中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

今年の締めくくりにつくづく思うことと、アート鑑賞いろは塾お知らせ

2013年12月28日 | 工芸・アート

千切りに巻かれた経糸と、整経を終え、鎖に編まれた経糸。

昨日、今日と続けて糸巻き、整経、経巻きを2反分終えて、お正月明けからの仕事の準備をして染織の仕事の締めくくりとしました。
どんな感じに織り上がるのでしょう。
織物は緯糸が入らなければ見えてきませんので、機に掛けるまでは不安な気持ちも大きいのです。
今年も目一杯仕事しましたが、来年も個展やグループ展、かたちの会のイベントもいくつかあって忙しくなりそうです。
自分の織物の仕事だけではなく、工芸全般に関われることはとても嬉しく、そこからの学びも多いのです。
「アート鑑賞いろは塾」も回を重ね、来年1月18日(土)が初級編の最終回となります。
次回テーマは「わび、さび」です。どんな話しが聴けるのか、とても楽しみです。
是非ご参加ください。詳細はこちらから。終了後は軽く!!新年会です。^ヮ^V
よかったら着物でお出かけください。

それにしても、つくづく思うことは、着物だ、工芸だ、美術だ、と分ける時代はいい加減に終わりにして、本当によい仕事、よいもの、感動できるものが、巷に生きたかたちで産み出され、少しでも増えてくるといいと思います。

非力ながら、自作も頑張らねばなりませんが、後進への指導、紬きもの塾や、アート鑑賞塾など、「かたち」の笹山さんと協力して、力を尽したいと思います。
皆様のご協力もよろしくお願いいたします。

そんなことも含めて、アート鑑賞塾は来年も続けていきます。
初めての方でも、毎回でなくても大丈夫ですので、ご参加ください。
今まであまり美術館へも行ったことのなかった一般の方も参加してくださっていますし、作り手、使い手、鑑賞者を問いません、というか、、、
それらは一続きのものですね。

明日は工房の大掃除、30、31日はおせちを作り、ささやかにお正月を迎える準備をします。
三ヶ日は朝からお酒も飲みたいですし、^ヮ^V
包丁も、鍋、釜も休ませるべく、年末にやれることをやっておきます。

床の間に活ける花は蝋梅を買ってきました。

これらの年末の準備は古からの、ものや、人への配慮、知恵、未来への意味、願いがあるのですね。
身の引き締まる思いがします。

大掃除は明日にずれ込みましたが、とにかく無事に仕事をさせてもらえたことに感謝と喜びが湧いてきます。

みなさまも、それぞれの良いお年をお迎えください。








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第9回紬きもの塾――着物を着る

2013年12月18日 | 紬塾 '13~'16
4月から、段階を踏んで紬織りの糸や風合いなど、元のところから学んできましたが、いよいよ着物を着るところまで来ました。
参加者のうち、月に2~3回は着物を着る方が2名ほどで、他の方はほとんど着ていないということです。
また、着ている方でも着るのにかかる時間は30分以上ということでした。
滑らない生地の着物の場合は着るのはたやすいことですが、帯はものによって長さや、ポイント柄の位置や、帯地の固さなども違ったり様々なゆえに、慣れない帯の場合はやり直したり、案外時間を要すこともあります。

帯を新しく仕立てる場合は、自分に合う長さで頼むと良いと思います。
自分の寸法を把握しておくことも大切ですね。
ただ、年齢と共に体型も変わりますので多少のゆとりを持っておく必要もあります。
私も50代から少しずつ太り始めて、短めの帯が多くなってしまいました。
「やせなきゃ!」と締める度に思いますが。。。

付箋だらけの『きもの』幸田文著(文庫本もあり)

紬塾では幸田文『きもの』を参考テキストにさせてもらい、今までも毎回、1~2名ずつの方に、その内容からの気づき、発見などを2~3箇所ピックアップして発表してもらってきました。
今回、最後のお一人が指摘した箇所に、着物の着付けを外側から学んでいく箇所がありました。
単行本では112頁、文庫本では114頁のところです。

主人公のるつ子は、姉がよそ行きの着物で外出する際にはいつも着付けを手伝わされます。
あまり仲のよくない姉にいいように使われ、あれこれ脱ぎ散らかしたものの後片付けまでさせられ、胸の中では反発を感じながらも黙って手伝ううちに、人に着せながら覚えていく生地の質感や、帯地の締まり具合、着る人の体型に合わせて、ゆったり着るのか、きっちり着るのかなど、いろいろなことを“姉を台にして”学んでいくところがあります。
着せてやる面白さです。とても興味深いところです。

今は母親も祖母も着物を全く知らないという方が多くなり、着るには一から全て一人で始めなければならず、きもの本を片手に覚えるか、着付け教室に行くしかなくなってしまいましたが、家族や身近にちょっと手を貸してくれる人がいればいいだけなのですが、、、
自分の子供にでも、孫にでも導き、アドバイスすることができるように、是非今からでも着物を楽に着て欲しいと思います。
多分私の着方は最も簡単で楽な着方だと思います(滑りにくい生地のものに関して)。

今回の参加者で着物を着るのが全く初めてのみなさんからも「着物自体は思ったほど難しくない」「手助けはあったものの、帯結びまでなんとか格好を付けられて自信がついた」などの感想をいただきました。

まだ不安な方も、次回最終回に、おさらいをしますので、大丈夫です。
今までの紬塾終了生の方で、全く着物を着ていなかった方がとてもスッキリ、でも自然な着姿を見せてくれています。

礼装用の着方を、紬や木綿でもやっている方が多いです。
それにしても、ゴム入りの伊達じめとか、ゴムベルト付きの帯板とか、補正下着とか、
なんとも重装備な小道具をみなさんお持ちですね。。。
着物の小道具としても美しくないですし、昔、着物が日常にあった頃の人たちは、そんな理に適わないことはしなかったはずです。

シンプルに柔らかな頭で着物を楽に着たいです。





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紬のショール

2013年12月14日 | 紬のショール

初冬を向かえ本格的に寒くなってきました。工房のサザンカも美しいです。

「紬の会」以降もひき続き紬のショールの制作にあたってきました。
その紬のショールを少し画像でご紹介します。

私が作る着物もそうですが、ショールも似た感じのものはありますが、1点もので、毎回違うものを作ります。

使う糸は全て手紡ぎ、座繰りの糸を使います。染は植物染料です。
着尺用の糸を合わせることもありますし、元々太い糸も、艶のある糸、ない糸、
太細のある糸、ない糸、本当に様々に組み合わせて作ります。
単調な糸と違い、手間はかかるのですが、布の表情が生き生きと感じられるように工夫し、制作にあたっています。残念ながらもう手に入らない特別味わいのある糸を使っているものもあります。

それと、何よりの特徴は真冬以外の時期にも真価を発揮してお使いいただけることです。
立体感のある絹ですので、上質ウールのジャケット1着分にも相当する暖かさがあり、首周りもチクチクしたり、汗ばんだりせず、春先、秋口にも活躍します。
長さは、着物の場合は長すぎると全体のバランスが悪くなり短めなのが普通です。
ただ、洋服にも合わせていただけるようやや長めの170cm(房別)前後です。
この長さですと155~165cmぐらいの身長の方にちょうど良い感じです。

手紡ぎ、手織り、草木染め、と手間のかかるもので、価格もどうしても高価になってしまいますが、私たち制作者にとっては正直、割の合わない仕事でもあります。
ただ、工業製品にはない風合いや、色、使い込むほどに馴染んでくる一生ものとしては決して
無駄なお買い物ではないと思います。
ショールの価格帯は7万6千円~8万8千円(税別)です。

今年も、帯のアトリエ、 「花邑」(銀座店)さんと櫻工房online shopでも販売をします。
花邑さんの銀座の店頭でご覧いただけますし、ウェブショップでもご覧頂けます。
そして、花邑さんの帯も着物や羽織、更紗などの古布から仕立て替えた、1点ものです。
きちっと洗い張りをして、仕立て替えられ生まれ変わる帯たち。
根強いファンの方が毎週の更新を楽しみにされていると思います。私も何点かゲットさせてもらってま~す。^^Y

外出の多い時期ですので、ショールと帯、合わせてお役立ていただきたいと思います。
是非、羽織やコートとも合わせてご覧下さい。

かたち21では、こちらのOnline Shopでご覧いただけます。
他にも用意していますのでお問い合わせいただければ櫻工房内でご覧いただけます。

以下、画像をご覧ください。

たての綾織と平織の組み合わせ。3色の切り替え。
 
七子織と平織の段。 

よこ総綾織。肉厚ですが、綾織は突っ張らず、肩に馴染みます。暖かいです。 

七子織と平織の大きな切り替え。丹殻(マングローブ)染の赤味の色が、地味目のコートやなどのアクセントカラーにもなります。

平織の横縞。やや薄手。房にはトルマリンのビーズがさりげなく付いています。 

七子織と平織を細かく交互に織り立体感があります。丹殻染の、温かみのある色合い。 


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武蔵野美術大学特別講義――「紬きもの塾」移動教室④

2013年12月02日 | 「紬きもの塾」移動教室


先月の7日に今年も武蔵野美術大学のテキスタイル,工芸工業デザイン科の3年生の学生に「紬織りと着物」をテーマに特別講義をしてきました。

この日、朝は雨が降っていまして、また少し遅くなってしまい、着物ではなく洋服で行こうかと、チラッと頭をかすめたのですが、多少遅くなっても普段着の着物姿を見る機会のない学生たちに見てもらうためにもやはり着物が良いと思い、着て出かけました。

案の定と申しましょうか、教務補佐をしている若い方が、私がこの日着ていた薩摩絣の着物が「綺麗!」と言ってたくさん写真を撮ってくださいました。修業を終えたあとの30年程前に、母からお金を借りて買った着物です。
なめらかな絹のような木綿の着物です。古びていないので、30年前のものと思えないということも言われたのですが、質の良い着物は古びないのですね。
帯は太い真綿引き出し糸(もう引いてくれる人はいないのですが)で織った自作の帯です。均質な着物地にザックリした帯の取合せです。

浴衣は着たことがある学生もいましたが、ほとんどの学生は「紬」を知りませんでした。

大学から、学生の感想と、講義風景の写真が届きましたのでほんの一部ですがご紹介します。



繭から1本の糸を引き出すために、箒草を使い表面の糸を集め、引き出し始めたところ。


黒い紙にゆっくりと糸を巻き取ってもらってます。しばし無言「・・・」でしたが、ようやく「美しい・・・」と声が漏れ聞こえてきました。「それが聞きたかったぁ!」と私からもお返し。


「よ~く糸を見てください」と最初に言ったのですが、目が寄ってますね。。。一人1個ずつ、小さなボウルにお湯と煮た繭が入ってます。


男子も夢中!


真綿からも糸を引っ張り出し、太ももで纏めるやり方もしてもらいました。
こちらの方が技量を要します。


この糸はなんで染めたと思いますか?この窓からも見えてますよ。「・・・」「・・・」


「この糸の色はどんな風にかんじますか?」「・・・」「・・・」「・・・」
「わかりました・・・私はちょっと休憩しますのでこの場を去ります・・・」


その直後にこんな光景がありました。^^


私の紬の着物を、「着たい!」と手を挙げた二人の学生に服の上からですが、手助けしながらですが、自分で着てもらうこともしました。
半幅帯は持っている人が家から用意してくれました
着てみると「軽い!色が綺麗!」と、とても喜んでくれてました。



最後の締めは畳み方。
省スペースでも畳めて、収納場所も取らず、重ねた着物の重みでアイロン替わりになることなど、着物の合理的な点をアピールしました。


感想もみなさんたくさん書いてくださったのですが、入力が大変ですし、重複している感想も多いので、一部の方のを代表として掲載します。読むのも大変ですね。^^;
若い無垢な方々の感想ですが、この気付きや感想を頭の片隅に留めてもらえたら嬉しいです。


N.S.
繭から糸を引く行為が非常に繊細で、蚕が口から出した自然の形をしていて、本当に美しかったです。
着物は普段の生活から少し離れたものと思っていましたが、案外簡単に着ることが出来て、収納も小さくなり、合理的に作られているんだなと思いました。着物を身近に感じられるようになりました。
先生の“着物は人が着るもの”という言葉が正に真をついていて、絵画的にしないというのはなるほどなと思いました。
とても楽しかったです。

O.M.
生木で染めるということにとても興味を持ちました。市販の植物染料で染めた経験もなくて、手をつけづらかったのですが、自宅の庭木でちょっと染めてみようと思います。
前回の課題で、私は和紙を撚って紙糸をつくってたのですが、、そのとき私も、先生がおっしゃっていたような糸のふぞろいな、不安定な美しさのようなものを実感できました。手でつくられたものものならではのよさはあると思います。

M.M.
真綿から糸をとる作業や繭から糸をとる作業、その糸自体も美しいですが、作業をすることに美しさを感じました。
さくらで様々な色に染まる糸の微妙な染まり方の違いがとてもきれいで、植物染を是非やってみようと思いました。とても興味深く、面白くて楽しかったです。

M.Y.
私は小学生の時に教室で蚕を飼っていたことがありました。その時はもちろん蚕の口から出ているものがそのまま糸になるとは思っていませんでしたし、白くて柔らかくてグロテスクだと思っているだけでしたが、先生が今日仰っていた、糸が真っ直ぐになっていなくて波打っている状態であることが、あの蚕が頭を振って繭を作っている過程でできたものだと知って、驚きました。
私は織りが苦手でテキスタイルの課題でもシルクスクリーンしかやったことがありませんでした。糸とウマが合わないという苦手意識があったので、今回の授業で先生が何回も連呼していた糸の美しさということが、なんとなくわかったような気がしました。
というより、蚕が生きていたその息吹が糸から感じられたのが、新鮮でした。
着物の着付けも、私は美容室に行って着付けもしてもらっていたので、今日の授業を見て、自分で是非着てたたむところまでやってみたいと思いました。単衣物の合理性も改めて知ることができたので、本当に有意義な時間でした。

S.Y.
着物と帯はセットで、着物のデザインをする時は、帯の入る余地を残すという話が印象に残りました。強い主張をして終わるのではなく、バランスを大事にするということ、また桜の染めや着付け~たたみ方までのお話を聴いて、常に無理をしない、逆らわない、自然に素直なままに手を動かすという、とても摂理にそったやり方だと思いました。
本来創作・制作というものは何かから力を得て、するものではないかと思います。その何かは命だったり、自然だったり、感情だったりさまざまで、、そのようなものを大事にしていかなければならないと感じました。


S.Y.
桜で染められた糸の色がとてもきれいでした。草木染には“この色”ということができない色が出てくる魅力があると思いました。私も染めてみたいと思いました。
繭から1本糸を引いていく行為は無心になり、ずっと続けられると思いました。管理された糸でない不揃いさがとてもきれいで、見ても触っても素敵なものだと感じました。
着物はあまり着る機会はありませんが、今日先生やクラスの2人が着ているのを見て、もっと身近にあるものであってもいいなと思いました。
今日は中身の詰まった充実した時間でした。

E.K.
糸がこんなに美しいとは思っていませんでした。繭から出る一本一本は細く白く、すごく魅力的でした。
草木染は今まで一回もやったことがなかったので、全然詳しく知らなかったのですが、桜で染めた糸を見てやってみたいと思いました。
周りにある草・木・花でやってみようと思います。
もっと早く中野先生の講義を聴きたかったです。

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