30代初めに織った紬です。
初個展の後、作るだけで自分が着たことがないのでは本当に良いものは作れないと思い、この一反を自分用に単衣に仕立てたのです。

裏返して、擦れた裾も5分ほど切り詰めています。いろいろな帯とよく合いますので、たくさん着ました。真冬と盛夏以外、着ています。
畳で、擦れる膝から下は色が抜けて、一部は甕覗きのような色になっていますが、初めて見る受講生からは「素敵な紬ですね」と声を掛けてくださいました。そろそろ座布団側にでもしようかと思っていますが、これでも良いと思う人がいたら、もうひと働きしてもらうのも良いかもしれません。

詳細は中野の着姿にもアップしました。


帯は茜染めの茶の帯です。着物を着始めた30代半ば、高島屋の岩手の物産展で、草紫堂さんの前をたまたま通りかかって見つけて購入したものです。工芸的な手仕事に惹かれて買いました。親元にいた頃で、着物が売れると帯や羽織を買う、、ということをしていました。
母からは「貴女みたいなのを七儲けの八遣いと言うのだ」と呆れられていました。確かに・・。(^^ゞ

しかし、紬や帯の寿命の長いこと、上質の手つむぎ糸、手織りの着物は高価ですが、飽きることなく着続けられるというのは、仮に着物と帯で100万円だったとしても、50年着続けたなら、2万円/年ほどです。
決して高いだけではないはずです。着る喜び、心の安らぎもあります。次世代に残せるものでもあります。究極のエコでもあります。良いことがたくさんあります。長く愉しみましょう!!

そして次回の紬塾は「とことん着る」話です。
着る紬もアレと決まっています。(#^^#)

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絽ちりめん帯揚げをオンラインショップにアップしました!

2023年04月13日 | 着姿・作品
しばらく染色の仕事をしていましたが、染が一段落しましたので、単衣、盛夏の時期に向け、絽ちりめん帯揚げをオンラインショップにアップしました。

絽ちりめんは平絽よりも厚みがありますが、単衣、盛夏に使えます。夏紬や麻の縮などの織物には合うと思います。
色もナチュラル感のある着物に合わせると、双方が生きてきます。

盛夏の帯揚は絽目が無ければならないという規定があるわけではありませんが、涼やかな色や生地を選べば良いと思います。私は絽ちりめん、平絽、デシン、薄手の通年使えるものなど、いろいろ使っています。ただ、絽目があると、いかにも夏!です。(*^^)!


グレー、灰緑、オレンジ茶の中間色を3色(上から、梅、桑、桜)と、オフホワイトから薄茶の4色(月桂樹、酢橘、柿など)、ブルー系は生地違いでやや黄味の水色と落ち着いたブルーグレーの2色です。ブルー系は草木と化学の併用で染めています。草木だけよりも、ふた手間かかります。(^_^;


色の詳細、価格などはショップをご覧ください。

写真は実物に近づけるよう時間帯、天候、カメラ設定なども選んで撮影していますが、実作と画像の印象とは少し違うことをご理解の上ご注文頂ければと思います。私のPC画面とスマホでもかなり色が違いますので。でもどれも深みのある、美味しそうな!?よい色です!

帯揚げは、糸染めの時以上に気を使います。ムラにならないよう付きっきりで1枚1枚染め、天日で乾かし、色を確認、更に染重ねを繰り返し、帯や着物を想像して、取り合わせのできる色かどうかを見定めます。

淡い色でも草木のチップを作るところから、数日掛け、2~3回は染めます。
とても微妙で、時間帯によって色の見え方も違いますが、植物の中にある複雑な色素を抽き出したのですから、どれも繊細で奥行きのある色です。。媒染は灰汁(樫)や鉄、アルミなどを使います。併用することもあります。

白系の着物には帯揚げを中間色にするのもいいですし、濃い地の着物には淡い色で涼しさをプラスするのもよいですね。

もう4月から、夏日になる気象となってしまいましたが、こういう時に真綿紬の単衣は重宝します。
というか、私の織っている真綿紬は、糸の太さによっては盛夏以外を単衣で通すことができるものもあります。私はやや地厚の単衣紬が大好きで、ある程度の厚みや、張りがあることが、身体にまとわりつかず、風が抜け、暑くないのです。甘撚りの真綿の糸は保温性と放湿性と両方備え、機能的です。

地色が中間色のものは一年通して本当に重宝します。帯だけ何本かあれば、小物で色を添え、いいものです。多くの方に私の紬は単衣で3シーズン着用して頂いています。
もちろん、裏地の色を添える袷も、おしゃれ度アップでいいのですが、着物をたくさんは持てない、一器多様でとことん着たい!、という方などには3シーズン紬は特におすすめです。(^^♪

そういう単衣向きの紬もありますので、帯揚げと共に、ご検討ください。(*^-^*)
合わせたい帯など、ご希望がありましたら、それに合うものを画像でお送りすることもできます。ご遠方の方には通販もしておりますので、お気軽にHPからお問合せ下さい。



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「羊歯文刺繍帯」を譲り受けました!

2023年03月10日 | 着姿・作品
長いこと、紬を織る仕事をしてきましたので、いろいろなことがありますが、間もなく米寿を迎えるお客様から、もう着物を着ることもないので、私の着物と帯を引き継いで使って欲しいと頼まれました。
ちょっと迷いましたが、「中野さんに着て欲しいの・・」ということで、頂くことにしました。
私も高齢になってきましたので、そんなに着る時間はないと思うのですが、、その時はその時で考えるとして、、ありがたく活用させて頂きます。



そして、3/8は女性の日、ミモザの日でしたが、そのお客様と高齢女子三人で、お礼をかねての懐石会食でした。帯、帯揚げは早速使わせて頂きました。

今は手に入らない、赤城の節糸のざっくりした風合いのものに、刺繍をあしらった「羊歯文刺繍帯」です。
刺繍は好きで、今まで何点か刺繍を施した作品を作ってきました。紬に、雅なイメージの刺繍は違和感を覚える方もいらっしゃいますが、私は刺繍もその内容により、ありだと思っています。

この帯は漆絵の羊歯絵作品からインスパイアされ、デザイン、色を決めました。
過剰にならないよう、区切られた部分に敢えて押し込めるようにしました。色も草木染のベースに馴染むトーンを差し色に選びました。



自作の名古屋帯は3本目になります。
帯芯が少し硬くて、締めにくく、着姿がイマイチですが、使ううちに馴染んでくるでしょう。
前中心はもう少し焦げ茶を多くすることもできます。

今日の取り合わせは、繊細な刺繍を引き立てたく、帯に溶け込ませる赤みのグレーの帯締めと、この帯に合わせてお客様が選ばれた桜染のピンクベージュを使いました。
Hp作品ページ着姿ページに詳細があります。

ブルーグレーの羽織に、萌黄色の羽織紐で春の色を添え出かけましたが、季節や、その場に相応しい装いで人と会えるというのは、そのことだけでも話題が広がり幸せな時間を過ごせます。
取り合わせは単なる色のコーディネートではないです。

紬きもの塾でも取り合わせの回は特に楽しい時間になります。
毎回みなさんが頬を紅潮させて、いかに取り合わせが女心を奮い立たせる!!か分かります。
紬塾は糸の話から、作ること、着ること、着尽くすことまでを学びます。

紬塾は3/18(土)朝8時から受け付けが始まります。
「紬きもの塾23」お申込みはこちら



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木斛染「一崩し」着物

2023年01月19日 | 着姿・作品
先月、お客様が木斛(モッコク)染ピンクの着物に、染帯を取り合わせ、工房までお越しくださいました。写真のピンが合ってなくて、質感わかりにくいですが…。落ち着いたピンクの着物と、濃い紫の縮緬帯とよく合っています。
小物は薄青紫の帯締めと、薄緑の帯揚の寒色系で抑えたところもスッキリします。 ※ご本人の許可を得て着姿をアップさせてもらいました。


また、12月とはいえ、この日は暖かく、ショールをラフに颯爽と巻き付けただけでお越しくださいました。ショールは少し前の作で、お母様用にお求め頂いたシックなものですが、引き継いで使って下さっています。
紬のコンパクトなショールは季節の変わり目や、気候不順な時にバッグに入れておくと、とても重宝します。ショールは櫻工房onine shop千成堂着物店で販売中。




ピンク「一崩し」の着尺は定番で、今まで何反も織ってきました。色違い、網代タイプも含め、紬らしいこの織りが、修業時代から好きでした。「崩し」という濃淡の色糸効果による織りです。
染めは木斛の枝葉で3~4年かけて染め重ねた落ち着いたピンクです。
糸の太細から生まれる織りの表情に、味わいがあって見ていて飽きないのです。16.08.02の記事でも藍の「一崩し」を紹介してます。

着尺の仕立てのご相談で見えたのですが、着姿を拝見しながら、寸法の確認もさせてもらい微調整しました。

以前仕立士の方に詳しく教わりましたが、着物の寸法は身体の寸法だけでなく、どんな着方をするかで違ってきます。
着付けと寸法の関係も奥が深いのですが、自分自身が寸法をどうすればよいか意識しなければなりません。
生地による違いもあります。他にもいろいろありますが、紬塾でも詳しくお話ししています。
みんな判で押したような、同じ着方である必要もなく、自分らしい着方を探りたいです。

工房でも現在ピンク「一崩し」着尺がご覧いただけます。
年齢、肌の色を問わず、どなたにでも似合う落ち着いたピンクです。



無地感覚ですが、無地ほどあらたまらず、カジュアルになりすぎず、現代の着物シーンには、帯次第で出番の多い着物です。
年配者向けには寒色系の緑味グレーの吉野の帯など合わせると落ち着きます。帯揚げは青白磁色。リンゴで黄色の下染をして、化学染料を1滴、2滴、2.5滴…。古い時代の焼きもののような微妙な色です。 (^_-)-☆

他の色でも糸をご覧頂き注文もお受けします。お問合せください。

工房は、南東からの障子越しの自然光で静かに集中して作品と向き合って頂くのに最良な環境です。
1~2月の午前中は陽射しが低く差し込みますので、色を特によく観て頂けます。
ご好評を頂いております帯揚げも、お手持ちの着物と帯との取り合わせの相談も承ります。

事前にWebからご予約いただく際には、あらかじめお好みやお探しの色などをお書き添えいただければセレクトして準備いたします。ご希望の日程を何日かご記入下さい。調整いたします。日曜日も可能な範囲で対応いたします。

冬の間も感染対策のため、常時換気します。暖かい格好でお出かけ下さい。
お車の場合は駐車スペース1台分あります。
ご予約、お問合せはこちらから。




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草木染帯揚げのこと

2023年01月06日 | 着姿・作品
初春のお慶びを申し上げます。
本年もよろしくお願いいたします。

昨年ショールを織り上げてからは、ヤマモモの剪定枝が手に入り、糸染、帯揚げを染めていました。
草木の生木を使った染めにしていこうと思ったのは、40年程前に実家のヤマモモの枝を試しに染めたことがきっかけでした。
10月頃だったと思うのですが、ヤマモモは黄色を染める染料として古くから使われてきました。私も乾材やエキスのヤマモモはよく使っていました。
生木のチップを煮出した染液は、無媒染の状態で、淡いピンクが染まり、赤ちゃんの頬の薄紅のような生き生きとした美しい色でした。いままで見たことのない草木のいのちの色でした。
ヤマモモも枝先に関しては、季節でかなり色の違いがあります。

トップの画像、ヤマモモなどの、オフホワイト&ベージュ系も自然光では、薄いけれど深い色できれいですが、画像は微妙すぎて難しいです。
ピンク系と黄色系があります。PC画面ではそれなりに写っているのですが、スマホで見るとかなり違う感じで、日々、陽にかざして見ている作者としては満足いかないのです。(-_-;

草木染と言っても、染料店などで、乾燥させたもの、エキス状のもの、液体のものなどが販売されています。
一般には商品として売られている多くはこういったものが使われています。
それらを宗廣力三先生の工房でも使っていましたので、独立した初期にはそういうもので染めていました。

しかし、生木の染材を染めてみると全く別の世界でした。染料としては酸化が不完全な状態で、不安定ですので、下手をするとムラになったり、染材を細かくする労力、煮出しの時間、ガス代、同じものが染まらないなど難しい点もあります。ただ、長年やってきましたのである程度は工夫と、見極めができるようになったかと思います。染重ねや、染めてからの空気酸化を十分にさせることなど堅牢性も高めるようにしています。


そして、濃い色にする場合などは乾材も使います。クロムなどの媒染材を使いませんので、繰り返し染めて濃い色にしています。何日もかかります。

着物や帯のことを想像しながら、時に自作の帯と合わせて、色の確認をしながら染め重ねて行きます。
この丸紋の帯揚は、生地に艶がありますので、帯揚げを主役にするような取り合わせも良いかと思います。右端、一番濃い色は華やぎがあり、薄い寒色系の地色の染の着物などにも良いと思います。グレーは紫のように見える瞬間もあり、これも華やぎがあります。これ以外にもオレンジ茶のグラデーションで、微妙な色違いを染めています。

帯揚げは糸染めと違い、付きっきりで染めます。
淡い色でも染め、干すを繰り返しています。一点もの帯揚げ自体がかなり仕事としては採算の合わないものなのですが、染めるのは料理をするように楽しいです・・(^^♪。が、本業は紬の着尺を織ることなので、暫く帯揚げ染めは休もうと思っています。

白生地代、ゆのし仕上げ代、送料などの高騰で、ギリギリ抑えておりますが、昨年夏から価格を5%程上げさせてもらっております。14,000円~19,000円(+税)です。染の回数などで価格は違います。

オレンジ系+グレーの上の画像のものは一番薄い、パウダーオレンジは16,000円~一番濃い蘇芳がかった赤茶色19,000円です。
オンラインShopにはパウダーオレンジと薄オレンジ、一番濃い赤茶色だけしか上げてませんが、shop内からお問い合わせいただければ、他のも個別に通販もいたします。不明な点はお問合せ下さい。

トップの画像、ヤマモモなどの、オフホワイト&ベージュ系は、直接工房でご覧頂ける方のみになりますが、ご遠方の方はHPからお問合せ下さい。

工房では他の色もご覧いただけますので、来房可能な方は、ご予約の上お越しください。





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紬の取り合わせの妙とは

2022年12月27日 | 着姿・作品
先日、帯揚げと帯締めの取り合わせをさせて頂いた方から、「(小物を)たくさん揃えなくても、色味を妙を楽しむ秘訣は?」と、質問を受けました。

私の着物の取り合わせを HP「着姿」の“中野の着姿”やblogで見て下さっているそうですが、取り合わせの微妙なところが今一つわからないということです。私も自分で染めていながら、帯揚げもそんなに枚数はないので、十分な取り合わせではないですが…。

トップの画像は自作の着物と帯ですが、3月の装いです。
着物が凝ったもの(刺し子織り)ですので、帯はプレーンな感じのもので合わせました。
織物でも季節感は大事にしたいので、明るさを感じるオレンジ系の茶の帯揚げ、グリーンベージュの帯締めで芽吹きの早春のイメージを出しました。
着物は茶系の暖色ですので、帯と帯締めに寒色を合わせ、バランスを取っています。

草木染や落ち着いた色合いの着物に小物が浮いてしまったりすることがあります。色のトーンが離れすぎると浮いてしまいます。
かと言ってワントーンで揃えすぎるとつまらないですし、差し色になりながらも悪目立ちはしない、という路線が目指すところかと思います。全てを主張させるのではなく、脇役に徹するものがあってもいいです。その時、何を主にしたいか、どこを生かしたいかを決めます。



直ぐ上のこの画像は11月の装いで、黄葉をイメージした辛子色の帯締めと、こっくりと赤味を含んだ焦げ茶の帯揚とで秋から冬への移ろいを表しました。

同じ着物と同じ帯でも随分印象が違います。単なる色遊びのコーディネートではなく、日本の季節感を取り入れたいと思っています。

お客様で、私の着物に手持ちの小物で合うと思っていたが、家で合わせたら、トーンが合わないと仰り、微妙な色違いの帯揚げをたくさん揃えて下さっている方があります。オフホワイトが1枚あれば何にでも合う――のではなく、オフホワイト系も色相の違いは沢山ありますので、季節、その日の天候などで色の見え方も違うため、着物や帯、自分の感覚に合うものを選ばれているのでしょう。
こだわれば、確かにたくさんの色を揃えたいところではあります。

でも、沢山は揃えられない場合は、選ぶ時にパーンと撥ね返すようなビビッドなトーンや、クリアな淡い色も紬などには軽すぎてしまう場合もありますので、灰味を含む色を選ぶと包容力のある取り合わせが可能かと思います。
異なるものを合わせながらも一つの調和があればよいと思います。

そして取り合わせというのは単品で見るものではなく、隣り合う色、隣り合う素材感によっても違います。できればそのものに合せて見るのが一番です。
それと、私の帯揚の生地は丹後縮緬ですが、素材の良いものを選ぶことも大切です。小物だから、少ししか見えないからと、適当でいいのではなく、ものの力と力、質の高さと高さを取り合わせることが大事でしょう。
小さなものほど目立つかもしれません。

いつだったか街で出会った人で、まず下駄の素敵な鼻緒に目がいって、徐々に上に視線を移動させた経験があります。料理人さんなのか、大きな買い物かごを持ち、麻の作務衣も素敵でした。

羽織の紐から選び、着物、帯へと一式を選ぶのもいつかやってみたいですね。(^_-)-☆

草木の色の世界は複雑ですが、自然の合理にかなったものと思います。
日々、自然物の色をよく観察し、光の違いも大事にしたいです。

紬塾でもワークショップ付きで、日本の取り合わせの話をしますが、その次の回の時に即、実践して来て下さる方もあるくらい、目からウロコの話をしています。

来年は「紬きもの塾」も開催予定ですので、関心のある方はHP、blogでお知らせしますので、ご覧ください。

工房は、新年は1/5(木)からです。
どうぞ読者のみなさまも良いお年をお迎えくださいませ。





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45周年記念展来場者の方の着姿から

2021年11月18日 | 着姿・作品
先日の個展の会場へ私の着物や帯で来場くださった方がかなりいらしたのですが、写真は一部の方しか撮れませんでした。ギャラリートークの日は全く撮れませんでした。
またせっかく撮らせて頂いたものの、色があまりうまく出なかったりでした。
ゆっくり場所を設定するところから決めないといい写真は撮れませんので、残念ながら掲載できないものもありましたが、少しご紹介します。

まずは個展のギャラリートークで聞き手を務めてくださった「美しいキモノ」副編集長の吉川明子さんです。
この日は私の桜染めの紬に沖縄の紅型染めを合わせてくださってました。辛子色の帯締めも、本来紬にあまり使わない絞りの帯揚も吉川さんの明るいパワーが溢れて力強かったです。紬は自由に取り合わせられますのでそこが楽しいです。
着物は少し前(!?)の40代半ばの作品で、いい無地系はどうすればいいのかを追求していたころのです。濃淡のある色、色相の違う糸、糸質の違うもの、真綿の糸、玉糸、節糸をブレンドし立体感を出した作品です。
一色の無地は織ったこともないし、これからも織る気もしないのです。
静かそうで中は複雑な無地が好きです。


この着物の背中には桜の小枝の洒落紋があります。私が織りで使う草木染の経糸を職人さんにお願いして刺してもらいました。桜の葉が持つ複雑な色相にしてもらいました。


こちらの着物「秋麗」も遠目に無地のようでかなり複雑です。この方も紅型のざんぐりとした帯と合わせてくださいました、いつも型にはまらない自由な少し調子を破るような取り合わせをされている方です。前のアップは撮り忘れましたが、帯締めが柔らかなココア色の茶で抑え、かなり高度な選び方と思いました。とても素敵でした!帯揚げはクリーム色。作品集「樹の滴」にも掲載されています。



こちらの方は着物と帯と帯揚と帯締めも私のセレクトで一式揃えてお出掛け頂きました。オリーブグリーンのような茶にピンクが入ってとても凝った組紐です。
帯締めも草木染の帯に馴染むように1本ずつ慎重に選んできますが、私の帯をお使いの方には随分ご利用いただいてきました。


白地も単純な白ではなくもちろん数色を混ぜています。「真珠の彩」と銘を付けましたが、光線でピンク系にもブルーグレー系にも、本当に真珠を感じさせる紬です。この着物は実作でないと良さがわかりにくいと思います。
白地の着物は秋は寂しいかと思いましたが、ビワで染めた赤味の茶で、真綿糸の帯が暖か味を添えていました。この帯も無地のようで無地にあらず、、です。


帯を使ってくださっている方もご紹介します。
以前にご紹介したモッコク染めの薄ピンクの「御身衣」の姉妹で「御身衣II」です。花織の模様の出方が少し違います。
染めの着物と合わせてくださって、アイボリーの帯揚も私の染を使ってくださっています。帯も色々な着物に合いますとおっしゃってくださってました。
安心の一本になってお役に立てればと思います。



こちらは半巾プロジェクトのシリーズを名古屋帯になさった方です。
型染めの紬と合せて下さいました。帯揚も紫味の梅染のグレーです。濃い紫の帯留めは小川郁子さんです。半衿も刺繍が入ってますが、それぞれの色や素材が異なりながら、静かに調和しています。


この日は前を関東柄を前に出されていますが関西巻きではピンクベージュの縞が出るようになっています。着物で使い分けて頂ければと思います。



この方も半巾帯プロジェクトに参加して下さった方です。
「山笑う」をお手持ちの大島に合せてくださいました。
大島の濃厚さに程よく添う感じです。
着物をたくさんお持ちですので、色々な結びで合わせて頂ければと思います。

かるた結びにされています。
よこ吉野を配していますので、半巾でも重みがあります。貫禄あります!
私はあまりかるた結びはしてきませんでしたが、いいですね。私も練習します。

ここでご紹介できない方の分もHP着姿集に順次上げていきますのでご覧ください。

私自身も毎日違った取り合わせで出ていたのですが、1枚しか撮ってもらう余裕なく終わってしまいました。。

それにしてもコロナで外出も控え、気持ちも塞がっていた方が多いでしょうに、個展でお会いした女性たちの着ることへの意欲はすごいものがあります。
それは着飾るだけではない、まずものを観るということ、そして着るということへの真摯な眼差しであり、着ることは善く生きることなのだという意思、自律した女性の根源的強さを感じました。

私も個展の残務が済んだら自分の着ることを真剣に考えたいと思っています。(;'∀')/


工房では現在個展にご都合のつかなかった方や、取り合わせを改めてお考えの方などにお越しいただいております。12月中頃までお受けできますのでHPお知らせからお問合せ下さい。
帯揚、帯締めも色数が少なくなってまいりましたので、工房での販売に関して帯締めは20%offで販売いたします。帯揚げは10%お引きできます。もし合うものがあればご利用ください。


上の写真は、個展初日からお問合せを頂き、遠方の方に通販で対応させて頂きました。
何度も確認しながら一式お選びになりましたが、画像のやり取りとはいえ、すでに私の帯を2本お持ちの方ですので大体の色のイメージがお分かりになるのだと思います。
こちらである程度合うものを選び、その中から最終決定をしていただきました。
ビデオ通話でお話ししたりしましたので、メールだけではないお人柄もある程度分かりますので、私の目から見てもベストなチョイスだったと思います。

ご遠方でも何かございましたらHPよりお問合せ下さい。


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花織帯と着物

2020年03月13日 | 着姿・作品
昨年3月のこまもの玖さんでの「帯揚げ百彩」の時のトークイベントに参加してくださった方が、紬塾にも参加してくださいました。また、その際に帯もお求め頂いたのですが、その帯を締めて通ってくださいました。

ご本人から2回目の参加の時に「この帯を6回締め続けて来ます」と伺い、本当にびっくりしました。他にもいろいろお持ちでしょうに、この帯としっかり向き合ってくださるというのです。
一枚の着物に帯を六本替えて過ごしたことはありますが、一本の帯を六枚の着物で、意識的に連続して着用する経験はないのでハッとさせられました。こういう帯との出会い方をしているだろうか?

モッコク染のピンクとグレー、桜染めのピンクベージュなどを中心に使って織った『御身衣』と題した花織の帯です。

紬塾の最終回を終え、コメントも頂きました。
「桜と木斛(もっこく)で染められた美しい桜色の帯を、一年間6回にわたる紬塾に毎回締めていくことに決めました。
先生が染めて織られた草木染めの色が、さまざまな季節や気候、いろいろな紬のきものと合わせることで、毎回どのように違って見えるのか、実際に見てみたい、と思ったのです。
一見淡いピンクの無地と見えていた帯は、季節ごとの日差しの下で見てみると、じつにさまざまな色の糸の折り重なりでできていて、光の加減によって多様に美しい表情を見せてくれます。一本一本の糸に滑らかな光沢があることも、日の光の下で見て気づきました。」

生木の草木染の色は季節や天候、戸外、室内、光源、取り合わせなどによって、違って見えますので、それを実体験してくださったのです。この決断に敬意を表します。

六枚の着物は、木綿、紬、お召しなどですが、風合い、質感、色合いは様々でした。

『御身衣』は、経糸、緯糸共にサラッとした生糸に近い節の少ない玉糸を使った紬です。
紬ではありますが、真綿と違って光沢感が出ます。紬とはいえドレッシーな着こなしにも使える帯です。
山茶花に『御身(美)衣』という品種があり、白の花に縁だけピンクの可憐で優しい花が咲きます。工房にも植えてあります。公園などにも見かけるポピュラーな品種です。その清楚なイメージで糸を選びました。

モッコクのピンクとグレーを1本交互に経糸に配し、グレイッシュピンクを織りだしましたが、角度や光線で色の印象が様々に変わります。グレーが潜んでいることが大きいと思います。

身近な植物の多くは、赤と黄色と黒味を含んでいます。生木で扱う場合、その混ざり具合と媒染材によって発色が異なりますが、更には染める時期や染め方、染液の時間の経過でかなり色の違いがあります。それは実体験として日々経験していることです。
ただ、それをデータに取る気も写真に収める気もしません。その時々に生き生きした色が染まるよう、そのことに神経を集中させます。
もちろんある程度の経験の集積はありますが、私の仕事は一回に賭けることしかできません。よく観察はするけれど、マニュアル化はできないのです。

それよりも、その色をどんな風に生かせるかそのことだけを考えて、デザインを決めたり、隣り合う糸選びに大半の時間を費やしているように思います。

そうして織った着物や帯を使う方がどう使ってくださるか、私はバトンを渡して見守らせてもらうだけです。
ものを通して、ものともののいのちのやり取りがあることは確かです。今までにも、たくさんのそういう現場に立ち会わせていただきました。今回もその一つの端的なかたちです。

取り合わされた着物も小物も、上質で帯を引き立てよく合っていました。
お手持ちの着物を駆使してお使いいただき、本当に作り手冥利に尽きます。

帯締めもどれも質の良さが手に取るようにわかります。手組の紐の力ですね。
色や柄の合わせというだけではない、ものの力と力の取り合わせだと思います。

力というのは、“誰か”の着こなしに静かに何らかの役目を果たし、名もないけれど上質な自然体のものに宿っているのではないでしょうか。

やり尽くした完璧はすぐに不完璧の始まり。その先にあるものを深く見据え、何を切り取り、何を見出し、しばし人のこころを安らげる仕事になりえるのか。
ものの不足を見立てで補う侘びのこころにも通じるものが、着物の創作にも、着る世界にもあります。見立ては自由を内包する豊かな世界です。

写真をHPやブログで紹介させていただける了解を得て、撮らせていただきました。塾が始まる前のあわただしいわずかな時間の中で、何しろカメラマンがいいもので、、、(*_*;上手には撮れませんでしたが、自然光のみで撮影したものを一挙、公開!

では、私のコメントと共にご紹介させていただきます。(^ヮ^


5月の初回の取り合わせ。ラオスの滑らかでシンプルな縞木綿の単衣と合わせてくださいました。
写真では分かりづらいのですが、帯山のあたりをご覧頂くと、花織の浮いたところがピンクとグレー2色あるのがお分かりいただけると思います。一本調子の無地ではありません。

2回目の6月、たて絣のアイボリー地の結城縮に、全体を白系の小物で合わせた中に、帯揚げの黄色と帯締めの黄味のブルーがアクセントとになり、梅雨時に爽やかさをプラスした取り合わせ。
曇り日の北西の戸外で撮影。

3回目の9月末。暑さが残る中で、ダークな単衣の塩沢お召しと、濃厚な組みの帯締めを主役に、涼し気な白地にブルーグレーのぼかしのある単衣向きの帯揚げで、夏と秋のはざまの季節らしい取り合わせ。
室内の13時過ぎの障子を少し開けた自然光で撮りましたが、明るすぎて白っぽく色飛びしてしましいました。(>_<)

4回目の11月上旬の装い。シンプルでモダンな絣の大島に、シックな色合いの帯締めで秋の深まりを演出しています。
きりっとした黒の大島にグレイッシュピンクの帯を合わせることで、洗練された大人の充実感や優しい女性の表情がありました。北側の日陰のカーポートで撮影。



5回目の12月。洒落紋の入った結城の淡いグリーンがかったグレーの無地にもとてもよく合っています。このままパーティーへ行きたいですね。。
薄い色同士ですが、マットな結城にほどよい光沢感のある帯、寒色と暖色が互いを引き立てあって、なんとも上品な洗練の極みのような取り合わせ。
障子越しの柔らかな自然光のみで撮影。


トップの画像は6回目、2月初旬にこちらも障子越しの光で撮ってみました。
着物は草木染。着物の暖色は今までは、少し難しい…と、お召しにならなかったようですが、グレイッシュピンクの帯を暖色同士でも、もたつかせずに落ち着つきと、華やぎもある取り合わせです。

帯揚げはしだれ梅で染めたグレーです。私の方で選ばせていただきましたが、時にフワッと薄紫のような色をのぞかせます。「自分では選ばなかった色・・」とおっしゃられていましたが、お気に召していただき、6回の取り合わせに4回もお使いいただきました。
帯締めは、真っ白ではなく、片方が淡いピンクのぼかしになっています。左右使い分けられます。上の画像ではメインの左側に白を使われています。
暖色の取り合わせの中に、小物のグレー、白がクールダウンの絶妙な効果になっています。

着物歴は8年位だそうですが、佳きものをはじめから揃え、仕事がオフの日に、着物を楽しんでいらっしゃるようです。
このスリーシーズン使えて、カジュアルにもドレスアップにも取り合わせ次第で幅広く使える『御身衣』を長くご愛用いただければ大変嬉しく思います。
染小紋にも合うと思います。

こちらの着姿ページにももう少し写真がありますのでご覧ください。

黒、白、グレー系の着物に、柔らかな温かみを加える草木染のピンクの帯。
「御身衣」は、色は同じようなピンク系で、花織のパターンを少し変えたものが、あと1本あります。ご希望の方はHPからお問合せ下さい。(^^)/




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繋ぎ織りー母子草の小径

2020年01月24日 | 着姿・作品
 
身近な植物から、赤と黄色の色素を抽出することができますが、この着物はリンゴやコデマリの小枝をアルミ媒染した黄色です。黄色の中にも赤い色素も含まれていて、人の肌と映りの良い色です。電灯の下では少し強く感じるのですが、自然光では優しいベージュも感じる色合いです。
残糸を使った繋ぎ糸を、さりげなくタテ、ヨコにランダムに配していますが、無地感覚と言ってもよいぐらい控えめな格子です。
繋ぎ糸は結び目のぷつっとした感じや、そこで別の色に急に変わったりする面白さがあります。予期せぬ面白みでもありますが、ある程度は意図的に考えて繋いでいきます。織り物、特に紬でやる面白さがあります。
 
ただ、それを古めかしいものにしないよう、垢ぬけた感じにすることは大事だと思います。
わかりづらいと思いますが、緯糸もさりげなく絣状のもので、格子が強く出ないようにしてあります。
 
私はデザイン画というものをほとんど描きません。絣の時だけは、絣の入る位置を決めなければなりませんので、位置関係だけ一分方眼紙に印付けはしますが、完成形を思い描いて色鉛筆で描いたりはしません。
 
友禅の方などは、きっちりスケッチや下図を描かなければ、仕事にならないと思いますが、織り物は糸を見て、糸の本数で決めていけばいいのです。頭の中にある以上のことが生まれてくる可能性の方が大きいからです。
 
この反物も一反がひと柄になっていて、同じところはどこにもないのですが、うるさかったり、押し付けがましくはならず、着る人に添い、取り合わせも自由になるようにだけは考えますが、ほとんど成り行きです… (^-^;
 
着物の銘は「母子草の小径」です。春先から咲き始め、6月ぐらいまで咲き続ける植物です。春の七草(御形)にも入っています。
控えめながら、道端でふっと目をとめ見つめてしまう花。白いビロードのような産毛に覆われています。子供のころから親しんできましたが、母子草の小径があったなら、歩いてみたいです。花言葉は「無償の愛」だそうです。。
 

昨年、この着物で工房へお越しくださった方は、人生の岐路に立ち、迷い、悩み、でも新たな道を決断し、歩んでいかれようとしています。
この着物を決断した時も、「自分を律していたい。この着物から力をもらい、そして着物に負けないよう似合う自分でいたい。」と。
 
こんな思いで着て下さっていただき、作り手として大変ありがたく、幸せなことです。今までも、みなさんが特別な思い、一大決心ででお決めいただいたと思っていますが、帯一本でも、ショール一枚でも、帯揚げ一枚でさえ、自分とものの命のやり取りをしながら決断されていると思います。
 
この日は紅型テイストの帯を合わせてお越しくださいました。夕方の蛍光灯の中で撮りましたので、色と布の生き生きした表情は写せなかったのですが、、。黄色系が一番難しいです。PCはまだいいのですが、スマホの画面ではイマイチです。
以前にお会いした時はお祖母さまの紺地の有栖川の帯で、落ち着いた取り合わせをしてくださってました。
 
黄色は太陽光の色、希望と勇気をもらえる色、映画「幸福の黄色いハンカチ」のラストシーンも思い浮かびます。
いつも前向で賢明で優しい方ですので、必ずや道は開けると思います。母子草の小径を前を向いて歩んでほしいです。人生の節目節目に、折りに触れ、お召し頂きたく思います。
 
若い母子草さんから、「私たち、いい女でいましょう!」と、私も同列に含めて(^-^;、エールを送っていただきましたので、是非そうありたいと、私も努力します!たまには口紅ぐらいつけなければ、、。(*^^*)/
 
最後に、客観写生の俳人、高野素十の俳句2句と、母が60歳で初めてスケッチブックを買い、描いた母子草の写生を添えます。
 

われに一日母子草にも一日かな  

父子草母子草その話せん   高野素十

素十はなんでもないこと、あるがままを見つめ、平易な言葉で作句し続けました。

それぞれの思いで読み込ませてくれる大きな世界を内包する鑑賞ができます。

 

「母子草」        84.5.17 川崎市麻生区王禅寺にて 
 
母の青春時代は戦争でしたので、絵を描いたり、見たりの機会もなく、絵の勉強とは無縁できました。でも自然をよく見ている人でした。
鉛筆と数本の色鉛筆で描いていますが、これも客観写生ですね。
 
 
 
 
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自然布と夏紬

2019年07月11日 | 着姿・作品



先日、梅雨の晴れ間に夏紬で都心まで外出しました。

帯はビンテージものの対馬麻です。大麻の生成り糸と木綿糸の黒の二色の縞ですが、実際にはもっと複雑な素材そのものが持つ自然な色と糸のかたちから生まれる陰影があります。対馬麻は大麻と木綿の交織が特徴と言われていますが、この帯は黒糸以外は大麻です。半纏から帯に仕立て変えたもので、使い込まれていたのか柔らかく帯結びも楽です。



紬との織物同士の取り合わせですが、それぞれの糸味、糸の力、自然の色を纏うといった感じです。

前々回の記事でもご紹介した同じ着物に締めていましたシナ布の帯は、現代のもので、数年前のシルクラブでの「いとなみの自然布展」で購入したものですが、糸の張りが強くて、いつもの捻じるやり方では帯結びができませんので、クリップを使いました。手ごわいです。。(^-^;



反物で撞木に掛けられたのを見たときに織り物の技術の上手さが際立っていました。耳もとてもきれいです。
2種の自然布の帯は透け感は少ないタイプのもので単衣の時期と盛夏に使えます。長く愛用したいと思います。

私が織物の美しさに出会ったのは高校3年生の時に見た古い芭蕉布や手紡ぎ木綿の丹波布などでした。素材そのものの持ち味を残した素直で自然でシンプルなデザインで、この世にこんなものがあったのか‥と、とても衝撃を受けました。というか普遍的なものの美しさの根源に出会ったのです。あれからなんと50年近くになろうとしていますが、その日のことを忘れることはできません。

自然布なら、手つむぎなら美しいのではなく、美しさを損なうことのない素材への観察力、見識、わざ、そして創意し過ぎない謙虚さに、人の心を動かすアート性が潜んでいると思うのです。紬でもそういう核になるところは見失わない仕事を目指したいものです。

労苦は惜しまないけれど、無駄に凝ったりしない文様、糸使い。原始から、先人たちは生きるために命がけで布を織ってきました。
その厳しさは今の時代にどれほど受け継がれているのでしょうか?着るものの溢れかえった今の時代に、生きるため、命をつなぐために織った布があったことを想像するのは難しいかもしれません。

縄文土器展には列をなす人々がその時代の衣服、布に同じように関心を寄せているだろうか…というか、大きく取り上げられる機会もほとんどなく、布に触れる機会もないということでしょう。
人にだけ与えられた衣の文化。人は布がなければ生きていかれません。
今の暮らしを省みつ、思いを原始に馳せたいと思います。次回紬塾でも「とことん着る」をテーマにします。



夏紬「柿の花」は一昨年夏に織ったものです。セリシンを少し残したいわゆる生紬に近いものですが、もう少し柔らかくして着易さを考慮しました。糸の精錬から仕事をしていますので、その調整も着るときのことを考えてしています。
織り密度もやや荒くして織ってはいますが、経糸に節糸も使い、地詰めをして洗えるようにもしてありますので、透け感はあまりなく、6月~10月初旬まで着用できる単衣です。
柿や桜、白樫で染めた柔らかなオレンジベージュ系で、ヨコに浮き織りでウコギで染めた薄緑のさりげない段を配しています。優しい上品な色合いですが、紬帯も染帯も、また力強い自然布も受け入れてくれる包容力のある着物です。

紬も原始から織り継がれてきたものです。名称こそ“紬”ではありませんでしたが、植物から繊維を取り出し、糸にすることに比べれば容易に絹糸は引き出すことができます。養蚕の際に出る屑繭や繭の表層から引き出される粗い糸を使わない手はありません。丈夫で柔らかく着易く、また見た目にも味わいのある織物が労働着、普段着として使われてきました。
今日では高級なおしゃれ着になりましたが、四季とともに小物の取り合わせを変えるだけでも自由に楽しめ、脳も活性化してくれる現代の紬のおしゃれを様々な取り合わせで楽しんでもらいたいと思います。ストレス社会の現代こそ安らぎのある布を纏いたいです。そして日本の織物の原点の大麻布、他の自然布も復興、継承されてほしいと思います。


こちらは曇天の中でしたが、夏紬帯「蝉時雨」を合わせてみました。小川郁子さんの帯留めで爽やかさを取り入れました。帯揚げは白に近いピンク。
この帯は洗い張りもして愛用のものです。

ピンク系の夏紬着尺は在庫が1点あります。HPからお問い合わせください。
HPの着姿に詳しくご紹介しています。こちらからご覧ください。




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紬の着物の後継ぎ

2019年03月19日 | 着姿・作品


先日の「紬+帯揚げ百彩」の際に、私が以前着ていた紬を引き継いでくださっている方がお越しくださいました。
久しぶりに我が子との再会になりました。
帯はお手持ちのいろいろなものと合うということで「活躍してます!」とおっしられていました。
一回り半ぐらい?若い世代の方です。


この日は落ち着いたモスグリーンのザックリした浮織の八寸の帯を合わせておられました。カジュアルな着こなしです。
この着物は「華かさね」と銘を付けていますが、私の中では少し華やかな場面での装いを想定していましたが、こんなふうに普段にもどんどん着ていただけるのも良いことだと再認識しました。コデマリやリンゴの枝葉で染め、袖口の赤系は茜染めです。

いつも紬塾の初回に黄色系の着物、ピンク系の着物を羽織ってもらうのですが、その際にも使っていた着物です。
身近な植物からは黄色系と赤系(淡い)が染まりますので、ごく自然な無理のない色です。肌映りがよく、どなたにも年齢を超えて似合う色でもあります。


上の画像が紬塾の時のまとってもらっている風景写真です。
この梅染めのピンク系の格子も後継者を探しておりますので、HPからお問い合わせいただければと思います。
ピンクはちょっと、、と敬遠する方も、当ててみるると思わずニッコリ!、「いいかも‥」とおっしゃる方が多いです。
洗い張り、仕立替えまで承ります。

すべて人の手でつむがれた糸を使っています。また長く着て頂けるよう堅牢に染め、織っています。
その仕事を次の世代の方に引き継いでもらえることは大事なことだとです。
繭から命あるものを頂くのですから、そういうものを大切に身に付けたいですし、作り、伝えたいです。


さて、この日私が着ていた紬は、梅染めの絣り刺し子織り(単衣)です。画像は少し青味がかっていますが、こちらもよく着ております。
とても生地感は良く、シワにもならず、重宝なのですが、元々サイズがやや大きめで、またこの一年でかなりスリムになりまして、、洗い張りするほど着てはいないのですが、やはり仕立て替えようかと今年は思いました。また、歳を取ると、身長も縮みます。身丈も今後を見越して少し詰めようと思います。
紬着物はやや小さめが着やすいですね。余った布をあちこち押し込んだり、引っ張ったりの処理をしないで済みます。

この日の取合せは拙作の帯、グリーンがかったグレーの「緑蔭」です。帯揚げは梅染めのオレンジ味のある薄茶、帯締めはグリーンがかったベージュです。
濃厚な凝った紬を、帯や小物たちが静かに見守っているという取合せにしてみました。

この紬もいずれどなたかに引き継いでもらえたらと思います。
この着物の取合せはこちらの着姿ページでご紹介しています。



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中野みどり展-ギャルリーワッツにて開催中!

2018年11月20日 | 着姿・作品










中野みどり展-ギャルリーワッツ(南青山)にて11月24日まで開催しております。

ワッツのアーティスティックな空間に展示させていただきました。
北窓から仄暗い光も落ち着きます。

本日のお客さまの着姿も素敵でした!


濃厚な「暁闇」と題した紬に、落ち着いたボルドーの帯揚げ(着物、帯揚げ/中野作)で大人の貫禄でお越しいただきました。帯は自分には可愛すぎるかしら、、とおっしゃられていましたがよくお似合いでした。(染帯/仁平幸春作)


「里山」と題した帯を締めてきてくださいました!軽くて締めやすいですとおっしゃっていただきました。赤城の節糸の細いものを地糸にしていますので軽いと思います。コブナグサで染めた絣の黄色も一捻りある色で効いています。


こちらはお疲れ気味の、、60代着姿。^^; 
久米島紬に、帯、帯揚げ、帯締めも中野作。(^^ゞ

ぜひご来場ください。ギャラリートークは定員に達しております。
展示のみご覧頂く場合は、2時半から1時間ほどですのでこの時間帯をできましたら避けてお越しいただくほうがゆっくりご覧いただけます。
よろしくお願いいたします。(^^)

場所など詳細はHPをご覧ください。





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小さきものたち

2018年06月14日 | 着姿・作品


今日は一日どんよりとした空、梅雨寒でした。

少し体調を崩してブログ更新も出来ませんでしたが、仕事に復帰して秋の展覧会向け着尺、帯の制作に励んでいます。


今朝、庭のねじばな(もじずり)を摘んで工房玄関入ってすぐの小さなニッチに飾ってみた。



小さな床の間スペースです。

ねじばなは毎年芝生の中からスック、スックと伸びてきて濃いピンクの花をつける。
梅雨の曇天の中でも小さいながら存在感をアピールしている。

モンシロチョウも蜜を吸いに来る。
ねじられた一つ一つの花を自分も螺旋に回りながら秩序正しく吸っていくのを昨日見て思わず笑った。(^^♪



額装は25年ほど前に伝統工芸展に出品した着物の織り付け部分で作ったものを合わせてみた。
こちらも絣の動きが花と少し似ている。

「セイロンの香り」と題した紅茶染めの地色。桜の黄茶、一位の紫、藍の縞を配して。



手のひらに収まるほどの小さな花器にもなるオブジェ(伊藤みちよ作)に活けてみた。
敷布は桜、シラカシなどで染めた帯の端布です。

小さきものたちになぐさめられる日々。



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3月の装い――此の手縞の紬

2018年04月13日 | 着姿・作品


先月初旬の工房展へご自身で車を運転されお越しくださいましたお客様の着姿をご紹介いたします。

お母様の介護やお孫さん達の世話などここ数年の忙しさも重なり体調がお悪かったようですが、この日は久しぶりにわざわざ着物でお出かけくださいました。

春らしい色の此の手縞紬に現在90代のお母様が使われていた帯を合わせて来てくださいました。
落ち着いた赤茶の縮緬地の染帯です。辻が花風の絞りがほどこされています。
紫の指輪はアメジストでしょうか、、?暖色系でまとめた取合せに紫が効いていて素敵です。
お母様との思い出や想いも一緒にまとっている安らぎの取合せでした。


以前のブログでもご紹介しました森田空美さんの『灰色光』をご覧になられたいということでしたが、その後姿を撮らせていただきました。

この着物は色出しが難しいのですが、桜や杏で染めた落ち着いた柔らかなピンク系です。
「娘に合いそうだから・・」とおっしゃられてお求め頂いた着物ですが、まだ娘さんは袖を通されていないようです。。。(^_-)

此の手縞というのは濃淡のある色糸だけで経、緯の筋を織りだします。
緯糸も濃淡のある糸を一越おきに織ります。
此の手縞は色を替え何反か織ってきました。
濃淡の対比を大きくすると力強さや素朴さが増し、少なくすると無地感覚になり品良くなります。私も単衣でよく着ています。
紬糸の味わいを愉しむ事ができ、帯合わせもいろいろ出来る織りです。次の個展にはまた織りたいと思っています。



こちらは数年前の写真ですが、この取合せは帯も私の藍の縞帯を合わせてくださいました。
染め帯と織り帯、暖色と寒色の帯合わせでかなり違う雰囲気になっています。

山あり谷ありの人生ですが、折りに触れ安らぎの紬に袖を通して頂けたなら創り手冥利に尽きますし、今は子育てで忙しい娘さんもいずれバトンタッチされていくことになると思いますが、次の代へ手渡していくことも大事なことですね。

この日は今頃の季節にも合いそうな藤色の帯締めを一本お求めいただきましたが、どちらの帯にも合いそうでしたので、帯締めを替えてまた愉しんでいただけると思います。

昨年5月に単衣紬で工房へお越し頂いたときのこちらのブログもご覧ください。





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紬の花織帯

2018年03月30日 | 着姿・作品



今年は例年にない早さで桜が開花しましたが、機の上ではもう一つの花が咲き始めました。

太鼓裏の返しを無地で進み、花織の部分にきました。
2種類の太さや色の違う糸を一越おきに使い、浮織になった花の部分の立体感を出しています。

17年振りぐらいで花織を掛けました。
40代には花織の振り袖や着尺、帯をたくさん織ってきましたが、腰を傷めてから身体に負担のかかる花織は掛けることができなくなりました。若手の力も借りてもう一度花を咲かせたいと思います。

花織の作品にはたくさんの思い出が詰まっています。。。
着て下さる方々にも熱い想いがあったように思います。
作品集『樹の滴』の中にも一点掲載しています。(38頁)



工房の桜は今日が満開。ほとんど蕾のない状態です。

今宵は桜と、十四日月の明かりで、ささやかに花見酒も楽しみます。
  (^o^)


7時半頃の月明かりと花明り。
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