中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第3回紬塾「とことん着尽くす」  ― 着物の更生・運針

2021年07月30日 | 紬塾’21~’24
いつものようにとことん着尽くすための話をしました。
前回、衣食住に関してとことん使っているものを5つ上げてくださいという宿題を出しておきましたが、それが結構難しかったようです。。(*^-^*)
そうなんです、毎回皆さん少し戸惑っている感じです。。

しかし、それぞれに工夫していることなど発表してもらいました。
5人集まればいろいろ出てきますね。。
実作をお持ちくださった方もあります。

継ぎ当ては最近のダーニングブーム?でされている方がありましたが、継ぎがワンポイントアクセントになって楽しいものになります。私も毛糸を使ってよくやります。
着古したもののリメーク、袋ものを作っている方、靴下の薄くなったところを刺繍のような継ぎ当て、食器の金継ぎなど。
お掃除関係は古着のボロや古新聞紙を使ったり、ドリップコーヒーのフィルターを生かして油物のふき取り、てんぷら油を捨てるときの吸収材に使うなど。
あと、グリーンのカーテンで遮熱、昆布や削り節の出し殻の再利用の質問もあり、お料理の話まですることになりました、、。(^^ゞ

私は2番出しまで使うので、あとは捨てていますが、1番しか使わないのを捨てるのは勿体ないので、昆布の佃煮や、おかかのふりかけなど作るといいですね。

私の場合は最初から買い物などでゴミになる、トレーに入っているものはなるべく買わないようにしたり、生活クラブのリターナブル瓶の醤油や瓶詰製品を使い、洗って返却してます。
掃除用洗剤などは何も使いません。純石鹸の固形と粉、炭酸塩、クエン酸で済ませています。食器も固形石鹸一つです。

洗濯も汗など皮脂汚れのみなら、すすぎの楽な炭酸塩はとてもおすすめです!
着物のことを考えれば、服は少し着ただけで洗われ過ぎていると思います。
衣服の化繊やキッチンマット、バスマットなどの化繊からも出るマイクロプラスチックの問題は深刻で、海の生物を苦しめ、また魚を食べる人間にもはね返ってきます。一人一人が深刻に受け止めるべきです。

最初から持ち込まないリデュースがまず大事で、あとは繰り返しなるべく長く使う再利用のリユース。そして最後はリサイクルで別のものに作り変える等の再生です。

受講者の方からこの回の終了後にお手紙をいただきました。
自分では無駄遣いはしていないつもりでしたが、「使い尽くす」の“尽くす”という点に「もっとやれることがあるのでは?」と自問してくださったようです。みなさんいろいろ気付いてくださり嬉しく思います。
私もまだまだ工夫できることありますので、改善していきます。

工夫はとても創造的で楽しいことなので、簡単にゴミに出すのではなく、捨てる前に今一度考えてみましょう!
そして買う時には持続可能な良い製品を長く使いたいですね。
紬はその最たる物だと思いますが、、。

着物を着ることと日々の暮らしのエコの話は関係ないと思いがちでしょうけれど、私は着物が持つエコ精神は学ぶものが多いと思います。
反物一反は無駄なく切り落とすところなく使われています。だから時代を越えて、繰り返しの更生ができるわけで、それは体型に合わせて作る洋服とは正反対なもので、むしろ自由なものだと思います。
繰り返し使うことを前提に作られ、使われています。

体格の大きい人も小さな人も縫い方次第で受け入れてくれる型紙のいらない和裁の知恵はすごいリベラルなことです。

そして最後はトップの画像の通り、その再利用に欠かせない、運針の練習でしたが、まずは糸を付けずに型を覚えるところをやりました。和裁をしている方はさすがに基本が出来ていて、縫う姿勢もリズミカルで美しかったです。
また10月に練習の成果を見せてもらいます。

さて、紬塾は9月の講座予定を取りやめます。
残念ながら運針を生かして何か縫ってもらいたかったのですが、縫物の時はどうしても接近して話したりしますので、来年にします。

コロナの感染状況は多くの科学者がデータをもとに予想した通り感染拡大は止まりません。

政権は無策なだけではなく、利権のため、自分たちの選挙のために、国民のいのちをないがしろにして国民の7割の反対を押し切り五輪開催の暴挙に突き進みました。
政治思想、支持政党の話ではなく、憲法25条の国民の生存権を守るのが政治家の重要な仕事ですから、それができないなら退陣するしかないです。

医療従事者は休みなく危険と隣り合わせで働き、多くの国民は自粛、経済苦に見舞われ、コロナになっても検査も受けられず、医療も受けられず、重症化して、回復しても重い後遺症に悩まされ、元の生活ができない方がたくさんいます。親の死に目にも会えないで、苦しむ人もいます。

医療スタッフは五輪に駆り出され、現場も人手不足に悲鳴を上げています。
医療のひっ迫で、通常の医療も受けられない。
都知事は「自宅を病床として‥」などと、放置する方針のようです。

これらのコロナ関連の国民が知るべき報道をテレビで見ることはめったにありません。
NHKはじめ、大手メディアも五輪スポンサーとなり、緊急事態宣言下にありながら、コロナ報道より五輪報道ばかりになりました。
緊急事態宣言中とは思えないムードを作ってしまっています。
五輪後にはまた大きな波が来るとも言われています。

インターネット、SNSなどこまめにチェックして最新情報を得るしかありません。
また、あきらめずに一人一人が声を上げていくことが大切です。
民主主義の国ですから、国民の声が反映されなければならないのですから。
黙っていて、選挙の一票だけでは間に合いません。

健康で文化的な生活ができるよう政府は科学的見地に立ち、コロナの収束を図ってもらわなければなりません。

工房の夏休みは8/11~8/17までです。
オンラインストアではヘンプのステテコを扱っていますが、夏季休暇中の注文につきましては18日以降の発送となります。

ヘンプのステテコについての詳細はブログカテゴリーの「麻ローライズステテコ&肌襦袢」をご覧ください。
再入荷の予定はありませんのでMサイズの方はお早めにご注文下さい。
※Mサイズは1点のみです。156cm以上の方はLサイズでも大丈夫と思います。




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半巾帯プロジェクト連作10本の返し歌

2021年07月21日 | 紬の上質半幅帯
半巾帯10本の連作をプロジェクト参加の方から、感想を頂きましたので紹介させていただきます。
それぞれの方が真摯に帯と向き合い、思い思いに綴ってくださいました。
共に分かち合いたく思います。

これで、発句を詠んだ私の役目は一応果たせたかと思います。
どんな歌が返ってきたのでしょう。。

いえ、これから身に付けていただき、一生を掛けて返し歌が生まれてくるのでしょう。今後がとても楽しみです。

少し長くなりますが、前の記事の半巾帯完成作品画像と比べながらご覧ください。


トップの写真は万葉集でも詠われてきたイヌタデ。
買い物の道すがら、白い蓼の花が咲いていました。清楚で心洗われます。
子供のころから好きだった赤まんま、藍の花、薄ピンクのサクラタデ・・。

この帯たちも楚々と静かに、でも存在感を持ちながら、それぞれの方のそばで活躍してくれることを心から願います。 

プロジェクトのご参加本当にありがとうございました。

**********************************************************************

変奏曲「寒明ける」

先生の半巾帯は、既に一本手元にあります。
自然の輝きをまとった、とてもきれいでありながら、親しみを感じる素晴らしい帯です。
それなのに、さらにもう一本手に入れることを少し躊躇していました。
しかし、このような上質の半巾帯にはそう出会えるものではなく、プロジェクトへの参加を決心しました。

初めて見た「寒明ける」は、気高い光を放っていて、第一印象は、これを締めるのは緊張するなぁ、というものでした。
しかし、手持ちの着物にのせてみると、藍の面も、ピンクの面も、どちらにも良く合い、それぞれに全く違った雰囲気になります。
私の着物人生の最後まで、ずーっと長く愛用できると、ワクワクしてきました。
よこ柄のある部分はもちろん、そうでない部分でも、様々な味わいの糸が織り込まれており、何度眺めても、その都度違う景色が見えるのです。

私も自然の一員ですから、草木のような輝きを秘められるよう、この帯と調和できるよう、内面を耕したいです。
この度は、進捗状況を画像で少しずつ知らせて頂き、織り上がるまでの過程を拝見できたこと、素晴らしい帯を作ってくださったこと、本当にありがとうございました。
またいつか、姉妹の帯たちと再会できるのを楽しみにしています。 N.T.


変奏曲「雪間の草」

私は今回、変奏曲の1本を購入しました。初めて中野先生の作られた作品をいただいたのですが、なんだか不思議な気持ちです。とうとう!でもなく、かといって他の帯のように頑張って買っちゃった!でもなく、その時が来たのだな、という感じです。

心の中は静かで、手に入れた喜びよりもこれからどう使おうか、ということを考えていて、自分でも少し驚いていますが、たぶん中野先生の帯が私をそうさせているのだと思います。

まだ締めて出掛けてはいませんが、梅雨も明けたので、夏のお出掛けでもこの帯を締めるつもりです。

リバーシブルの赤系の面の色もとてもきれいだと思います。
果物の酸味を感じるようなさっぱりした赤で、こちらも楽しみです。

今後はとりあえず、この帯を合わせてみようと思っています。そうすることで、今までとは違うものを感じられそうな気がします。

「雪間の草」の銘が嬉しかったです。
先生がお披露目会で紹介してくださった歌を、かたち21の笹山さんのブログで見つけてノートに写しました。

花をのみ待つらん人に山ざとの雪間の草の春を見せばや

私はこの歌を、美しいものはあちこちに散らばっていて、それらを見つけることが楽しいことなのだ、という様に解釈しました。
これからこの帯を締めて、たくさんの発見があると思います。とても楽しみです。  U.E.


変奏曲「春の雨」、連歌「寒梅匂い」

中野先生を知ったきっかけは、雑誌の半巾帯特集を読んだことです。他では見たことのない優しい色彩と糸の放つ淡い輝きに心を奪われました。
幸運なことに、そのときちょうど今回のプロジェクトの参加者を募っていたので参加させていただきました。

先生は季節の移ろいや美しい自然の情景をとても繊細に捉えて作品に落とし込まれていて、先日のお披露目会で並んだ作品はどれも素敵なものばかりでした。
その中でも私の着物や私自身をイメージして製作していただいたものは私にしっくりくるような気がして、特別なものになりました。
先生の作品は全て銘がついていますが、銘を聞いた上で作品を前にすると、いずれも美しい日本の景色が眼前に浮かび上がりとても心地良く感じるので不思議です。

何人かの方と同じ縦糸を共有していることも、嬉しく思います。今後、冬の寒さのにも春の光を感じたとき、花が芽吹いたとき、春の恵の雨が降ったとき、菫が咲いたとき。。それぞれの季節の巡りを感じた折に皆さんの作品を思い出すような気がします。
色々書いてしまいましたが、まだまだ半巾帯初心者です。はじめて雑誌の誌面で見た先生の装いのような素敵な着こなしができるまでには時間がかかりそうですが、じっくり楽しんでいきたいと思います。  G.M.


変奏曲「山笑う」

自分の帯とそれから同じ経糸の姉妹のような帯と出会えて、素敵な御披露目会でした。

オーダー説明会の話しを伺った時は、私の頭の中にはぼんやりしたものしか浮かびませんでしたが、出来上がった帯を目の前に、命名に因んだひとつひとつの話を伺い、織り方や糸の色、太さで違っていく帯の表情は、連歌・変奏曲の命名の通りだと感じました。

季節を辿っていくのが、また興味深く、どの帯もいつまでも眺めていたかったです。

帯を結んだ時、ただ単にくるくる巻いただけなのにピッタリと綺麗に柄が出て、あまりの具合のよさに鳥肌が立ちました。
まだ、結んで外に出る機会はないのですが、まずは無地の濃い地の着物に合わせ、この帯を目立たせて着てみたいです。ありがとうございました。 K.Y.


変奏曲「柳の花」

中野みどり先生の帯をいただくのは、今回で2度目になります。
初めての帯は桜と木斛で染められた花織で、一見単色ですがよく見るとさまざまな色の粒子から成っていることがわかり、染織の奥深さを知りました。

今回の半幅帯プロジェクトでは多くの色を選ばれ、さまざまな織り方で織られると伺い、染織の違う一面を見てみたいと参加を決めました。

打ち合わせが始まる少し前に病を得て、リハビリのために昨年の春頃はひたすら野原や川辺を歩いたのですが、木々の瑞々しい芽ぶきや色とりどりに花が咲いていく様子を日々眺める中で、身近にある恵みの有り難さに気づき、感じた言葉を先生にお伝えしました。

先生が染めるのが難しいと言われた緑色を基調にした「変奏曲」にしましょうと決めてくださったこと、私が途中で色をご相談したところ、即座に「では菫の花も咲かせましょう」と答えてくださったことがとても嬉しかったです。

完成した連作帯は、微かな春の訪れの気配から初夏に向かう頃まで、季節の移り変わりが10本の織と色で再現され、ひとつの物語のようにも一曲のセレナーデのようにも思えて感動しました。

私の帯は最後の時期、柳の季節を描いたものですが、身につけるごとにあの頃の発見の悦びが蘇りそうで、とても嬉しく今から楽しみです。

先生にはいろいろ我儘を聞いていただきご苦労をおかけしましたが、素晴らしい作品をつくっていただき、感謝の思いでいっぱいです。ありがとうございました。  I.K.


連歌「日日是好日」

とても優しい色合いで心があたたまりました。
服の上から帯をしめてうれしくなりました。

ずいぶん手がこんでいて大変だったと思われます。
私の着物にもぴったりです。
なんと言ってもほっこりする気分になります。

いろいろご無理を言いましたが本当にありがとうございました。 N.K.


連歌「柳緑花紅」

去る7月4日のお披露目会では『変奏曲』『連歌』ともにそれぞれの主題とネーミン
グもとても素敵で、本当に【繋がりのプロジェクト】ならではの醍醐味を拝見させていただきました。

「柳緑花紅」 その名の通り、柳の新緑と ほんのりと色のさす花を思わせるような
段の差し色がほど良い存在感で、心を弾ませてくれます。

能動的に求めた初めての半幅帯。
今まで浴衣には締めても、着物には使いこなせるほどのものは持っていなかったこと
と、どうしても名古屋や袋でお太鼓…が慣れているので考えにも及ばなかったのですが、今回のこのプロジェクトに参加できたことにより様々な合わせ方や結び方、そして楽しみ方があるということを知りました。

当初は何となく「グレーや黒色系の単衣に合うように…」と、織っていただいたもの
の実際に手元に届き、その心地良い手ざわりと思っていた以上の極上かつ素敵な仕上りに、いまとなっては「やっぱり濃藍の袷の紬に締めてみたい」「桜鼠の小紋にも合うだろうな…」など色々なとりあわせが頭の中でめぐります。

中野先生に教えて頂いた様に、帯揚や帯締めも使ったりなどもして、様々なシーンで
無限の楽しみ方にトライできればと思っています。 O.Y.


連歌「ほととぎす」

この帯を見て、実物を自分の目で見ることの大切さを痛感させられました。いつのまにか、画像や動画への過信があったと気付かされます。

帯を眺めて触っておりますと、次々と現れる色の質感に飽きることがありません。多色でありながら、どの色も調和していて、全体に静かな華やぎ、艶があります。

もちろん結んでみました。割角出し、矢の字、吉弥。この帯だったら、私の年齢でも文庫もいける!と私は思いました。

先生から頂いた上の句(帯)を受け継ぎ、下の句(結び、取り合わせ)をこれからゆっくりじっくり考えていきたく、ワクワクしております。
プロジェクトを共有した皆様とお会い出来る日を楽しみに、こちらの帯を楽しんでまいりたいです。  K.M.




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半巾帯連作プロジェクトお披露目会無事終了しました!

2021年07月08日 | 紬の上質半幅帯
半巾帯連作お披露目会無事終了しました。
ご参加くださったみなさまありがとうございました。
大阪や愛知の方は遠方で来場いただけず、残念でした。

約8か月を掛けて制作しました半巾帯10本の連作をプロジェクト参加者をはじめ、一般の方も交えてご覧頂きました。

はじめにプロジェクトの趣旨や私の創作の姿勢、考え方など話し、最後はタイトルにした「連歌」について、連歌の始まりの歴史的なところの話を工芸評論の笹山央氏にもしてもらいました。

枝垂れ桜の下に人々が集い歌を詠み、それを受けてまた他の人も詠み、酒盛りなどしたようです。身分や名は明かさずに和歌の内容で盛り上がったのでしょう。今でいう歌会、句会にも通じるものがあるかもしれません。
このプロジェクトもそんなやり取りになったように思いますし、これからも機会があれば一本の半巾帯を通して広がりや深みへつながれたならいいと思います。
今回はコロナ禍で酒盛りが出来ず、本当に残念でした!!
私は家に帰ってから祝杯を上げましたが。(^ヮ^)/


10本それぞれ列品解説をし、銘も発表しました。

縞は早春の2月から3月にかけてのイメージで作りました。
段は自然体、あるがままを受け入れる等からイメージを膨らませて作りました。
しかし、使う方はこれにこだわらず、四季を通して、自由な創造力を膨らませてお使いください。

会場では結ぶところまで全員の方にしていただきました。
欠席の方の分は代理の方を立て、結んでもらいました。
この時間が思ったより長くかかり、参加者からのコメントを頂く時間が無くなり残念でした。機会があれば改めて感想などブログでも紹介できたらと思います。

この仕事に集中した8か月は心身ともに大変なことではありました。
みなさんから「少し瘦せましたか?」と聞かれますが、丁度良くなったと思います。。(^-^*;)

自然に随い、自分の外にあるものに目を向け、身に付けてくださる方たちにこころを馳せ進んでいけば、自ずと道は開かれてくると思い、ひたすらどの一点にも出来る限りのことをしました。
それは自分の力を見極めることでもあり、新たに力を付けることでもありました。

ご参加くださったみなさまの寛大なおこころのお陰で、いやなストレスは何もなく終えられました。
今後はみなさんがいかに使いこなされるのかを拝見させて頂きたいと思います。私の仕事はやり尽くさないことを大切にしています。

あとは、取り合わせの着物や小物、半巾帯の結び方も色々ありますので、時間を掛けて研究してください。着物ライフの伴走者になれたなら作りてとして大変嬉しく思います。

曇り空続きでの撮影で、実際の色と違いますが、全作品を仕立て上がりの常態で撮影しましたので、ご覧ください。
このうち1本は11月の個展(東京・青山)で展示販売いたします。


変奏曲シリーズ作品Ⅰ「寒明ける」

冬から春の境目、雪がまだ残るような季節の中で光は春を予感させる。
シンプルで大人っぽいデザイン。白に近いアイボリー地。
黒い杢糸に添えられたグレーの色を決めるのにずいぶん時間を要した。
地の部分の赤城の節糸の味わいも景色のうち。経糸にも緯糸にも節を取り入れている。


変奏曲シリーズ作品Ⅱ「雪間の草」
 
花をのみ待つらん人に山里の雪間の草の春を見せばや 
                     藤原家隆(鎌倉時代 歌人)
福寿草や雪割草をイメージして。
美しさや生命感を微かなもの、わずかなもの、足元にあるものからも見出せるようにしたい。

小柄な方ですので、段の間隔も少し狭くして、前に一柄は段が出るように設計してあります。



変奏曲シリーズ作品Ⅲ「春時雨」     

明るさと艶やかさがある、降ったりやんだりする春の雨。 大地を潤す雨。
縞を生かしたさりげない表現。
柔らかな白に近い黄色やピンク、グレー、ベージュの細い浮き織りの段柄を雨に見立てて。

肉眼では十分見て取れるのですが、、写せませんでした。




変奏曲シリーズ作品Ⅳ「山笑う」     

山が笑い始める仲春のイメージからの発想。
丁度、紫木蓮が咲き始めていて、その赤紫を取り入れたよこ吉野の段に。
黄色の段は春の山に降り注ぐ光を象徴。

帯揚を使って結ぶと、名古屋帯の風格が出ます。
3月が誕生月とおっしゃられてましたので、ちょうどピッタリの銘になりました。


変奏曲シリーズ作品Ⅴ「柳の花」    

柳の葉が出てくる前に黄色い花を咲かせる。
目立たないけれど味わい深い。足元には紫根染めの糸を使い菫の花を添えて。

この方は仕立ての直前に、名古屋帯にすることにしました。
リバーシブルの半巾帯として考えたものですが、その両方を開いた形で使ってみたいということで、たまたま太鼓中心と前中心に吉野の段が来る偶然も重なり、返しを最後の残り糸で3.3尺ほど織ることもできる偶然も重なり、名古屋帯になりました。ラッキーな方です!(*^^)v
先で半巾でも使えるよう手先には縫い込みを長くとってあります。


連歌シリーズ作品Ⅰ「寒梅匂い」  
 春は梅梢に在りて雪を帯びて寒し 
                 (天童如浄禅師・てんどうにょじょう)

梅は花咲く前から気品に満ちている。
雪を帯びた梅の蕾、梢、光、水などを象徴的に段で表現。

茶色以外は柔らかな色なので、帯締めや帯揚げでもう一色加えられるようにしてあります。 
繊細な感性をお持ちの方でしたので、きっと繊細な色を素敵に使いこなして頂けると思います。楽しみです。。


連歌シリーズ作品Ⅱ「日日是好日」 
 
 雨の音、風の音にも耳を傾け、あるがままを受け止め生きる。
落ち着いたオレンジ茶をメインの色使いにして。

ビデオ通話でしかお会いしたことはない方ですが、ご両親の介護などもあり、今回東京まで出てくることはできなかったのですが、着物を素敵に着こなされている方で、写真は色々送ってもらいました。
懐の深い、包容力のある方とお見受けしましたので、タイトルの「日日是好日」の銘がすぐ浮かんできました。


連歌シリーズ作品Ⅲ「柳緑花紅」  
「知足」のイメージから裂き糸を使った。

シンプルな繰り返しのものを作ることになったのですが、奥行き、立体感を出すためにも裂き糸は有効な素材です。
私の羽織を仕立てたときの羽裏の残布を裂いて織り込みました。
この画像では分かりにくいですが、それがピンクと黄色のぼかしの斜め格子になっていて、その変化も使い分けました。




連歌シリーズ作品 Ⅳ 「ほととぎす」   
 春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえて冷しかりけり(道元禅師)

自然界は日々それぞれに美しい彩がある。経糸、緯糸に40色使う。
一本がひと柄の凝った作品。
お庭の夏みかんの小枝を少し送ってもらい、それで染めたレモンイエローの糸も少し使いました。
結びによって感じが変わります。でもバラバラにならないよう色のトーン、バランスは考慮しました。


連歌シリーズ作品Ⅴ 「歳寒の三友」   

中国の水墨画の題材によく使われる松竹梅を「歳寒の三友」というそうです。 
寒さの中でも色あせることのない松や竹の緑、寒さの中に咲く梅の花の強さ。
絣の残糸の濃いピンクを梅に見立てました。
こちらも一本がひと柄の作品ですので結びによる違いが楽しみです。










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