中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

鈴木真砂女の俳句と夏着物

2019年06月11日 | こぼれ話
私は単衣や夏の着物が好きです。たまに出かけるときにしか着ませんが、何か特別な気持ちになります。
真夏に羅(うすもの)を涼しげに着ている姿を街で見かけたりすると、思わず見とれてしまいます。
今まで何度かハッとする美しい着物姿に遭遇したことがあります。
特に高齢の方で毅然と、でも自然体の方を見るとよきお手本として心に留めておきます。
夏の着物姿はその人の生き方、考え方までよくあらわれるように思います。


知人が「鈴木真砂女全句集」(角川書店)にたくさん着物や帯の句があることを教えてくれました。
図書館で借りてきました。

真砂女(1906年 - 2003年)さんは銀座の有名な小料理店「卯波」の女将でまた俳人でもありました。
以前はテレビなどでよく拝見しました。小さな店の中できびきび小走りに働いてらっしゃいました。

最初に結婚した夫は子供一人を残して失踪、実家に帰ったと思ったら、大きな旅館の後を継いでいた姉の急逝。親の説得で亡き姉の夫の後添いになるものの、別の男性を好きになり、51歳で夫を捨て、家業を捨て上京。知人らの協力者から借金をして銀座に小料理店を持つようになります。

俳句は日々の何気ないことを詠んでいるようで胸に迫りくるものがあります。愚痴や弱みを人には見せずとも、俳句には日々の思いが正直に詠われていると思いました。

夏帯、単衣帯、羅(うすもの)、浴衣、足袋、夏足袋を季語として入れた句のなんと多い事か。
袷の句もないことはないのですが少ないのです。
店で暮らしを立てるために生きるために着た戦闘着としての着物の句です。真夏も当然着物で働いたから自然と汗を滲ませながら締めた夏帯や単衣帯の句がたくさんあります。
足袋もたくさん出てきますが、足元と、帯が要。自分の精神を立たせる重要なものです。そういう意味では厳しい俳句です。

41歳~70歳までの句から20句だけピックアップしてみました。

・夏帯や客をもてなすうけこたえ
・羅や人悲します恋をして
・夏負けせぬ気の帯を締めにけり
・夏帯や運切りひらき切りひらき
・夏帯やおのれ抑うることに馴れ
・明日死ぬもこころ平らや紺浴衣
・買い出しの日の夏帯を小さく結び
・単衣着て常の路地抜け店通い
・単衣着て老いじと歩む背は曲げず
・ほととぎす足袋脱ぎ捨てし青畳
・水無月やあしたゆうべに足袋替えて
・気疲れの帯解きたたむおぼろかな
・わがくらし夏足袋に汚点許されず
・暑に抗すとりわけ足袋の白きもて
・恋すでに遠きものとし単帯
・夏帯に泣かぬ女となりて老ゆ
・単帯をとこ結びに日曜日
・愛憎のかくて薄るる単衣かな
・衣更えて小店一つをきりまわし
・単帯しゃっきり締めてにくまれて
・なりわひの足袋穿けど足袋は継がず

晩年の70歳以降になるとようやく装うための楽しみの着物の句も出てきます。

・格好よく帯の結べし薄暑かな
・牡丹に仕立ておろしの絣着て
・辻が花一度は着たし菊日和
・働いて作りし花見衣かな
・秋扇少し覗かす好きな帯

俳句文化もすごいものですが、鑑賞はそれぞれにしていただくとして、着物(単衣、袷、うすもの、縞、絣など)、帯(夏帯、単帯、半幅帯など)、足袋だけでも俳句は作れ、そこに何かしらの象徴的な意味や思いを表現できるというこの着物文化も絶やしたくないですね。

この夏は何度着物に袖を通すでしょうか?
着るのは少し大変なこともありますが、暑さ対策などして、無理をしすぎないよう着物を着たいと思います。私は足袋に継ぎを当てちゃうタイプですが‥。(^-^;






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真綿から糸をつむぐ―紬きもの塾19 染織実習1

2019年06月07日 | 紬きもの塾’17~’19


工房展の前に染織実習コースの方に糸つむぎの講習をしました。

糸つむぎは、私は郡上紬の宗廣先生から受け継いだ久米島式を採用していますが、結城紬のつくし方式の良いところも加え、また自分なりの工夫もしています。やや太めの糸(着尺の緯糸向き)を引き出すのに向いています。

色々な引き出しかたがあるのですが、大事なことは真綿の長繊維をなるべくちぎらないよう気をつけると毛羽立ちの少ない糸がつむげます。
私は真綿をほとんど引っ張らずにそのまま台に掛け、上の真綿から1枚ずつ綺麗に片付けながらつむいでいきます。
上の画像は真綿を4g掛けたところ。


まずは私が2尺ほどデモンストレーションしながら引き出し方のポイントを説明します。
その時、よく見ていることが大事です。手の位置や動かし方、真綿の量をどれぐらい摘まむかなど真似することがまず大事です。
理屈が先に立つとなかなかうまくいきません。理屈は後からついてきます。

どうしても素材や道具を自分に引き寄せようとしたり、制圧するようなやり方をしてしまいがちですが、それではうまく糸を引き出せません。

真綿は理に適わないことには付き合ってくれません。正直です。
真綿の繊維の量をいつも同じぐらい摘まむよう見極め、単純な道具を上手に使いこなしながら、力強く大らかな味わいのある美しい糸をイメージしてつむぐことが大切です。
織をしている人の方が糸のかたちをイメージしやすいです。初めての方は難しいと思いますが、それでも最初から上手な方というのが稀にいらっしゃいます。。^₋^


今回は4gの真綿を1時間半かけて引いてもらいました。
一反分の緯糸は約380g~400gですので100分の1位つむいでもらいました。

上の画像は真綿がたっぷり引き出されています。ちょっと多すぎですが、、。(^^;


程よい真綿の量を見極め、上の方からをひとまとめにして、


右手の指に水を付けながら捻るようにして左手元までしっかり抑えていきます。


つむぎ終わったら綛揚をします。おはじきは糸を綛揚げする際に糸同士がくっついて引っ張り上げられないようにするためです。
豆などでも良いです。
着尺用3本合わせぐらいの糸をつむいでもらいました。これはつむぐにはとても難しい太さなのです。
でも、とにかく4gの真綿から安定した太さの糸がつむげました。


みなさん真剣に取り組んでいます。

この糸は7月に工房の庭木で染め、11月には実際に織ってもらうことになります。

いつかせめてマフラー分ぐらいは全てつむいで織ってもらいたいですが、、。
真綿から糸をつむぐことは大変な労力を要する仕事ですが、心を無にしていける仕事です。
有史以来、人が生きていくための根源的な仕事でした。
多くの方に体験してもらいたいです。

仕事としていくには賃金も法外に安く、お小遣い稼ぎぐらいにしかならないので、後進が育ちませんでした、というより育てようとはしてこなかったと思います。以前手紡ぎ糸を購入していた長野の糸商さんはもう十数年前に廃業されてしまいました。私は機織りがきつくなったら、糸つむぎをたくさんしたいと思っています。

繭から引き出す座繰り糸は赤城でもまだいらっしゃいますし、後継者の育成もされているようですが、昔あった座繰りの太い糸は引ける方がいなくなったということで、寂しい限りです。私はショールなどに以前はたくさん使ってきました。

紬は経糸が大事なのですが、緯糸の真綿の毛羽ばかりが目立つ紬も多いです。
タテヨコバランスの取れた、それでいて味わいのある力強く洗練された紬を織りたいです。

詳しい紬糸のことは次回紬塾の講義で話ます。






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「中野みどり紬の会-プラスワンで装い一新!」開催中!

2019年05月30日 | 紬の会
終了しました。ご来場ありがとうございました。


工房展「紬の会 – プラスワンで装い一新!」6月3日(月)まで開催。
 午前10時 – 午後5時   櫻工房(小田急線鶴川駅バス10分)

工房展が始まっております。遠くからわざわざお越しいただく方もあり、ありがとうございます。
詳しくはHP「お知らせ」をご覧ください。

さて、以前のブログでもご紹介しましたが、私が着ていた、豊後梅で染めたピンクとグレーの格子の着物の後継ぎが決まりました。
メールでお問い合わせを頂いていましたが、工房展の時に実際にご覧頂いてご検討いただくということになっていました。お越しいただき、実際に羽織っていただくととてもよくお似合いで、ご本人も納得されていました。
生木の草木染のピンク系や黄色系は大人の肌の色によく映ります。鮮やかすぎない複雑な色相をしているからです。くすんだ色というのとも少し違います。

単衣に仕立て、春、秋、冬をこの紬で過ごします。やや太めの真綿紬糸を使っていますので対応できると思います。傷みなどは全くないのですが、洗い張りをして仕立て直しになります。



この「淡紅梅」と題した紬は、93年の2回目の個展のDMに使った作品です。
格子といっても奥行きを出すために少し凝って設計したものです。
染められた色そのままを使いながらも白の地糸とコチニールで染めた赤も少し際に使い華やかさをつけ、ヤマモモの渋めの黄色で奥行き、柄合わせをきちっと揃えて紬ですがきちんとした感じも出したものです。
その後しばらくして自分用に仕立て、帯は村田染織ギャラリーさんでオールドの草木染のイカットを選んでいました。

96年秋号の季刊誌「美しいキモノ」の『染めと織と祈り』のシリーズ(立松和平さんによるルポルタージュの記事)に自作の着物を着て登場してもらいたいという条件付きの依頼があり、その帯に金属造形作家の濱口恵さん(故人)の作品を帯どめに加工したものを付けて撮影しました。まだ、着始めて間もないころで、小物も2~3点しか持っていませんでしたが、あるものでなんとかしました。



普段お化粧というものを全くしないのですが、撮影ではメイクの方が薄化粧にしますからさせてください!という強い要望があり、若干のお化粧もしてます。髪もセットしたみたいになって、自分でなくなったようでいやだったと宗廣先生の夫人の波緒先生に後で報告したところ「そんなことで自分はなくならないから」と笑われてしまいましたが・・・。(^-^;

本当に恥ずかしくてニコリともせず、カメラの前に長い間立っていましたが、カメラマンの立木三朗さんが編集者に「中野さんを笑わせて」と指示を出し、「どーしよう」と慌ててた編集者の姿がおかしくて思わずニヤリとしたところをすかさず撮られた一枚です。
立木さんはこういう色合いは色出しが一番難しい‥とおっしゃられていましたが、実物の紬に近い色で印刷が上がってきました。
立松さんの文章もとても的確にとらえて書いてくださってます。このシリーズはその後『染めと織と祈り』として単行本になりました。
もう20年以上前のことですが、いろいろ懐かしく思い出されました。。。

今度の着手はどんな取り合わせで着て下さるのでしょう?着ることにも布にも真摯に向き合われている方ですので、何も心配はしていません。私以上に大事にしていただけると思います。
洗い張りするたびに風合いがよくなるような糸使いや織り方をしています。二代三代とお召し頂けます。
良い方に決めて頂き、作り手としてもホッとしているところです。着物も喜んでいると思います。



工房内は8畳の和室と機のあるスペース14畳ほどを使い展示しています。
手狭で機の上にも板を置いてガラスなど並べてみました。
自然光たっぷりでご覧頂けます。

工房オリジナル、ヘンプのローライズステテコは着物だけでなくスカート下にもこれからの季節はとても気持ち良いです。
ヘンプ肌襦袢の数が少なくなってきましたので、お早めにご覧頂きたいと思います。
小物選びに取り合わせの帯やお着物もお持ちいただければよいかと思います。
単衣、夏向けの帯もあります。

着尺・帯・夏帯・半幅帯・帯揚・帯締・ヘンプ麻肌襦袢&ローライズステテコ 、卓布、ミニ額装、他
サブコーナー:竹バッグ(林まさみつ作)・ガラスウェア(玉田恭子作)・女わざの会会誌
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初めての方はご予約時に道順などお知らせいたします。詳細は「お知らせ」をご覧ください。

今年の秋の展示の予定は今のところありませんので、ぜひこの機会に初めての方も気軽にお出かけください。
お待ちしております。




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工房展「紬の会-プラスワンで装い一新!」お知らせ3

2019年05月24日 | 紬の会
5月28日(火)~6月3日(月)まで櫻工房内(町田市)において「紬の会」を開催します。



出品品目: 着物、帯、半幅帯、角帯、ショール、帯揚げ、帯締め、ヘンプ麻肌着(襦袢、ステテコ)他
サブコーナー: 竹バッグ(林まさみつ作)、グラス(玉田恭子作)、「女わざの会」会誌

この度の工房展では「プラスワンで装い一新!」をテーマにします。
着物や帯は上質な飽きのこないものを選び、たとえ一枚の着物に一本の帯でも、小物の取り合わせを変え、楽しめるのが織りの着物や帯の良いところです。
季節感はもちろん、場所、その日の心情などを反映さて考えるのが着物の取り合わせでは大事なことです。
小物だけでも吟味していろいろ揃えたいものです。



真綿系のイエローベージュの縞の着物に、無地感覚の節糸系の緑綾織帯。この着物と帯は、春、秋、冬と長く愉しめますが、例えば、今の5月下旬から6月はじめの梅雨入り前の単衣として、あるいはお彼岸から中秋にかけての単衣として装う場合、みなさんはどんな小物を選ばれるでしょうか?
 
紬塾の取り合わせワークショップでもやることですが、私は今回の展示品の小物の中から60代の私がこの着物と帯で装うなら‥と考え、こちらを選んでみました。



白樫染のアイボリーの絽縮緬帯揚げに小川郁子作切子帯留め、黄緑三分紐でちょうど今頃に着ることを想定して考えてみました。紫や緑が映える季節です。



もう一組はは9月下旬から10月初旬を想定して桑染の薄灰緑絽縮緬帯揚げに、黄味の茶とサーモンピンク、白のぼかしの細ゆるぎの帯締めを合わせました。まだ暑さも残りますので帯揚げは絽縮緬を使い、少し秋めいた感じもとりいれてみました。

帯揚げもたくさん染めておりますので、いろいろ思いを巡らせながら取り合わせていただきたいと思います。
お手持ちの着物や帯もお持ち頂きご覧下さい。

また、蒸し暑い時期ですので、ヘンプの肌襦袢、ステテコもサンプルの試着ができますのでお申し出下さい。
着物をこれから始めたい方もご相談がてらお出かけ下さい。

初めての方はHPのお知らせ→「お問い合わせ」の予約フォームからご連絡下さい。
詳しい道順などお知らせいたします。
メールでも構いませんが、ご希望の日時や、ご同伴の方がある場合は人数をお書き添え下さい。
駐車スペースは1台分ありますので、お車の方はその旨もお知らせ下さい。

みなさまのご来房をお待ちしております。




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玉田恭子ガラスウェア -紬の会19春-お知らせ2

2019年05月17日 | 紬の会
新緑も色濃くなってまいりました。

工房では28日からの工房展に向け、最後の作品の追い込みをしております。

今日はサブコーナーへご出品頂く玉田恭子さんのグラスが届きましたのでご紹介します。

玉田さんは着物や色彩にもご感心があるということで、3月の「紬+帯揚げ百彩」展へお越し下さいました。お茶やお香もされているということです。


                         Murasakishikibu KYO Inori 6×29×13cm

玉田さんは現在は源氏物語から着想を得た、板ガラスを何層にも重ねたオブジェ制作をメインにされている方ですが、先月横浜市青葉区の住宅地にある工房でお話を伺ってまいりました。

ガラスも様々な技法や表現方法がありますが、板ガラスを作るところから大きな作品は半年ほどかかるということでした。イメージ作りはスケッチデザインするというよりは文章にすることから色の世界が浮かんでくるというようなことを話されていました。

玉田さんはおっとりされた雰囲気の方ですが、タフな精神力とガラスにかける相当の情熱をお持ちの方だという印象を受けました。
大阪のうめだ阪急で今月22日-28日まで個展があります。
今年2月24日にお亡くなりになられました、日本文学研究者ドナルド・キーンさんも作品をコレクションされていたそうで、会場にはその作品写真パネルも展示されるようです。そのお写真は拝見しましたが、とても素敵な作品でした。近郊の方はぜひご覧ください。

詳細は玉田さんのホームページをご覧ください。
玉田恭子HP
工房はスタッフの方もいらして、教室もされています。
玉田ガラス工房HP 
 

櫻工房では点数は少ないですが涼やかなガラスウェアをご覧いただきます。



写真手前の底にモザイクのあるものはやや重めでロックグラスに。焼酎のお湯割りにもいいです。モザイクの色も強すぎず、さりげないです。
クリアのタイプは軽くて実用的でもあり、1.ビールでも2.冷酒でも3.麦茶でも4.牛乳でも5.ジュースでも。(^q^)


一輪挿しには、庭のバラを一輪活けて、窓辺に置いてみました。卓布(中野作)
価格はグラス、一輪挿し、2,800円~3,800円(税別)です。


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「中野みどり紬の会 – プラスワンで装い一新!」

2019年5月28日(火) – 6月3日(月) 午前10時 – 午後5時
櫻工房にて(小田急線鶴川駅バス10分)

着尺・帯・半幅帯・帯揚・帯締・ヘンプ麻肌襦袢&ローライズステテコ 、卓布、ミニ額装、他
サブコーナー:竹バッグ(林まさみつ作)・ガラスウェア(玉田恭子作)・女わざ冊子
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初めての方はご予約時に道順などお知らせいたします。詳細は「お知らせ」をご覧ください。


また来週、工房展の詳細お知らせします。
是非お出かけ下さい。(*^^*)






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[第11期 紬きもの塾19]開講しました!

2019年05月10日 | 紬きもの塾’17~’19


今年もお陰様で紬きもの塾19が開講しました。
今期から基礎と実習コースを分けてのスタートとなりました。

基礎コースの方全員着物でお越しくださいました。
HP、ブログを数年前から見てくださり、ようやく日程が取れるようになって臨んでくださる方もありました。


いつものように紬織り人間国宝・宗廣力三先生の作品集を見ていただき、まずは私の仕事の元にある師の仕事を知ってもらいました。
師匠のデザインを真似てはいけませんが、師が大切にしていた糸のこと、染色のこと、着ることなど受け継ぐものは受け継がせてもらいました。
シンプルな色使いの中に奥行きをもたせる色使いで日本的な奥ゆかしいものの美を大切にされていたと思います。
先生の元で仕事をさせて頂けたことを幸せだと思っています。


続いて黄色系の着物(単衣)とピンク系(袷)の私物の着物を全員が交代で羽織って頂き、どんな感じか、一人ひとり話してもらいました。
柔らかい、軽い、纏うと色の見え方が違う…などの声が聞かれました。

ピンク系も黄色系もみなさんよく似合っていましたが、特にピンクの着物を羽織ると表情が生き生きと明るく笑顔になった方もいらっしゃいました。また黄色系はしっとり落ち着き、より女らしさが引き出されてくる感じがありました。両方共、誰でもが似合った、という感想も聞かれました。

自然界のピンクと黄色は基本の色で、いずれにしても包容力のあるものだということがわかって頂けたかと思います。また、真綿系と玉糸系、袷、単衣の感じの違いも感じとってもらいました。

今期の方はみなさん着物歴も長く、お茶やお香を嗜まれたり、着付けの講師をされている方、和裁士さんもいらして、いろいろ知識、技術はお有りのようですが、紬塾ではそれらを一旦無しの状態にしていただき、新たな目でこれからの講義に臨み、改めてもう一度自分で良く見、感じ考えてほしいという趣旨の話もしました。


この日私が着ていた紬は修業時代の最後に宗廣力三先生から真綿一反分を頂き、つむぎ、母のために織った着物です。仕事を終えた夜の1~2時間毎日つむぎました。太目の糸が表情豊かで味わいと力強さがあって私は好きです。

紬塾の初回には私にとって原点となる40年程前に織ったこの紬をよく着ています。井桁絣も木綿の紺絣によく使われますが、整経が良くできていないとズレが生じたり、シンプル故にアラも目立ち、きちっとするには技量を要します。


紬は固くて着にくいという声もよく聞かれるのですが、この紬は一般のものに比べかなり地厚ですが、みなさんに袖を触ってもらいました。まだ洗い張りはしていませんが、その柔らかさに驚かれていました。
糸を細くして、織密度を高くすると固くて着にくいものになりますが、かと言ってただゆるければいいというものではなく、判断のポイントがあります。

帯は30年近く前、着物を着始めて間もないころに村田染織ギャラリーで購入した両面使いのオールドのジャワ更紗です。この日は柄がおとなしいB面で久々に締めてみました。 
自作の着物を着始めたよちよち歩きのあの頃から、ずいぶん時間が経過しているのだと、感慨深くいろいろ思い出します。

次回からは紬とはどういうものであったか核心に迫りたいと思います。
また堅牢でありながら着心地の良い紬の元になる紬糸や織り方についても話していきます。










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工房展「紬の会-プラスワンで装い一新!」のお知らせ

2019年05月03日 | 紬の会


爽やかな季節となってまいりました。
5月28日(火)~6月3日(月)まで櫻工房内において「紬の会」を開催します。
現在、帯揚げの染色、帯の新作にかかっており、連休も休まず制作に励んでおります。

出品品目は、着物、帯、帯揚げ、帯締め、ヘンプ麻肌着(襦袢、ステテコ)他
サブコーナーとして竹バッグ(林まさみつ作)、グラス(玉田恭子作)

この度の工房展では「プラスワンで装い一新!」をテーマにします。
お手持ちの着物や帯に帯揚げ一枚、帯締め一本、真剣勝負でぴったりなものを選びませんか!
古い結城や大島の着物に新しい現代感覚な紬帯、オールドの更紗に草木染めの紬着物。
今の時代感覚の自然で爽やかな風を吹かせましょう!



着尺は単衣向け、袷向け、スリーシーズン単衣で対応できるやや厚手の紬、帯は夏帯を含め、仕立て上がりのものも数点あります。
お手持ちの着物や帯もお持ち頂き、じっくり取り合わせてご覧頂きたいと思います。

帯揚げは絽縮緬、紋意匠綸子縮緬など今の時期にタイムリーな生地感の新色も染めております。
草木染めの紬帯に合う櫻工房セレクト厳選の帯締めも入荷しております。
合わせたい着物や帯をお持ちいただくのが良いと思いますが、端布でも良いです。

サブコーナーとして、林まさみつさんの竹バッグも点数は少ないですが、こちらも厳選して展示します。単衣、夏着物のお供にしていただければと思います。
また、ガラス作家、玉田恭子さんのグラスを展示します。
玉田さんはガラスの大作のオブジェなども手がける方ですが、今回は手取りの軽い使いやすいシンプルなグラスと、小さな一輪挿しをお願いしました。夏の暮らしの彩りに、プラスワンしていただければと思います。
玉田さんのHPはこちら。



工房内は先月、畳、襖、障子など張り替え、庭木の剪定もして、サッパリ、スッキリしてます。
ゆっくりくつろいでお過ごしいただきたいと思います。

畳のヘリも畳屋さんが親身になってくださり、いい色に決まりました。
ちなみに鶴川にある畳屋さんですが、下見に来てくださった時に、工房内の染められた糸を見て、「いい色だなぁ…」とそっとつぶやかれてました。。(*^^*)

紬の着物を着るにあたっての下着(ヘンプ麻の肌襦袢、ローライズステテコ)や襦袢などのご相談もお受けします。ヘンプ肌着は通年お使いいただけます。

紬に関心はあるけれど、まだなかなか始められない方もこの機会にぜひご覧ください。
ご来房をお待ちしております。

出品内容の詳細はまた追ってブログでご紹介します。








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ビワ染めの帯揚げと枇杷俳句

2019年04月26日 | 制作工程


来月の工房展(5/28-6/3)向けにモッコク、リンゴ、ナシ、ビワなどで帯揚げを染めています。
モッコクはグレイッシュピンク、リンゴは黄色系、ナシはピンク系、ビワはオレンジ系を染め分けています。

今までビワの枝葉でピンク系(灰汁媒染)、グレー系(鉄媒染)、茶系(銅、灰汁媒染併用)など糸染めにも帯揚げにも使ってきましたが、今年は太い枝の剪定があり、樹皮と芯材を分けてピンクを染め分けようと意気込んでかかったのですが、樹皮からも芯材からも、灰汁をかけてもピンクは染まらず、最初はウコン染めのような濃い黄色になり、予定と違って、焦りました。。
しかし、生き生きした色ではありましたので、数回染め重ねをしていくと、帯揚げとして使える色になってきました。

上の写真はビワのオレンジ系で、まだ仕上がってはないのですが、これから更に重ねるか、あるいは化学染料と併用にするかなどしばらく眺めて決めていきます。今の段階でも落ち着いたオレンジ系のグラデーションになっています。
秋の単衣のころにも使えそうないい色です。茜ほど赤くない茶味を含んだ大人オレンジです。写真では伝えにくい色ですが、実物はもう少し茶味があります。

ビワの花について以前のブログにも書きましたが、地味な白い花を長く咲かせますが茎は茶色の産毛があり、甘い香りはあるものの、大きな葉に隠れるような感じで、あまり注目もされないと思うのです。
しかし、ゆっくり花を咲かせ続け、時間をかけてあの甘くみずみずしい独特の果肉をもつ実を熟れさせる枇杷に心惹かれます。

枇杷の実は俳句に詠む方も多いでしょうが、花は詠まれるのだろうか?と調べると、案外ありました。

枇杷の花は冬の季語で、実は夏の季語になります。それぞれ8首ほど選んでみました。
花は侘しさや寂しさが詠まれ、実になると、甘美さや生命感が詠われています。

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<枇杷の花>

くちそそぐ花枇杷鬱として匂ひ  橋本多佳子

輪番にさびしき僧やびはの花  黒柳召波

職業の分らぬ家や枇杷の花   正岡子規

むく犬はどこに眼ありや枇杷の花  中村草田男

医師もどり喪章をはづす枇杷の花  大島民郎

枇杷の花侘しき夕日とどめをり  椎橋清翠

枇杷の花薄日さす寺の古疊  鵜沢四丁

枇杷の花大やうにして淋しけれ 高浜虚子


<枇杷の実>

蜜着の枇杷の皮むく二人の夜   鷹羽狩行

黒衣より掌を出し神父枇杷をもぐ  津田清子

燦々とをとめ樹上に枇杷すする   橋本多佳子

枇杷買ひて夜の深さに枇杷匂ふ   中村汀女

枇杷啜る妻を見てをり共に生きん  石田波郷

木の上にひとり枇杷くふ童かな   正岡子規

一人居のともしび色の枇杷食べて  細見綾子

黒髪を持つ憂さ枇杷の熟るるころ   三木 照恵

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枇杷は古来漢方薬や民間療法にも使われたパワーのある、人にも有用な植物です。
煮出していてもとろみ成分がとても強く、チップと染液を分けるための濾す作業に時間がかかります。
しかしいかにも肌に良さそうなヌメリ感です。
染め上がった色も人の肌を生き生きさせてくれる色です。 

あとひと月もすると枇杷の実の熟す季節になりますが、実も薬効成分が高いようですので、野鳥と共にありがたく頂きたいと思います。(^q^)

さて、工房は世の中の10連休とやらとは全く関係なく日曜以外は仕事をしています。(^_^;) 
工房展の詳細は連休後半にお知らせいたします。
 





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「女わざの会」会誌、櫻工房オンラインショップに登場!

2019年04月19日 | 女わざの会


すっかり遅くなってしまいましたが、「女わざの会」会誌を櫻工房オンラインショップに上げましたので、お知らせいたします。

岩手県の森田珪子さんが主宰されている「女わざの会」が活動の記録として、1983年から年1冊まとめてこられた会誌全23号のうち第1~20号および第22号を櫻工房オンラインショップでご購入いただけます。

「女わざの会」主宰の森田珪子さんは、結婚をきっかけに東京から岩手県の前沢(現・奥州市)に移り住み、地域に伝わる様々な暮らしの「わざ」と出会いました。
そこで衣食住にまつわる手わざや愉しみ、民話や伝承、遊び、行事などを近隣の方達と共に次世代へつないでいく「女わざの会」の活動を長年続けてこられました。
毎回10人ほどの方が集まり、地域の様々な伝承の“わざ”を実践しますが、その会報を楽しみに待つ読者も全国におられました。

会誌の中では、季節の料理や郷土菓子、針仕事、染織、昔話、地域の行事や遊びなど様々な話題が、森田珪子さんの温かく力強い文章でつづられています。
また、装丁、手書きの文字、豊富な挿絵は全て夫の版画家森田純(故人)さんによるものですが、優しい眼差しを感じる挿絵達もこの会誌を読む大きな愉しみひとつです。
タイトルは「女わざ」ですが、「技(わざ)」のみならず「芸(わざ)」であり、「態(わざ)」である。
つまり、暮らし方、生き方に通じるメッセージがこめられています。
性別、年齢を問わずお読み頂きたいと思います。男性にも読んでもらいたい内容です。



全21冊セット(1から20号+22号) :  6,400円(税込)
後半11冊セット(11から20号+22号):  3,400円(税込)
送料 : 510円 (レターパックプラス) ※振込確認後の発送となります。
櫻工房オンラインショップはこちら→



この会誌は、見方によっては料理や裁縫のレシピ集であり、興味のある号だけ抜き出して読みたい、という思いを持たれる方も多いかもしれません。
しかし通読して、この会誌の面白さ、東北の生活文化の奥深さ、森田さんの活動の本質にふれて頂きたいので、敢えて全冊まとめての販売とさせて頂きます。

様々な知識や情報が詰まっていますが、実践を重んじる会ですので、過去の号を参照しながら記述されている箇所もあります。
昔ながらの「わざ」が掘り起こされ、時にはアップデートされていく様子も面白さのひとつです。
巻頭と巻末では時勢や会の様子とともに森田さんの思いが語られ、号を重ねるにつれて、活動に賛同する人々からの反響や、やりとりの様子が読みとれます。ローカルな交流の中から、海外の「女わざ」もしばしば登場することにも驚かされます。

森田さんの、知的で、力強く、温かな、そして時に痛快な語り口にハマると次また次と読み進めたくなります。全冊まとめてお手元に置かれることをおすすめいたします。
工房内でもご覧いただけます。紬塾や工房展などの際によかったらご覧ください。

紬塾染織実習コースの方は、その中から一つ選んで実践したいと思っています。

紙のメディアを作ることは大変なエネルギーがかかります。
珪子さん、純さんの底力があったからこその会報ではありますが、賛同する多くの方の支えもこの会報の背後に見えてきます。

25~26年前、この冊子を岩手のギャラリーで見つけて買ってきた『かたち』の笹山さんが以前のブログで「現代の生活文化の死角を衝いてきているところもあるのです。」と書いています。
SNSの情報発信は瞬発力があるかもしれませんが、こういう活動の情報から時間を掛け、じっくり身につけていくことも今の時代こそ忘れてはならないと思います。

過去の「女わざ」の記事も初めての方は参考になさって下さい。





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MIHO MUSEUMと伊勢現代美術館を訪ねて

2019年04月12日 | 工芸・アート
滋賀県甲賀市信楽町にあるMIHO MUSEUMと三重県・南伊勢町の五カ所湾にある伊勢現代美術館、伊賀の茶陶の三田窯へ行ってきました。前日までの20度超えのポカポカ陽気から一転、真冬のような寒さの中でしたが、山桜は5~6分咲きぐらいで、葉の茶色と混じり合い山の遠景も堪能してきました。





まず初日は伊勢現代美術館で開催中の陶芸家谷本景展(~5月12日)に行きました。
谷本さんは、三田窯の当主ですが、若い頃にフランスで版画を学んだりされた方で、ここ10年は特に抽象的な現代感覚な作品を意欲的に発表されています。古代の銅鐸をイメージしたもの、陶板による平面表現など古代と現代をつなげるかのように、普遍性をもった制作をされています。その中でも特に土の風合いそのままの陶板が私は気に入りました。。




伊勢現代美術館は伊勢市からバスですとアクセスはあまりよくないのですが、ゆっくり時間をとって訪ねたいとても良い美術館です。
初代の館長のコレクション、そして現代作家の企画展やレンタルスペースで若い作家も紹介しています。開館まだ16年ほどですが、初代館長は数年前に亡くなられて娘さんが遺志をついでいらっしゃいます。屋内外の空間、展示彫刻館「宇空(うくう)」も併設されていて、そこもとてもとてもいい空間でした。








「歩く人」(林武史作)という作品の上を歩く人。。


谷本景さんの夫人の由子さんがこの4月から「作古庵」をB&Bの宿として始められて、そこに泊まらせてもらいました。
由子さんも陶のオブジェなどを制作されています。敷地内にアトリエが有ります。


アトリア前の石の大きなテーブルの前で1点写真を撮らせてもらいました。囚われないダイナミックな作風です。
制作についての取材も兼ねていましたが、じっくり制作についてお話を伺うことができました。

作古庵は古い家をリノベーションしてありますが、梁や襖、板戸など、使えるものは生かして、土壁の仕上げで、由子さんのコレクションの家具、調度品も素晴らしいお部屋でした。
オーナ夫妻の作品を始め、コレクションされている海外のアート作品も飾られていて、楽しめます。
Aribnbから申し込めます。



翌日はMIHO MUSEUM「大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋(はそうあい)」を見てきました。

非常に混んでいました。立ち止まってじっくり見ることができませんでしたので、2回列に並んで見ました。
上の画像や今まで見た印刷物とは大きく違う印象を受けましたが、それでも曜変の静かに発光する虹彩と、侘びた感じも持ち合わせているというか、唸る美しさでした。曜変天目国宝三碗の中では、私はこの斑紋の小さな茶碗の景色が最も好みです。
自然光で見たらさぞや美しいことでしょう。
曜変天目を再現した桶谷寧さんの曜変天目は手にとって時間帯を変えて何度も見ていますが、肉眼でもその色の変化を見せてくれてました。撮影するなら曜変の本質を熟知したカメラマンが、先端技術を使った撮影でないと撮れないようです。印刷も高精細技術が必要です。



今回の一泊の旅は、着物は拙作の単衣紬で出かけましたが、出掛けに雨が少し降っていましたので、予定の羽織はやめ、大島の雨ゴートと紬のショールで出ましたが、思いがけない寒さの中、紬のショールは暖かくとても助かりました。念の為シルクのタンクトップを肌襦袢の下に着ていたのでそれも良かったです。
リバーシブルの抽象文様の半幅帯に自作の銀の帯留め「元始」と小川郁子さんの切子帯留めの替えを一つだけもって最小限のコンパクトな荷物で出かけましたが、結びも吉弥から割り角出しに変え、プチバリエーションを楽しみました。(*^^*)

他のジャンルの方の仕事からよい刺激を受け、英気を養う旅となりました。

さて来月6日から紬塾11期のスタートです。
紬基礎コースはあと2名大丈夫ですのでお早めにお申し込み下さい。
紬の着物の本当の真価を一緒に学んでいきたいと思います。
詳細はこちら。












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[第11期 紬きもの塾'19]募集は明日3月30日(土)から受付開始です

2019年03月29日 | お知らせ


今日は寒の戻り、花曇りです。朝からガスストーブを点けています。
染井吉野より1週間ほど遅れて咲き出す工房の桜はまだ1~2分咲きです。

さて、「紬塾19」紬基礎コース受講生募集の受付は明日(3月30日(土)午前8時から)からです。HPからメールでお申し込みください。→

染織実習コースは次年度以降のお申込みとなります。
過去の紬塾ブログで内容をご確認の上、お申し込み下さい。

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歌人・馬場あき子さんの着物、祖母の着物に思うこと

2019年03月23日 | こぼれ話
先日、NHKの[こころの時代~宗教・人生~ 「歌詠みとして今を生きる」]という番組に歌人の馬場あき子さんが出演されていました。
以前はよくTVでお見かけしましたが、91歳になられた今もお元気にご活躍されているご様子を拝見しました。
プロフィール、短歌との出会い、戦争、学生時代、教員時代、能のこと、短歌のこと…。
お話の内容も大変興味深いものでしたが、そのお話される姿の美しさにもハッとしました。

お召になられていた着物は最初の映像では、藍鼠地の縞物に、白地に薄墨で抽象文様を描いたようなシックな素敵な帯をされていました。ごく淡いグレーの帯揚げ、柔らかな橙色の帯締め、袖口の襦袢はピンク色が少し覗いていました。
帯がアップになることはなくチラッと覗くだけでよく観察はできませんでしたが、とても上質のものだと思いました。

実母を早くに亡くし、祖母やおば達に大切に育てられ、後に美しい継母に育てられたということなども語られていました。
その美しい継母にいい格好を見せたくて、それまであまり勉強はしてこなかったけれど勉強をするようになり、本もたくさん読んだということでした。
そういう方々から受け継いだもの、また善いものを見る機会も多かったのではないかと思います。
馬場さんは能の研究者でもあり、能舞台の前で、訪問着に箔使いのような見事な袋帯をされたお姿も映像で流れましたがその品格に惚れ惚れしてしまいました。
上質ではあるけれど、決して華美な感じではなく、落ち着き、品格、風格、90歳を過ぎた媼の美しい姿がそこにありました。

着物を着ることはただファッションとしてだけではなく、その人そのものをそこに反映させる、恐ろしくもありますが、滲み出てくるものは、その人のありのままの姿であるようにも思えます。
戦前の日本人は着物に対して貧しき者も富める者もそれなりのこだわりをもち生きていた。そのことは人の誇り、矜持でした。


明治生まれの私の母方の祖母は70代で亡くなりますが、三重の山中で暮らしていました。
上の画像は母が祖母の形見分けで、緞子の丸帯の一部をもらってきたものです。地味な祖母らしい好みですが、実際はとてもいい糸質で色も草木染めと思われます。
祖母の残した少しばかりの布にもその矜持を感じるのです。慎ましやかでありながら、毅然と布を見極めている姿が浮かんできます。

祖母は、モノクロームの遺影の中で細かい絣の黒っぽい絹物を着て、白茶地に品の良い細かな模様が(松葉と梅の花のような‥)織り出された絹の織り帯をして写っています。

母によると、ある日自分で街の写真館へ行って撮ってもらったようです。来るべき日の準備を祖母にとって一張羅と思われる絣りの着物を選び、一人で一里も離れた街まで出かけた。
二人の子供を授かったものの夫を母が小学生の時に亡くし、それからも先妻の子供3人を一緒に育てながら、看護師もしながら、林業を受け継いだ長男、孫二人と暮らしていた祖母でしたが、亡くなった時には村々から老若男女が葬儀に来てくれたということでした。
葬儀の時にはこの人には世話になったので、着物の片袖でもいいので欲しいという人もいたと母は私に話してくれました。


祖母の遺影は母の形見として私が引き継いできました。額に入っていませんでしたが、私が額装し、毎朝手を合わせています。見守っていてほしいのです。
その遺影の中で着ている着物は祖母が自分で自分に相応しいものを選んだのでしょう。時代背景や教育、置かれた環境などが色濃いように思います。

歳をとったら黒っぽい着物を着て、半襟も黒くし、細かい柄の帯を小さく結んで・・。
明治、大正の頃は女性は人間としての尊厳や自由さえ認められていませんでしたので、祖母も歳をとったら地味でなければ、、などと思っていたと思います。親の決めた人と一緒になり、嫁しては夫に従い、仕え、子を生み育て…老いては子に従う、というプレッシャーの中であったことは間違いないでしょう。女性の参政権さえない時代だったのですから。

村で困っている人の力になりたいと法医学の古畑種基先生のお父様が開業医で、その病院で手伝いのようなことをしながら、産婆と看護師の資格を取りました。長男は祖母が働くことはあまり良く思ってなかったと、母から聞いたことがあります。“職業婦人”という言い方があって、当時は世間でも嫌がる風潮があり、男としては世間体もあり嫌だったらしいです。今では考えられないようなことですが、、。

しかし祖母は子に従わず、必要としてくれる人のために身を尽くしたのだと思います。でもその長男も継母である祖母をとても大切に慕っていたようです。

私は祖母と離れて暮らしていましたので、母が時折話してくれた昔話だけが思い出となっていますが、母が最後に入院した時に、私は藁をもすがる思いで祖母に母を助けてもらいたく、遺影(まだ額装はしていませんでしたが)を病院へ持っていって母に見せてあげたことがあります。母はしばらく写真と向き合いましたが一礼をして、「もう心配を掛けたくないので家に持って帰ってくれ」と私に言いました。私ならそばにいてほしいと思うのに親子であっても親に対して甘え、心配を掛けてはいけないという昔の教育を受けた者の厳しさを感じました。

私はたっぷり親に甘え、言いたいことを言い、自分の好きなように人生を進んできたけれど、最後に母が言ってくれた言葉は「あなたは好きなように生きてきて、それでも自分のものを掴んだんだね。これで良かったんだね」と。

封建的な教育を受けながらも本当のことに気付いていたリベラルな女性たちは多かったと思うのです。
母は婦人参政権運動の草分けの市川房枝さんを尊敬していましたから。
未だに選択的夫婦別姓さえ認められない日本は相変わらず自立できない国ですね。。

さて、話がすこしそれたようになりましたが、でも生きることは着ることであり、着ることは生きる姿である。自由に自立した生き方は着るものにも反映されて来ると思います。生き方も着方も一体であると思うのです。

特に女達が着ることや布に対する執念が強いのは、見栄からくるものだけではない、根源的な生きる本能の強さのように思います。
何を着るかは人それぞれですが、使い捨てられる衣服からは培われない学びが、上質の着物にはあるということを先輩方の着物姿からも学ばせてもらうことができます。

祖母と馬場さんの着物は対局にあるようですが、その違いは問題ではなく、何を選び、着るかを見極めているかだと思うのです。私の場合は、自分自身を知り、磨くにはまだまだ時間がかかりそうですが、、、少しでも高めていけたらと思います。

お彼岸に布や着物を通して祖母や母を偲び、また現役で活躍される馬場あき子さんの着物姿からも学ばせてもらいました。





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紬の着物の後継ぎ

2019年03月19日 | 着姿・作品


先日の「紬+帯揚げ百彩」の際に、私が以前着ていた紬を引き継いでくださっている方がお越しくださいました。
久しぶりに我が子との再会になりました。
帯はお手持ちのいろいろなものと合うということで「活躍してます!」とおっしられていました。
一回り半ぐらい?若い世代の方です。


この日は落ち着いたモスグリーンのザックリした浮織の八寸の帯を合わせておられました。カジュアルな着こなしです。
この着物は「華かさね」と銘を付けていますが、私の中では少し華やかな場面での装いを想定していましたが、こんなふうに普段にもどんどん着ていただけるのも良いことだと再認識しました。コデマリやリンゴの枝葉で染め、袖口の赤系は茜染めです。

いつも紬塾の初回に黄色系の着物、ピンク系の着物を羽織ってもらうのですが、その際にも使っていた着物です。
身近な植物からは黄色系と赤系(淡い)が染まりますので、ごく自然な無理のない色です。肌映りがよく、どなたにも年齢を超えて似合う色でもあります。


上の画像が紬塾の時のまとってもらっている風景写真です。
この梅染めのピンク系の格子も後継者を探しておりますので、HPからお問い合わせいただければと思います。
ピンクはちょっと、、と敬遠する方も、当ててみるると思わずニッコリ!、「いいかも‥」とおっしゃる方が多いです。
洗い張り、仕立替えまで承ります。

すべて人の手でつむがれた糸を使っています。また長く着て頂けるよう堅牢に染め、織っています。
その仕事を次の世代の方に引き継いでもらえることは大事なことだとです。
繭から命あるものを頂くのですから、そういうものを大切に身に付けたいですし、作り、伝えたいです。


さて、この日私が着ていた紬は、梅染めの絣り刺し子織り(単衣)です。画像は少し青味がかっていますが、こちらもよく着ております。
とても生地感は良く、シワにもならず、重宝なのですが、元々サイズがやや大きめで、またこの一年でかなりスリムになりまして、、洗い張りするほど着てはいないのですが、やはり仕立て替えようかと今年は思いました。また、歳を取ると、身長も縮みます。身丈も今後を見越して少し詰めようと思います。
紬着物はやや小さめが着やすいですね。余った布をあちこち押し込んだり、引っ張ったりの処理をしないで済みます。

この日の取合せは拙作の帯、グリーンがかったグレーの「緑蔭」です。帯揚げは梅染めのオレンジ味のある薄茶、帯締めはグリーンがかったベージュです。
濃厚な凝った紬を、帯や小物たちが静かに見守っているという取合せにしてみました。

この紬もいずれどなたかに引き継いでもらえたらと思います。
この着物の取合せはこちらの着姿ページでご紹介しています。



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「紬+帯揚百彩」展ー明日17時まで③

2019年03月08日 | 展示会


「中野みどりの紬+帯揚百彩」ー草木の色を取合せてー、無事終了しました。
生の草木の色の美しさの一端を多くの方にご覧いただきました。うっとり眺めては「何とも言えない色」という言葉を多くの方が発せられていました。
ご来場下さいました皆さまありがとうございました! 3/9記


こまもの玖さんでの「中野みどりの紬+帯揚百彩」展、初日は紬のトーク&取合せワークショップを行いました。
定員オーバーとなりましたが、なんとか1時間半きっちりでプログラムをこなしました。

曇り空の中でしたが、みなさんとても感動してくださったようで、終わってから感想なども頂きました。
短い時間でしたが、紬、染めの大事なことをコンパクトにお話させていただきました。
質問などもいただいたり、熱心に聴いて頂き、盛り上がりの最高潮に達した取合せワークショップは私にも発見がありとてもうれしく思いました。玖さんの豊富な帯締めがあればこそだったと思います。



お客様のお手持ちの草木染め紬が、なかなか出番がないということで、帯合わせのご相談もお受けしました。
今まではグレー系や寒色系を好まれていたとのことですが、今回美しいピンク系の花織帯をお気に召していただき、小物合わせも玖さんと一緒に決めさせていただきました。※画像掲載はご許可を頂いております。

この着物と帯から新たな発見や気付きが生まれてくるような予感がいたします。


帯揚げを含め、作品はすべて一点物です。ブルー系もこれからの季節は必須アイテムですね。あと、暖色の中で使うとアクセントカラーになり効果的な場合もあります。

帯揚は綸子系などがたくさん出ておりますが、まだ縮緬や絽縮緬などはありますので、お早めにお出かけ頂きたいと思います。どの色も不思議な魅力をたたえてくれています。

合わせたい着物や帯などお持ちいただくなり、着物に合わせて帯をお探しの方、帯に合わせて着物をお探しの方も合うものがあるかわかりませんが、何かハギレなどをお持ちいただければお探しのお手伝いもさせて頂きます。


また、玖さんの方で、私の紬に合う長襦袢や八掛けも用意してくださってます。ちらっとしか見えないのでこんな可愛らしいのもいいですね。裏勝りの面白さ。


帯締めも素敵なものがあります。セレクトさせて頂き展示しました。ワークショップ参加者のお一人がこの帯締めを使い、雛飾りのお供えの菱餅に見立てた取合せも素敵でした。

最終日は晴れの見込みですので、日差しの中で生き生きした自然な深い色を御覧いただきたいと思います。淡い色のものにも奥行きがあります。微妙な色をご覧ください。

明日9日(土)午後5時までです。私は13時半頃から出ております。
お待ちしております。





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中野みどり「紬+帯揚げ100彩」展-草木染め紬ショール②

2019年03月01日 | 展示会


ショールは櫻工房オンラインショップに公開しました。

玖さんでの展示の準備に追われています。
ギリギリセーフでショールの湯通し仕上げを済ませました。
春向けの明るい色目のものも織りました。

早速アシスタントの肩に掛け、写真を撮りました。夕方になってしまい、色がイマイチなのですが、それでもなんとか感じはわかって頂けると思います。
アシンメトリーなよこのラインの間隔に動きが生まれていい感じです!(*´∀`)


梨染のグレーの平織りの中に、バーガンディーと卵色の細い綾織段を入れました。


こちらは柔らかな桜染めのはちみつベージュで平織りを、ピンクベージュで斜子織りの大きな段です。
斜子織りはドレープがきれいに出ます。


斜子の部分はモッコク染めの上品な色です。フワッと優しい色で肌の色がきれいに見えます。

どちらも羽織の上でも、シャツやジャケットにも合わせやすい無地感覚のものです。
もちろん秋冬にもタテ四つ折りに畳んで首に巻きつけてもいいです。
春先もカーディガンやジャケット代わりにお使いいただけます。

立体感のある手紡ぎ糸、節糸で織ってますので、薄いようで体温を溜めてくれて温かいです。
正直、この一点物ショールは糸もたくさん使いますし、合わせ糸を作るのも手間がかかりますし、、また節糸を織るのは毛羽との戦いです。
八万円台の価格もかなりの出血大サービス価格です。(^^ゞ

でも着尺とは違う自由さや楽しさもあってやめられません。。

ただ、力のある節糸の太目のものはもう作られなくなっていて、手持ちの糸もあと僅かになってきてます。
ツルッとした糸や、ただ太いだけの棒のような糸は使う気になれません。。。
糸がなくなれば終わりになる貴重なショールです。草木の生木の色は肌映りもよく、使うほどに、洗うほどに柔らかくなるので惜しげなくお使いいただきたいと思います。広幅(51~52cm)ですが、おしゃれな!男性にもお使いいただけます。(*^^*)

95年からショールは手掛け始めて、数えてみたらなんと140枚も織っていました。
すべて一点物で同じものはありません。

着尺や帯の合間に少しづつ織っていただけですが、沢山の方にお使いいただけたおかげです。2枚、3枚とお求めくださった方もあります。ありがとうございます!末永くお使いいただければ嬉しいです。

こまもの玖さんで紬のショールもご覧ください。

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中野みどり「紬+帯揚げ100彩」展-草木の色を取り合わせて

3月6日(水)~9日(土)

時間:12時―19時(最終日17時まで)
於:こまもの玖

※3月6日トーク&ワークショップ(13時ー15時30分)はクローズドイベントです。(キャンセル待ち)

詳細はこちら。 






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