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中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第12期「染織実習コース」無事修了

2021年04月11日 | 紬きもの塾’17~’20
第12期の染織実習コースも4月の初旬に無事終えることが出来ました。
コロナ関連のこともあり、日程が大きくずれ込みました。
最終回は大阪からの方が感染拡大の中、大事をとり欠席で、3名で麻(ヘンプ)の伊達締めを縫いました。

何しろ、(^-^; 運針に時間を掛けましたので、みなさんその成果を発揮して下さいまして、、針が指に刺さったり、、もありましたが、兎にも角にも、無事に時間内に縫いあげました。(´∀`)

博多の伊達締めが一般的ですが、麻は吸湿性と放湿性に優れ、長襦袢の上に使うと汗取りの役目もしてくれます。洗うこともできますし、私は愛用しています。皺になりますが、霧を掛けるだけで皺は取れます。すぐ乾きます。掌を濡らして叩くようにしても大丈夫です。

一人分、生地の長さが足りず、接ぎ合わせて縫うことになりました。接ぐことの練習にもなり、赤い糸で、縫い代を落ち着かせるために二目落としもやりました。6尺の長さが必要ですが、3尺しかなかったので、着尺巾をたてに切り、真ん中でハギ合わせました。接ぐ手間はかかりますが、前中心がわかりやすいと喜んでおられました。


本来は古布を使って、自分で伊達締めにふさわしい生地を見繕い縫いあげるものなのですが、今は家に古着の着物や襦袢もなく、新しい麻生地を買って作りました。
何でもない直線縫いの仕事ですが、それでも自分で縫うと愛着が湧いてきます。

運針をやってもらうことの意味は、よくものを観ること、指先の感覚を磨くことなのです。
上手い下手というよりも、素材に合った針の太さや、糸の太さ、何を縫うのかによる針目の大きさなどを瞬時に判断できるかにあるのです。
何とか丁寧に、細かく縫えばいいというものではなく、幸田あや著『きもの』でも出てきましたが、大針で飛ぶように縫えばよい箇所もあるのです。
着ることが、生き死にをかけた仕事だった時代から、今は考えられないくらい豊かな衣の時代なのかもしれませんが、私には何かうすら寒い、寂しい時代にも思えるのです。

運針で身の回りのものを作ってみてください。和裁教室に行って着物まで縫えるようにならなくてもよいのです。
腰紐一本でもうまく縫えるでしょうか?素材は何がいいですか?針の長さや太さはどうですか?
いえ、雑巾でもいいです。縫えますか?台布巾はどんなサイズ、素材が良いですか?
考えたり、工夫することがたくさんあります。

それは創作活動です。残り糸や色糸を使えばより楽しいです。
紬も屑繭から糸を引き出すことから始まったと言われます。
工夫することは着物を着る上でも役に立ちます。
そしてそれは日々の暮らしの中でも同じことが言えるのではないでしょうか?

これからも運針を活用して、古布などを使って身近なものを縫ってほしいと思います。世界が広がり楽しいですよ。(^^♪

最後に皆さんから染織実習の学びのレポートを送ってもらいました。
紬塾に関心を寄せてくださる方は、是非参考になさってください。

単に織り物を織るだけでもなく、また着物を着るだけでもなく、創ること、着ることの根本を見つめながら、現代社会に活かしていきたいと思っています。
今期の方もみなさん本当に真面目に取り組んで下さいましたが、特に連携が強くて素晴らしいメンバーだったと思います。ありがとうございました。

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紬塾実習コースでは、念願の糸紡ぎから草木染め、機織りまでを体験させていただきました。
糸は風合いを殺さないよう丁寧に扱うこと、染める前に糸本来のウェーブを蘇らせること、草木の適正な季節を見定めて本来の色を引き出すこと、植物から抽出され染液をガラス瓶などに入れ、色素や糸の状態をよく観察し、糸に馴染ませていくこと、そして糸の持ち味をいかに無理なく織り込んでいくか、などなど。
作業に向かう先生の、一瞬一瞬の真剣な眼差しが印象的でした。
「理屈じゃないのよ」と先生は何度もおっしゃり、適時の判断で素材の命を最大に引き出そうとする意気込みが伝わってきました。
最後の授業では麻の伊達締めを縫いましたが、布に添わせて針を運ぶ事で、布を痛めずいつでも解いて再利用できる事を学びました。どの授業も一つも無駄はなく、自然の恵みをいただきながら生きる知恵の数々を教えていただき、一生の宝物のような貴重な経験をさせていただきました。本当にありがとうございました。 I.K.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
染織実習では、一枚の布を織り出すために、真綿から糸をつむぎ、染め、そして織るという一連の工程を教わりました。
先生のお庭の木の枝を落とし、それを細かく切ってチップにし、煮だして白い糸や布を染め、乾かしてはまた重ねて染めるという工程を通して、染めるということは、折々の自然の恵みを享受し、感じとり、四季を愛でること、そして無駄なく生活に活かすことであるということを学びました。また、自分の望みの色を得ようとするのではなく、自然がどんな色をもたらしてくれるのかということを期待し、楽しみに待つのだという謙虚さが根底に流れているように感じられました。経済至上主義、効率主義…そんなものに踊らされない、自然物である人間としての謙虚さと自然の恵みを大切にする不動の強さ、そしてほんものの美しい生きかたとはなにかを学び、考えさせられました。これからも教えていただいたことを大切に思い出しながらきものに関わっていきたいと思います。 U.M.

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昨年の学びから、日々好きなものに囲まれて暮らしたいと願って、ささやかながら季節の流れに応じて部屋を整えていると、いつの間にか、心和ませてくれるものは自然の色や素材でした。
時間が経てば経つ程にじわじわと良さを感じさせてくれます。
なかでも天然の色はどこにあっても周りと調和し、今回の実習でも、草木の色馴染みの良さにすっかり魅せられてしまいました。

初回の糸紡ぎから楽しくて時間の過ぎるのが早かったこと!
糸繰りも、憧れていた機織りもあっという間でした。
糸染めは工程が多く、繊細な作業が予想を超える難しさで緊張しました。

一緒に染めた半衿が素敵な色に仕上がりました。柿の小枝を煮出した染液で染めましたが、肌に馴染むのを見て、これが自然のもつ力なのだと感じました。

今ある物で暮らしを彩る「足るを知る」という言葉を以前よりも感じるようになりました。
着物を通じて広がった世界を今後も楽しんでいきたいと思います。
もうこれでおしまいかと思うととても寂しいです。
2年間、ありがとうございました。 K.Y.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



参加者のお一人は、基礎コースの時にも毎回拙作の帯を締めて来てくださったのですが、最後の回にも花織の帯に着物や小物を替えて参加してくださいました。
着こなしもとても自然で美しかったです。
帯揚も私が染めたものを使ってくださっているのですが、リンゴの黄色を下染めし、あとから化学染料を少しずつ染重ねたペパーミントグリーンのような色です。  
帯締めも春の若葉を彷彿とさせるチョイスですね!
使うことは創ることです。毎回、ありがとうございました。 

床の間には一重の山吹と雪柳を活けてお迎えしました。
三角の蕾も可愛いです!

                     


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第12期「紬きもの塾'20基礎コース」修了しました

2021年04月05日 | 紬きもの塾’17~’20
紬塾受講生のレポートを追記しました。4/5

コロナの影響で会期の延期などがありましたが、昨日無事修了しホッとしました。

最終回は着物の寸法について、最低限把握しておきたい箇所について、自分の着ている着物の寸法が、本当にいいのか、着方、着物の種類などでも違うことも話しました。
一人一人チェックしました。裄、身丈が必要以上に大きい方、多いですね。


あとは半巾帯結びの練習、名古屋に慣れている人にはかえって難しいかもしれませんが、慣れれば楽です。コツをつかんで練習あるのみ!
割り角出し、吉弥、文庫をしました。写真は割り角出しの外巻き?をしているところです。

幸田文「きもの」のまとめをして、紬塾が目指していることなど話して締めくくりました。
着物を着るということは、突き詰めると自然環境を大事に守ることです。

終わって感想なども伺いましたが、終わるのが寂しいとおっしゃっていただきました。
今期の方はみなさん一応一人で着物は着られる方でしたが、半衿の付け方や、名古屋帯が前のやり方より早くなったなど、それぞれに得るものがあったようでよかったです。(*^^)v

参加の皆さんからのレポートは以下の通りです。

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私が紬塾を受講するきっかけは、祖母からゆずり受けた一枚の紬です。40年以上前に織られたものですが、着やすさに魅せられ、紬をもっと知りたいと思いました。

講座は、紬の「過去・現在・未来」を俯瞰する,多岐にわたるものでした。ホームページの案内から想像していたものを超えた、本当に盛りだくさんの内容でした。

毎回、幸田文の「きもの」の読後感想発表と各回のテーマに沿ったレクチャー(時に実習)が行われました。

「きもの」は初読ではありませんでしたが、着物と登場人物の描写から,当時の人々の暮らし方や時代の空気も感じることが出来ました。また、毎回の皆さんの感想を聞くことで,新たな視点をもって,着物を見つめる事が出来ました。

レクチャーでは,布地としての紬の基礎知識からはじまって、糸をよる体験(難しかったです)、着物を着るのに役立つ運針(これも難しかったです)、着物と帯・小物の取り合わせ(楽しかったです)、着物を楽に着るための寸法指南と半幅帯の結び方講座(是非チャレンジしたいです)まで、紬を核に、時には着物の枠を超え、日々の生活で実践すべき事項など、生きていく事の考察にも及びました。

コロナウイルスによる緊急事態宣言等の影響で,気楽な外出や,友人達と会う事が出来ない一年だった事もあり、書籍やウェブ検索で得られる知識も沢山ありますが、実際に集い話を聞き、着物に触れる事は、比べものにならない刺激となりました。中野先生の染め織られた着物や帯から感じられた,自然の懐の深さも強く心に刻まれました。

一年間学んだ事を,ノートを見返しながら理解を深めていきたいと思います。教えていただいた帯結びと、アドバイスいただいた寸法で着物を仕立てて着る機会も持てればと思います。(また、是非運針をマスターして半襟つけの時間も短縮したいと思います!)

貴重な時間をいただき、ありがとうございました。 I.M.

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紬塾を終えて…
私は、色鉛筆で絵本の挿絵を描く仕事をしております。
最近はパソコンで絵を描く方がとても多くて、私のような時間がかかり印刷に出すと発色も落ちる手描きの技法は、描いているときは本当に満ち足りているのですが、この忙しい社会にやっていけるのだろうか、と不安がよぎることもあります。

そんな中で、初めて先生の帯を目にした瞬間、その彩りの美しさ、儚いようで力強い手触り、模様のモダンさ、全てに惹かれました。
その帯をお持ちの方から、その時に紬塾のことを教えてもらい、さっそく受講させてもらいました。

先生は手つむぎの糸の風合いを大事に自然の姿を残しながら制作されています。そうすると均一でない風合いのある織物ができていきます。
その様子を間近に見て、先述の不安はいつの間にか消え、むしろこの時代に丁寧に物を創ることへの誇りを感じるようになりました。
安価にいろいろなものが手に入り、安易に捨てられていく現代に、先生の姿勢は、机上の論理よりも力強く真っ直ぐに心に響きます。
どこにもない唯一無二のものを生み出すことは並大抵のことではありません。
ですが、自分の人生を楽しんで、自分にとって価値あるものにするもしないも、自分の日々の積み重ねからなのだと気づかされました。

講義では、着物の楽な着方から、手入れの仕方、作り替えについて、自分の知恵を働かせて、次の時代にも繋いでいけるように着物を大切にすることを教えていただきました。

それまで、私は着付けというと何回も着付け教室に行ったもののうまく着ることが出来ず、出かけるときは崩れるのが怖くてぎゅうぎゅう巻きにし、帰宅するとがっくり疲れていました。
先生は、着物は紐2本で着れるのよ、と笑って、楽で自然な着付けを教えてくださいました。
これで私も着物を怖がらずに日常に取り入れていく事ができるでしょう。

また紬塾を知る少し前に、叔母から山ほど着物を形見で譲り受け、これをどうしていったらいいのだろう、と途方に暮れていました。
叔母の着物も大事に着れそうな気がします。 O.T.

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上質なものを長く、先生の丁寧な生活への考え方に感動しております。
また着物はきちっと綺麗に着なければと考えておりました。
半襟を衿芯に先につけておくこととか、補正をしないで楽に帯を結ぶ方法などを学び、
着物を着ることに対して解放された気分です。
紬塾に参加させて頂き有難うございました。S.H.

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着物が大好きで、実際に着物を織る方から学べるいい機会だと思って受講しましたが、予想以上の収穫がありました。

着物や帯が織られる糸は繭からとられた絹糸。それは知っていましたが、実際に真綿から糸を紡ぐ体験をし、中野先生が実際に織る糸を見せていただき、蚕がどのように繭をつくってゆくかの話を伺ったことが、私にとっては新鮮な発見であり新たな知識でもありました。

蚕が8の字を描くように繭をつくること、繭からとられた糸はその8の字が残す縮みがあること、人の手でつむがれる糸と機械で紡がれる糸では手触りが違うこと・・・当たり前のことですが、「人の手」でつむがれる糸を身にまとうことの重みを感じました。

普段私たちが見る着物は既にできあがってあとは着るばかりの状態です。華やかなデザインや色合いばかりに目をとられがちで、最初に見て「素敵だな」「着てみたいな」と思って手に取ることが多いでしょう。
人の手で染められ、織られたもの、そういう認識はあっても、あくまでも「着るもの」としての着物でした。

中野先生の紬塾を終えた後、1枚の布ができあがる過程を考える機会を与えられ、蚕の繭から人の手で糸がつむがれ、植物から採られた色で染められ、人の手で織られ、仕立てられることの流れを思い、どの過程でも自然の手がはいるため二度と同じものはできないことを実感し、「一期一会」ということばが浮かび上がりました。

そして、人の手も含めてすべてが「自然からいただいたものを生かしている」ことを、今更ながらに理解し、先生が常に環境問題を念願において毎日を過ごされていることにも納得いたしました。
着物と環境がここで結びつくとは思わず、奥が深い・・・!と着物や布に対する見方が変わって自分でも驚いています。

また、幸田文さんの「きもの」の読み合わせで、先生のコメントを伺い、まだ自分が着物を特別視している点があったことにも気づかされました。
やはり、洋服とは動き方や着こなしが違いますし、着た時の意識や気分の持ちようも変わってきますから、幸田文さんのように生きることに根ざし、自然にさらっと着こなすにはまだまだなのかもしれません。

晩年の幸田文さんは、着物がなくなるかもしれないという危機感を抱いていたようです。ですが、彼女の着物に対する思いは娘さんからお孫さんに引き継がれ、着物も残っています。
「一期一会」のおもいが詰まった布は消えてなくなることはないでしょう。
最後の中野先生のお言葉のように、着物を引き継ぐというところまではいかずとも、自分が大好きで楽しいという思いそのままに、私はできる限り着物を着続け、最後の1枚まで愛おしんでゆきたいと思いました。 I.K.

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4月1日(木)から13期紬塾の募集受付がはじまります。
不明な点はお問い合わせください。
コロナの状況を見ながらの開催となりますので、今年も延期などあるかもしれませんが、一応お申し込みの受け付けはします。
詳細はこちらの記事を参照ください。

この日は花曇りで、三分咲きの工房の桜も少し寂し気でした。
桃の花も桜と一緒に満開になっていますが、帯は燕子花と桃の刺繡が施された御所解き文様の帯を締めました。こちらは賑やかです。(*^-^*)



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第5回 紬きもの塾「自然で楽な着方」― 名古屋帯の結び方・半衿の付け方など

2020年12月16日 | 紬きもの塾’17~’20
半巾帯プロジェクトの染めの作業に集中していて、紬塾の報告がすっかり遅くなりました。

先月、工房の山茶花(御身衣)も見頃の時に行われました。
この日の私の着物は薩摩絣の袷です。帯は段柄の良く使っている紬帯です。
帯揚(梅染)も帯締めも良く使う、心落ち着く好きな取り合わせです。

楽で時間のかからない着物の着方を学びます。
私は着付け教室には行ってませんし、普段着、洒落着の楽な着方のお話のみしています。

長襦袢の上に伊達締め(麻)1本、着物の腰紐1本(メリンス)、着物の胸紐または伊達締め1本。
帯枕にガーゼではなくストッキング。帯板はボール紙1枚。
補正下着やタオル補正なしで私は着つけます。
ゆるい着方ですが、、早くて楽です。


今期の方はみなさん着物を自分できちっと着ることのできる方ばかりでしたが、帯結びは仮ひもを使う方が多かったので、使わずに捻じるだけの簡単なやり方を致しました。本当に簡単ですよ!
手と垂れを捻じるだけ。すぐにのみこんで頂けました。

自然布とか、固い生地の場合は仮ひもで畳む方が良いと思います。
着慣れている方もいつもと違うこんなやり方も参考になるかと思います。

衿芯に半衿を先に付けてから襦袢に取り付ける、自然な衿の形を作る方法もお話しました。


また、名古屋帯の前柄をどこに合せればよいのかよくわからないという方もいまして、帯の柄が入る位置についても説明しました。
上の写真の方は(着物は中野作です)斜めに区切られた面的な柄付けの染帯の前柄、太鼓の柄の出し方が良くわからないということでしたので、帯を解いて柄の中心を測ってみました。

見た感じで決めればよいのですが、一応寸法も測って、制作者はどこを中心にしたのか確認するのは良いことだと思います。

この帯の場合は前柄がもう少し左にズレる(本人の右脇)ように設計はされていました。そうすると太鼓の柄も引き上げられて良い位置になっていました。

ただ、中心を左右に少しずらせる場合は、着物や季節との関係で、
鏡の前でよいと思われるところへ1~2寸(4~8cm位)ずらす調整は可能です。

帯の寸法、柄の位置を把握しておくことは大切です。

紬塾の基礎コースはあと1回で終了なのですが、コロナのことでスタートが遅れ、
詰めての開催でしたが、また感染拡大の状況の中、乾燥した真冬はエアロゾルや、
換気もしづらくなりますので、来年3月まで延期と判断しました。

3月の最終回は半巾帯を愉しむです。着物の寸法の話も。
無事終了式ができますように!(*˘人˘*)









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第4回紬きもの塾「日本の取り合せ」 

2020年10月15日 | 紬きもの塾’17~’20
帯や小物の取り合せについて、また小道具の選び方等について学びました。
袷、単衣向けの着尺と帯6本ほどを用意して、季節を変えての組み合わせを1組ずつみなさんに考てもらうワークショップも行いました。
紬塾の後半は、いよいよ具体的な着物を着ることについての話に入ります。

ワークショップでは、一人ずつ取り合わせた写真も撮りましたが、あらためて見返してみても、典型的な陥りやすい避けた方が良い、取り合わせもいくつかありました。よく雑誌などでも見かけるコーディネイトで、ありがちです。

それは帯揚げと帯締めの色を揃えてしまうことと、着物の色と帯締めを合わせてしまうことです。
そういうものと思い込んでいる方も多いようですが、そこを汚れない無垢な目で見直してみると、どうすればよいかがわかるはずです。

一人ずつ順番に一度取り合わせて、その意図(TPO)などを聞きます。
その後から私の方で別の小物に変えさせてもらったりしましたが、急に世界が変わり、納得頂けたと思います。

自然を見渡せば異なる色、質感、大きさ、形に取り囲まれています。
石庭の石の配置を見ても良くわかります。異なった石がうまく構成されているわけです。
また、日本庭園の植樹の配置も時間帯、季節が良く計算されています。
着物を着ることもそういうことだと思います。

工房内の小さな棚の上に異なる素材(紙、ガラス、石、紬布、植物)を配してみました。

小さな小物ほど目立ったりします。あれもこれも目立たせるのではなく、かと言って無難に何でも揃えるのでもなく、何をその日の着こなしの主役(TPOを考慮して)に据えるか考えると良いと思います。

俳句では基本的には季語を主役にしますが、取り合わせというのが大事で、よく「つきすぎ」という批評を聞きます。合わせすぎの感じでしょうか。
あるいは情景を盛り込みすぎると(あれもこれも言う)「ぼやける」と言う批評もあります。
何をテーマにし、それにふさわしい季語を選ぶかなのですね。季語はすでに多くを語ってくれているので、それを生かすことかと思います。かく言う私は出来ませんけど、、(^_^;)

日本的な取合せは自然観や異なる素材、技法、世界を絶妙に合わせるもので、
仕事のクオリティー、“ものの力”を取り合わせるのも重要なことです。
取り合わせは単なる色柄のコーディネートではありません。

更に重要な点は、身に付ける人、肌の色や髪の色、顔立ち、性格などとも取り合わせるわけですから、奥の深いことではありますが、ものをよく見て、自分をよく見て、自然をよく見て、一生をかけて学びたいと思います。

24日の「半巾帯プロジェクト説明会」でも肌の色、髪の色なども拝見させていただき、似合う色相を選びたいと思っています。
いわゆるパーソナルカラー診断の、化学染料の服を「春・夏・秋・冬」ときっちり分ける感じではなく、草木染の色は、ピンク肌、オークル肌の方どちらにも許容範囲が広いので大体は合うと思いますが、より合う感じを見させて頂きます。





 






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第3回染織実習・紬きもの塾 ー織物設計

2020年09月24日 | 紬きもの塾’17~’20

連休の1日は染織実習コースの織物設計でした。

前回の染の実習の時の桜染めの帯揚は各自家で洗い、干し、アイロン仕上げまでしてもらいましたので、色やアイロンのかけ方を確認させてもらいました。
灰汁媒染の方は淡いピンクベージュで、アルミ媒染の方はオレンジベージュという感じでした。


生地違いの方もありましたが、ずいぶん雰囲気が違いました。
アイロンの当て方でも発色は違ってきます。
みなさん今まで持ってない色で、とても喜んでいただきました。
着物と合わせるのが楽しみとのことです!

次は、やはり前回染めた手つむぎ糸の糊付けをしました。
絹糸のウェーブを戻すべく、糊を付けた後にテーブルに糸を打ちつけるようにします。ここが織り物の風合いを決める最も重要なことなのです。
私は経糸も緯糸も共にします。糸を強くはたいて伸ばすと縮の原因や風合いのない織物になります。

お次は次回織るための織物設計です。
みなさん考えあぐねておりました。。
織ってみれば難しくないのですが、、まだ糸1本1本を混ぜるイメージがつかめないのだと思います。
まあ、糸にせよ、色にせよ、悪いものは混ぜてないのでどんな設計でもなんとかなるはずです。(^。^♪

乾いた糸を管に巻いてもらいました。
巻くときにも糸を伸ばさないことが大切です。


ぷくぷくの元気のいい、糸たちでした。。
織り上がりが楽しみです!!





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紬きもの塾20―― 染色実習

2020年09月06日 | 紬きもの塾’17~’20
暑さの中にも、そこかしこに秋の訪れを感じる今日この頃です。

翅うすきとんぼの低く草に触れ   小川濤美子

工房の庭先でも赤とんぼを見かけるようになりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・*
さて、先週末は延び延びになっていた紬塾の染色実習でした。
蒸し暑い日でしたが、みなさんマスクをしての染色。

風通しは良いとはいえ、湿度がかなり高く、マスクは応えました。。

でも、各自がつむいだ糸と帯揚げ、半衿などを無事に染めることができました。
写真は柿の枝の1煎目で染めた糸と2煎目で染めた半衿の1工程目。
それぞれ2工程行い、もう少し濃い色に染め上がりました。


9月に入ると、桜も葉緑素が抜け、赤みの色が強く出ます。アルミ媒染でも黄色系ではなく、サーモンピンクになります。季節で大きく違ってきます。自然の現象です。
画像は染色後、洗って軽~く絞ってますが、乾くと色は半減します。それを見越して染めます。
乾いた色を見て、染重ねなどを判断します。

糸も必ず天日に干します。干し方も、あぜを広げるようにすると乾きが早いのです。干した後、もう一度染めました。


灰汁媒染の方は淡い色ですが、2工程しました。
家に持ち帰り、室内で干しているところの写真を送ってくださいました。
いい感じになってます。1週間ほど室内で空気酸化をさせてからアイロン仕上げをします。

庭木を高枝バサミで伐るところから、チップ作り、煮出し、染、洗い、天日干し、アイロン仕上げ(帯揚は家に持ち帰って)まで行いました。
本格的なことを短時間でギュッと体験して頂きました。

また、各自家庭においても、半衿や派手になった帯揚げなどに、ひと色掛ける無媒染のやり方もお話ししました。
薬品は使いませんので、キッチンでも安心して行えます。

毎回のことですが、みなさん初めての体験でしたが、とても熱心に臨んでくださり満足そうな表情でしたが、「貴重な実習で大満足でした」とメールも頂き、こちらもホッとしています。


帯揚の媒染の待ち時間を使って、10分ほどの休憩をしました。
アイスコーヒーとかぼちゃプリン、つぶまる麦茶でした。
麦茶は毎年友人が送ってくれるものですが、粒のままで5~6分煮出します。
色は薄いのですが、透明感があり本当に香ばしくて、みなさんお代わりされてました。
疲れを癒しました~。(*‘∀‘)

次回、帯揚げ、半衿を持参してもらい、色を確認します。








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第3回紬きもの塾——とことん使う(運針)

2020年07月23日 | 紬きもの塾’17~’20
紬塾基礎コースも3回目まで進めてきましたが、
コロナの感染拡大が続いており、今後の紬塾開催も懸念されます。情勢を見て判断いたします。

さて、19日に開催した紬塾では着物をとことん着ていく話をしましたが、日々の暮らしの、衣食住についても一緒に考えました。

私自身もそれなりのこだわりをもって暮らしていますので、その紹介を少し致します。
着るものは、普段の仕事中は作業しやすいゆったりした格好で、何十年も前からの服を着ています。母の遺したものも着ています。基本的には擦り切れるまで着ます。繕うこともあります。

外出の際にはもちろん着替えますし、お洒落をすることも好きです。
新しく購入することもありますが、素材と縫製を吟味し、長く着ています。
でも、たくさんはいらないのです。いざという時には着物も少しはありますので。

食に関しては、食材を無駄なく使い切ることや、農薬に頼らない野菜をなるべく使い、屑を出さないよう使えるものは皮も利用する。若くはないので、量より質で選び、少し高くても、味の満足感が得られる食材を選びます。また、旬のものを選びます。

生活クラブの個配を利用していますが、買いだめはしません。
我が家の小さな冷蔵庫はお正月以外はガラガラです。なので、残り物や、使い忘れということはありません。買い込まずとも最小限のものをやりくりします。シンプルです。

生活クラブは環境問題にも力をいれています。リターナブル瓶のものも多く、調味料の瓶なども使い終われば洗って返却し、リユースされます。
消費材が入ってくるピッキング袋も回収、リサイクルしてまた袋になります。チラシも注文用紙も回収され、再生されています。

スーパーでもトレーやプラスチック容器に入ったものはなるべく買いません。ゴミや無駄なものを持ち込まないリデュースです。

町田市はごみ袋を購入しますが、週2回、5Lの一番小さな袋で出します(この小さな袋で出す家庭ゴミを近隣で見たことがありませんが、、)。
紙ごみは小さな紙きれも含め、分別ゴミとして出します。

水や電気やガスも無駄のないよう気を付けます。
洗いものも、先に油や濃厚な汚れは、擦り切れたボロ布や、使用済みのコーヒーフィルターなどでふき取り、排水の汚れ水を少なくします。台所洗剤は使いません。
必要に応じて純石鹸を使います。すすぎは十分にして衛生には気を付けます。
夏の間は、すすぎ水はバケツにためて庭木の散水に使います。
手洗いも純石鹸が、コロナウイルスにも有効であるという科学的データもあります。→☆
抗ウイルス作用はハンドソープの100倍~1000倍あるということです。
私はプラボトルがいやなので、ハンドソープを買ったことはありません。
他人と共有しても石鹸自体がウイルスを変容させてしまいますので安全です。
固形石鹸は、包装もシンプルです。

洗濯はすすぎの楽な炭酸塩を主に使い、後は石鹸です。合成洗剤、柔軟剤は使いません。

電気は自然エネルギーを購入。TVも冷蔵庫も小型ですし、洗濯機は二層式です。
冬の電気ヒーターは使いますが、夏の冷房はほとんど使わなくても何とかなる住空間です。
ガスは保温調理や、圧力鍋の利用、染色も芯まで染めるために保温を取り入れて、省エネしています。

着物を着ることと、日々の細々した生活のことは一見関係がないようですが、つながっていると思います。
工夫することやものを深く見つめ、考えることは着物を着ることにも生かされてきます。
そのことも含め、もう一度今の自分の暮らしを見つめなおし、このコロナの時代を生きていくうえでも、温暖化を少しでも食い止めるうえでも考える必要があると思うのです。
ただ、個人の力ではどうにもならないほど環境問題は複雑で深刻です。焼け石に水かもしれません。でも環境への意識は持っていたいと思います。

生活の最低限度の技術が、洗濯でも調理でも、自動化された機器に囲まれた暮らしで、失われているものも多いと思います。脳が退化してしまうのでは、、と心配しています。
エコライフは脳を柔らかく活性化させ、また想像力や創造力を育てます。工夫は楽しく充実感もあります。無駄を省いた分、ものが見えてきます。

慎ましく暮らしながらも、私の楽しみは人の手わざや、アートなど良いものに出会い、暮らしに取り入れることです。


さて、とことん布を使うための必要不可欠な技術が運針です。
学校教育も男女ともに家庭科にもう少し力を入れるべきと思います。
運針も豊かな暮らしに欠かせないものです。
針という人類が長きに渡り作り、精度を高めて使い続けてきたものが、身近から失われようとしています。

今回の紬塾では、糸を付けずに針(和裁の三ノ三)を進めるだけでしたが、次回は糸を付けて縫ってみましょう。
練習しておいてくださいね。運針は50歳からでも60歳からでも、今から始めて遅いということはありません。若い方ならなおのことです。運針ができることで布の見つめ方が変わります。

私は母の針もつ姿を傍で見て覚えただけですし、特に和裁をするわけではありませんが、古布を使って座布団皮や枕カバー、風呂敷など、並縫いだけで縫います。
運針は足し算、引き算のような、人にとって基本の基だと思います。
身に付ければ便利なものです。誰でもコツを掴めばすぐできます。
指ぬきをぴったりしたものにしておくことが大事です。

今日からの“我慢の連休”を、晒しの手拭いを使って、楽しい連休にしてみませんか?できる人は何か端切れをつないで並縫いだけで風呂敷でも、腰紐でも作ってみてはいかがでしょう。
手拭いの端から端まで運針してみました。動画をFBページに上げました。

過去の紬塾の「とことん着る」も運針について書いていますので参考にしてください。



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第12期「中野みどりの紬きもの塾'20」開講しました!

2020年06月08日 | 紬きもの塾’17~’20
ひと月延期しておりました紬塾’20の基礎コースをスタートさせました。

感染予防対策として、2名の方が来年以降に回ってくださるということで、人数も抑えて行います。

換気の流れも考慮し、窓開け、換気扇、扇風機も使いました。湿度は56%ぐらいありました。
更にマスクをしていただき、私はフェイスシールドをして、時間も30分短くしての開催でした。

また、秋冬の第二波、三波に備えて、各回の間隔を詰めて行い、11月には終了する予定に変更してあります。状況を見極めながら無理なく行います。

オリエンテーションの初回も、いつものように盛りだくさんの内容でしたが、「紬とは何か」という本題にも少し入りました。よくある決まりきった説とは違う、私の大切にしている視点も話しました。

本当の紬とはどんなものなのでしょう?次回から糸の作られ方や、機の構造なども話しながら、具体的につかんでもらえるようにしたいと思います。

みなさんが持ってらっしゃる“紬”の漠然としたイメージは、普段着、黒っぽい色目、固い、かたもの(やわらかものに対しての)、毛羽立ち、先染め、大島、結城…などでした。

一般的なものだと思いますが、私は紬の前身ともいわれる“絁(あしぎぬ)”が紬の原点にあると思っています。原初の織物に思いをはせながら、人々は何を求め、何を見出し、どんな布を纏ってきたのだろうかと想像しています。
生き生きとした、健全な形で引き継がれてきた織り物をイメージしています。
それは紬とは?ということに留まらない、普遍性を持ったもの作りを意味します。

これから順番にそれを紐解いて、私たちが考える紬はどんなものが良いのか新たに探っていきたいと思います。

さて、今回も、お一人私の着物と帯で参加してくださいました。
盛夏を除いて、5回の紬塾にその着物、あるいは帯を締めて来てくださるとのことです。
昨年の紬塾の方で、1本の帯を6枚の着物と取り合わせてお越しくださった方がありましたが、そのブログにも影響を受けたということです。また、ご報告できる時があるかと思います。

紬塾へ来るときに、着物でも洋服でももちろんどちらでもいいのですが、せっかくのチャンスですから、着ることを深めていくという意味で、手持ちのものがある方は、着てこられるのは良いことだと思います。

ただ、工房は真夏も冷房を使いませんので、どうぞ無理をしないようお気を付けください。そうでなくてもマスクを付けていますし、熱中症も心配です。

暑い中で、着るものはどんな工夫をすればよいかなども、一緒に考える機会にしたいと思います。

今回も、みなさんとても気持ちの良い方々で、充実した会になりそうです。
どうぞよろしくお願いいたします。


この日の私は藍の単衣に、取り合わせの小物は青系と薄紫系で、少しアジサイ感を出してみました。(*^-^*)

庭のアジサイも咲き始めています。
工房には5種類のアジサイがありますが、この時期の鬱陶しさを和らげてくれる花で心なごみます。


八重のガクアジサイ。引っ越しの時、植え替えたのですが、色がピンク系からブルー系に変わってしまいました。。清楚なアジサイです。


ホンアジサイ系ですが、あまり花が大きくなりすぎず、このアジサイも好きです。一つの株に赤紫から青紫まで変化が楽しめます。上品な感じです。



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20年度の第12期「紬きもの塾」受講生募集の受け付けに関して

2020年03月23日 | 紬きもの塾’17~’20
                                       工房内から眺めた朝焼け
紬きもの塾20の開催は6月下旬に延期の予定。4/19追記
新型コロナウイルスの終息にはまだ時間がかかりそうですが、警戒しつつも、櫻工房内で行われます「紬きもの塾」は5月10日からの開催を現時点では考えております。
3月27日(金)から受講申込受付を開始いたします。 
(紬基礎コースはキャンセル待ちです)

感染予防対策として、工房では換気、湿度なども注意します。また、一人ひとりができる対策としては、手洗い、体調管理(体温や風邪症状などのチェック)などを個々にしていただきご協力をお願いします。

講座を行う部屋は8畳の和室ですが、機部屋が二間続きで14畳分あり、襖も開けておきます。風通しの良い高台にあり、密閉空間ではありませんのでご安心ください。換気扇、空気清浄機も必要に応じて使います。

今後、東京でも爆発的な感染拡大で、開催が難しい状況になった場合は、申込の方に延期のご連絡を差し上げます。
延期となる場合も、追加の日を申込者全員が参加できるように、調整を行います。
受講費などは開催が確定してからの納入になります。

いろいろと大変な時ではありますが、情勢を多角的に鑑み、最大限気を付けながら、紬や着物の学びを進めてまいりたいと思います。
過去のブログ記事、HPをご覧頂きお申し込みください。→

隣家の満開の桃の花

では、コロナウイルスの終息を願いつつ、善き出会いとなりますことを楽しみにしております!

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19年度の紬きもの塾終了しました――来期の予告

2020年02月14日 | 紬きもの塾’17~’20
紬きもの塾基礎コース、染織実習コース、共に2月にずれ込んでおりましたが、無事終了いたしました。
今期の方もとても熱心に通ってくださいましたが、途中、おめでたの方がお休みになったり、お身内にご不幸があった方ありで、最終回は少人数になり寂しかったのですが、マンツーマンのようになって、内容は充実していたと思います。


基礎コースの最終回では紬布の皺にスチームアイロンを当てる注意点などもお話しいたしました。


また、紬は光に透かして見るとその良し悪しがわかることも実際に見てもらいました。

最終回の反省会兼打ち上げも、持ち寄りのおつまみが充実していて、ほとんど飲み会状態になってしまいました。。(#^^#)
というか、、、私も含めみなさん、終了してホッとされたと同時に、充実感もあり、思い思いのフリートークに花が咲きました。(^o^*

今期は新しいメニューも加わり、基礎と染織コースに分け1日増やしましたが、盛りだくさんな内容で、時間が足りないぐらいでした。


染織コースでは、最後は手持ちの布から作る、『女わざ』の会誌より、バイアス縫いの腰紐作りと、「観ること 使うことの創造性」についてのレクチャーを工芸評論の笹山央氏にお願いしました。
今回は千利休の侘び茶の美意識を解き明かしていこうとする話を聴きました。

日本の古代から中世までの和歌表現の歴史や、西洋文明では「見ること」の意義がどのように考えられていたかといった視野をも含んでのお話でした。
そして結論は、侘び茶の美意識が日本的な「見(詠)ること」の深化の到達点であり、桃山期から江戸末期の間は日本の造形表現が「人類の美術史」の先頭を走っていた、ということでした。

とても興味深い話でしたが、1時間では消化不良の感じもありました。美術も工芸もそうですが、日本の着物といえども着ること、仕立て、管理なども西洋の感覚が取り入れられている昨今、違和感を覚えることも多く、“侘び”の美意識から紬や着物を見直したいと思います。
紬とは何か、着るとは何か、深く考察していきます。このテーマでもう一度5月からの染織コースで話してもらいたいと思っています。

20年度の紬塾スケジュールは2月の末にHPにてお知らせいたします。
染織コースは、2度目の方も参加できますが、すでに定員に達していますので、キャンセル待ちで受付いたします。
基礎コースの受付開始は3月の下旬を予定しています。開講は5月中旬を予定しています。
受講希望の方は、趣旨をご理解の上、過去の紬塾のブログをお読みいただきご検討ください。ブログにすべては書けませんが、内容など参考にしてください。

第11期紬きもの塾’19の基礎コースの3名の方から終了後の感想、気付きなどを自分の言葉で寄せて頂きました。
少し長くなりますが、是非ご一読ください。

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毎回ワクワクするお話を聴くことができて、受講して良かったと感じた1年でした。
元々は、母や伯母から譲り受けた着物だけで自分のはほぼ無い状態で始めた着物生活でした。
布が好きというだけで知識もなく遠方にいる伯母達から得られる情報も乏しく、譲り受けたものの中には扱い方が分からない物もいくつかありました。我が家の収納スペースも限られているので泣く泣く処分してしまった物も…ネット等で着物情報を探しながら細々と続けて、こちらに伺うまでに少し年月がかかりました。

最初の回は恐る恐るの参加でしたが、先生の紬を順に羽織りどんな顔色の人にも映えるのを見て、色が単一でない草木染めの糸で織られた反物の不思議さを知り、参加して良かったと感じたのを思い出します。
そして、自分では決して手に取ることがなかった本、幸田文『きもの』を読み、主人公の祖母の教えにこんな人が身近にいて欲しかったと思いました。

また、「とことん着尽くす」の回では、物を大事に生かして長く使う事や人付き合いの知恵等は頷く事ばかりでした。きものにはその諸々が凝縮されていることを再認識しました。
運針の練習ではもう少しお針が上手になれたらと自分が残念に思えたことも…

取り合わせの授業は楽しかったの一言です。用意された長着に皆さんと小物を選んで合わせる経験をして自分の揃えたい色が見つかりました。

最終回の着物の寸法についてはまだまだ自分の知識が足りないと思いました。
半幅帯の魅力も教わり揃えたい物リストに加えました。
まとめとして、自然に配慮した生活も見習いたいことがたくさんありました。
着物は華やかな面が注目されがちですが、実は堅実な衣類であること、その堅実な部分をもっと知り実践し伝えていきたいと感じた講座でした。

同期のお仲間にも恵まれ、着物の友達が増えてこれからも楽しみです。
1年間、ありがとうございました。
引き続き来年度の染織実習もよろしくお願いいたします。(K)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
基礎コース、とても楽しく通わせていただきました。
毎回講義を受けながら、自然からたくさんの恵みを享受している喜びのなかで、きものを作られる先生の生き方に感銘を受け、私自身もそうありたいと思いました。
先生は、使い捨ての便利さや気楽さに慣れてしまった私に「使いきる」ことの大切さを、そして欲しいものはなんでも手に入れたくなる欲深い私に、本当の豊かさとは決してたくさん持つことではない、と教えてくださいました。どんなものも「使いきる」こと、それはけっしてケチ臭く貧乏臭いことではなく、とても創意工夫の生まれる豊かなことというお話しは本当にそのとおりだと思いました。

授業では、蚕が首を振った分だけ糸が小さくくねくねと曲がっている様子を観察し、決して糸がまっすぐなものではないことを知りました。そんな自然なウェーブを不自然に張り詰めてしまわずに、あるがままの糸の姿を生かしてこそ、はじめて本来の紬の風合いが生まれることも学びました。

また、作り手としての視点から、帯の柄の位置の目安をおしえていただき、そこからいつも「だいたい、なんとなく」決めていた帯枕の位置にも、ここ!という決めの位置があることを学びました。
先生の授業は、詰め込みの知識と違い、感覚を呼び覚まして、実践していきたいと思わせる魅力に満ちていました。

これまで10年近く着付け教室に通い、きものを学んできたつもりでしたが、中野みどり先生と出会って、そもそも自分の「着方」がそれぞれのきものを生かした着方だったのだろうか、ということを考えさせられました。紬には紬の着方があることはわかっていたつもりでしたが、先生の授業では、着方以前に仕立てのサイズ感からしっかりと拘って紬のやわらかくあたたかい特性を最大限に表現できる着方を教えていただきました。
また、運針も教えていただいたり、これからの生活が楽しくなるヒントもたくさん示していただきました。

人間が自然からの恵みによって生かされていること、それに気づかされて、大切に生きていきたいと思えたことは、私にとってとても大きな収穫でした。
どうもありがとうございました。(U)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中野みどり先生と初めてお会いしたのは、先生のお話会の席でした。
前知識なく漠然と染織への憧れを抱いていた私は、一本の絹糸の力について熱く語られる先生の話に感動し、草木染めの事典を大事に持っていて、どの草花をどの触媒に掛け合わせるとどんな色になるのか、そこから学んでいることを先生にお伝えしました。
ところが先生は、それは違います、ときっぱりと言われました。草木染めというのは、方程式で解けるものではない。季節やその日の天気、一日の中の時間、気温や湿度、さらに糸の持ち味の違いなど、いつ染めても一つとして同じものはなく、それ故にそうした一瞬一瞬の移り変わりに目をこらし、丁寧に向き合っていくしかない、とおっしゃったのです。
染織には自分が考えるよりもずっと奥深い世界があることに惹かれ、その世界を覗いてみたくなって、中野先生の紬塾基礎コースに通わせていただくことになりました。

紬塾基礎コースでは、染めと織に至る前の、もっともっと基本的なことが講義の大半だったと思います。講義の最中、先生が常に言ってらしたのが「とことん使う」という言葉です。きものが古びたら繰り回して仕立て直し、着られなくなったら布にもどして縫い合わせて風呂敷にし、布が古くなれば紐にし、縫い糸でさえ使い回す。とことん使うということは、もののいのちをとことん生かすことなのだ、と先生に教えていただきました。
最後の講義で先生がおっしゃった言葉も印象的でした。「織ることは食べることと同じ」。自然の恵みである糸を紡ぎ、自然の素材で染め、自分の身体を使って自分の手の届く幅で布を織り出していく。その工程のすべてが、自分がものと向き合う時間です。織ることには、まさにその人の生きる姿勢が写されているのだと思いました。

一年間の紬塾が終わってすぐに、仕事でインドに行き、ある工房を訪ねました。そこでは、古くからいる職人の人たちが手作業で椅子を作っていましたが、その座面を編んでいる紐が、実はタッサーシルクの絹糸を撚って作ったものでした。絹といえば高級繊維で繊細なもの、とはなから思い込んでいましたが、精錬せずに太く撚ることで、絹糸も麻布の如く大人の体重も支える丈夫な素材になるのだとわかりました。これもインドの人たちの生きる知恵から生まれたもので、蚕の糸をとことん使い倒す例だと思いました。

国は違えど自分の身体で自然やものと向き合い、その恵みをいただきながら大切に生かしていくのは人の暮らしならばどこでも同じで、そうした日々を暮らしていくうえでの根本的なことに気づかせていただいたのが、この紬塾基礎コースから学んだ何よりのことだと思っています。(I)


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第5回紬塾 名古屋帯を締める―前柄、太鼓柄をよく見る

2019年12月13日 | 紬きもの塾’17~’20
紬きもの塾は、前半は糸や染め、織りを中心に話を進め、後半はとことん着る着ものの合理性、そして実際に着物を着ることに関して学んでいきます。
11期の紬塾も残すところあと1回になりました。

今回は名古屋帯の寸法などの詳細を勉強しました。
今期参加のみなさまは、着物をよく着る方で、着付けの講師をしてらっしゃる方もあり、特に着方はやる必要もないかと思いましたが、帯結びに関して、太鼓のたたみあとが出てしまう、前柄の出し方で結びにくいものがある、短くて使えない、長くて締めにくい…など、帯に関してのお悩みがあり、問題点を徹底解明することにしました。

着付け教室で習った締め方に忠実なのはいいのですが、太鼓中心を把握されてなかったようで、今回スッキリ解決となりました!

帯も、ものによって、長さや柄の配置に幅があり、ワンパターンのやり方で締めますと、締めにくい帯、、、となってしまいます。
太鼓中心と前中心、関東腹、関西腹をよく見て手先の長さを決めていくと柄がうまく出てきます。
多少のことは融通が利くので、太鼓柄にせよ、前柄にせよ、中心にしたり、少しずらしたり、好みで締め分ければよいと思いますが、まずは自分の帯の全長、太鼓中心、前中心を測ってみるとよいです。

関東巻きしかしていなかった帯を、関西巻きにしたら、何のことはない、きれいに前柄が、中心よりやや左寄りに収まり、ご本人もビックリ!(*_*)
短くて太鼓柄が出ないとおっしゃっていた方は、帯枕の当てる位置が違っていて、確かに全長9尺の長さではちょっと短いのですが、なんとか使える範囲ということもわかりました。20~30年前の帯は、新しい帯反で仕立てても、仕立て上がり9尺3寸位でした。今は9尺8寸から一丈あるものもあります。着物も帯もなんでも大きめになり、使いにくくなっているようにも思います。

締め方は、捻じるやり方でも、仮ひもを使っても構わないのですが、手と垂れの交点から帯枕を当てる位置が太鼓柄の出し方に関わります。今はその長さをたっぷりとる締め方が雑誌などでも見受けられますが、帯枕を当てる位置は垂先から2尺3寸前後になります。そのように柄はついているはずです。



帯芯を使って柄の配置をわかりやすく見てもらうものを今回用意しました。
垂れは2寸(人差し指のながさ)のところに糸印を付けています。

太鼓中心(1尺8寸)から上下4寸のところに縫い印をつけてあります。
ここが太鼓になるところです。多少の中心のずれ(1~1.5寸)は大丈夫で、帯を二つ折りにたたんだ時の折りあとも正しく帯枕を当ててあるなら、太鼓に出ることはないのです。

今まで、私の帯を締めてくださっている方の中にも、何人か畳んである時の折り目が太鼓に出てしまっている方を見ましたが、帯枕の中(背中)に帯がたっぷり入ってしまっていることになります。また逆に、太鼓中心が太鼓の折り返し(立ち上がり)にたっぷり入りすぎて、中心が下の方になっていたケースもありました。もちろんそれでも意図的にそうするなら、それはそれでいいと思いますが、、。

前柄はさすがに自分で見えますので調整すればいいのですが、前中心の位置も4尺2寸から4尺4寸くらいあって、自分の好みの位置にずらして調整します。


この帯は関東、関西、どちらの巻き方でしょうか?上のトップの太鼓の画像を見るとわかると思いますが、関東巻きです。左右の地色(縞)が少し違っています。
この帯は私に肌映りのいいブルーグレー系が上の方に来るように巻くことが多いです。でも着物によって関西腹も使います。

このような段縞の場合でも、前中心をどこにするか、鏡を見ながら決めます。
制作する際も、もちろん中心を決めてはいるのですが、ずらしてダメということでもないですので、着る方が全体を見ながら決めればよいわけです。

この日は、久し振りに若いころに買った(これも母に借金して買ったのですが、、、^-^;)、薩摩絣を着てみました。ブログの前記事の弓浜絣とは対照的な綿絣です。この自作の紬帯は芯が柔らかく、少し締めにくいのですが、超長綿の薄手の滑らかな木綿にはかっちりし過ぎず、良いかと思います。

帯芯と帯地との関係で帯の表情も変わります。仕立て屋さんも悩むところだそうです。仕立て依頼の際に希望が言えるようになれば一人前でしょうか・・。

それから、どなたも尺指しをお持ちでなかったのですが、着物をずっと着ようと思う方は二尺指しと一尺指しはぜひ持ってほしいと思います。
とてもシンプルに長さや幅を掴むことができます。自分の着物の寸法も覚えやすいです。

他には半衿付けも衿芯を半衿でくるみ、それごと洗うやり方も参考までにご紹介しました。自然な衿の形になります。

今回も盛りだくさんでヘビーな内容でした。
帯結びに関してのお悩み相談も「ミニ紬塾@工房版」でも承ります。



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第4回紬塾「日本の取り合わせ」――ものの力を合わせる

2019年11月15日 | 紬きもの塾’17~’20
紬の着物と言っても普段着から略礼装まで、おしゃれ度の高い紬も昨今は多いと思います。質感もそうですし、訪問着や付け下げの柄付けなど様々です。

紬塾の取り合わせワークショップでは着尺3反(グレー地、ピンクベージュ地無地系、焦げ茶地の縞)に帯を5本(紬帯、染帯、織り名古屋帯など)、草木染帯揚げ、帯締めも20~30色、用意しました。

創り手として、日々自然の色を見ています。隣り合う色で色の見え方は変わってきます。共鳴しあう色があります。織り物の陰影もあります。
紬を制作する上で、いつも着ることを、取り合わせられることを意識しています。私は着物コーディネーターではありませんが、色やものを見る力は日々鍛えているつもりです。そんなことで私なりの視点から取り合わせワークショップも行っています。

このワークショップになると、みなさんの発言にプライベート感が出てきます。(*^-^*)
装うとなると、いつ、どこへ、どんな場合、どんな心情で、誰と、、など。みんなでワイワイ言いながらの発表となりました。ストーリー(ありえそうな、、)を作るのも楽しいのです。

知り合いの素敵な男性ピアニストのコンサートへは女ぶりを上げるフェミニンな小物の色使いを、お客様をお招きしての利き酒会はホスト役としての落ち着きの中にも話題提供になる染帯をチョイス!能楽鑑賞には格を備えた吉野間道、親しい人とのお花見などは軽やかな色の取り合わせ、高級な温泉へは無地系の紬に格子の帯であまりかしこまりすぎずに、カジュアルエレガンスの雰囲気で。ガラスの美術館へは透明感を意識して、現代アートのギャラリー展示には作品の邪魔にならないようモノトーン系で抑えながらも帯揚げに少し華やいだもの、、などなど。

単なる色のコーディネートではなく、季節(移ろい)や心情も盛り込める自由さが紬(洒落着)の装いにはあります。紬の着物に紬帯、織り帯、染帯はもちろん、袋帯もものによっては合わせることもできます。


さて、取り合わせは帯や小物ばかりではなく、何より着る人と合わせなければなりません。
毎年、「取り合わせの回」では、私は一番似合わない紬を着てみなさんをお迎えしてます。過去のブログにも書いてきましたので、繰り返しになりますが、いまいち肌映りの悪い着物を着る場合の参考例として着ております。
25年ぐらい前に、必要に迫られ、急に在庫の中から作ったものでしたが、ピンク系の私の肌とは映りの悪い“秋色”。黄茶系が私は難しいのです。そこで帯や帯締め帯揚げ、八掛で少しカバーできることをみなさんに見て頂きました。

秋には秋の色を着たいと思うのですが、全部秋色にせず、ピンク肌と合う、シルバーグレイ地に青や黄色があしらわれた堺更紗の帯を合わせてみました。帯締めには紫みの焦げ茶、帯揚げは赤みのベージュを使いました。


似合わないから着ない―ではなく、そのものが、もし力のあるもの、包容力のある色相のものであるなら、なんとか取り合わせでカバーして着ることができます。また、年齢によって、季節によって着にくい着物も、加える色を工夫して、大事に着ていきたいです。
ものととことん付き合っていく、添っていくと、そのものの個性も理解し、受け入れられるようになる場合もあります。それは自分自身の柔かさ、しなやかさも要求されます。
この紬は、自宅近くの原っぱで、老いた母としばし佇み「きれいだね~」と言いながら眺めた草紅葉の美しさを思い描いて作ったものです。庭の小鮒草で染めたモスグリーンや黄色、茜の赤などが織り込まれています。だんだん自分のものになってきたように思います。

そして大事なことをもう一点、色や模様や、素材の取り合わせはもちろんのことですが、いくら色が合うからと言って、上質の紬に、力のないファブリック類で帯を作るわけにはいきません。
ものには格というものがあります。普段着、礼装の格の差ではなく、そのものが持っている格、品格です。それは素材であり、技であり、魂であり、見識であり、自然です。

そこを見極めて合わさなければ、ちぐはぐになってしまいます。
着物の究極の上質な取り合わせをするには、ものの力を合わせることから始まると言ってもよいかもしれません。

過去のブログも同じようなこと書いていますが、未読の方、興味のある方はご覧ください。






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第4回染織実習ー織る

2019年11月10日 | 紬きもの塾’17~’20
第4回「染織実習ー織る」を3名の方で行ないました。
織りは全く初めての方2名と、以前の紬塾で染織実習を体験した方1名でした。
今回もとても良い布が織り上がり、ホッとしています。
いつものように私が織るのと同じレベルのことをしてもらいました。

基礎コースを終えた方(終える方)で、来年度の染織コースを検討中の方は、私の方へお申し出ください。初めての方が優先ですが、2回目の方も席があれば可能です。


まず1番目の方は、繊細な微妙な色遣いで織り上げました。
初めてとは思えない完成度です。織り方も指示通りに織っていました。
布端の耳もきれいです。3人ともきれいですが、杼の置き方を気を付けるようアドバイスしています。耳端は織り物の柱のような大事な部分だからです。
簡単なテキトーな講習をしても意味のない事ですから、本格的に指導します。


機に座る姿勢も素晴らしいです!

以下はご本人の感想文です。↓
[先日は貴重な経験をさせていただきました、
経糸を毛羽立たせない、緯糸の太さから緯糸を入れる傾斜を判断する、足の踏み込み、作業は効率良く、緯糸の入れ方も片手で完結させるなど、気をつけるべきことがたくさんありました。
しかし、自分の糸のことや布のデザインに気を取られ、それらは二の次…いや、頭の外側に吹っ飛んでいました。
風合いとデザイン、どちらも満たしている先生の紬、出来上がるまでの多くの心遣いは、想像する以上の、そのまた上のものでした。
それでも、集中し、織っていく二時間はあっという間で、とても楽しく幸せな時間でした。
もっと、真綿を紡いでいたかったですし、織っていたかったです。ありがとうございました。 N.T ]



↑ 2番めの方は、太さがとても安定したよい糸をつむぎました。織り上がりもしっかりしています。普段はモノトーンの服や着物を着てらっしゃいますが、色糸選びではピンク系の濃淡を選ばれ、間にグレーとブルーの寒色系を配しました。
華やかな布になりました。思いがけないご本人の内面を見るような気もしました。

以下はご本人の感想文です。↓
[自分で真綿から糸をつむぎ、自然の草木の温さのある色を染めて、布を織る。
という貴重な経験をさせていただきました。

一枚の美しい布にはたくさんの愛情とたくさんの手間がかけられているのだということに改めて気づきました。
そして、そんな愛情を掛けて織られた着物は、次世代へ引き継がれ、着物で着られなくなれば、布になり、紐になり、最後は土に還る。その様に永く循環させていく事が大切と中野先生から教えて頂きました。
これから先は、そのことを思って着物を選び、着ていきたいです。

私が実習させて頂いて、一番大変だったのが、木を切り細かくして糸を染めるという工程がとても大変でした。織るという作業はデザイン含めてとても楽しく、ずっとやっていたいと思いました。

糸をつむぐ方や草木染めをする方がどんどん減ってしまうというのもこんなに大変な工程があるからだとつくづく感じましたが、なんとか、自然の恩恵、手作業の工程を次の世代に継承していかれるようにしていきたいです。
今回余った糸は持ち帰らせていただいたのですが糸も愛おしく感じました。 M.M ]


↑ 3番目の方は、織りは2回目です。以前もよく織れていましたが、今回はお祖母さまの羽裏を裂いたものと、自分でつむいだ糸も混ぜながら設計をしました。
筬打ちもしっかり中央を持ち、程よい音で打ち込んでいました。
トップの画像のものですが、色のチョイスも明確です。
柔らかな羽裏を裂いた端っこの毛羽も面白い景色を醸しています。ハサミで切るのとは違います。また、裂き糸だけで織るのとは違う糸の質感のギャップも生きています。
そして、2回目ということで、経糸を見る余裕が生まれたのでしょうか、しきりに経糸と緯糸の重なりによって生まれてくる色や陰影を語っていました。
織り物ならではの醍醐味の気付きがありました。さすが!と思いました。

以下はご本人の感想文です。↓
[実習は今回で二度目でしたが、前回からだいぶ月日が経っていたので、機に座るときはとにかく緊張していました。
真綿から紡ぎ、染めた自分の糸一色と先生の糸二色、祖母の羽裏を裂き糸にしたもの、全部で4種類を使いました。
経糸が濃い色だったので紡ぎ糸と裂き糸と交わってどんな表情になるのか、不安と期待が入り混じりつつ織り進めました。
糸の思いがけない太さにより設計した通りにいかないながら、臨機応変に緯糸を入れていくのもまた楽しいものでした。たった三寸五分の長さでしたが、とにかく集中。拙いながらシャトルのカラカラと滑る音、筬をトントンと打ち込む音。とても贅沢な時間でした。
織りあがった布はとても気に入っています。同色系でまとめたこと、裂き糸に乗った経糸の色。想像以上の表情が生まれました。
箪笥に眠っていた祖母の羽織りがこうして美しい布に生まれ変わった事もとても嬉しくてなりません。
経糸の整経など大変な作業のない、いいとこ取りの実習でしたが、帯一本着尺一枚を織ることがどれだけ体力、精神力を使って成されるかを再確認しました。
身近にある布が大量生産なのかそうでないのかに拘らず、どんな過程を経てきたのか、どんな意味があるのかという事に思いを馳せるきっかけとなりました。
ありがとうございました。 H.J ]




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紬塾「とことん着尽くす」――浪費社会の中で

2019年10月04日 | 紬きもの塾’17~’20
 
先月末の日曜日は紬きもの塾「とことん着尽くす」でした。
10月に入っても真夏日となっている東京ですが、この日も、30度に達する暑い日でした。床の間に庭の斜面で見ごろを迎えていたハギの花を投げ入れて、みなさんをお迎えしました。私はいつもの単衣紬に単衣・夏用の帯を締めました。
 
帯揚げは分かりづらいですが、祖母の着物の胴裏地(薄手の節絹)を薄茶に桜で染めたもので、秋の気配も取り入れました。しかし、汗をかくことは必至でしたので、襦袢は綿麻半襦袢にしました。
 
この紬自体が、着物の更生の話の一例になりますので、この回にはいつも着ているのですが、若気の至り(!?)で、大きなシミを前身ごろに付けてしまい、アルカリ剤で洗い、生地を裏返し、前身ごろ、後身頃をひっくり替えして、仕立て直してあるもので、講義の中では、武勇伝と共に、恥ずかしながらご紹介してます。(#^^#);
 
みなさんからも着物の更生品や、リメイクした小物や浴衣からスカートにしたものなどお持ちいただきました。長襦袢の袖丈が短いものの直し方で、肩山を切って足し布を入れるというのは初めて知りましたが、目からうろこでした。私の方からも母の羽織や着物からコートなどの仕立て直しを参考に見てもらいました。手縫いの襤褸雑巾の果てまでお見せしました。最後はトイレの床など拭いてお役御免となります。
 
   
体調不良でお休みだった方からは、薄手のリネンのパンツに何か所も継ぎを当てながら使い続けているということで画像(上)を送ってくださいました。ロングスカート下に使っているということですが、必然が生み出す素敵な継ぎ当てですね。
私も仕事用のパンツは膝やお尻、内腿が擦れてどれだけ継ぎを当てたかわかりません。でも、継ぎ当てしてからの方が、もっとそのものに愛着がわくのは不思議です。いわゆる教科書的な継ぎ当てとは違って、ワンポイントアクセントや、アート性も加味された楽しい継ぎ当てです!
他にも野菜や果物の皮も上手に利用しているなど、すべてのものを慈しみながら、工夫されているとのことでした。
 
また、義理のお父様を亡くされ、四十九日の法要を高岡の方で済まされたばかりの方は、義理のお母さまから、小さな袋を旦那様の分と渡されたそうです。中にはお義父様が、着ていらした寝間着の布切れが入っているとのことで、命日までは身近に持っていて、見守ってもらい、無事を見届けて、仏様は空へ還るのだそうです。「遺骨のかけらを身につける方がいるように、義父の体や魂そのものとして、形見分けのように分けてくれたのだと思います。」とのことでした。
人の着るものに魂が宿るということでしょう。人と布の密接な関係を改めて思います。
着るものを、布をおろそかにしてはいけないと思います。
 
また、着物以外でも、普段の暮らしの中でもとことん使う、あるいは資源、エネルギーの無駄をしないことなど話し合いました。創意工夫は創作の仕事と同じです。
 
紬の着物を着ることと、自然環境問題は密接だと思っています。自然素材を、また季節を纏う取り合わせもとても大切だからです。まずは資源や、エネルギーの無駄を省き、とことん使い、別の形にしても再利用する取り組みを普段の暮らしの中でも身に付けておきたいものです。
 
軽減税率という名のもとに、悪法が始まりました。自衛のために消費税が上がる前に買いだめするのもいいですが、最初から無駄な買い物も多いのでは、、とTVの買いだめする人たちを映す報道を見て思いました。洗剤や柔軟剤、そもそも本当に必要でしょうか?浪費しながら、買い込む。日本人はこんなに愚かだったのでしょうか?
 
少なくとも戦前の暮らしはこんなではなかった。戦後、民主主義の世になり、戦争のない世になり本当によかったけれど、豊かな自然や文化を捨て、そして得たものは、大量のごみや環境汚染、そして格差社会でした。
 
私は電気釜も大型テレビも大型冷蔵庫も全自動洗濯機も乾燥機も持っていません。土鍋でご飯を炊けばエネルギーも少なく、おいしく炊けます。停電でもカセットコンロがあれば7分で2~3合なら炊きあがります。電子レンジはもともとついていたので使っていますが、ほんのわずかな時間しか使いません。
洗濯もすすぎの楽な炭酸塩を使います。天日で干します。
染色でも水やガスの無駄を省くよう後先を考え、工夫しながら、やりくりします。ここに細かくは書けませんが、自然素材を使いながら、資源を無駄にしたり、環境を汚染してはいけません。
 
かと言ってものを持たないミニマリストにはなりたくありません。衣食住、慎ましくも上質なものを大事にしたいです。日々の器やアート、庭の植物、着物。経済の許す限りのことしかできませんが、人間らしく生きる大事なものです。
 
着物というのはシンプルな日本的な合理性に裏付けされています。それは奥深いけれど安心な世界です。
とことん着ることはみじめではなく、知的で、創造的で幸せなことです。着物だけでなくすべての物事に通じると思います。
 
 
さて、最後は問題の運針でした。。。
やはり運針はみなさんご存じなく、針に糸は通さずに手拭いの端をチクチクしてもらいました。苦戦しておられましたが、最後は写真で見ると、なんか出来てそうな、、感じになってきました。(*^-^*) 
型が少しはつかめたと思います。次回、もう一度やってみることになりました。
 
運針ができれば、服の直しや、ちょっとしたものならミシンを使わずとも気楽に縫えるようになります。そして、手縫いは解くのも早いのです。縫い直しが着物はよく行われるのは解けるように縫われているからですね。
ぜひ次回までに練習を重ねてもらいたいと思います。一生の楽しみになりますよ。
 
 
 工房の床の間にてポーズとってます。
 
 
 
 
 
 
 
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梅シロップの実リメイク――梅酢漬け

2019年08月02日 | 紬きもの塾’17~’20


先日紬塾の染織コースの第2回「草木で糸や布を染める」を行いました。
桜と柿を使って、糸や帯揚げ、古い半衿を染めました。家でもできるよう、帯揚げの少しトーンを落としたいものなどの媒染材を使わない染め方も話しました。生木がなくても紅茶などでもできます。

梅雨寒から急な暑さになり、冷房を使わない中で作業ができるか心配されましたが、無事に染めることができました。今年は日照不足のせいか、桜の色も赤みが少なかったように思います。
チップを作りながら、「この作業をいつもなさるんですね。。」とつぶやかれているかたがありましたが、そうなんです!これが草木の生木で染めるときの苦労でもありますが、直に枝にハサミを入れてもらうと、植物がどんな風になっているかなどの観察にもなり、ただ染料で染めるだけの実習とは違うところです。樹皮と芯材とその間は随分色も繊維の状態も違うということをチップづくりの中で気付くと思います。観察がいい染をする上で大切です。

今期から以前受講された方も再受講可能になり、2回目の方がありましたが、染材の煮出し作業なども落ち着いてこなされていました。昨年の様子はこちらから。

さて、話はガラッと変わりますが受講者のお一人が、梅シロップを作った後の青梅の実を赤梅酢に漬けたものをお茶請けにと持ってきてくださいました。汗をかきましたので、夕方みんなでおいしく頂きました。

シロップ漬けですので甘いのですが、梅酢の塩と酸味が合わさって甘じょっぱく少し酸っぱくて、汗をかいた後にピッタリでした。疲労回復効果のクエン酸と塩分、甘み、梅の三味漬けです!

シロップ漬けの梅の実はそのまま食べたり、ジャムにすることが多いようですが、梅干しを漬けたときの梅酢さえあれば、火も使わずこれはとても簡単ですので梅干しを漬けている方、梅シロップも作って来年お試しください。

柔らかな果肉の梅でしたが、ご本人に伺うと、「梅シロップの作り方で、青梅を冷凍してから砂糖に漬けると組織が壊れて早くエキスを抽出することができるのですが、そうすると梅がしわしわになってふっくらしません。昨年の梅シロップは凍らせずに漬けたのでふっくらでした。ですのであのような仕上がりだったのです。」
また、漬け込む期間は「梅酢に漬けたのはひと月程です。ジップロックなどのビニール袋で真空状態にして漬ければ梅酢は少しで済むと思います。」とのことでした。冷蔵庫で保管です。

私は梅ドリンク、梅ゼリー、梅干しも奈良の王隠堂農園のものを生活クラブから購入していますが、この甘じょっぱいタイプの商品はありませんので、作るしかないですね。。(^-^;

もう都心はエアコンなしで暮らせない暑さになってしまいましたが、上手に汗をかくことも大切とよく言われてますね。本来は汗をかくことで体温調節の機能を人間は持っているわけですから。エアコンの普及で汗をかきにくくなっているようです。無理はよくありませんが、でもエアコンに頼りすぎないで、程よく気持ちよく汗をかき、この猛暑を乗り切りたいと思います。そんな時に梅の三味漬け!?や梅干しは最高です!!(^^)/

工房では暑さに馴れたお盆明けから染色に入る予定です。

さて工房は8月9日(金)~18日(日)まで夏季休業となります。オンラインショップのご注文の受付は致しますが、発送作業はお休みとなります。19日以降の発送となりますのでご了承ください。





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