中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

着物の来し方、行く末を詠む

2016年07月27日 | こぼれ話
片付けものをしていて見つけたのですが、30年近く前に銀座の呉服店「むら田」さんで、インドの古渡り鬼更紗の帯を購入し、その際にいただいた冊子、「きものの話あれこれ― 追想 村田吉茂」が出てきました(発行年が書かれてないのでいつのものと明記できないのですが、先代の吉茂さんの雑誌掲載コラムも収められています)。

その中に[「むら田」と母 ]と題された後藤田夫規子さんの寄稿文があり、その86才で亡くなられたお母様がむら田さんで着物をお作りになられていたようです。娘さんはあまり普段は着物を着ないご様子が文中から伺えます。
決して贅沢だったと思えないお母様であったとのことですが、遺されたたくさんの着物を前に、どう受け継げば良いかを逡巡されている文でもあります。
お母様の後藤田恵以子さんは短歌を詠まれる方で、いくつかの歌集から着物にまつわるものを選んでそこにあげておられます。
着物に対して厳しい目をお持ちだった村田吉茂さんへの追想とともに着物を通してお母様への追慕が綴られています。

着物をある程度知っている方、あるいは年配の方にしかわからない歌もあるかもしれませんが、一昔前の日常の中に、生きることとともにあった美しい布を慈しみ大切に着た時代が浮かびあがってきます。
そして僅ばかりとはいえ我が身の着物の来し方、行く末に思いを巡らせています。
大切に選び、大切に扱いつつとことん着る。自分で着れなくなったものはどなたかに継承してもらえるものはお譲りし、最後は着物の短歌か俳句の一首も残して終わりたい、、終われたらいいなぁ、、と思いました。^^;

作る人も、売る人も、着る人も真剣勝負でプロとして生きた時代にもう戻ることはできないかもしれませんが、忘れないでいたいと思います。
そして洋服の形であっても「着るもの」をおろそかにしてはいけないと改めて思います。
掲載されていた八首すべてをご紹介いたします。

・わが生もおおかた過ぎしと思いつつ今年の夏の着物ととのふ

・染めあがりし着物ひろげて部屋に居り冬の日のさす畳あたたかし

・おほ母の古き藍染めの麻ごろもけふ着て吾のいのちすがしも

・まれに来て銀座に立てば群衆の中に和服を着る人を見ず

・染料の樹皮煮るにほひ暑き日に黄八丈織る島にわが来つ

・一日にしばしば着物替ふるなど寒暑によわくなりしと思う

・老いてわが背丈小さくなりゆきて去年も今も着物をなほす

・少女の日着し菊模様のちりめんを媼わが着る半てんとして

                           後藤田恵以子


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第4回紬きもの塾ー真綿から糸をつむぐ

2016年07月16日 | 紬塾 '15~'16


本日は染織コースの方が糸つむぎをしました。
本当にわずかな「真綿(2.4g)を1時間半以内でつむぐ」を課題としました。
そして着尺用の2~3倍の太さを目標にしました。一定につむぐのが一番難しい太さです。
全員が時間内につむぎ終えました。


やや!?太細のあるタイプの糸。


こちらは一定の太さをキープした糸。

4名の方の指導を順番につきっきりでしていると時々「あ~っ↓」と私がため息をついてしまうときがあります。

現代の暮らしは何でもタイマーやらお任せコースのスイッチポン!ですから、単純な道具を使いこなす訓練をしていないので、勘というか、全体と細部を同時に見渡し、瞬時に察知するようなことが少し弱いように思います。

ただ、終わりかけるころにはみなさんコツをつかみ始めましたが・・・

この糸は次回9月に染め、11月によこ糸として使います。どんな風合いの布になるのでしょう・・^_^



午前中に塾の準備をしながら、ヘンプのシーツや肌襦袢、ステテコ、蚊帳生地汗取りなど曇り空の中で洗濯をしましたが、やはり乾きが早く、この時期は麻に限ります。ラミー麻の長襦袢も炭酸塩で洗いサッパリしました。麻は抗菌性もありますし、毎回洗う必要はありません。水も無駄にしたくはないですから。汗だけの洗いには炭酸塩(絹には不向き)はすすぎも楽で本当にオススメです!!

糸つむぎ終了後には汗取りのバイアスに縫うやり方の説明もしました。
前回のヘンプの伊達巻の運針で力がついたようで、汗取りに挑戦する人も出てきました!

紬塾でなぜ運針?なぜヘンプ?と思う方もあるかもしれませんが、みんな一つながりのものと思います。

今日は参加していなかった方ですが、前回の運針の宿題を自宅でされた方がメールをくださいました。
写真と共に一部ご紹介します。

「教えていだだいた麻の伊達締めですが、家に帰ってから2日がかりで
3回やり直し、無事完成しました! 写真を添付させて頂きます。



もっと運針したいなと思い、古い着物を解いたものがあったので、
袷の時期の襦袢用の替え袖を縫ってみました。なかなか真っ直ぐには
縫えませんが、練習したらスピードは速くなりそうです。



前回の先生のお話にあった、着物をコートなど別の用途に着回すこと、
古くなった布を小さく切ってヒモや風呂敷にすることなど、私の祖母や
親の世代まではわりと普通に行われていたことだったのかもしれません。
他の方からお話があった、ハタキや、先生がおっしゃっていた布団や
座布団のがわなど、実家にはたくさん使い回しているものがあったなと
思い出しました。その知恵と技術を受け継げていないのが残念です。」


みなさん本当に真摯な姿勢で紬塾に参加して下さりとてもうれしく思います。
私もため息ついてないで頑張りま~す! 








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武蔵野美術大学特別講義「紬きもの塾移動教室⑦」

2016年07月06日 | 「紬きもの塾」移動教室

黒い紙に綾振り状にして巻かれた糸。


横から見ても美しい!!


真っ直ぐな巻き方もきれいです。


みなさん無心で繭から糸を引き出しています。

先月、武蔵野美術大学工芸工業デザイン科テキスタイルの学生に特別講義をしてきました。毎年、遠くて朝早くて大変だな~と思いながら、かれこれ7年になります。
いつものように絹糸の根本の話から始まり、染め、デザイン、織り、そして着物を着ること、着物をたたむことまで話しました。

親も祖父母も着物を着ない。
振袖や浴衣を着るくらいでほとんど着物とは無縁に育ったわけですが、今年のクラスも「紬」という言葉を知っている学生はほとんどいませんでした。


自分の半幅帯を持ってきてくれた学生に私の紬を着てもらいました。
そばで見ているスウェーデンから来た学生も一度見ただけでほとんど自分で半幅を結びました。
時間がありませんのでさっと纏ってもらうだけですが、二人とものみこみが良かったです。そして何より嬉しそうでした。
紬や麻、木綿の着物を着ることは誰でもできます!


着終わってから、着物を包んできた畳紙の上でたたみ方も見てもらいました。
教室の机の上の狭い場所でも、あの大きな着物をなんなくたためるのですから着物の仕立ての奥深いところです。

講義の始めはなんとなく聴いている感じですが、、、繭から糸を繰り、真綿をつむぎ、草木の色に触れ、紬の着物を着ることを目の当たりにし、狭い場所でもコンパクトにたためる着物の合理性を知るころにはみなさんの表情が確実に変るのを感じます。

素材や技術の話も大事ですが、使う文化があってこその着物、工芸、美術、モノです。
本当の意味で「使える」「使う」ということは作ることと同様に厳しくもあり、高度な感性も必要になります。

「作る(創る)」こと、「使う」ことは「生きる」ことそのものです。そして何より自分を高め豊かにしてくれる楽しみでもあります。

短時間ではありますが、作ることの根本から、使うことのトータルな話をしてきました。学生のみなさんの今後に役立ててほしいと思います。
 
終了後、講義の感想をまとめたものを送ってきてくださいました。
それぞれが特に印象に残ったことを書いてくれていますが似た感想が多いので、その一部をご紹介します。















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