中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第9回紬きもの塾  きものを着る

2011年12月30日 | 紬塾 '9~'12

紬塾も残すところあと1回となりました。
いよいよきものを着るところまできました。

まず、きものを着るために必要な下着類や小道具について、
素材選びなどを中心に一つ一つ説明をしました。
腰紐や伊達〆、襦袢も素材の良し悪し(糸質)で着心地が違いますし、着崩れもしにくいです。
また、なるべく国産のものを選びたいですね。
きもの関連の事業者、職人さんがいなくなれば、
きもの文化を継承することができなくなります。

着付けはごくシンプルに、襦袢用に伊達〆1本(すべりにくい素材)、
きものに腰紐1本、胸紐(平ぐけ)1本で着付けるやり方を説明しました。
名古屋帯は仮紐やクリップを使わない、ねじるだけの結び方です。
帯が短いときは仮紐やクリップを使うとよいかもしれません。
この着方は本当に簡単で楽です。





先日の可喜庵での展示会に紬塾の卒業生がきもので来てくれたのですが、
以前は着付け教室で習った着方をされていたのが、
見違えるように楽に着こなしておられ、気持ちよさそうでした。
衿も差し込み式から三河芯に換えたということで、とても自然に見えました。
(写真を撮っとけばよかったですね。)

紬はこういう楽な着方でよいのではないかと思います。
あまりきちんとした木目込み人形のような着付けは、ハタで見ている方も息がつまる感じがします。
ポイントをしっかり押さえておけば、あとは数をこなして“習うより慣れろ”です。
あとは時間を見ながら着ることも上達には欠かせませんね。
織りの仕事でも若い頃は時間を見ながら、早くてきちっと無駄なく美しく仕事をする訓練をしました。
プロの仕事は時間をかければいいというものではないですから。
きものを着ることも同じだと思います。

以上、塾に関する報告です。

さて、今日が私の仕事納めになります。お陰様で1年無事に染織の仕事が出来ましたことに感謝しています。
ありがとうございました。

今年は震災、福島の原発事故と大変な年となりました。
原発事故の方は時間が経つにつれて被害の範囲が計り知れないものになってきています。
復興しようとする人々の足を引っぱっているようで、本当に心が痛みます。
今年を底として、来年からは少しでも人間らしく、安心して基本的な生活ができるよう
この問題に関心を持ち続けたいと思っています。
また、私が日々できることは、染織の手仕事を通して美しい自然や
美しいものを大切に考えていくことだと思います。

経済最優先の国や財界の方針は人々を幸せにしたのでしょうか?
原発がなくても幸せに暮らせる社会を私は望みます。
以前にもお知らせした「さようなら原発1000万人署名」が
今月21日時点で約320万人だそうです。
(他方、原発再稼動の準備は着々と進められているという報道もあります。)

署名がまだの方も、賛同いただける方は是非ご家族、お仲間に声をかけて、
集めていただけるとよいかと思います。
私も最終〆切りの明年2月28日までは、人の集まるところには用紙を持っていき、
署名集めを続けていくつもりです。
署名用紙はこちらのサイトからダウンロードできます。



藍地経絣着尺「冬の流星」

年の瀬によき人と出会い来春には私の元を離れるきもの。
明年はよき年になるよう星に願いを込めて。

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「紬きもの塾」移動教室②―――――武蔵野美術大学にて

2011年12月19日 | 「紬きもの塾」移動教室


昨年に引き続き、11月30日に小平の武蔵野美術大学へ特別講義に行ってまいりました。
今年も紬糸のこと、植物による染めのこと、紬の織りのこと、着物文化、そしてミニ着物着付け教室も加え、最後はきものの畳み方で締めくくりました。
授業ですでにいろいろ染や織りを学んでいる方々ですが、着物については特にカリキュラムにないようです。

着ることについても、腰紐1本でおはしょりを決めることさえしっかりできれば、あとは半巾帯を前で結べば若い方はまずは充分だと思います。
若い人がきものはいろいろな意味で大変なもので自分には無理と決めて敬遠しないで、染も織りも心得があるのですから尚のこと、着物や布を大切に思ってもらえると嬉しいです。
昨年講義を聞いてくれた一人は(4年生)自分で糸を紡ぎ着尺を織り始めたところで見てほしいということで機場の教室で見てきました。細い美しい糸でしたが少し細すぎるようでアドバイスもさせてもらいました。

学生たちから感想をもらいましたので、その一部を抜粋して以下に載せます。

成人式で着物を着たのがとても楽しくて、
ゆかたも好きなのですが、自分で着たことがないので、
今日見せていただいたような日常で着れるものを、自分で着てみたいと思いました。

手仕事でいやだと思ったことがないと先生が言われていたのが印象的で、
私も手仕事を続けていきたいと思いました。


真綿から直接糸を引き出してもらう。

カイコがつくる1本の長い糸を、人間がまた巻き取って
そこから布をつくるサイクルが良い回転だと思いました。

中野先生の織った着物がとてもシンプルなのに、
色合いがとてもやさしくて、すてきでした。
是非来年のお正月には着物を着たいと思いました。

着物の考え方や構造がシンプルでとてもいいです。単純でありながら深みがあります。
草木染の出てくる色には嫌味がなく、なんだかスッとなじんでくるものがあります。

着物は今では一部の趣味の人が着たり、特別な時でしか着ないものと思って、
扱いにくいものだと思っていましたが、着方もそんなにむずかしくなく、
コンパクトにたためて、とても使い勝手のいものなんだなと思いました。
一枚で何世代にもわたって使えるし、とてもエコロジーですね。

初めて‘きもの’を着てみました!
ただ見ているだけのときは、おびでぎゅっとされている感じで、
歩いたり動いたりがちょっと難しいかなと思いましたが、
思ったより全然動きやすかったです。
きもののたたみじわって、きものを重ねてしまうときの重みで
自然にできているというのがすごく印象的でした。

植物染料の色は本当に美しいと思いました。
着物は思っていたものより身近なものなのかも、と思いました。


繭を煮て、蚕が吐き出した1本の糸を巻き取っているところ。

絹ってつやつやの糸のイメージしかなかったのですが、糸にする方法によっては
木綿のようにもなるということを知ってびっくりしました。面白かったです。
お湯につけると1本づつ糸がほぐれていくということも、
蚕のまゆが全部1本の糸でできているということを改めて実感できて感動しました。
それと、着物がとても着たくなりました――自分で着れるようになりたいです。
たたむとピシッとコンパクトになって、着物ってよく考えられて
作られてているんだなあと実感しました。

着物のとことん使う文化という話がとても興味深かったです。
今の世界は大量生産、大量消費の中にあって、
使い捨てのような薄っぺらいものが溢れているので
本当のよさを感じることができなくなっていて、悲しい世界だと思いました。
来年のお正月は祖母の着物を着て新年を迎えたいと思いました。
ありがとうございました。

着付け教室もありがとうございました!
ゆかたなら一人で着られるのですが、ほとんど変わらないのですね。
春先、着物で出掛けたいなと思いました。

すてきな着物を着させていただいて、すごく楽しかったです。
今度、自分でも着物を着てみたいです。


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