中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

紬糸の糊付け

2024年05月31日 | 制作工程
経糸の糊付けや経糸巻ををしています。

私が使う糸は節や毛羽のある糸が中心になりますので、糊(布海苔+生麩)を付けて使います。
糊は付ければよいというものではなく、必要最小限にします。
風合い、打ち込み具合とも関連します。


糊付けの日の天候によっても付ける濃度を変え、糸巻や織りがしやすいようにします。
とても、とても難しいですが、風合いや堅牢性を高めるために大事な工程です。
基本的には緯糸も同様にしますが、濃度に関しては、経糸よりは薄くつけます。


それから糊付けの後、絹糸のウェーブを戻すためにやる重要な工程があります。
動画のように(インスタに上げています)、糸を高く振り上げ、2~3回テーブルなどに打ちつけます。綛を持つ場所を変えまた2~3回。
これはフワッと空気を入れてやる感じで、鞭打つように強く叩きつけてはいけません。


そして、干す時に、糸巻しやすいようにと強くはたいたりしているのをよく見かけますが、私は絹糸のもつウェーブを生かしたいので、ほとんどやりません。なるべく糸に触らず自然なままに干します。

この糸達は電動の糸巻機では巻けないのですが、手でゆっくり巻くほうが風合いの良い紬が織れます。

また、この糸を巻く時間にもこの糸のチョイスでよかったのか…など、次の作品への思いを巡らせます。ギリギリまで考え変更したりすることもあります。
必要不可欠な大事な時間です。


庭の緑を眺めながら、野鳥の囀りを聴きながら、風を感じながら静かに糸を巻きます。都下の住宅地の工房には、野鳥が年間20種類くらいは来ます。
毎日バードバスの水を替え、水浴びの場を確保してあげます。


桜の木の下の苔が茂ってきました。3種類あるのですが、手で触れるとひんやりと気持ちよいです。
真夏には山鳩もここに蹲り、身体を冷やしています。

東京でもこの環境で自然と共に仕事ができることは本当に幸せです。

風合いの良い紬を織るためには、織る以前の糸の扱いや、自然と共にある時間も大切なのだと思います。


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