中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第6回 紬塾「自分でつむいだ糸で織る」

2010年10月23日 | 紬塾 '9~'12
        
          6人が順番に3寸ずつ織った布 


染織実習コースの最終回(第4回)は、自分でつむいだ糸を色糸として、
ショールやマフラーに使う太い糸(着尺の3~4倍)を地糸として、
自分のデザインで織ってもらいました。
一人1時間15分の持ち時間の中で3寸を目指します。

みなさん緊張した表情で始まりましたが、全員が見事に織り上げました。
終わったときの表情はみなさんとてもよかったです。
達成感、そして布の美しさにうっとり、立ち去りがたい様子でした。

私が使う同じ糸で、たて糸をいためない踏み木の踏み方や、
よこ糸を耳でからめながらキッチリ織るやり方など、
とてもレベルの高いことを要求したのですが、
そのことに真摯に向き合う姿は立派でした。
蚕が吐き出した糸のウェーブが生き生きと感じられる、美しい布でした。

布を見るときの役に立つ大事なことをつかんでもらえたと思います。
以下に、みなさんに書いていただいた感想をご紹介します。
感動物です!是非読んでください



K.M.さん



織りあがった私の縞模様、とてもステキです。
紙の上でのデッサン、頭の中のイメージとは違う面白さを感じました。
手と足と目をフル回転させ、気持ちを集中させて織るという作業の時間は、
今まで想像していたトントンという織りのイメージとは違っていました。
手とり足とりのご指導をいただきました。
私の場合はデッサン、計算のときからつまづいてしまって、
最初に織る「1番」というプレッシャーが気分をかなり落ち込ませてしまいました。
自分の糸1本を織り込むという意味もわかりました。
ありがとうございました。



N.K.さん



やわらかな秋の日差しを受けながら、生まれて初めての機織りとは、
なんと贅沢な時間だったのでしょう。
機織りの実習は、一番楽しみにしていた時間でもあり、一番緊張する時間でもありました。
真綿を紡ぎ、草木で染め、デザインを考え、機を織る。
美しい布が生まれる工程を、丁寧にひとつひとつ本物の体験させて頂くことが
できたことは、何物にも代えがたい貴重な経験でした。
一越一越織りあがっていく布は、頭の中で思い描いていたものよりも
(当たり前ですが・・・)ずっとずっとずっと美しかったです。
「トントン トントン」という機の音は、緊張感の中にも心地よかったです。
ようやく手と足のリズムをつかみかけてきたころには、
終わりの時間となってしまいましたが、三寸の布が織りあがった時の嬉しさは格別でした。
手取り足取りの丁寧なご指導、本当にありがとうございました。



I.K.さん



9月のデザインの時は自分の糸の長さや、段数にこだわり過ぎて、
デザインになりませんでした。10月に入ってからの先生のメールを読んで、
イメージをかいてみようと思い、色鉛筆で、1本ずつ、
線をかいてみました。少し、ちがうんだな~。
仕方がないので、そのまま実習の日をむかえました。

初めて座る本物の織り機、体験織りはやったことがありましたが、
あんなに細い経糸がかかったものは初めて。手と足と頭がバラバラ。
私の糸は結構、沢山あって、私の糸が地糸になるようだ。そうなんだ。
デザインの紙にそって、織りはじめると、はじめは何とかなっていたのですが、
デザインとは異なった感じになって来てしまいました。混乱していると、先生が
大丈夫よ!と、次はこれ、その次はこっちかな?とアドバイスしてくださいました。
それは、私のデザインとかけ離れているわけではないのです。
糸の段数、太さを変えるだけで、何だか、何だか、すごく素敵になっていくではありませんか。
あれよ、あれよと思う間に出来上がってしまいました。
もう、うれしくて、マジックのようでした。
濃色の地糸の中に、自分の糸が浮かび上がって、糸の形がわかると思い、
反対の私は心配でしたが、地糸の私の糸も、ちゃんと主張していました。

糊付けをした後、糸を空中に飛ばし、下に落とすと、糸の波状形が戻りました。
生き物のようでした。織った布にも、それがあると思いました。
掃除機をかけながら、ちらっと見ると、また、うれしくなってしまいました。

絹糸は蛾のカイコが出した糸から出来ていることをあらためて感じました。
脈々と生命の循環が続き、同じ糸を使っても、先生が作ると、アートになる。
工房の中にあるきれいな糸が、これから、どんな布になっていくのでしょうか。



U.S.さん



今日は織りのご指導ありがとうございました。
もっとスムーズにできるかと思っていましたが、甘かったですね。
横糸の引き具合、足の踏み替えなどコツを少しつかむだけにも
苦労しました。そもそもあんな立派な織機を使わせていただけるとは
思ってもいませんでしたので、緊張したのも事実なのですが。
でも先生の経糸の御蔭でこの全くの初心者が織りの美しさを堪能
することができました。また出来上がった布を見ていただけでは分からない
一本一本の糸の存在感を味わうことができたように思います。
あの細い糸からあのように美しい力強い布が生まれるのは現場を
体験させていただいた後でも不思議なような気がしています。
きょうは貴重な体験をありがとうございました。



S.K.さん

  姿勢がグー

まっさらなきもちで機に向かうつもりだったのですが、
手足の動きとメジャーが気になって体がかたくなり、
頭の中だけがめまぐるしく働いていた感じです。
自分の糸と相談しながら、という余裕はなかったですし、
時おり経糸が悲鳴をあげているように見えたり。
ちまちまとしたデザインは、ケチな性分の表れのようで恥ずかしいです。
経糸の線と、緯糸の線が、絡み合って面になると
これまで単純におもっていたのですが、ちがいました。
現れたのはまるみのある微妙な立体でした。
緯糸を入れて打ちこむと、緯糸は“並んでゆく”のではなく
“積み重なって”、立ち上がってくる。そんな印象でした。
杼を投げて「カラ」、緯糸を打ちこんで「トントン」。
リズムはひどく悪かったですが、ここちよい音でした。
終えて、なぜだかとてもすっきりしています。
お蚕さまと、草木と、機の神さまと、中野先生に、深謝です。
有難うございました。



T.M.さん

  
                                 織る前にもう一度デザインを入念にチェック


織りのご指導いただきましてありがとうございました。
楽しく、また四苦八苦のひとときでした。
おかげ様で三寸織ることができましたが、先生の熱心なご指導にもかかわらず、
最後まで手と足、頭がバラバラだったのは残念でした。
そんな中でも、同じ何色かを使うにしても、
それぞれの色を生かす順番が大事だということが勉強になりました。
二色の糸だけでも入れ方次第でその表情がまったく違ってくることがよくわかりました。
いろんな意味でゆとりがあれば、時間内にそんなことも確認しながら
織ることもできたのでしょうが、精神的にも肉体的にもいっぱいいっぱいでした。
一番難しかったことは、端(耳)の糸の張り具合でした。
技量をよく考えて、もっとおおらかなデザインの方が、
織ることにもっと集中できたのにと反省しきりです。
先生がおっしゃられたとおり、耳まできちんと織られた布は、
色でごまかさずとも、そのもの自体が美しいと思います。
色やデザインをより生かすためにも、糸を大事にする上でも(使えない無駄な面積を増やさないためにも)、
耳はとても大事だということが身に沁みてわかりました。
反省すること多々ありますが、次回への糧としたいと思います。
いろいろな意味で糸を大事にすることが織りものなのですね。
これまで以上に布に対する姿勢について考えさせられた一日でした。



次回の更新は12月上旬の予定です。


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第5回 紬塾「織る準備――糸量の計算、デザイン」

2010年10月05日 | 紬塾 '9~'12
自分で紡いだ糸を織るための準備と糸量の計算、それからデザインを考えました。
実習の内容は昨年のブログ記事を参考にしてください。


デザインというと、気持ちが改まって肩に力が入りがちですが、
真綿紬の糸はそれ自体が趣きのあるもので、
濃い色の地糸と薄い色の手紡ぎの糸2色を織りまぜるだけでも
充分に豊かな表情が生まれてくると思うのです。デザインすることが目的ではなく、
織りながら生まれてくる模様をしっかりと捉えることが大切です。


私自身は図案を描くことはほとんどしません。
糸量を計算する必要があるとき(絣を織るときとか)のみ多少は描きますが、
その場合にも、アバウトにやる程度です。
それよりも大切なことは、素材が持つ美しさに目を向けていくことです。


自分の思いどおりのデザインとか、絵画的(?)とか、
現代アート風(?)とか、私は好みません。
絵も現代アートも好きですが、紬の着物の中にわざわざ織り込まなくても、
糸や色から自然に放たれてくる宇宙感が大切ですし、自由なものづくりだと思っています。


今回、織りの実習をする人たちには、糸の計算のために
大まかな図案を描いてもらいましたが、そのことにあまりとらわれず、
大切なのは実際に織り出しながら、自由な気持ちで臨んでもらうことです。



次回の更新予定は10月下旬です。



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