中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第3回紬きもの塾——とことん使う(運針)

2020年07月23日 | 紬きもの塾’17~’20
紬塾基礎コースも3回目まで進めてきましたが、
コロナの感染拡大が続いており、今後の紬塾開催も懸念されます。情勢を見て判断いたします。

さて、19日に開催した紬塾では着物をとことん着ていく話をしましたが、日々の暮らしの、衣食住についても一緒に考えました。

私自身もそれなりのこだわりをもって暮らしていますので、その紹介を少し致します。
着るものは、普段の仕事中は作業しやすいゆったりした格好で、何十年も前からの服を着ています。母の遺したものも着ています。基本的には擦り切れるまで着ます。繕うこともあります。

外出の際にはもちろん着替えますし、お洒落をすることも好きです。
新しく購入することもありますが、素材と縫製を吟味し、長く着ています。
でも、たくさんはいらないのです。いざという時には着物も少しはありますので。

食に関しては、食材を無駄なく使い切ることや、農薬に頼らない野菜をなるべく使い、屑を出さないよう使えるものは皮も利用する。若くはないので、量より質で選び、少し高くても、味の満足感が得られる食材を選びます。また、旬のものを選びます。

生活クラブの個配を利用していますが、買いだめはしません。
我が家の小さな冷蔵庫はお正月以外はガラガラです。なので、残り物や、使い忘れということはありません。買い込まずとも最小限のものをやりくりします。シンプルです。

生活クラブは環境問題にも力をいれています。リターナブル瓶のものも多く、調味料の瓶なども使い終われば洗って返却し、リユースされます。
消費材が入ってくるピッキング袋も回収、リサイクルしてまた袋になります。チラシも注文用紙も回収され、再生されています。

スーパーでもトレーやプラスチック容器に入ったものはなるべく買いません。ゴミや無駄なものを持ち込まないリデュースです。

町田市はごみ袋を購入しますが、週2回、5Lの一番小さな袋で出します(この小さな袋で出す家庭ゴミを近隣で見たことがありませんが、、)。
紙ごみは小さな紙きれも含め、分別ゴミとして出します。

水や電気やガスも無駄のないよう気を付けます。
洗いものも、先に油や濃厚な汚れは、擦り切れたボロ布や、使用済みのコーヒーフィルターなどでふき取り、排水の汚れ水を少なくします。台所洗剤は使いません。
必要に応じて純石鹸を使います。すすぎは十分にして衛生には気を付けます。
夏の間は、すすぎ水はバケツにためて庭木の散水に使います。
手洗いも純石鹸が、コロナウイルスにも有効であるという科学的データもあります。→☆
抗ウイルス作用はハンドソープの100倍~1000倍あるということです。
私はプラボトルがいやなので、ハンドソープを買ったことはありません。
他人と共有しても石鹸自体がウイルスを変容させてしまいますので安全です。
固形石鹸は、包装もシンプルです。

洗濯はすすぎの楽な炭酸塩を主に使い、後は石鹸です。合成洗剤、柔軟剤は使いません。

電気は自然エネルギーを購入。TVも冷蔵庫も小型ですし、洗濯機は二層式です。
冬の電気ヒーターは使いますが、夏の冷房はほとんど使わなくても何とかなる住空間です。
ガスは保温調理や、圧力鍋の利用、染色も芯まで染めるために保温を取り入れて、省エネしています。

着物を着ることと、日々の細々した生活のことは一見関係がないようですが、つながっていると思います。
工夫することやものを深く見つめ、考えることは着物を着ることにも生かされてきます。
そのことも含め、もう一度今の自分の暮らしを見つめなおし、このコロナの時代を生きていくうえでも、温暖化を少しでも食い止めるうえでも考える必要があると思うのです。
ただ、個人の力ではどうにもならないほど環境問題は複雑で深刻です。焼け石に水かもしれません。でも環境への意識は持っていたいと思います。

生活の最低限度の技術が、洗濯でも調理でも、自動化された機器に囲まれた暮らしで、失われているものも多いと思います。脳が退化してしまうのでは、、と心配しています。
エコライフは脳を柔らかく活性化させ、また想像力や創造力を育てます。工夫は楽しく充実感もあります。無駄を省いた分、ものが見えてきます。

慎ましく暮らしながらも、私の楽しみは人の手わざや、アートなど良いものに出会い、暮らしに取り入れることです。


さて、とことん布を使うための必要不可欠な技術が運針です。
学校教育も男女ともに家庭科にもう少し力を入れるべきと思います。
運針も豊かな暮らしに欠かせないものです。
針という人類が長きに渡り作り、精度を高めて使い続けてきたものが、身近から失われようとしています。

今回の紬塾では、糸を付けずに針(和裁の三ノ三)を進めるだけでしたが、次回は糸を付けて縫ってみましょう。
練習しておいてくださいね。運針は50歳からでも60歳からでも、今から始めて遅いということはありません。若い方ならなおのことです。運針ができることで布の見つめ方が変わります。

私は母の針もつ姿を傍で見て覚えただけですし、特に和裁をするわけではありませんが、古布を使って座布団皮や枕カバー、風呂敷など、並縫いだけで縫います。
運針は足し算、引き算のような、人にとって基本の基だと思います。
身に付ければ便利なものです。誰でもコツを掴めばすぐできます。
指ぬきをぴったりしたものにしておくことが大事です。

今日からの“我慢の連休”を、晒しの手拭いを使って、楽しい連休にしてみませんか?できる人は何か端切れをつないで並縫いだけで風呂敷でも、腰紐でも作ってみてはいかがでしょう。
手拭いの端から端まで運針してみました。動画をFBページに上げました。

過去の紬塾の「とことん着る」も運針について書いていますので参考にしてください。



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第12期/第1回紬塾染織コース―糸をつむぐ&レクチャー「“侘び”の文化」

2020年07月11日 | コロナの時代を生きる




7月からのスタートとなってしまいましたが、紬塾染織コースも第1回目をスタートさせることができました。
初回は、「糸をつむぐ」です。

1時間半弱で3.5gの真綿から糸をつむぎました。今回の3名の方は、細くなったり…太くなったりでしたが、それなりにまあ安定し、貫禄のある糸でした。。(^^ゞ

上の画像は、着尺の糸の太さの2~4倍ぐらいの太さですが、この太さにつむぐことは案外難しいのです。でも味のある、ダイナミックな糸が引き出されました。


綛揚してみても、ほんの僅かな糸量ですが(1反織るには緯糸だけで380gほど必要です)、この体験で、真綿の糸と繭から引き出す糸の感触の違いを体感しておくことは着るうえでも役に立つことだと思います。
この糸はこのあと、草木で染めてみなさんの織り糸として使います。

後半は工芸評論・かたちの笹山央さんのレクチャーでした。
テーマは[〝侘び〟の文化――WABismについて]

“侘び”というと千利休やお茶の特別な世界のように思われるかもしれませんが、そのルーツは一般庶民を顧客とする「一服一銭」の茶屋のもてなしあたりがルーツではないかという説もあるようです。市井のサブカルチャーのような。

立派な道具を持たない粗末な道具で催された茶会を〈侘び数寄〉と呼んでいたとのことです。
名のあるもので人を納得させるのではなく、創意工夫で渡り合うということは、ものや自然を観る力がなければできないことです。
また、心を高めていく“止観”や“禅”の精神文化が、侘びのバックボーンにあると言います。
利休の侘茶はこの〈侘び数寄〉に基づき、高められていったものだという話を伺いました。

みなさんとても熱心に話に耳を傾けてくださいました。
「こんな話を聴ける機会はないので…」という声もありました。

私の創作のルーツも“侘び”だと思っています。
素材も自分も自然体である中で、創意工夫しながら、極限まで高め、なおかつ愉しめたら本望だと思います。

「花は野にあるように」は利休の教えとされていますが、紬もそうありたいのです。
ただ自然風ならいいわけでもなく、その先をめざしたいです。 
着ることも同じだと思います。
特に紬は、これ見よがしな着方ではなく、でもそのまんまでもなく、少しの工夫と、季節感や気持ちのありようも添えて、楽に、自然体で、でも凛と着ることが一番良いと思います。

笹山さんはポストコロナに向けて、「WABismの提案」ということを考えています。
“WABism”は笹山さんの造語です。

1.簡素である  
2.艶(華)がある 
3.足るを知る 
4.差別がない    
5.造化に随う   

この内容の詳しいことはまた、機会を持てたらと思いますが、今後の社会や人の生き方を考えるうえでのキーワードは「WABism(ワビズム)」だと、私も思います。

レクチャーも1時間半ほどの短い時間でしたが、ものを創るうえでも、観るうえでも、使う上でも大事な話を聞かせてもらいました。
更に、自分に引き寄せて深められるといいと思います。

Zoomを使ってWABismの講座をやれるといいなぁと検討中です。
その時はブログでお知らせします。









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