中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第4期紬きもの塾第10回(最終回)

2013年01月24日 | 紬塾 '9~'12


第4期の最終講義は半幅帯の結び方、半衿のつけ方を中心にしました。

半幅帯も布地に合う結び方というのがありますので幾通りかの結びをマスターしておくといいですね。
まずは文庫結びからしましたが、タレの畳み方でかなりアレンジの表情が変わります。
私は一般的な、すのこたたみ(タレ先が中に隠れる)ではなく屏風たたみにしてタレ先が上に出るように結びます。
また長い帯の場合も屏風たたみにすると2枚羽根になりボリュウムが出て、アレンジもできます。

他にも貝の口、矢の字、吉弥、角だし風など7~8種類をやってみました。
また参加者のお一人が当日締められていた角だしアレンジ結びも素敵でしたので教えてもらいました。

初めての方にとっては覚えきれないかもしれませんが、一度やっておけば本を見たり、ネット動画でも見ることができますので服の上からでも伊達締めだけ付けて練習すると良いと思います。
とにかくそんなに大変なものではないことを経験してもらいたいのです。

半幅帯は気に入った布から作るのも良いですが、半幅結びの時こそ上質の手織りの半幅帯をお使いいただきたいと思います。
緩まず締めやすく見た目も貧弱にならないです。

あとは紬塾のテキストとして使っている『きもの』幸田文著の感想や気づきを毎回(6回)一人ずつ発表してもらいましたが、まとめの話もしました。
着物を着ることが当たり前だった時代の、着物や布に対する人々の心持ちが描かれているのですが、着物を着始めてから2回、3回と再読をしていくと発見があり、より深く理解できると思います。
着ることは生きること、生きることは着ること――
今後二度と書かれることのない、着物を着ることの奥深さをお腹の底から知ることのできる名著だと思います。

他にも話の流れで靴下やボロズボンの繕い作品!?をお見せするハメになってしまいました~。
洗濯物を灰汁で洗う昔のやり方に近いすすぎが楽な炭酸塩の洗濯方法についても話ました。

靴下の穴を別のハギレで塞いだり、古毛糸を使ってカラフルにステッチしたりしてます。

また布の汚れに応じた洗濯の仕方もやってみると新たな発見があり楽しいものですよ。
全自動洗濯機は私は好きではありません。

モノと自然環境を大切にして、暮らしそのものも見直していくことが着物文化から学べる大事なことだと思います。

この日は時間いっぱい3時間通しで講義をしました。
そのあとはささやかにワイン&ティーパーティーで、受講しての感想など伺いました。

以下にまだ揃っていませんが、感想を送ってくださった方をご紹介させていただきます。

尚、第5期の紬きもの熟の詳細は2月22日に日程などブログでお知らせします。
開催日は土曜日か日曜日になります。
お申し込み受付は3月中旬を予定しています。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆ ☆ 

思い返そうとすると、毎回が印象に残る授業でした。
実技授業はたとえ短い時間のことでも、体に残っています。
紬糸を紡いだときの感触、皆で染め上げた糸を干した風景、
高織で織ったときの感覚は、今でもつい先日のことのように感じます。
他にも次々とその時各々の様子が浮かびます。

先生や他の受講生の方に、手助けばかりして頂いていた着付けの回では、
何もわからない恥ずかしさの反面、人から学ぶことのできるはじめての機会に、
これから着物を選び、慣れていこうとする気持ちを見守られ、後押しされ、
それを持ち帰ったような思いがあります。
人から教わることによって意味が深まり、
大げさに言えば、人がいることで文化が伝えられ、人と人との関係がなければ、
文化が消えてしまうのかもしれないということも、実感することができました。

先生が着物や自然、社会とまっすぐに向き合い暮らしてきた中からお話してくださった言葉には、
自分の視線や気持ちを、すうっと上に持ち上げられるような感覚になりました。

以前にはもう少し、日々や自然と向き合いながら過ごしていたつもりだったけれど、
続けていられなければ意味がないと思いました。
反省しつつ、これから軌道修正していこう、と心に決めています。

少し不思議だったのは、作家として、作り手としての先生のお話をきいていたとき、
先生の著書をよんだときのことです。

既に立松和平さんの本で、先生のことを少し読ませて頂いていたからかもしれませんが、
感嘆や敬意を抱きつつも、はじめて聞く、知ることばかりではなく、
ひとつひとつ、確かめておさらいするようにお話を聞いていました。

ただ、それは私が頭でばかり、印象でばかり物事に触れてきていたからかもしれません。

今後、紬塾で先生から伺ったお話や言葉たちを、どれくらい鮮明に思い返し、少しでも多く理解したり実感できるかは、
これからどれ程自分が着物や染織と向き合えるかと比例しているように思っています。

課題の本『きもの』にあったように、一生のうちに着る着物や布たちの、どれもを大切に思えるような日々を過ごしていけたなら‥

前向きな気持ちとともに、たくさんの課題をいただきました。
着付けや道具選びから、私の課題は山積みのようですが、頂いた機会や気付きを無駄にしないよう努めます。

一年間、半人前すぎる私にもあたたかくご指導くださり、本当にありがとうございました。
また先生にお会いできる日を楽しみに、時間はかかるかもしれませんが、自分の着物を見つけたいです。 
                                               I.M



着物について学ぶというのは、
糸について、学ぶことであり

着物を大切に着るという、日々受け継がれてきた日本人の生活を知ることである。
と、学んだ一年でした。

そして、実際に着物を着て講義をされる中野先生や
毎回のように着物を着て講義を受けていらっしゃる生徒さん達の
着物への意識の高さに、毎回感銘を受けました。

美しいものに触れると、
心が優しくなるものですね。

ほっこりとする時間を過ごさせていただきました。

ありがとうございました。   K.E



この1年間紬塾を受講させていただいて、
自身の未熟さを痛感するとともに、
先生のものづくりへ注がれる迷いの無い「情熱」に触れることができて、
それは発見でもあり、また課題として受け止め今後に役立ていきたいと思いました。   W.Y


紬塾の講義からいただいたもの。
それは、かつて自然に寄り添いながら生きてきた日本人の暮らし、
布をとことん最後まで使い尽した豊かな文化を見直すことでした。

「お蚕さんが吐きだす糸のゆるやかな波の形を意識して」 染織の講義では、
糸を紡ぎ、染め、布を織るすべての工程で、絹糸本来の波形を生かすことが、
着心地の良さや美しさにつながることを教えていただきました。

草木の一滴、一滴を慈しみながら丁寧に染められる糸は、
同じ樹木でも季節によって色や明るさに違いがあり、
染めの仕事は自然の営みとともにあることを実感しました。

織りの実習では、堅牢性がありしなやかな布を作るために、
紬糸を経糸に使うことをはじめ、打ち込みの力加減、杼の持ち方など
細かな配慮が行われていることを知るとともに、
常に着る人の立場にたった先生のものづくりの姿勢に感銘をうけました。

伊達締め作りや半衿付の講義では、
お裁縫の初歩である「運針」から学びなおすとともに、
縫う前に糸の長さを考えて使うこと、糸を再利用すること、
後始末をしやすいように縫うことや結ぶことをはじめて知りました。

知ってしまえば当たり前のことですが、
こんなちょっとした暮らしの知恵って、本には載っていないことなのです。
着物が日常であった時代は、母から子へ、子から孫へと
当たり前のように受け継がれてきた知恵の積み重ねを
私たちの世代は、受け継ぐことなく消費文化の中に暮らしていることに、改めて気づかされました。

気に入った上質の布を大切にしながら使い切ることによって生まれる
布への慈しみや安らぎの時間、布のもつ力強さと凛とした美しさ。
先生は、ご自身の日々の暮らしや生き方から身を以て語ってくださいました。
それは、私にとって活字からは決して得ることのできない貴重な経験であり、
今の暮らしそのものを見直すきっかけにもなりました。

講義をご一緒した皆様と出会いもかけがえのないものでした。
その機会をあたえていただいたことに感謝するとともに、
皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。 A.J




先生に教えていただいたたくさんのことを心に留めて、

毎日の暮らしや今後の人生の糧にしたいと思います。

着物のこと、糸のこと、染めのこと、織りのこと、紬のこと、

暮らし、自然、着付け、人、文化・・・。

いつか私が織るものも、先生が作る美しい布に少しでも近づけるように

がんばって精進していきたいと思います。

1年間、一緒に受講していただいたみなさまからも

いろいろなことを教えていただきました。

生涯、忘れられない思い出になることと思います。

先生、みなさま、ほんとうにありがとうございました。 N.H



誰しもが日本文化のすばらしさは感じつつ、
被服に関しては着物を着 る習慣をごく一部の人を除き、捨ててしまった日本人。

私もその中の一人で、祖母、母が残したものがあるとはいえ、
日常に着 るには、やはりかなりの力が必要であることを実感しました。

ただ、10回の講義を受け、このままでいいの? 
はては、自分の生き方をもう一度見直してみるという、大きな
課題をいただきました。すぐに答えは出ませんが、
丁寧に生活しよ う!(着物ライフも入ってます)を目標にがんばります!! O.Y







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第9回紬きもの塾  着物を着る

2012年12月27日 | 紬塾 '9~'12
 
前に織った布を今回切り分け、自分のものを手にしているところ



紬塾も今年度は残すところあと1回となりました。

今回は小道具の選び方や取り扱い方、着物の着方のポイントも話しました。

着物をよく着てらっしゃる方からほとんど自分では着たことのない方まで一緒に講義をします。
着慣れている方も初めて聞く話や着方に驚かれることもあるようです。

着付け教室をやるつもりは全くありません。

まだ自分の着物もない人に着付けだけ教えてもあまり意味のないことになります。着る気になり、自分のサイズにあった着物が準備できたら少し手ほどきを受ければいいと思います。
少し丁寧にじっくり習いたい場合は2時間ほど個別に指導させてもらうことにしています。

帯締めの本結びの話から、紐の解き方の話になりました。

本結びはしっかり結べて、解けにくく、解きやすい結び方で、紐の端を反対方向へ一直線に引くと固く締まってしまった場合でも解けます。
基本中の基本の結びで、結び目も美しいです。



最近は結ぶという作業が日常で少なくなり本結びを結べない、知らない方が多いようです。
風呂敷なども本結びでない、縦結び(右上を2回やる)にした場合、荷重がかかると結びが抜けてしまうこともあり危険です。解け易く、解きにくい結びです。

また日本では死に装束に結ぶやり方なので縁起が悪いとされてきたようです。
子供の頃から母に厳しく言われてきました。
そして母を見送る時に旅立ちの装束に縦結びをするよう指示がありました。
その時、母の教えが本当の意味でわかりました。

母が古布を私がいつか裂き織りに使うようにたくさん裂いて置いてくれているのですが、くるくる巻きつけた最後は紐の端を引き抜けばいいように片蝶結びのようにしてくれています。
母の知恵と愛にいつも頭が下がります。

昔の建築も解くことを前提に造られていたし、あとのことがきちんと考えられていました。
結びや梱包も解くことを前提にしたいですね。
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第7回紬きもの塾「取り合わせについて」&「取合せを愉しむ展」

2012年11月19日 | 紬塾 '9~'12


着物の取合せについて話をさせてもらいました。
取合せの前にまずは何を着るか、どんなものを良いと思い身にまといたいと思うのか、まずは自分の中に軸になるものを決めることが大切だということを話しました。
そこから取合せが始まります。



今回は私がさんざん着て、先日洗い張りをした藍の微塵格子の紬に20年ぐらい前に買い求めたジャワ更紗の帯(両面使い)を見てもらい、もし自分がこの取合せで着るならどんな色の帯締めをしますか?と問いかけ順番に置いてもらいました。
同じ色を選ぶ人はいませんでした。まさしく十人十色ですね。

私の方からは合わせるコツを話させてもらいました。
もう一つ、色や柄や素材も大事ですが自分の顔もコーディネートのうちですので着物、帯、小物を身に付け鏡の前で確認することが大切ですね。



冬の取合せとしてこれも20年以上前に京都の鹿の子絞りの羽尺から帯に仕立てたものですが、
今度はみんなでどの色にするのが一番よいか話し合いながら当てて決めました。
深い赤味の焦げ茶色の帯締めに、モッコクで染めたグレーの帯揚で落ち着きました。

ああでもないこうでもないと賑やかでした。
その中である方が帯揚げに黄味の茶色(画面下の中程のブルーの左隣)を選んで当ててみました。

う~んちょっと違うかな~というみなさんの反応にご本人は「却下します、、」と諦められたのですが、私は面白いなあと思いました。

確かにちょっと不協和音なのですが、グレーではまとまってキレイという感じですが、無難という感じでもあります。
ちょっと外すのも悪くないと思いますが。。。

いろいろトライすると思いがけない響きが聞こえてきます。
自分の好きな色も大切ですが、カラに閉じこもらないで色を愉しみたいです。
自然界にはたくさんの命ある色があります。
コンクリートの建物に合わせるのではなく自然と調和する色を纏いたいです。



神楽坂での展示会のための帯揚げもほぼ染め終えました。秋冬の色・・・


新春から初夏の色・・・全て違う色で染めまくりました~フーッ!

神楽坂での22日~24日までの「取合せを愉しむ展」も取合せがテーマです。
着物、帯、帯揚、手組の帯締め、紬のショール、取り合わせて展示します。

ご自分のお着物や帯とも遠慮なく合わせてみてください。
新しい自分を発見できるようなものに出会えるといいのですが。

他にも魂のこもった美しい作品がたくさん出品されます。
静かに対話出来る作品ばかりです。

木彫仏、木のロースツール、、読書灯、辞書立て木の皿、木の大きなスプーン、漆のお盆、盃、
ガラスの雛人形、グラス・・・・・・・自然素材の上質の手仕事。

私もとても楽しみです。
是非ご覧ください。
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第7回紬きもの塾 布を織る

2012年10月23日 | 紬塾 '9~'12
秋晴れの土、日、2日を使い、自分で紡いだ糸を使って布を織る実習をしてもらいました。
一人の方の持ち時間は1時間半です。3寸の長さを目標に織りました。
今回は写真にコメントを添えて綴ります。

 
着物での参加者。「またとない貴重な体験なので着物で来ました」とのことでした。
お召しになられているのは久留米絣の単衣の着物に型染めの古布から仕立てられた帯です。
背景の糸は庭木の木斛で染められた糸です。私は染色しながら・・・です。



初めての体験で緊張気味で経糸にも負担をかけてしまったようです。
糸が切れてしまいましたがピンで止めて直し方を見てもらう体験に繋がりました。
地糸と自分の糸とが柔らかく混ざってきれいです。黄色を少しアクセントに使いました。



この方はウールなどの織りをしている方ですが、着尺の機に座るのは初めてで杼の持ち方も違うので
はじめはぎこちなかったのですが、設計図通り織り進むことができました。
画像でもわかると思いますが、緯糸を入れるときに私は糸の太さや色の出方を考えて角度を変えます。
みなさんにもそうしてもらいました。
一律に入れている方が多いと思いますが一越一越し紬糸は表情が違うのですからそれを見ながら違えて織ります。



順番待ちのあいだに図案の清書中!


この方はほぼ当初の図案通り終了しました。
太い糸をたくさんつむぎました。




ユニークな方がいらっしゃいまして、、、機に座り予め用意した設計図(メジャー)を貼り付け織り始めたものの「もう少し自分の糸で練習してもいいですか?」と言われまして、「どうぞ^^;」ということになり・・・


こんな感じになりました。。。
下の方の白いところが“練習”です。
アドリブももちろんOKです。^^Y



最後の方はメジャー作りで糸の本数を数字に置き換えるというのがよくわからなかったということでメジャーは使わず織りました。
機織りではアナログ頭で数量を捉えるのですが、ザックリ掴むことが大切です。
でも初めての方には難しかったと思います。説明の仕方を研究してみます。
色糸は使わずモノトーンでまとめられました。



今回も実習終了後にはみなさんホットされ緊張から笑顔になりました。
「楽しかった!」と一様におっしゃられます。

それにしても太い糸をつむぐことも経糸に節のあるものを使って織るのは容易ではないのですがとても良く出来たと思います。
プクプクした布の立体感がおわかりいただけると思います。
こんな糸でマフラーを織ったらさぞや暖かいでしょうね。




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第6回紬きもの塾  織物設計

2012年10月09日 | 紬塾 '9~'12



来週の「織り」に備えて織物設計をしてもらいました。

自分がつむぎ、前回桜で染めたベージュの糸の長さを織り幅で割り、使えるヨコ糸の越し数をまずだします。

濃い色の地糸と合わせ3寸の予定の長さの中にどのようにヨコ縞を入れていくかを考えてもらいます。

一分方眼紙に大まかに描き、あとは数字(糸の越し数)に置き換えて自分の糸をほぼ使い切るように調整します。

織ってみなければ、紙の上に描いてもわかりにくいのですが、全くの初心者がいきなり機に座ってアドリブでというのは難しく、前もって設計したメジャーをもとに織ることになります。

初心者向けに用意した織りやすい生糸使いのタテではなく、節糸、紬糸のタテ糸ですので織るだけでも注意を要します。

糸味だけでも十分布として見ごたえはありますので、デザインを頭で考えすぎたり懲りすぎたりせずに、糸の形を思い浮かべ大らかに設計すると良いと思います。

私が日々使っている大島の黒松でできたどっしりとした機で織ってもらいますす。

「織る」ということ自体を体感してもらいたいです。

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第5回紬きもの塾 工房の桜で染める

2012年07月27日 | 紬塾 '9~'12


自分で紡いだ糸と、半衿や古い胴裏、ストールを工房の桜の枝葉を使って染める作業をしました。
今回は糸には葉を使い無媒染で、布には枝を使ってアルミ媒染で染め分けました。
それぞれ赤味を含んだきれいなベージュが染まりました。天気も良く乾きましたので、布はアイロン仕上げをするところまでできました。
染めあがったストールが顔の色ととてもよく映っていました。
桜は懐深く優しい色ですね。

草木で染めるのはチップにしたり、色を見ながら煮出したり、時間を要しますが、その時間もとても大切な時間なのです。


以前井上まさじさん(画家)が、彫刻家の砂澤ビッキのアシスタントをしていた時代に、柳の枝を使った彫刻を作るために山でたくさん採って来て、ビッキと二人でその皮を剥がす作業をしながら過ごした時間がとても楽しく今でも印象に残っていると語っておられました。
これからどんなものになっていくのか、手を動かしながら逡巡したり、淡々と、黙々と静かな時が流れていく。
私も一人で、手に豆ができ、背中は痛くなるほど黙々とチップ作りの作業をしてきましたが、不思議につらい時間ではなく、心が落ち着く時間なのです。



みなさんにはほんの一端でしかない体験ではありますが、見ていると一人ひとりが自発的に嬉々として作業をこなしているなぁと毎回思います。
人間の時間があります。

染色の時には水や、ガスのエネルギーを使いますが、私は技法書のやり方はしません。
自分なりの工夫をして無駄なく効果的に仕事ができるよう考えています。
火にかけている時間を短くして保温調理の仕方にヒントを得たやりかたをしています。



火からおろした後、蒸らし、放冷をします。むらにならないよう菜箸で動かしています。

水洗いもよく洗わなければならない時と、ざっと流せばよいときもあります。
残り水も洗いの程度によってうまく繰り回していきます。
創意工夫あるのみです。

ほかの仕事の時にも冷房は使いません。ヨシズ、緑陰、通風に頼ってます。
着衣もアッパッパに麻のステテコが一番涼しいです。昔子供のころは近所の友達のお母さんたちもみんなアッパッパでした。シュミーズ1枚とか大らかでしたね~!

NHKはニュースのたびに冷房の設定を28度以下にしてくださいと言ってますが、一日中そんな中にいると、かえって体を壊すのではないでしょうか?
ヨシズやブラインドを使いましょうとはあまり言わない。
ついでにいうと、、洗濯物情報とかで厚地のものは乾きにくいでしょうとか、折りたたみ傘を持って出かけろとか、今夜は毛布を1枚余分に掛けて寝ろとか、今シーズン何枚掛けただろう?と数えたことがありました。自分で判断します!!と言いたくなる。


子供の時から冷房が当たり前で育つ子供たちはかわいそうでなりません。
管理された中であせもにもならず、どんな素材の服を着れば少しでも涼しいかを学習する機会も奪われてしまうのです。
自然界で生きるのがますます下手になり人間もロボット化するばかりです。

高齢者や病人へは配慮が必要でしょうけれど、こうも一律で判で押したような発想しかできないのかと思います。
エネルギーを消費させやっぱり原発なきゃダメでしょ!といいたいのかな?

モノを作る仕事は毎日創意工夫の連続です。それが人の生きる喜びです。

今年はグリーンファンという扇風機を1台購入しました。柔らかな風が特徴です。
この夏を省エネで元気に乗り切りたいと思います。仕事を終えた後のビールの美味しいこと!



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第4回紬きもの塾 とことん着尽くす

2012年06月25日 | 紬塾 '9~'12
中野みどりHP

きものの更生などを中心に、実例も上げて見てもらいながら講義をしました。
襦袢にせよ着物にせよ素材の良いものを求め、染め替えたり、仕立て替えたりしながら大切に、愛着を持って着物をきてもらいたいという話しをしました。
襦袢も下に着るので見えないからと安物の生地を買うより1着目こそよい生地の、薄めの色を買い、だんだん濃い色に染め替えていくと汚れも目立たなくなり、新しさも出て気持ち良く使えるものです。



裏表で色が違う二重織の紗の母の着物から仕立て替えた雨コートを見てもらいました。長い時期着用できて重宝しています。

また、参加者の方が、モスリンの面白い柄の襦袢を持ってこられたのですが、虫に食われてしまってどうしましょう?という質問がありました。

もちろん正式な継ぎの当て方というのもあるのですが、私は穴の周りを色糸でかがってみては?と答えました。

塞ぐのもいいのですが、小さな穴でしたので、それ以上ほつれないようその穴をかがると、むしろ可愛く愛おしく感じられませんか?

身の回りの肌着や虫食いのセーターに私はこの方法でよく継ぎを当てて楽しんでいます。
靴下も何度でも継ぎを当ててすごいことになってるのもあります。
よそのお宅にもこういうのを履いて行って見せたりしてます。こうなると穴の開いた靴下もアート作品ですよ!

足袋の鼻緒ですりきれたところに並み縫いをチクチクしてるのもあります。
そのかわり買う時は良い生地の足袋を選ぶことにしています。
どうせ汚れるから使い捨て!ではなく薄汚れても大事に使うことを私は選びたいのです。

後半は麻の絽の襦袢地で伊達締め(平ぐけ)を縫いました。
長襦袢を着た上に使うと着崩れもしにくよいです。麻は吸湿性と発散性、放熱性にも優れていますので、夏には特に重宝します。

着物の上には博多などすべりの良いものがいいと思います。
そのほうが帯を締めやすいです。

しかし今期の方運針はできない(学んでない)方がほとんどでした。
6尺並み縫いをするのに難航しました。指ぬきも当然使えません。
 Before

After

でもなんとか基本を知ってもらい、恰好がついてきまして、ご覧の通り出来そうでしょ?
上の写真と下の写真の違いが分かりますか?

義務教育は読み書き算盤、運針!をお願いしたいです。

それから着物を着るのでしたら、和裁をしないまでも、クケ台と2尺と1尺指しは用意しておくとよいです。

 手前の方が使っているのはテーブルなどへ固定できるねじ式のクケ台

盛りだくさんの内容で講義は1時間の延長となりました。

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第3回紬きもの塾  糸を「つむぐ」と「紡ぐ」

2012年06月07日 | 紬塾 '9~'12
中野みどりHP

真綿から糸を「つむいで」もらいました。

糸をつむぐ方法もいろいろありますが、今回していただいた方法は沖縄の久米島方式で、角真綿を丸い台の釘にかけ手前から真綿を引き出し、水または唾を指先につけ繊維を纏めていきます。

この方法は結城紬がしている「つくし」と言われる台に袋真綿を巻き付けてやる方法と同じで、糸に撚りはかかりませんので、「手紬糸」と表記されます。

人が手で紡いでも、紡ぎ機を使った糸は少し撚りがかかりますので「手紡糸」として分けられています。
また撚りのかからない糸をつむぐ場合はその行為自体も「つむぐ」と平仮名で分けた方がよいということを今回の作品集の校正の時に出版元の染織と生活社の方から指摘を受けました。
それに従うと今回の染織実習では糸を「つむぐ」ということになりますね。

でも、一般の方はあまり気にしなくてもよいのではないかと思います。「紡ぐ」は糸を紡ぐ以外でもよく使われる言葉です。丁寧に少しずつ作り上げていくようなことの喩として使われます。

ただ、手織りの紬で使われている真綿から作られる糸には無撚糸の「手紬糸」と(結城紬は経、緯すべて無撚糸)少し撚りのかかった「手紡糸」(多くの紬はこちら)があります。

糸をつむぐ行為は単調なように思うかもしれませんが、実は細部と全体の真綿の状況を見極めなければならず、熟練を要するものです。でも始めると案外やめられない面白さがあります。
本来は人がやるべき仕事だったのでしょう。



今回は着尺よりも太めの糸をつむいでもらいましたので、とても難易度の高いことを全くの初心者の方にしてもらいました。細い糸をつむぐほうが真綿を管理しやすいので楽です。
しっかりしたたくましい糸がつむがれています。



5人とも同じ条件でつむいでもらいましたが、ご覧のとおり様々な糸になりました。



もう一点参考までに、無撚では糸にならない木綿やウールなどは綿から糸車や紡ぎ機を使ったり、あるいは錘をぶらさげ回転させるようにして糸を作ります。これは自然に糸に撚りがかかりますので「紡ぐ」になります。


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第2回紬きもの塾 糸のかたち 

2012年05月13日 | 紬塾 '9~'12
中野みどりHP

当紬塾の最も重要な話である紬で使う糸の説明を中心に行いました。

まずは1粒の繭から蚕が吐き出した1本の糸の形を見てもらいました。
なんだか人の頭ばかり写っているようですが・・・



アップにすると・・黒い紙に蚕が吐き出した1本の糸を巻き取っています。とてもきれいです。



また真綿からも糸をずり出してもらいました。



座繰りの節糸のかたちや蛹の脱皮殻を見てもらいました。




またテキストの幸田文「きもの」を読んでの気付きなどの発表もしてもらいました。
これは毎回一人ずつ順番にしてもらいます。
今回のNさんの発表では震災時における木綿の着物の底力について書かれたところ、主人公るつこはセルの着物が好きではなかったところなどでした。
日常に着物があった時代の話から学ぶ点もあると思います。

1度読んだだけではピンと来ないところもあるかもしれませんが、着始めてから読み返すたびに新たな発見もあり、深読みのできる本だと思います。

今期の方は特に質問も多く、とても熱心です。時間いっぱい話をしました。

次回は実際に織るための糸をつむいでもらいます。


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紬きもの塾’12開講しました!

2012年04月27日 | 紬塾 '9~'12
中野みどりHP

第4期の紬塾が始まりました。今期も6名の方と日常のきものに関することを中心に学んでいきたいと思います。
今までもそうでしたが、作品を作るだけではない仕事の積み重ねが、今期の方々との出会いにつながったのだと強く感じました。
みなさんから当塾へ申し込まれるきっかけを伺いましたので一部を交えご紹介いたします。

97年から10年ほど「自分の着物は自分で織る――地織の会」というのを主宰していたのですが、その時、僅か100部発行していた『櫻工房便り』というのがありまして、日々の工房の仕事のあれこれをみんなで綴ったものですが、それを購読してくださっていた大阪市にお住いの方が当ブログを見てくださり参加を申し込まれたのです。
地方の方からもお問い合わせをいただくことはあるのですが、実際に参加されるとなると時間も経済もかなり大変だと思うのですが、なにか決意がおありなのだと思います。

それから今も立松和平さんの『染めと織りと祈り』の愛読者がいらっしゃるようで、その関連でのお申し込みもありました。

また、お母様のご病気をきっかけに今生きている時間の大切さに気付かれ、「今着物を着ないでどうするのか!」そして日本の素晴らしい文化を担う一端にもなれるのだと外出には着物をなるべく着るように努めている方が、地味な知る人ぞ知る、当ブログも知ってくださるようになり今回の参加につながりました。

今までアート系の織物の指導はしてきたものの着物は手掛けておられなかったようですが、着物地を安易に裂き織りにしようとする考えには疑問があり、また着道楽だったお祖母様の着物がたくさんありどのようにしたらよいかと思っていたところ、『染織情報α』のお知らせで偶然見て、「この塾に呼ばれているようで来ました!」という方もおられます。

ロウケツ染めを25年されている方が、以前京都で行った私の個展を見てくださっていて、ご自身もいろいろと勉強もされ、研究もされているのですが、たまたま夫君が東京に転勤になったことで、ご参加くださいました。
ロウケツ染めについての話を伺えることも楽しみです。

そして美大で博物館学を学ばれ、布もお好きでいろいろ見たり染織の講座の聴講もされたりしてはいるのですが、知識だけではなく自分に合う布とはどんなものか、糸から知りたいということで、ブログもいつのころからか読んでくださり、今回の参加につながりました。

知識というよりは実践的なことを中心にそれぞれの方に実りのある学びになるよう努めたいと気合を入れてます。
良き方々とめぐり合い、私も一緒に勉強できますことをうれしく思います。



さて、初回は例年通り、私の着ている着物を3点用意しまして、羽織った時の感触や、色映りなどを見てもらうことが目的ですが、みなさんそれぞれによくお似合いでした。
普段なら選ばない色なのに…という方もいらっしゃいましたが、不思議にご本人のみならず、周りの見ている方の表情まで生きいきとしてくるのです。
これは自然の力です。身近な植物である、梅、桜、小手毬などで染めたものですが、生木の染色はうまく色を引き出せるとフワッとしたやすらぎの色になります。
同じ着物が着る人によって、可愛らしく感じたり、大人っぽい、良い意味の色気を感じたり、その方の思いがけない内面まで見えてくるようで不思議ですね。
この辺のことはまた講義の中で明かしていきたいと思います。

また、最初はみなさん初対面で緊張気味でしたが、羽織り始めると、着付けるのをそっと手を貸してくださっていたり、着終えたものを畳んでくださったり、その畳むところを見ていたり、この”見ている”も大事なことで、今は見る機会さえないのですから。
自分で着られる方から着物はあるけれど着られない方までいろいろな立場の方ですが、いろいろな方がいることがよいことだと思います。
この1年どうぞよろしくお願いいたします。






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第10回(最終回)紬きもの塾'11 半巾帯と半衿付

2012年01月21日 | 紬塾 '9~'12

中野みどりHP


2011年度の紬塾も最終回を迎えました。
申し込み受付期間中に震災があったことでキャンセルもあり、
今期は少人数での開催となりましたが、
参加されたみなさんは1日の欠席もなく、熱心に通ってくださいました。
こちらも気が入りました。ありがとうございました。



最終回は半巾帯の結び方を5~6種類と、三河芯へ半衿を取り付ける説明をしました。
半巾帯は上質の素材のものを上手に活用すると、くだけ過ぎず、初心者の方もずっと楽に
そして素敵に着こなせます。初めて結んだ方も「案外簡単です!」とのことでした。



終わってささやかなティーパーティをし、みなさんの感想をうかがいました。
人数が少なかったこともあり、一人ひとりが本音でいろいろ語ってくださいました。
染織の知識やきものを着ることのノウハウを得ただけでなく、
自分の生き方や価値観を問い直す機会になったというのが、
みなさんの共通の感想でした。
震災後に自分の暮らしを多くの方が問い直したと思うのですが、
それを手仕事や手わざ、きものを着ることを通して考え始めてもらえたようです。
無理をしてでも開催した甲斐がありました。

今期のみなさんが「これで終わってしまうのは‥‥」
「心残りがある‥‥」などと言ってくださいましたが、
これからはきもの仲間としてつながっていけるとよいと思います。
また集まれる機会には是非参加してください。

最後に、染織コース4人の方が織った布のアップ写真をご覧ください。
手紡ぎ糸のふっくらした美しい布だと思います。
かつて家庭内で織られていたたくましい紬の暖かさが感じられます。


Tさん


Nさん


Yさん


Oさん



次期 ’12紬塾募集のお知らせは2月下旬になる予定です。
何か早めの問合せなどありましたらかたち21のお問合せまでお願いします。
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第9回紬きもの塾  きものを着る

2011年12月30日 | 紬塾 '9~'12

紬塾も残すところあと1回となりました。
いよいよきものを着るところまできました。

まず、きものを着るために必要な下着類や小道具について、
素材選びなどを中心に一つ一つ説明をしました。
腰紐や伊達〆、襦袢も素材の良し悪し(糸質)で着心地が違いますし、着崩れもしにくいです。
また、なるべく国産のものを選びたいですね。
きもの関連の事業者、職人さんがいなくなれば、
きもの文化を継承することができなくなります。

着付けはごくシンプルに、襦袢用に伊達〆1本(すべりにくい素材)、
きものに腰紐1本、胸紐(平ぐけ)1本で着付けるやり方を説明しました。
名古屋帯は仮紐やクリップを使わない、ねじるだけの結び方です。
帯が短いときは仮紐やクリップを使うとよいかもしれません。
この着方は本当に簡単で楽です。





先日の可喜庵での展示会に紬塾の卒業生がきもので来てくれたのですが、
以前は着付け教室で習った着方をされていたのが、
見違えるように楽に着こなしておられ、気持ちよさそうでした。
衿も差し込み式から三河芯に換えたということで、とても自然に見えました。
(写真を撮っとけばよかったですね。)

紬はこういう楽な着方でよいのではないかと思います。
あまりきちんとした木目込み人形のような着付けは、ハタで見ている方も息がつまる感じがします。
ポイントをしっかり押さえておけば、あとは数をこなして“習うより慣れろ”です。
あとは時間を見ながら着ることも上達には欠かせませんね。
織りの仕事でも若い頃は時間を見ながら、早くてきちっと無駄なく美しく仕事をする訓練をしました。
プロの仕事は時間をかければいいというものではないですから。
きものを着ることも同じだと思います。

以上、塾に関する報告です。

さて、今日が私の仕事納めになります。お陰様で1年無事に染織の仕事が出来ましたことに感謝しています。
ありがとうございました。

今年は震災、福島の原発事故と大変な年となりました。
原発事故の方は時間が経つにつれて被害の範囲が計り知れないものになってきています。
復興しようとする人々の足を引っぱっているようで、本当に心が痛みます。
今年を底として、来年からは少しでも人間らしく、安心して基本的な生活ができるよう
この問題に関心を持ち続けたいと思っています。
また、私が日々できることは、染織の手仕事を通して美しい自然や
美しいものを大切に考えていくことだと思います。

経済最優先の国や財界の方針は人々を幸せにしたのでしょうか?
原発がなくても幸せに暮らせる社会を私は望みます。
以前にもお知らせした「さようなら原発1000万人署名」が
今月21日時点で約320万人だそうです。
(他方、原発再稼動の準備は着々と進められているという報道もあります。)

署名がまだの方も、賛同いただける方は是非ご家族、お仲間に声をかけて、
集めていただけるとよいかと思います。
私も最終〆切りの明年2月28日までは、人の集まるところには用紙を持っていき、
署名集めを続けていくつもりです。
署名用紙はこちらのサイトからダウンロードできます。



藍地経絣着尺「冬の流星」

年の瀬によき人と出会い来春には私の元を離れるきもの。
明年はよき年になるよう星に願いを込めて。

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第8回 紬きもの塾 取り合せ、顔映りの視点から

2011年11月23日 | 紬塾 '9~'12
中野みどりのHP


きものと帯や羽織、帯揚、帯〆などの小物も含めて、取り合せについてお話しました。
内容は昨年度と同じようなことですが、今回は着る人の顔映りの話も加えました。

少し前の話ですが、40歳を前にしてカラーコーディネーターの方に
自分に似合う色の診断を受けたことがあります。
春、夏、秋、冬のカラーのどれが一番似合うかを教えてもらいました。
肌の色や髪の色、瞳の色や性格なども判断材料になるようで、大変参考になりました。

肌の色がピンク系とオークル系、色白か濃い肌色か、また透明感などで分けられます。
紬の着物の注文をこちらにおまかせで受けることがたまにあるのですが、
その方の肌の色や髪の色で、たとえば同じベージュ系でもやや赤味がかるか、
黄味にするかでずいぶん大きく変わります。
糸の綛(かせ)を顔に必ずあてて地色を決めることにしています。

ただ、洋服と和服で大きく違う点は、和服は全体を統一するやり方ではなく、
すべて違う色で取り合せることができますので、
もし今いち肌映りの悪い着物を持っておられても、
半衿や帯、帯〆に自分に似合うカラーをもってくることでずいぶんカバーできるものです。

今日私が着た黄茶のみじん格子の着物は実は私のカラーではないのですが、
帯(生成りに藍の縞)と帯〆(グレイッシュピンク)、帯揚(焦茶)は
自分に似合う色を合わせてみました。
そして自分の好きな色、似合う色にこだわるだけでなく、
全体のハーモニーを大切にしていくことだと思います。
着物の取り合せは本当に奥深いですね。でも一生かけて学ぶ楽しみがあります。

さて、「アートでおもてなし」展に出品するべく、ただ今帯を製作中ですが、
間に合うかどうか…
来週には詳細をお知らせします。



「アートでおもてなし」のDM用に送られてきた仁平幸春さんの帯や花邑さんの帯と、私の着物を取り合せたものを、一足早く見てもらいました。帯締めは何色がいいかみなさんにも質問しましたが様々な色名が上がりました。
全体のバランスを見てハーモニーを感じるよう決めるといいですね。
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第7回紬きもの塾  織る

2011年11月05日 | 紬塾 '9~'12

午前中から夕方まで、4人の方に順番にお越しいただき、一人ずつ小さな布を織っていただきました。

朝、仏壇に向かって「4人の方が無事織れますようにお守りください」と祈りました。
おおげさなようですが、本格的な高機の私の機に座繰りの経糸をかけ、
まったくの未経験の方に織りの体験をしてもらうには、教える私にも覚悟がいります。

自分で紡いだ糸や機にきちっと向き合って、
人の根源的な仕事に少しでも気づきがあって欲しいと、
マンツーマンでの指導による織り実習を、講座に組んでいます。
今までの6回の講義の段階を踏んでいますので、参加されるみなさんが
きちんとわかって来て下さっているとは思います。

織り上がると毎回そうですが、緊張が解けてみなさん素直に
「うれしい!」「素敵!」「美しい!」「いとおしい!」と
自分で織った布を見つめ、つぶやかれます。
そしてとてもいい表情をされます。
私も、終わるとホッと肩の荷が降りたような気になります。



今期もの方も今までと同じ条件――地糸を6~7色の中から選ぶ、自分の糸は使いきる、
色糸は使っても使わなくてもよい、織る時間は1時間半以内――での課題でしたが、
それぞれの人のカラーが出た、小さな布が織り上がりました。
ミミの仕上がりもまずまずです。仕上げ後のアップの画像はまた後日。

以下はみなさんからいただいた感想やデザインの構想です。

Tさん

織りの物語[作物の恵み]
地表の下深くにある粘土質のケイ酸、ミネラルや地表までの様々な無機質が微生物・発酵の働きに助けられて植物の根により、吸い上げられ、惚れ惚れするような色をした若葉が芽をだします。
その後、丈夫に育ち、植物がそれぞれ土から、必要な養分・ミネラルで育ち、花を咲かせ、実を実らせたりします。
わたしたちは、大地の恵みをいただきます。
野菜作りを織りで表現しました。


Nさん

今年の九月に夫とサイパンに旅行をし、その道のりは私たちにとってとても重要なもので、あの旅を境に色々なことが変化しつつあると感じています。

今回、織りをするにあたり、ぱっと思いついたのは、その旅行の最終日に見た夕日でした。遠浅の海の向こうに沈むバラ色から橙、様々な色に変化する夕日を、緯糸の縞のグラデーションで…?
実際に織ってみて、糸の太さや見え方で最初の計算からはどんどん変わっていきましたが、出来上がってみると考えていたよりも、私にとっては遥かにあの夕日を思い出せるものになったと感じています。織っている最中に夕日を思い出し続けたせいかもしれません。。。ただ、経糸、緯糸の太さ細さが面になったとき、写真以上にあの時の波や雲や風、光のきらめき、何よりも自分の気持ちを思い出せる表情を持っている気がしてとても嬉しいのです。糊を抜くのが楽しみでなりません。

余談ですが、その夕日の反対側、夕日に背を向けた東の空には大きな虹がかかっていて、本当に特別な気持ちでした。今回の作品を家に持ち帰る日も、夫に見せるのも、とても楽しみです。

Yさん

たった一度の織りの実習。可能な限り全力で、と思うのは私の常。
ところが、デザインの段階ですでに頭はパニック。
設計図を作らなければいけないのに、選ぶ色とつながりや組み合わせ、織り進めたときの具合など、織られた後のイメージがまったく出来ないのです。
それでも、試行錯誤の末、なんとかデザインを終え、体調を整えてねとの先生のお言葉に、
前日は早めに休み当日を迎えました。エンジンは全開です。

しかし、結果は散々たるもの・・・・
「食べたこともない食材を、料理のいろはも知らぬのに作り始めてしまった」
まさにそんな感じだったと思います。
気持ちばかりが先にたち、想像していたようには出来なかったのです。
知識も技術も、また具体的にイメージ出来ないのに多くを欲張りすぎてしまいました。
織り進めて、設計図と現実のギャップに失望しながらも、後半時間もなくなったとき、
目の前の布の具合を見ながら、次はこの色をこれくらい・・と勝手に織り進めたときはすごくワクワクしました。

心をこめて紡ぎ、染め、織ることを重ねたとき、目の前に現れる布のかたちが、ささやかな喜びと共に実感出来たことは大きかったです。
もし、次回、というものがあるのならば、もっと素直に、もっと謙虚に糸と向き合えたならと切に思います。
経験は宝、今はイメージが具体的に沸いてきている事がとても嬉しくもあります。
ありがとうございました。

Oさん

まさか自分が布を織ることができるなんて思ってもいませんでした。
ましてや自分で糸を紡いで、染めた糸で、そして、先生が実際にお使いの立派な織り機を使わせていただくなんて・・・・と、自分は不器用かなと思っていますので、今でも信じられない感じです。

でも、実際に織らせていただいて、すごく楽しかったです。
もともと「織る」ってどういうこと?というか、糸をどんなふうに織るとどんな布(柄?)になってゆくのか、全く感じがわからないので、とりあえず、デザインを描いてみて織ってみる、という手探り状態でした。
それが、初めて経糸横糸がセットされた織り機に向かわせて頂いて、布はこんな風に織られるんだ、柄は糸の組み合わせででき上がるんだ、糸の風合いが布の風合いを作るんだ・・・という(当たり前??)のことがわかりました。

そして、楽しかった、というのはたぶん(ほんの少しかもしれませんが)、”ものを作る喜び、楽しさ”ということを感じさせていただいたから、のような気がしています。ほんの少しづつ、布ができあがっていくとき、とても嬉しかった!です。少し歪んでいましたが、(自分にとっては)可愛い布でした。

昔の女の人が長い時間をかけて家族のために着物を織る、という作業はきっと楽しいことだったのではないか、と想像しました。

それともうひとつすごく感じたことは、やはり、先生の織られる布がいかに美しいかということ・・・・、私たちが糸を紡ぐところから布を織るところまでほんの入り口を体験させていただいた、その先の先の究極にゆくと、あのようにおおらかで軽やかな美しい織物があるのかと、それはすべてがそろったときに現れる稀な美しさであると、しみじみ感じました。
本当に貴重な経験をさせていただきましてありがとうございました。




紬塾の方で私の紬を着てくださっている方がその着物で来て下さり、なんと!機織をしたのです。私も着物で機織をしたことはないのですがすごいことですね!クリップで袖を帯に止め織ってました。着物はまだ初心レベルの方ですが、ありがたいですし、また頼もしく心強い限りです。


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第6回紬きもの塾 織りに入るための準備

2011年10月08日 | 紬塾 '9~'12

夏の間休んでいた紬塾も、秋になって再開です。
前々回みなさんが紡いだ糸を、前回、工房の桜の小枝を使って染めましたが、
3ヶ月ほど置く間に空気酸化して落ち着いた色になっていました。

まず、布海苔と生麩をブレンドした糊を糸にまぶし、糸カセを手で持ち、上に振り上げ
テーブルにストンと打ち付けるようにして糸を波立たせます。
糸が元々持っている波状形を糊で固めます。
そうすることで織物の風合いが出ます。大切な工程です。



続いて自分のつむいだ糸の長さを計算します。
そして織り上がり3寸の長さに自分の糸をどう配置・配分するかを考えます。つまりデザインですね。
そのメジャーを作り、次に糊が乾いた糸をストロー(管)に巻きつけ、次回の織るための
準備ができあがりました。
今期の方はどんな布になるのか楽しみです。

お茶の時間には、今年の夏の暑さ対策として、下着類の話で盛り上がりました。
ステテコはこの夏、和服、洋服を問わず活躍しました。
通気性を損ねないよう締め付けないことが鉄則です。

また、伊達締めを縫ったことで運針を家でも練習し、いろいろなものを縫った話もうかがい
よいことだと思いました。
クラシックパンツも縫ったそうで、私もトライしてみようと思います。快適だそうですよ!
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