中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第3回紬きもの塾 とことん着尽くす・麻の伊達じめを縫う

2015年06月30日 | 紬塾 '13~'16
紬塾第3回目はいつものように着物の更生についてと麻の伊達じめ(長襦袢用)を縫いました。
6尺の運針ですが‐‐‐‐‐・やはり時間がかかりますた。毎回難所ですね。


この方は和裁の経験が有り、くけ台持参で印付けからサッサっと進めていました。
しかし、、、まっすぐ縫えないという事で、なるほど多少蛇行していました。^^;
布を引いている左手が安定してないのかもしれません。


この方は運針は全くできないということでしたので指導をさせてもらいましたが、ゆっくりながら確実に針を進めていました。私のやり方をよく見て型を真似ていました。
少し練習をすれば上手になると思います。


こちらの方は運針は自己流でしたが、直してもらいました。
まだ針に糸を通さずゆっくり練習しているところです。
伊達じめは針目は大きめでもかまいません。ただ、揃えることが大切と思います。


この方も全く初めてで指ぬきと針の頭を当てることができませんでした。少しずつ縫い進めているのですが、右の人差し指と親指がうまく進まず、布が指先に溜まってしまいます。
これでは運針とは言えませんのでもう少しコツをつかむまで家で練習をしてほしいと思います。指ぬきで針を押し進めていかないといけないのですが、針先と右手の親指、人差し指で布をかき集めるような感じで、縫い込んだ布が針先近くに溜まってしまいます。


運針の形はなんとか出来てきたのですが、針を抜かずに縫い溜まった布を後ろへ送ってやるのに針先を左手で抑えないで右手だけでやるのですが、せっかく縫ったのに針も一緒に抜けてしまいます。でも繰り返すうちに少しずつコツをつかんできたようです。

並み縫いができれば何でも身近なものは縫えます。
古布や着なくなったシャツなどを剥いで衣服を包む風呂敷を作るのも楽しいです。
とことん布を使い切ることは安らぎを覚えます。
プロの和裁士にならないまでも誰でも並み縫いぐらいはできるといいと思います。

日本の義務教育は何を教えているのでしょう?
運針は過去のものではなく大事な人の仕事に思えてなりません。

針という道具と糸の関係、生地の性質を見ることもたくさんの学びがあります。
長襦袢用の麻100%のの生地は案外手強く、針も木綿針では通りが悪く、絹針では無駄な力が入ったりすると折ることになります。今回はやや短めの絹針四ノ二を使いました。

終わってから「運針を毎日の日課にします!」というメールをもらいました。
素晴らしい

近くヘンプ100%の生地を使ってシーツを縫う会を有志数名で行います。
生地が厚いので運針がきちっとできてないと手こずるかもしれません。
またご報告します。

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ミニ紬塾@工房版

2015年06月26日 | お知らせ


昨年紬きもの塾を修了されたMさんが、手持ちの着物に櫻工房制作の帯を合わせた画像を送ってくださいました。スマホで撮ったもので色もピントもイマイチ・・^^;なのですがご紹介します。

ビワの葉で染めた淡いピンク地に紫の縞と七子織りと平織りを混ぜながら織り、立体感を出した段になっています。
紬といっても着物は平たいタイプのものですので質の違いがあるものと合わせるのは引き立て合ってよいのではないでしょうか?
画像ではわかりにくいのですが淡い色ながら軽くはなく、赤城の節糸の力強い存在感があります。

塾の時に着物の更生や取合せの話もするのですが、リサイクルで買った2枚の着物についてその後Mさんから相談を受けました。
まだ若い方ですが、どちらも年齢に関係なく着ることのできる着物で、白地に鱗紋の塩沢紬、黒地に黄茶の縞の紬です。共に、やはりリサイクルの帯を合わせていました。
この2枚の着物に合わせられるシンプルな帯ということで無地感覚のものを工房作品として制作しました。


昨年秋の紬の会で出品していただいた小川郁子さんの帯留めもこの帯に使えそうということで仲間入りしてワンポイントになっていますね。


三分紐も朱赤を1本増やしましたっ!季節や着ていく場などで使い分けるといいですね。


もう一枚の黒の縞との取合せ。こちらは秋冬用の装いに。


八掛は真っ黒だったのですが、明るいMさんの雰囲気にはなんとも重々しく焦げ茶色の八掛けに交換し少し軽さを出しました。
黒地の粋な縞の着物に柔らかな色目の帯。でも存在感のある現代感覚の帯は新しい風を吹き込ませたように思います。

今までも紬塾修了の方には個別に相談に乗っていましたが、一般の方にも「ミニ紬塾@工房版」として私で対応できることでしたらご相談ごとをお受けいたしておりますのでご利用下さい。
袷向きの紬か単衣に向くのかなども糸質、地風など見ながら相談に応じております。
相談は有料ですが、相談のみで大丈夫ですので気軽にご利用下さい。

詳細はこちらをご覧下さい。

ご本人からもコメントが届いていますので以下にご紹介します。

「この縞の着物も、塩沢紬も、着物を着始めた頃に求めたものです。
当時は取り合わせなど考えずに、洋服を買うようにリサイクルの着物や帯を買っていました。

紬塾で糸や布の事、取り合わせ、更正について教わるうち、自分の箪笥の中身が色褪せて見えるような思いと、一方で、愛着ある着物達をきちんと生かしたいという思いに至りました。

そこで、自分が持っている着物に取り合わせる帯を新調することにしました。
縞の着物は特に、私には粋すぎて難しかったのですが、八掛を柔らかい色に変えたことで、枇杷染めの帯の深いピンク色とも調和して、着物そのものも生まれ変わりました。

リサイクル着物はお財布に優しく着物の敷居を下げてくれますが、全身リサイクルでまとめると、周りの洋服の人達と馴染みにくいなと感じていました。
かといって、上から下まで新しいものを仕立てることも経済的に難しい。
今回のように、自分の経済の許す範囲で古いものと現代のものを取り合わせて楽しみたいと思います。」




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第2回紬きもの塾 糸の力、色の神秘

2015年06月13日 | 紬塾 '13~'16





ご報告が遅れましたが、個展の準備のあわただしい最中、第2回の紬塾が先月行われました。

いつものように私の紬に使う糸や真綿をじっくり見てもらい、感触や、臭いをかいだり糸の観察から始めてもらいました。
繭一つから糸を繰り出すことと、真綿から糸を引き出すことも体験してもらいました。
蚕が吐き出した一本の糸の形も見てもらいました。

紬糸といっても一般で使われている糸は様々です。
着心地にも大きく違いが出ますが、そんなことについても話しました。
特に経糸を見て欲しいと思います。

糸の種類や名前を覚えるということよりも、糸の形を見ることや感触の違いがわかるということは着物を選ぶときの参考になります。
紬塾を修了した方で「着物を見るときの見え方が以前と変わった」と話してくれる方がありました。今までは色や柄の美しさに目を奪われていたけれど最近は布自体を見るようになったという趣旨のことをお会いした時に伺ったことがあります。
更に着てみればその風合いの違いなどもわかってくると思います。

そして草木の生木で染めた糸も見てもらいました。
やはり色の状態をよく観察することが大切です。
染材を煮出す時、糸を染める時にも熱エネルギーを無駄には使わず、でもしっかり効率よく染めていくことも解説しました。
9月の実習ではそのことを体験してもらいます。

「手織り、紬、草木染め」などの世間一般に流布している言葉の本当のところを先入観を持たずに素直に実感として学んでもらえると良いと思います。

観る力は創る力、使う力になるからです。
この回以降の基礎となる重要な話をさせてもらいました。


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単衣の紬を長く愉しむ

2015年06月05日 | 着姿・作品


個展の会期中は単衣の自作の紬三枚に帯を毎日替えて過ごしました。

立体感のある中肉厚のしっかりした紬は真冬と盛夏を除いて長く着ることができます。
一枚の単衣紬を襦袢と羽織るものを替えて合理的に愉しみたいです。

5月とはいえ気温の高い日が続いたのですが、盛夏とは違う蒸し暑さを少しでもどう解消するかを私なりに工夫してみましたので一部ご報告します。よろしければ参考にしてください。

この日は初めて使う糸の試し織り用として制作した桜染めの紬にポピー柄の型染めの帯を締めました。
道端でよく見かけるナガミヒナゲシの花はほぼ終わりましたが。。。
暖色系の着物に寒色系の帯、小物で爽やかな印象にしてみました。


この日はいつも当ブログでもお馴染みの藍の小格子の自作の着物と帯の取合せです。

帯はややセリシンを残したシャリ感のある糸で織られていて、透け感もあります。盛夏にも締められます。寒色系の着物に茶の暖色系を合わせることでそれぞれを引き立てあえるようにしました。
前にはガラスの帯留めを使っています。こちらのリンク先に前はアップしました。


上と同じ着物ですが、シナ布の平織りの八寸名古屋帯です。帯芯が入らないので通気がよくお腹周りはかなり楽です。
大塚文庫の庭のコケのような色の帯締めを合わせました。
シナ布は通年使えるということですが、やはり透け感のあるもじり織りなどは5月下旬から9月一杯ぐらいかと思います。
麻にしても絹にしても繊維の違いではなく糸の太細や透け感などで判断するとよいのではないでしょうか?


最終日には初日にも着ましたこちらも試し織り用の玉糸紬の着物に、やはり自作の名古屋帯で透け感のあるものを締めました。
この日は真夏日だったかと思いますが、傍で見ている方にも少しでも涼やかな印象にと思い、帯揚げもごく淡いヒメサユリの花のようなピンクを使いました。
帯枕もヘチマで作った薄めのものにしました。

あとは半幅帯も2日間活用しました。帯揚げがない分お太鼓結びよりずっと涼しかったです。
上質の半幅もこの時期に活用したいです。
また半幅着姿もアップします。

気温というよりも湿度が高いのは身体に応えます。
帯板も可能な限り使わないでいます。
使う場合はボール紙の手製のものを使います。
帯締めもできれば細めのタイプを使うと涼しげです。

それから帯芯も可能な範囲でなるべく絽目のものを使って仕立ててもらっています。
ただ絽目の芯は種類が少ないので表地との釣り合いが優先されるとは思います。

そして帯の締め加減も下側はある程度締めますが、上はゆったりさせて汗が発散しやすいようにしておきます。

下着は汗取りのついてない麻の肌襦袢と麻のステテコ(試作品)を着用しています。
汗取りに工夫物をつけていますがこれについてはまたお知らせします。
長襦袢も色物の平織りの麻を着ていました。
半衿は楊柳です。

日本の四季はそのあわいも大事にしたいので、ただ気温が高いから一気に夏物ではなく、段階を踏んで移ろっていくところも魅力です。
5月に透ける着物や麻着物になるのはちょっと早いと思いますが、帯から少しずつ涼しげにしていくことは良いかと思います。
5月らしい見た目の清涼感も大切に取合せます。

染のものでも柄に季節感があったり、抽象的な染や織りでも色や素材感に季節を感じたり、何を纏うかのこだわりを持つことは楽しく、大切にしたいことです。

さて6月に入りましたので半衿や帯揚げも絽目のものにして麻の帯などでも透けすぎないものでしたら使い始めて良いと思います。

単純に紬の単衣は6月と9月とか麻は7、8月のみとかではなく、紬といっても糸質、生地の厚さや撚糸、透け感など様々あるわけですから気候変動も考慮に入れ、愉しく、美しく、賢く、楽に!これからの季節を過ごしたいと思います。

今から仕立てておけば秋口から11月いっぱいは着ることのできる本当に着易い単衣紬をぜひご覧いただきたいと思います。

質の良いものは飽きもきませんし、自慢げに着るというようなことではない満足感がえられます。洗い張りする事に風合いを増し、次世代へも繋いでいけます。

工房でも引き続き「特別キャンペーン」をしておりますので、この機会に気軽にご覧ください。

ご予約などはこちらから。→ 






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