中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第2回染織実習「糸を染める」― 工房の庭木を使って糸や半衿、帯揚げを染める

2023年07月27日 | 紬塾’21~’24
今年は5名の方と染織実習をしていますが、梅雨明けしたその日に染色をしていました。
写真は、たまたま参加のみなさんが撮ってあった写真を提供いただきました。私は指示を出して、お手本を見せたりするだけでも手いっぱいで、写真を撮る暇もありませんでした。

34度越えの狭いキッチンで、ガスコンロ3口使って、エアコンなしで、マスクをしての作業。私は慣れていますが、みなさん大変だったのではないかと思っていたら、案外「涼しい」「風が気持ちいい」などと言われてました。確かに風がよく通るところではありますが。


工房兼住まいを選ぶ時には、エアコンなしでも仕事ができるように、風が良く抜けることを必須条件にして来ました。染色以前に大事なことです。

前回つむいだ真綿の糸と、帯揚げ、使い古しの半衿を庭木で染めました。
桜と柿を使いました。媒染は灰汁と鉄と無媒染の3通り。

桜は枝と葉を分けたのですが、結局2回目の染色で混ぜることになり、その違いを明らかにすることは出来ませんでした。

それでもきれいなピンクと鉄を掛けたグレイッシュピンクが染まりました。
生木の無媒染はコツがありますが、堅牢性と、色の落ち着きを考慮すると、淡い色でも染めて干すを2回は繰り返したいです。
無媒染の半衿もとても良い色に染まり、お肌の色も良く見えそうです。

室内で1週間ほど空気酸化させたのちに、アイロンで各自仕上げてもらいます。

トップの画像は夕方、1工程を終え干しているところです。
半日では十分な染はできませんが、何とか自家用なら使えます。

今までもたくさん書いてきましたので繰り返しませんが、まとめとして、草木染は簡単なようで、奥の深い難しいものです。
染色の基礎+実践に基づく創意工夫、研鑽が必要です。短時間で習得できるものではありません。マニュアル化も出来ないです。
また、料理やお茶を美味しく入れるやり方に共通点をたくさん見出せます。

媒染材はきちっと量を測り、多すぎないようにしないといけません。中には劇薬もあります。取り扱いに注意が必要。
2018年のブログも参考まで。

でも、生木で染めている時の生命感のある色や匂いにみなさん感嘆の声を上げていました。その実体験は大きいと思います。
家庭でも無媒染やアルカリ剤の媒染ならできますので、そのやり方もお話ししました。半衿や帯揚げの鮮やかすぎるものなどを染め重ねると良いと思います。

今年は今までで最も暑い夏となりました。
異常気象は今後も進むのでしょう。世界中で温暖化対策をしているとはいえ、もう時すでに遅し、という気もします。
世界で災害が多発しています。
7/28配信で、グテレス国連事務総長「地球沸騰化」と警告を発した。 
温暖化ではなく地球沸騰化の時代と言われ始めました。

しかし、企業や国は勿論ですが、温暖化防止に少しでも出来ることは今からでもしなければなりません。
庭のある方は木を植えましょう。遮光や、涼しい衣服でエアコンの設定温度を少し上げましょう。
近くの買物などは車を使わずなるべく歩きましょう・・それぞれの方で出来る事をやりましょう。

しかし、この時代にまだ再開発と言って、大木を伐る某大企業のエゴに憤りを覚えます。それに賛成する都知事、政府やゆ党(野党と与党の間)にもうんざりです。表向きSDGsを掲げ、やっていることは真逆のことをしています。

東京だけでも高木が多数伐採されます。神宮外苑、井の頭公園、日比谷公園など、都民の憩いの場であり、多様な動植物の生息の場であり、気温を下げる働きのある高木を伐採するのは犯罪としか言いようがありません。
全国的にもあちこちで開発と称して、木の伐採、強剪定が行われています。

伐採計画反対の声も大きく、私も神宮外苑以外にもたくさんの反対署名をしましたが、ご存じない方は、ネットでいろいろ調べて身近なところから是非反対の声を上げましょう。
これ以上環境破壊が進むことは、大げさでなく人類の存続にかかわること。経済が活性化するはずはありません。
原発事故からも、コロナから何も学ばない企業、経済界、政府自民党とその補完勢力。

憲法25条で保障された、健康で文化的な最低限度の生活を守るには、草木染や天然素材の織物、着物を大切にしたいなら、自然環境、民主主義は守らなければなりません。
美しい夏の着物も着続けられるか分からない状況です。
民主主義はお上の言うなりでは育ちません。自分で調べ、考え、現状に声を上げていかなければなりません。

次回9月の染織実習は織り物デザインに入ります。


コメント (2)
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「卓布・仕覆裂」オンラインショップに公開しました!

2023年07月11日 | 工芸・アート
暑中お見舞い申し上げます。
梅雨明けか?と思わせる暑さですね。

少しばかり涼をお届けします。



若い方はご存じないかもしれませんが、水中花を古道具屋さんで購入しました。昭和20~30年頃の製作されたものだそうです。
草で作る通草紙というものでできていて、私が小学生の頃には家にも飾られていました。
造花と言ってもとても情趣のあるものです。毎日水を替えてます。

明治から昭和の俳人たちにもたくさん詠まれてきました。


 水中花培ふごとく水を替ふ  石田波郷
 まじまじと子が見てひらく水中花  桂信子
 泡一つ抱いてはなさぬ水中花  富安風生


夏の間、切り花も少ない時期に愉しもうと思っています。

雲の額装はフランス文学者、シュルレアリスム研究者の巌谷國士さんの写真ですが、写真も素晴らしいです!ギャラリーで一目惚れしました。
上の額装(半分しか見えてませんが)は、廃棄された古本の表紙から制作した西村陽平さんの作品。西村さんは以前にもご紹介しました。
卓布は拙作(23cm×52cm)。ご希望のかたにはお分けしますよ。お問い合わせください。(^^♪

ささやかなアートや花などを愉しむスペースは大事です。こころの置き場所です。佳きもの、美しいものと向き合う場所。自分を豊かにする場所です。
アートのない暮らしは考えられません。

オンラインショップに卓布・仕覆裂少しですがアップしました。



小川郁子さんの振出しに、京都の緑壽庵「金平糖」を入れて。



父の遺品の小石と鍛金造形作家、橋本真之さんの個展で求めたオブジェ。

大切な宝物包んでみませんか?置いてみませんか?


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