中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

風合いの良い紬を織るために

2014年08月29日 | 制作工程


私の紬の特徴といえば風合いにあります。
それはもちろん元々の紬糸の風合いの良さではあるのですが、ただそのまま使うだけでなく、細めの糸、太目の糸、繭から引いたシャリ感のある糸、真綿のふっくらした艶のない糸、精錬の度合いの違う糸、色合いの微妙に違うものなど、混ぜてよくなるのであれば混ぜます。
無理に混ぜる必要はありませんが・・・^^;
帯の時などは糸ムラの面白さを生かしてあえて混ぜないで織ることもあります。

上の画像はたて縞ですが、よこ糸には6丁の杼を使いました。
画像でも管に巻かれた糸の違いが少しお分かりいただけると思います。

同じタイプの紬糸でも糸ムラをうまく散らして良い景色を作るために2丁の杼に分けて織ることはよくあります。
白に近い黄色味、赤味、グレー味などの糸を一越し、二越と入れています。

縞だからよこ糸は1色(1丁の杼)ということはありません。細かな格子を織るようにしています。

絵を描くのに絵の具をパレットで混ぜ合わせるように糸を混ぜることで生まれてくる色や陰影があります。
また立体的な紬織物は光線によって色の変化や布の奥から発光するような色を呈します。


上の着尺に使ったよこ糸の一部。

生の草木でグレー系を染めるのはとても難しいです。
赤みのグレーや緑味のグレーを細かく混ぜて程よい加減にして織りました。

立体的紬を織るには後は、糊付けや糸巻き、織る時の糸のテンション、筬打ちのタイミング、糸を伸ばさない扱いをすることなどもすべて風合いにつながります。

纏ったときにも立体的な紬はふっくらとしていますので身も心も休まります。
帯の場合も締めやすく、それでいて緩みません。

着物を着慣れていない方にも最適です。

来月からは紬シーズンの到来です!

11月中旬の「紬の会」向け仕事しています。
また少しずつ紹介していきます。



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「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」を観て――

2014年08月22日 | 工芸・アート

95年の5月に訪ねたオランダのゴッホ美術館で買ってきた絵葉書。たくさん買ってきたのですが、たった1枚残ってました。
「グラスに入れた花咲くアーモンドの枝」1888年


夏休みに入る前に紬きもの塾有志の方たちと「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」を世田谷美術館で観て来ました。

鑑賞後には併設のレストランでコース料理をいただきながらミニアート塾(講師・笹山央先生)付きの趣向でした。

食事をしながらみなさんが特に気になった作品や全体の感想などを話してくれました。
図録で確認しながら、ほかの方の話を聞くことで、自分では気がつかなかった作品や観方を知ることができよかったです。
「いつもなら一人で観てただ帰るだけなのに話が出来て楽しかった!」と言ってくれる人もいました。
美術館でのアート鑑賞塾も面白いと思いました。

みなさん、私も含め美術史などを専門にしているわけではありませんが、素人ながら様々な感想、疑問、批評が出ました。
そこから自分の言葉でもう一度考えてみることは大切なことだと思います。学芸員さんが聞いたら青くなるような話もありましたが面白かったです。

美術品をただ崇め奉って眺めて知った気になるのは面白くもないですし、インターネットや本でも情報としてはたくさんありますが、やはり実際にものを見て受ける情報は全く別のものです。

19世紀後半のモネやルノワール、ゴッホ、ロートレック、ガレなど、多くの西洋の人々は日本の美術や工芸品に表わされている自然の美しさや移ろい、モチーフや構図に驚き、模倣し、そして自分の人生、作風に大きな影響を受けながら、西洋の地でジャポニスムを自分のものとして昇華し、偉大な作品にしていったのだということに改めて気付かされました。

自分の腕力だけで描き上げたわけではないのですよね。
何を描くか、どう描くかを日本の文化から学んだと言って過言ではないでしょう。

アート鑑賞塾長の笹山さんは「ジャポニスムは19世紀の美術だけでなく、20世紀の現代美
術へと展開していく原動力になった」という他ではあまり聞けない話をしてくれました。
何か新しい動きが生まれ、成熟し、でもまたそのことから新しいものが生まれる道筋が開かれていく。


19年前にオランダのゴッホ美術館を訪ねたことがあります。

今回の展覧会図録の裏表紙に使われている歌川広重の版画(名所江戸百景 亀戸梅屋敷 )を模写したものが展示されていました(今回の展示では広重のオリジナルのそばに小さなサイズの印刷物で展示されています)。

その時はなぜ版画を模写したのかよくわかりませんでした。
油絵具で描いてもなぁ・・・と。

しかしゴッホ美術館の展示に、ゴッホが亡くなる半年ほど前に描いた「グラスに入れた花咲くアーモンドの枝」というB5判ほどの絵があったのですが、そこにもジャポニスムが反映されていたのだと今回気付かされました。
そのころゴッホは精神を病んでいたといわれてますが、どんな思いであの絵を描いたのでしょう?
私には明るい希望の光と優しさに満ちあふれた作品に思えました。

人は一生のあいだに人生を決定させていくようなモノとの出会いが誰にでもあると思いますが、何か心に迷いや苦しさを抱えているような時に出会うような気がします。でも生きる力をもらえます。

特に心惹かれたその小さな絵の前で、私は一人長いこと佇んでいた遠い日のことを思い出しました。

西洋の人々を驚かせた日本の美術や工芸の素晴らしさは今の私たちにも受け継がれているはずです。
遠い昔の西洋の話ではなく、日本の自然観、美意識を今に失いたくはないと、また日本人の自由な発想、手わざは誇りにすべきものだと思いました。

世田谷美術館で9月15日まで。
このあと、京都、名古屋に巡回。





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暑さ対策・衣食住②――屋根塗装

2014年08月13日 | 自然環境・脱原発

近くの畑のオクラ。

私の仕事場兼住宅の屋根がそろそろ塗替えをしたほうが良い状態になってきていました。
あと1~2年は大丈夫そうでもありましたが、思いきって屋根塗装を先月いたしました。
断熱効果のあるガイナ塗料を使いました。

宇宙ロケット先端部にも使われている断熱技術の応用で民間転用された特殊セラミック層の半艶消しの塗料です。

梅雨明け後に下塗りが始まりましたが、中塗り、本塗りと進むにつれ2階の室温が1~2度下がるのを実感しました。1階との温度差が少なくなりました。

外から来た方も玄関に入ると「涼しい」とすぐ言われます。
初期コストは他の物に比べて高いのですが、エアコンの使用を控えることもできますし、ストレスも少なくなり、環境にも負荷をかけない塗料のようですので長い目で考えると高いとは言えないかもしれません。
普通の遮熱効果の塗料は冬には生かせませんが、ガイナは暖房で温めた空気を外に逃がさない効果もあるとのこと。冬の効果にも期待したいところです。

外壁や内装にも使えますので今後のメンテナンスにも検討したいと思いますが、やはり何年か経たないと何とも言えませんが。。。

庭に木を植え、よしずを張り、日が陰ってきた頃に洗濯や台所から出る生活廃水で水まきをし、可能な限りの涼しい衣服(*^_^*)で涼を求めています。

我慢してエアコンを使わないというより、エアコンを使わない快適さを大切にする工夫をしてきました。

工房は風通しの良い立地ではありますが、扇風機も前にもご紹介したグリーンファンを使ってます。
風で体感温度を下げるようにしています。
エアコンと扇風機やサーキュレーターを併用している方も多いと思いますが、私もエアコンをたま~に使うときには扇風機を併用しています。

NHKのTVは熱中症対策に設定温度28度にしろと妙に!??うるさいですが、住環境や着ているもの、人の体感も違うし、自分で状況判断しますっ!と言いたいです。

良い環境で仕事に集中できるよう、小規模ながらできることをやっていきたいと思います。

今日は午前中は機織り、午後から中掃除!?をして、明日から1週間、櫻工房はお盆休みに入ります。
秋の展示(紬の会)に向けリフレッシュして(近場の温泉に日帰りで行くだけですが・・・(^_^;))また頑張ります!
ブログ読者のみなさまも良い夏休みをお過ごしください。

 蜂は忙しそう・・

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暑さ対策・衣食住①――夏野菜とにゅうめん

2014年08月08日 | 自然環境・脱原発


いつものTさんの無農薬宅配野菜の夕食です。

シソも虫食いもなく元気に届きました。
ナスを油で焼いて、醤油、ごま油少々をかけ、このシソの葉で包むようにいただきました。
ごま味噌をつけても美味しいです。シソが食欲をそそります。

ツルムラサキはさっと炒めてみりん、醤油で味を付け卵でとじます。

きゅうりと椎茸の合いまぜは夏の定番料理です。
だいぶ昔の20歳の頃――東京日比谷にあった土井勝料理学校で習いました。

干し椎茸は甘辛く煮付けます。冷凍しておくと便利です。
きゅうりは縦に割り、斜め薄切りにして塩をしておきます。
ごまをよく摺り砂糖、味噌、酢で和えごろもを作ります。
きゅうりの水気を絞り、食べる直前にしいたけの千切りと和えます。

毎日仕事を終えて作る料理は、さっと調理できるものばかりです。
でも旬の野菜を頂くときとても幸せな気持ちになります。

枝豆もコクがあって美味しかったです。
夏に種を撒き、秋に収穫する枝豆も美味しいです・・(虫が来なくて良いそうです)



この夏はにゅう麺を夕食によく食べています。

今までは夏に残ったそう麺を片付けなければ、、と秋に何度か作る程度でしたが、この夏は冷たいそう麺をまだ食べていないのです。
にゅう麺一辺倒になってしましました。

エアコンを使わない暮らしをしていますのでどうしても冷たい麦茶などの飲み物が多くなります。
夜のビールも欠かせません。
いつの間にか身体が冷えています。

先日、美容師さんが昼間冷房で身体が冷えているので夜はにゅうめんをよく食べるとのことでした。お腹が落ち着くと。

熱々を食べるのではなく、かけ汁は少し冷めてる方が良いとのこと、私もひやむぎで早速やってみました。

茹でたての熱々麺に、少し冷ましたかけ汁でちょうどよいです。
具は凝らないで、有り合わせを入れるだけの方がさっぱりするように思いますがお好みで。

私は玉ねぎ、干し椎茸は必須アイテムです。だしが出て美味しいです。
夏野菜のオクラ、ツルムラサキなどのヌメリ系や、ナス、ミョウガなどもとても合います。

お腹にとても優しく美味しいです!!

あまり無理をせずに旬の野菜やくだものを上手に摂り夏を乗り切りたいですね。


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