中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

紬塾を通しての出会いの中で

2021年04月21日 | 紬塾’21~’24
紬塾も12年の歳月が過ぎ、今年で13年目に入ります。
干支で言えば一回りです。よくぞ続きました!(;´∀`)

いろいろな方との出会いがあり、今もお付き合いが続いている方もたくさんいるのですが、皆さんとても真面目な方ばかりです。
でもおおらかで、優しく、本当に嫌な思いなどはありませんでした。これだけ続く中で珍しいことだと思います。
みなさんの人としてのレベルの高さに支えられてきたようなものです。

さて、20年度の紬塾基礎コースに参加くださった方で、毎回私の着物、あるいは帯を締めて来てくださった方があります。
塾が始まる前に着姿を撮らせて頂いたのですが、最後の回は着物と帯をセットで着て下さいました。

「華かさね」と題した、私が何度か着た着物ですが、後を引き継いでくださいました。
本当にたくさん着て下さり、時々着姿写真などをメールで送っていただいていたのですが、いろいろな取り合わせで季節ごとに楽しまれているご様子で嬉しいかぎりです。
Iさんは明るいはっきりしたお顔立ちの方で、コデマリで染めた温かみのある黄色がとてもよくお似合いです。


帯は山笑う三本シリーズの一本です。太鼓と前に赤い切り替え線が入っていて、ちょっとしたアクセントになります。今は手に入らない赤城のおばさん糸でザックリと織った味わいのあるものです。
こちらもいろいろな着物に合わせて使ってくださっています。
擦り切れるまで使っていただきたいです。

紬塾に以前から関心を寄せてくださっていたそうですが、耳がご不自由なので、一対一の時は口の動きなどで話を理解できるけれど、複数人に向けて話す紬塾の話の内容が理解できるかどうか、躊躇されていたとのことでした。

でも昨年お問合せをいただき、いろいろ工夫してやってみましょうということで始めましたが、私の話を録音して、後からPCで音声の文字起こしをする方法をとりました。

また、先にメールで話の内容をザックリお知らせし、参考にしてもらいました。
順番にやる『きもの』の感想発表も先にテキストで送ってもらい、私が代読する形にしました。
実際に手に取ったり、見てもらう事の多い紬塾ですので、完璧ではないけれど、何とかなったのかな、、?と思っています。
至らない点は多々あったと思いますが…

着物が本当にお好きな方で、家の中でも着ていたいという方です。
着付けは自己流でしたが、名古屋帯の柄の出し方や、仮ひもを使わないで結ぶやり方を知ってもらいましたので、早く締められるようになったと喜んでくださいました。(*^^)v

最後の回の着方はとても楽そうで、自然な感じでした。
また来年は染織コースにも参加したいとのことで、さらに紬織りへの理解も深めてもらいたいと思います。。



もうひと方、私の半巾帯を毎回締めて来てくださった方は、絵本作家のおまたたかこさんです。

参加のいきさつは、あるところで、手持ちの本の交換会があり、そこで着物関連の本を提示したHさんの本を引き継いだことがきっかけでした。Hさんは以前紬塾にも参加してくださった方です。
Hさんも今もお付き合いしている方ですが、魅力的な人形を作る本当に素晴らしい方です。

またHさんが拙作の半巾帯を締めていて、その色にもとても惹かれ、自分が色鉛筆で描いているい絵本の色使いにも共通するような気がしたそうです。
さらには、叔母様の着物もたくさん譲り受けていて、どのようにしていくのがよいか、、と思っていた時に、紬塾のことも知り、着物についても学べるならと受講して下さいました。

半巾帯はあまり使ったことは無かったのですが、紬塾の最終回でしっかり学びましたので、これからはいろいろな結びを楽しんでもらえると思います。この帯は1本がひと柄になった面白い帯で、結び方で、また手と垂れを替えることでも色合いがいろいろに楽しめます。使い手にとってもクリエイティブな帯です。上級者向けかもしれません。


写真でもいろいろに結んでいて結び皺が写っていますが、この点についても紬塾でアイロン掛けの実演付きでお話ししました。(写真は紬塾最終回での実演)
スチームアイロンを中温にして軽くかけますが、縫い目や輪になっている下線をつぶしてしまわないよう、避けて掛けます。
私の紬は当て布なしでも大丈夫ですが、化学染料のものはアイロンで色が変わってしまうものもありますから、当て布をしたり、目立たないところで試すとよいでしょう。

さて、おまたさんの絵本作品もご紹介しましょう。


手元に『くまのしゅげいやさん』(小学館)という絵本があります。


見返しをめくると登場人物(動物)が描かれています。影もいいですね!
色鉛筆で優しい色合い、タッチで丁寧に描かれています。


朝はお掃除から始めます。


くまさんは手芸屋さんもしていますが、作ることも大好きでいろいろなものを作り、何にでも刺繍もします。

庭の草花や、生地の花柄、小道具の細部までこだわりが感じられます。
お客さんにも親切に相談に乗ったりして、服のお直しまでしてくれる優しいこころの手芸屋さんです。
うさぎさんはワンピースの袖丈を直しに持ってきたようです。

身の回りを美しく整え、ものを大事に作り、使うことを幼い子供のうちから触れてほしいと思いますが、大人にもとても良い絵本だと思います。
インターネットや書店で注文して、ゴールデンウィークにでもゆっくりご覧ください。(1,300円+税)

おまたさんのHPはこちら

紬織りを通して、私も真面目で素敵に生きる女性たちに出会え、本当に幸せなことだと思っています。

今期の方々ともコロナの感染防止対策に気を付けながらゆっくり進んでいきたいと思います。

工房の花たちも次々に咲いています。


リンゴの花には今、蜂がたくさん来ています


満開の八重の山吹。


ビオラも小さな寄せ植えでも次々と花を咲かせています。



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第12期「染織実習コース」無事修了

2021年04月11日 | 紬きもの塾’17~’20
第12期の染織実習コースも4月の初旬に無事終えることが出来ました。
コロナ関連のこともあり、日程が大きくずれ込みました。
最終回は大阪からの方が感染拡大の中、大事をとり欠席で、3名で麻(ヘンプ)の伊達締めを縫いました。

何しろ、(^-^; 運針に時間を掛けましたので、みなさんその成果を発揮して下さいまして、、針が指に刺さったり、、もありましたが、兎にも角にも、無事に時間内に縫いあげました。(´∀`)

博多の伊達締めが一般的ですが、麻は吸湿性と放湿性に優れ、長襦袢の上に使うと汗取りの役目もしてくれます。洗うこともできますし、私は愛用しています。皺になりますが、霧を掛けるだけで皺は取れます。すぐ乾きます。掌を濡らして叩くようにしても大丈夫です。

一人分、生地の長さが足りず、接ぎ合わせて縫うことになりました。接ぐことの練習にもなり、赤い糸で、縫い代を落ち着かせるために二目落としもやりました。6尺の長さが必要ですが、3尺しかなかったので、着尺巾をたてに切り、真ん中でハギ合わせました。接ぐ手間はかかりますが、前中心がわかりやすいと喜んでおられました。


本来は古布を使って、自分で伊達締めにふさわしい生地を見繕い縫いあげるものなのですが、今は家に古着の着物や襦袢もなく、新しい麻生地を買って作りました。
何でもない直線縫いの仕事ですが、それでも自分で縫うと愛着が湧いてきます。

運針をやってもらうことの意味は、よくものを観ること、指先の感覚を磨くことなのです。
上手い下手というよりも、素材に合った針の太さや、糸の太さ、何を縫うのかによる針目の大きさなどを瞬時に判断できるかにあるのです。
何とか丁寧に、細かく縫えばいいというものではなく、幸田あや著『きもの』でも出てきましたが、大針で飛ぶように縫えばよい箇所もあるのです。
着ることが、生き死にをかけた仕事だった時代から、今は考えられないくらい豊かな衣の時代なのかもしれませんが、私には何かうすら寒い、寂しい時代にも思えるのです。

運針で身の回りのものを作ってみてください。和裁教室に行って着物まで縫えるようにならなくてもよいのです。
腰紐一本でもうまく縫えるでしょうか?素材は何がいいですか?針の長さや太さはどうですか?
いえ、雑巾でもいいです。縫えますか?台布巾はどんなサイズ、素材が良いですか?
考えたり、工夫することがたくさんあります。

それは創作活動です。残り糸や色糸を使えばより楽しいです。
紬も屑繭から糸を引き出すことから始まったと言われます。
工夫することは着物を着る上でも役に立ちます。
そしてそれは日々の暮らしの中でも同じことが言えるのではないでしょうか?

これからも運針を活用して、古布などを使って身近なものを縫ってほしいと思います。世界が広がり楽しいですよ。(^^♪

最後に皆さんから染織実習の学びのレポートを送ってもらいました。
紬塾に関心を寄せてくださる方は、是非参考になさってください。

単に織り物を織るだけでもなく、また着物を着るだけでもなく、創ること、着ることの根本を見つめながら、現代社会に活かしていきたいと思っています。
今期の方もみなさん本当に真面目に取り組んで下さいましたが、特に連携が強くて素晴らしいメンバーだったと思います。ありがとうございました。

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紬塾実習コースでは、念願の糸紡ぎから草木染め、機織りまでを体験させていただきました。
糸は風合いを殺さないよう丁寧に扱うこと、染める前に糸本来のウェーブを蘇らせること、草木の適正な季節を見定めて本来の色を引き出すこと、植物から抽出され染液をガラス瓶などに入れ、色素や糸の状態をよく観察し、糸に馴染ませていくこと、そして糸の持ち味をいかに無理なく織り込んでいくか、などなど。
作業に向かう先生の、一瞬一瞬の真剣な眼差しが印象的でした。
「理屈じゃないのよ」と先生は何度もおっしゃり、適時の判断で素材の命を最大に引き出そうとする意気込みが伝わってきました。
最後の授業では麻の伊達締めを縫いましたが、布に添わせて針を運ぶ事で、布を痛めずいつでも解いて再利用できる事を学びました。どの授業も一つも無駄はなく、自然の恵みをいただきながら生きる知恵の数々を教えていただき、一生の宝物のような貴重な経験をさせていただきました。本当にありがとうございました。 I.K.

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染織実習では、一枚の布を織り出すために、真綿から糸をつむぎ、染め、そして織るという一連の工程を教わりました。
先生のお庭の木の枝を落とし、それを細かく切ってチップにし、煮だして白い糸や布を染め、乾かしてはまた重ねて染めるという工程を通して、染めるということは、折々の自然の恵みを享受し、感じとり、四季を愛でること、そして無駄なく生活に活かすことであるということを学びました。また、自分の望みの色を得ようとするのではなく、自然がどんな色をもたらしてくれるのかということを期待し、楽しみに待つのだという謙虚さが根底に流れているように感じられました。経済至上主義、効率主義…そんなものに踊らされない、自然物である人間としての謙虚さと自然の恵みを大切にする不動の強さ、そしてほんものの美しい生きかたとはなにかを学び、考えさせられました。これからも教えていただいたことを大切に思い出しながらきものに関わっていきたいと思います。 U.M.

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昨年の学びから、日々好きなものに囲まれて暮らしたいと願って、ささやかながら季節の流れに応じて部屋を整えていると、いつの間にか、心和ませてくれるものは自然の色や素材でした。
時間が経てば経つ程にじわじわと良さを感じさせてくれます。
なかでも天然の色はどこにあっても周りと調和し、今回の実習でも、草木の色馴染みの良さにすっかり魅せられてしまいました。

初回の糸紡ぎから楽しくて時間の過ぎるのが早かったこと!
糸繰りも、憧れていた機織りもあっという間でした。
糸染めは工程が多く、繊細な作業が予想を超える難しさで緊張しました。

一緒に染めた半衿が素敵な色に仕上がりました。柿の小枝を煮出した染液で染めましたが、肌に馴染むのを見て、これが自然のもつ力なのだと感じました。

今ある物で暮らしを彩る「足るを知る」という言葉を以前よりも感じるようになりました。
着物を通じて広がった世界を今後も楽しんでいきたいと思います。
もうこれでおしまいかと思うととても寂しいです。
2年間、ありがとうございました。 K.Y.
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参加者のお一人は、基礎コースの時にも毎回拙作の帯を締めて来てくださったのですが、最後の回にも花織の帯に着物や小物を替えて参加してくださいました。
着こなしもとても自然で美しかったです。
帯揚も私が染めたものを使ってくださっているのですが、リンゴの黄色を下染めし、あとから化学染料を少しずつ染重ねたペパーミントグリーンのような色です。  
帯締めも春の若葉を彷彿とさせるチョイスですね!
使うことは創ることです。毎回、ありがとうございました。 

床の間には一重の山吹と雪柳を活けてお迎えしました。
三角の蕾も可愛いです!

                     


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第12期「紬きもの塾'20基礎コース」修了しました

2021年04月05日 | 紬きもの塾’17~’20
紬塾受講生のレポートを追記しました。4/5

コロナの影響で会期の延期などがありましたが、昨日無事修了しホッとしました。

最終回は着物の寸法について、最低限把握しておきたい箇所について、自分の着ている着物の寸法が、本当にいいのか、着方、着物の種類などでも違うことも話しました。
一人一人チェックしました。裄、身丈が必要以上に大きい方、多いですね。


あとは半巾帯結びの練習、名古屋に慣れている人にはかえって難しいかもしれませんが、慣れれば楽です。コツをつかんで練習あるのみ!
割り角出し、吉弥、文庫をしました。写真は割り角出しの外巻き?をしているところです。

幸田文「きもの」のまとめをして、紬塾が目指していることなど話して締めくくりました。
着物を着るということは、突き詰めると自然環境を大事に守ることです。

終わって感想なども伺いましたが、終わるのが寂しいとおっしゃっていただきました。
今期の方はみなさん一応一人で着物は着られる方でしたが、半衿の付け方や、名古屋帯が前のやり方より早くなったなど、それぞれに得るものがあったようでよかったです。(*^^)v

参加の皆さんからのレポートは以下の通りです。

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私が紬塾を受講するきっかけは、祖母からゆずり受けた一枚の紬です。40年以上前に織られたものですが、着やすさに魅せられ、紬をもっと知りたいと思いました。

講座は、紬の「過去・現在・未来」を俯瞰する,多岐にわたるものでした。ホームページの案内から想像していたものを超えた、本当に盛りだくさんの内容でした。

毎回、幸田文の「きもの」の読後感想発表と各回のテーマに沿ったレクチャー(時に実習)が行われました。

「きもの」は初読ではありませんでしたが、着物と登場人物の描写から,当時の人々の暮らし方や時代の空気も感じることが出来ました。また、毎回の皆さんの感想を聞くことで,新たな視点をもって,着物を見つめる事が出来ました。

レクチャーでは,布地としての紬の基礎知識からはじまって、糸をよる体験(難しかったです)、着物を着るのに役立つ運針(これも難しかったです)、着物と帯・小物の取り合わせ(楽しかったです)、着物を楽に着るための寸法指南と半幅帯の結び方講座(是非チャレンジしたいです)まで、紬を核に、時には着物の枠を超え、日々の生活で実践すべき事項など、生きていく事の考察にも及びました。

コロナウイルスによる緊急事態宣言等の影響で,気楽な外出や,友人達と会う事が出来ない一年だった事もあり、書籍やウェブ検索で得られる知識も沢山ありますが、実際に集い話を聞き、着物に触れる事は、比べものにならない刺激となりました。中野先生の染め織られた着物や帯から感じられた,自然の懐の深さも強く心に刻まれました。

一年間学んだ事を,ノートを見返しながら理解を深めていきたいと思います。教えていただいた帯結びと、アドバイスいただいた寸法で着物を仕立てて着る機会も持てればと思います。(また、是非運針をマスターして半襟つけの時間も短縮したいと思います!)

貴重な時間をいただき、ありがとうございました。 I.M.

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紬塾を終えて…
私は、色鉛筆で絵本の挿絵を描く仕事をしております。
最近はパソコンで絵を描く方がとても多くて、私のような時間がかかり印刷に出すと発色も落ちる手描きの技法は、描いているときは本当に満ち足りているのですが、この忙しい社会にやっていけるのだろうか、と不安がよぎることもあります。

そんな中で、初めて先生の帯を目にした瞬間、その彩りの美しさ、儚いようで力強い手触り、模様のモダンさ、全てに惹かれました。
その帯をお持ちの方から、その時に紬塾のことを教えてもらい、さっそく受講させてもらいました。

先生は手つむぎの糸の風合いを大事に自然の姿を残しながら制作されています。そうすると均一でない風合いのある織物ができていきます。
その様子を間近に見て、先述の不安はいつの間にか消え、むしろこの時代に丁寧に物を創ることへの誇りを感じるようになりました。
安価にいろいろなものが手に入り、安易に捨てられていく現代に、先生の姿勢は、机上の論理よりも力強く真っ直ぐに心に響きます。
どこにもない唯一無二のものを生み出すことは並大抵のことではありません。
ですが、自分の人生を楽しんで、自分にとって価値あるものにするもしないも、自分の日々の積み重ねからなのだと気づかされました。

講義では、着物の楽な着方から、手入れの仕方、作り替えについて、自分の知恵を働かせて、次の時代にも繋いでいけるように着物を大切にすることを教えていただきました。

それまで、私は着付けというと何回も着付け教室に行ったもののうまく着ることが出来ず、出かけるときは崩れるのが怖くてぎゅうぎゅう巻きにし、帰宅するとがっくり疲れていました。
先生は、着物は紐2本で着れるのよ、と笑って、楽で自然な着付けを教えてくださいました。
これで私も着物を怖がらずに日常に取り入れていく事ができるでしょう。

また紬塾を知る少し前に、叔母から山ほど着物を形見で譲り受け、これをどうしていったらいいのだろう、と途方に暮れていました。
叔母の着物も大事に着れそうな気がします。 O.T.

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上質なものを長く、先生の丁寧な生活への考え方に感動しております。
また着物はきちっと綺麗に着なければと考えておりました。
半襟を衿芯に先につけておくこととか、補正をしないで楽に帯を結ぶ方法などを学び、
着物を着ることに対して解放された気分です。
紬塾に参加させて頂き有難うございました。S.H.

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着物が大好きで、実際に着物を織る方から学べるいい機会だと思って受講しましたが、予想以上の収穫がありました。

着物や帯が織られる糸は繭からとられた絹糸。それは知っていましたが、実際に真綿から糸を紡ぐ体験をし、中野先生が実際に織る糸を見せていただき、蚕がどのように繭をつくってゆくかの話を伺ったことが、私にとっては新鮮な発見であり新たな知識でもありました。

蚕が8の字を描くように繭をつくること、繭からとられた糸はその8の字が残す縮みがあること、人の手でつむがれる糸と機械で紡がれる糸では手触りが違うこと・・・当たり前のことですが、「人の手」でつむがれる糸を身にまとうことの重みを感じました。

普段私たちが見る着物は既にできあがってあとは着るばかりの状態です。華やかなデザインや色合いばかりに目をとられがちで、最初に見て「素敵だな」「着てみたいな」と思って手に取ることが多いでしょう。
人の手で染められ、織られたもの、そういう認識はあっても、あくまでも「着るもの」としての着物でした。

中野先生の紬塾を終えた後、1枚の布ができあがる過程を考える機会を与えられ、蚕の繭から人の手で糸がつむがれ、植物から採られた色で染められ、人の手で織られ、仕立てられることの流れを思い、どの過程でも自然の手がはいるため二度と同じものはできないことを実感し、「一期一会」ということばが浮かび上がりました。

そして、人の手も含めてすべてが「自然からいただいたものを生かしている」ことを、今更ながらに理解し、先生が常に環境問題を念願において毎日を過ごされていることにも納得いたしました。
着物と環境がここで結びつくとは思わず、奥が深い・・・!と着物や布に対する見方が変わって自分でも驚いています。

また、幸田文さんの「きもの」の読み合わせで、先生のコメントを伺い、まだ自分が着物を特別視している点があったことにも気づかされました。
やはり、洋服とは動き方や着こなしが違いますし、着た時の意識や気分の持ちようも変わってきますから、幸田文さんのように生きることに根ざし、自然にさらっと着こなすにはまだまだなのかもしれません。

晩年の幸田文さんは、着物がなくなるかもしれないという危機感を抱いていたようです。ですが、彼女の着物に対する思いは娘さんからお孫さんに引き継がれ、着物も残っています。
「一期一会」のおもいが詰まった布は消えてなくなることはないでしょう。
最後の中野先生のお言葉のように、着物を引き継ぐというところまではいかずとも、自分が大好きで楽しいという思いそのままに、私はできる限り着物を着続け、最後の1枚まで愛おしんでゆきたいと思いました。 I.K.

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4月1日(木)から13期紬塾の募集受付がはじまります。
不明な点はお問い合わせください。
コロナの状況を見ながらの開催となりますので、今年も延期などあるかもしれませんが、一応お申し込みの受け付けはします。
詳細はこちらの記事を参照ください。

この日は花曇りで、三分咲きの工房の桜も少し寂し気でした。
桃の花も桜と一緒に満開になっていますが、帯は燕子花と桃の刺繡が施された御所解き文様の帯を締めました。こちらは賑やかです。(*^-^*)



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