中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

アート鑑賞いろは塾

2013年07月24日 | かたち塾、アート鑑賞いろは塾
7月27日(土)2時半から町田市鶴川の可喜庵でアート鑑賞いろは塾(入門編)が行われます。
ご興味のある方はご参加ください。
講師の笹山央さんの話はとても好評をいただいております。
「美術鑑賞がより楽しく深くなった」「話の中に発見や気付きがある」など…
アートは私たちの暮らしや人生になくてはならないものだと思います。

今回はテーマは「現代美術の考え方」。
現代美術は敷居が高くて…とお思いの方も是非話をきいていただきたいです。
そういう方にこそ笹山さんの話は“目からウロコ”です。

とても興味ある内容です。私も楽しみに参加します。

前回は布の美展の会期中に会場の一角で行われました。
テーマは「複製メディア社会の美術・工芸」。
めずらしく、この会の参加者は女性ばかりでしたが、「『第二の自然』というキーワードがいつまでも頭をはなれず…」ヒントを得られた。また「アートは複製物を模倣する」が面白かった、などとコメントを寄せてくださる方もおられました。

私はほとんど話を聴くことができずとても残念でした。
総集編もやってもらいたいです~!



飲み物、お菓子、おつまみを用意しております。(要予約)
講義が終わってから軽くやりましょう! ←これも楽しみ!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
マイカップご持参ください。

お申し込みは笹山さんのモノ・語りからどうぞ。
携帯は080-6775-4892まで。

推奨展覧会 は「<遊ぶ>シュルレアリスム―不思議な出会いが人生を変える― 」
(損保ジャパン東郷青児美術館)
時間の取れる方はご覧ください。
私はまだ行ってないのですが、なんとか時間を作りたいと思っています。








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第4回紬きもの塾 糸をつむぐ

2013年07月19日 | 紬塾 '13~'16


真綿から久米島式のやり方で糸をつむぎました。
結城の「つくし」という道具でもつむぐこともできるのですが、着尺よりも少し太め(1.5~2倍)の糸をつむぐには真綿を開いてかけるこのやり方がひきやすいのです。

少し太めの糸は均一につむぐのは細い糸をつむぐより難しいのですが、みなさん途中で糸を切ることもなく(切れた場合のつなぎ方を見せるチャンスはありませんでした)淡々と1時間20分の制限時間を一生懸命真綿と向き合っくれました。



唾をつけてつむぐのが一般的ですが、水でも大丈夫です。

真綿は木綿やウールよりも糸にするのはたやすいです。
手のひらの湿り気だけでも糸がまとまります。

撚りをかけなくても織り糸として使うことができるのです(のり付けは必要)。
しかし着尺のための糸を一反つむぐには大変な時間を要します。
一日中糸をつむぐことは無理で、指先が絹の強い糸では割れてきます。
結城の糸つむぎの工芸士さんもよく指先に絆創膏を巻いています。
大変な仕事なのです。


しかし、もう私が使っている糸は紡ぐ人がいなくなり在庫の糸を大切に使っていくしかありません。
私自身も糸をつむぐことは好きですので歳をとって機織りができなくなったらどなたかのために糸作りをしたいと思います。

みなさんも難しかったけれどもっとやりたい!という声も聞かれました。
真綿から糸を引き出す時の音に感動した人もいました。

人は糸をつむいだり、織りをしたり、縫い物をしたりすることは人間として生きてゆく“野性”としてそなわっているものなのでしょう。
地味だけれど豊かな時間を過ごすことができます。
こういう仕事を捨て去ってはいけないと心から思っています。
こういう仕事でもなんとか食べていける社会だといいのですが。。。

とにかくその一端を体験してもらうためにこの講座を設けています。




前半と後半の2グループに分かれて行いましたが、3時過ぎに2グループが合流できるようにしていまして、アイス抹茶と麩まんじゅうを食べてもらいながら歓談を少々いたしました。
みんな楽しそうでした。
マイカップも持参してもらってます。
私はお茶とお菓子だけは用意しますが、接待することよりも、講義やみなさんとの会話に集中したいからです。
各自でお茶も注いでもらったり、セルフです。

アイス抹茶は濃いめにお抹茶を点て、氷を入れた煎茶器に注ぎます。お砂糖が少し入ってますのでお菓子がなくても美味しいですよ~。お試し下さい!

さて次回は染色ですが、クーラーなしで暑いので、風通しの良い涼しい格好で来てください。












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勾玉の帯

2013年07月13日 | 工芸・アート




先日の布の美展で帯をお求めくださった方々のものが次々と仕立て上がってきました。
その中から1点だけご紹介いたします。

仁平幸春作「勾玉」帯です。
私の紬を初期の頃からを含め3点所有してくださっている方が見え「どの紬とも合いそう」ということでお気に召されお買い上げいただいたものです。

3点とは阿仙薬染の赤茶系の絣飛び柄、五倍子薄グレー地たて縞、藍地崩し縞です。
全く雰囲気の違う紬なのですが、私も合わせなくても合うことがわかります。






拡大してみると深みがよくわかります。
それにしてもいつもピンボケで


勾玉はブルーがかった白です。
半透明の石(貴石)を思わせるようになっています。
少し染料を通すロウを使っているのでしょうか、形はシンプルだけれどこれが奥行感を出しています。
添えられた花や葉やハートがなんとも可愛らしく、幸せな世界と清明な空気をもたらしてくれています。

この帯は梨地でお願いしたのですが、私の紬はもちろん紬地の帯も合いますが、
この梨地のような半つや消しのものであれば絹ものも合います。

地の墨色は円熟した大人の雰囲気を醸しています。
70代のその方にぴったりでした。

奥行きのある作品は許容量が大きくてどんなものとも合わせられます。
でも許容量のあるものどうしであれば、、、という条件付きですが。。。


古来日本の取合せ文化は力のあるものでありながらも他を脅かすような強いものではなく、確固たる強さは持ちながらも包容力の備わったもの同士を取合せてきたのだと思います。
日本の建築もそうですね。庭という自然をも取り込んで。

日本の和の取合せの中でも着物は“着る人”も取合せの一つになります。
難しいけれどこの着物の取合せ文化を極めていくことこそが、今の私たちに大切なことではないでしょうか?
ただ色や柄を言うだけのものではないはずです。
その方の生き様や考え方までも含めて考えるものでしょう。
自分はどう生きるのか…奥が深いです!

紬と帯の取合せをする会を11月に予定しています。














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糸一本一本と向き合う

2013年07月01日 | 制作工程


次に織るものを機にかける準備をしています。

作品集『樹の滴』の中に紬の制作工程のポイントを項目ごとに書いているところがあるのですが、ページが限られていて詳しくは書けなかった「経巻き」「経継ぎ」を補足しておきます。

上の画像は機にかける前の経糸を千切りに巻き込む「経て巻き」の作業をしているところです。
ただ巻くのは簡単ですがこの時に整経のムラがあればきっちり直します。
ここはほぼ完璧を目指します。

また経糸に紬糸や節糸を多用していますので、糸1本1本を一度さばいて(糸と糸がくっつき易いので)巻き込みます。2尺指しを使います。
無駄に糸に触らないよう(経糸のノリが取れてしまいますので)要領よくさばきます。
ちょっとコツがいります。




藍と苅安グレーの細かい縞の経です。グレーの節糸のウェーブがおわかりいただけるでしょうか?
このウェーブが風合いをよくします。
でも座繰りの節糸は毛糸で言えばモヘアの糸を扱うようなもので、隣り合う糸と絡みつきやすく、扱うのも織るのも紬糸同様に手間がかかります。




千切りに巻き込んだ後は機にセットし、前に織っていた糸とこれから織る糸を一本一本繋いでいきます。一束結びにします。
「経継ぎ」といいます。

初めての人は2日がかりになりますが、いかに最短距離で無駄な動きをせずに結んでいくか、しかも一本一本のテンションを揃え綺麗に結びます。

生糸(絹糸)なら滑りがいいので早いのですが、紬糸や節糸は滑らず結びにくいです。
ひっかかって緩んでしまうこともあります。そんなときはやり直します。

約36年前の私が修業に入った初日がいきなりこの仕事でした。
テンションを揃えなければと指先に力が入り人差し指の腹が痛くなったことを忘れられません(そんなに力は入れなくていいのですが…)。
その日は1日では終わりませんでしたが、翌朝、急にコツをつかみ残りは時間をかけずに終えることができました。

宗廣力三先生が「一挙動でしなさい」とアドバイスしてくださいましたが、これができるようになると3時間ほどで一反を結び終えることができます。若い頃は3時間を切ることもありました。

今は腰も背中も痛んできますのでそうはいきませんが、いつも「最短距離を一挙動で」と思いながら今の自己ベストを尽くしています。

機の下拵えがよければよいほど後の織りは楽になります、というか布の仕上がりが違います。
整経と経巻きで織物の良さはほぼ決まります。

それから経糸を巻くのも良し悪しがあります。糸を伸ばしてしまうと糸が切れたり風合いもペラっとしてしまうのです。着心地に影響します。
私はモーターは使わず、手でゆっくりと糸を巻きます。
糸に触れている指の腹で糸のネップや糸屋さんが作ってくる結び目(一束結び)を感じなければならないからです。
余分なネップは取り除き、結び目は最小の結び目の機結びに直していきます。

指の腹に当たるネップや結び目、節糸のイレギュラーな膨らみの感触を糸巻きでも、経継ぎでもそれに応じて微細な扱いをしていきます。

糸と向き合いながらの作業は時間がかかりますが、飽きることを知りません。

今、私の元で若い人に本当の紬の風合いや堅牢さを伝えるべく指導していますが、
淡々と続く作業に向き合い、単純作業と思われがちな「糸巻き」や「経継ぎ」をどこまで深く掴めるかが一反の紬を美しいものにしていくかにかかってくるのです。


「正された仕事を美が追いかけてくる」――宗廣力三・織五省より―――











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