中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

夏の着物と住環境

2012年08月23日 | 自然環境・脱原発
残暑が続きますが、8月も残すところ一週間あまりとなりました。
この夏も浴衣や麻の上布を何度か着ました。

夏の着物の美しさは、布地の美しさのみならず、光が透過された時にあらわれる、布と光のコラボレーションによる美しさがあります。つい暑さを忘れて着てみたくなるのです。

以前、夏の上布に合わせて半巾帯を注文してくださったお客様から先日、着姿の写真をメールで送ってくださいました。部分写真をご紹介いたします。



着物は知人からいただいたという越後上布です。
詳しいことはわからないのですが、最近買ったものというわけではなく何度か袖を通したもののようです。
良いものとのご縁があったのですね。画像で拝見する限りでも涼しげで美しい織物ですね。

ご本人に伺うと「ものすごく細い糸で繊細な柄がすみずみまで織りだされており、これを織ったかたの労力とか、集中力とか、どれだけのものだったろうか・・・、とか、素人眼には、もう執念とかないとここまで細かく織れないのではないかとか、、、
いろいろ想像してしまうような上布です。でもとても優しくて嫌みのない素朴さもあり、着ていても控えめな感じで、上布上布していないというか、”どうだ!!”みたいないばった感じはしなくて、そこがすごく好きな着物です。これが私の手元にきてくれたことに感謝、作ってくださった方に感謝、、、」だそうです。
本当にその通りで、人の手わざの素晴らしさと尊さを感じます。



締めている帯は私が織った赤城の節糸の半巾帯です。
この上布に合わせるために織ったわけではないのですが、こちらともよく合っていますね。
後ろ姿の写真がないのが残念ですが。。。
夏の半巾は初めてのようでしたが太鼓結びより、かなり涼しい着心地だったようです。
布のアップの画像もご覧ください。



帯は太い節糸を地糸に使い細い玉糸を絣部分の地糸にして変化をつけています。
上布の極細の糸とメリハリもつき質感の取合せとしても良いと思います。
違うものを合わせるところが着物の取合せの醍醐味だと思います。
帯芯には夏用の芯を使って仕立ててもらいましたが、もちろん一年を通してお使いいただけます。

「暑い真夏に着物なんて!!」と思っておられる方は多いかと思いますが、日本の上布をはじめとして夏用に織られた着物地はいろいろとあります。
色や柄で涼しさを演出しているものもありますから、来年は浴衣一枚からでも夏着物を始めませんか?

上質の半巾帯を締めれば街着としても十分です。気分も一新されます。
また、涼しげに着物を着てらっしゃる方を見るとこちらもハッ!とさせられます。

半巾帯は一般に柄付けが多くなり、名古屋帯よりも手間がかかる場合があり、価格も名古屋と変わりませんが、結び方も簡単ですし重宝なことは間違いありません。
是非一本用意されてはいかがでしょうか?

それにしてもこの夏の暑さも厳しいですが、世界的にも異常気象が言われています。

歌の仲間が教えてくれた、山本義隆著『福島の原発事故をめぐって』[みすず書房](この本はわかりやすくコンパクトに原発の問題が書かれていますのでおススメです!)の中の「原発稼働の実態」という節に、原発の定期検査のたびに何十トンもの放射能を含んだ水が流れてしまい、更には定検の時だけでなく原発を冷やすために使った海水が放射能を含んだ温排水として1分間に何十トンも流されていると、平井憲夫さんという原発の現場で20年働いたかたの証言として記されています。

原発の稼働は海水温を上昇させていることは間違いのないことでしょう。
大雨や干ばつで多くの人が亡くなったり家を流されたりしました。これは天災とだけは言えないのではないでしょうか?
原発はCO2を出さないから温暖化防止になるクリーンなエネルギーと謳いあげたわけですが、昨年の福島第一原発事故による放射能汚染、核の廃棄物も含めクリーンなエネルギーのはずはありません。


久隅守景という江戸時代初期の画家が描いた「納涼図屏風」(国宝)という絵があります。
瓢箪の棚の下で夫婦と子供が夕涼みをしているのですが、妻は腰巻一つで涼んでいます。
のどかなこの絵を見ても江戸時代も暑かったことがわかります。


先日、ご近所の数人が浴衣で集まり、宅配をしてもらっている有機栽培の夏野菜をたっぷり食べて暑気払いをしました。
東京といえども町田市のこの工房は高台にあり風通しが良く、この日も蒸し暑い一日でしたが冷房なしで夜遅くまでみんなで盃を重ねて過ごしました。
庭に緑が多いことやヨシズやスダレを使っていることの効果もかなりあると思います。
出来る限り無駄なエネルギーは使わないよう工夫しています。

アスファルトとコンクリートで囲まれた都心では無理でしょうが、エアコンなしでも暮らせる住環境に国を挙げて作り変えていく必要があると思います。

自然エネルギーだけでもやっていかれるよう研究、開発を進め、2030年代前半などといわず、一日も早い原発ゼロを望みます。

美しい手仕事による着物が楽しめ、子供たちも可愛い浴衣ではしゃいでいる光景が見られる日本の夏であってほしいです。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

花ゆかた

2012年08月11日 | 着姿・作品


前回のブログで紹介しました、国会大包囲へ着て出かけた浴衣は愛知県の伝統工芸品有松絞りの国内生産のものです。
今は多くが中国製ということでしたが、小ロットのもので、地方のある呉服屋さんに問い合わせ、3点調達していただき、その内の1点を手に入れることができました。
私には大胆な柄ゆきでちょっとためらいもありましたが、夏の浴衣ですのでこれぐらいでもいいかな?と決めました。
生地は綿紅梅です。タグには「桜柳」と書かれていました。
取り合わせの帯は自作の夏帯です。
帯締めは友人が15年ぐらい前にプレゼントしてくれた茜染めのものです。
あまり使う機会がなかったのですが、浴衣には少し華やかな色のものが合うように思います。

幸田文さんの随筆集『月の塵』に戦争中の物のない時代に2枚の浴衣で4度の夏をしのいだ話があるのですが忘れられない心に残る話です。

「酷使されたゆかたはもうへばって、性がなくなって袖口と膝はもろもろともろけて、抜けてしまった。袖巾は半分にきりつめ衽をとってそれをつぎ裂にしたから、衽なしになった。長病で寝たきりの老父を、その身巾のせますぎる着物でみとるとき、膝をわるまいとして苦労した。老父は『その着物で平気でいるとは、おまえさんもまずは着物を着こなした、といえるかね』といたわってくれた。(中略)この破れゆかた一枚身にまとっていればこそ、裸ではないのだ、というギリギリいっぱい、いわば土俵ぎわのつっぱりみたいな、耐えかたがあった。いいゆかただったとおもう。流水に桜のもようだった。」

もののあふれた時代にはこういうことはありえないことですが、一枚の浴衣と人生の思い出が重なる深い関係性があります。
戦争はあってはならないことですが、ものの溢れかえる時代ももう終わりにして、よいものをとことん使う時代になってほしいと思います。
私もこの絞りの浴衣とこれからの夏を過ごしてゆくことになります。
擦り切れるまで着たいと思います。


さて、8月18日(土)は鶴川で「第2回アート鑑賞いろは塾」があります。前回もとても良い話が聴けましたが、今回も興味深い内容です。
武蔵野美術大学の特別講義を一昨年聴講した学生が、アート塾に参加してくださいました。とても嬉しかったです。
先日塾長推奨展覧会の「具体」展をゆっくり楽しんで観てきました。(国立新美術館・9月10日まで)作品を観ることは自分を見ることですから作品を通して発見があるといいですよね。

アート塾、まだ大丈夫ですので是非ご参加ください。私は浴衣で行く予定です。よろしければ夏着物や浴衣でお出かけください。
「モノ・語り」もご覧ください。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

浴衣で7.29 脱原発国会大包囲 

2012年08月01日 | 自然環境・脱原発



7月29日午後6時過ぎに首都圏反原発連合主催の「7,29脱原発国会大包囲」のために国会へ向かいました。
集会とデモは体調のこともあり無理と思いましたが、国会をキャンドルの鎖で取り囲むのには私も一灯をかざしたいと思い、ペンライト持参でいきました。

 
行進するわけではないので、国会正門前はスゴイ人の列が立ち止り、とても蒸し暑く気分が悪くなりそうでした。
すいた方へ戻りたかったのですが身動きが取れず我慢して立っていました。座る余地はありませんでした。
たまたま人をかき分け逆行していく何人かがいて、私もこの時とばかり後をついて少し楽な場所へ移動しました。

そこで一人で小さな太鼓を打ち鳴らす男の人に合わせ私も何人かに交じって「再稼働反対」のコールをしていました。

7時を過ぎ鎌田慧さんや政治家のスピーチ。そして民主党の国会議員のスピーチが始まるとざわついてきて、それまでおとなしくじっとしていた市民は歩道から車道へ出始め、そこで太鼓の音などに合わせ灯をかざし大コールになっていきました。


ここは歩道とされている柵の内側

私も写真を撮りたくて車道へ出て2~3枚撮ったところで警官にここは車道です。歩道へ戻ってくださいと注意され、おずおずと一旦戻ったのですが、、、人はどんどん車道を埋め尽くしていきました。主催者スタッフも「ルールを守ってください!」と始めは叫んでいましたが、もう止められない状態でした。


携帯電話のカメラで車道の人々を車道で写したもの。

私が立っていたのは国会正門に向かって左の列の真ん中よりやや後方でした。前方は見えなかったのですが、家へ帰ってパソコンで空撮の2便を見るとその状況がよくわかりました。時間が長いですが是非ご覧ください。

7.16の時もそうでしたが、広瀬隆さんの呼びかけで、市民の寄付などにより、正しい報道をするためにヘリを飛ばして公開している会が撮影したものです。

昨年の3.11以降、マスメディアの報道のありかたにも問題が大きいことを再認識しましたが、自分が現場に行くことが大切だと思います。でも空から事実をそのまま写し、ネット上で公開してもらえることは本当にありがたく、カンパなどを含め支援したい気持ちです。
国民の声を正確に報道しないメディアに対しての怒りが、こうして市民が自分で本当のことを見たい、聴きたい、変えたい、という動きになっていると思います。

昨日、毎週金曜日に官邸前で行われている原発再稼働への抗議行動を呼びかけた、首都圏反原発市民連合の関係者と管直人前首相らとの意見交換で、野田首相は「話を聞くことはやぶさかでない」と菅さんに電話で話したということです。是非実現して欲しいと思います。

時代の大きな大きな転換期だと、良識を持った市民がゆるやかにつながり大きな輪になっていることは確実なものだと実感しました。
熱心に先頭に立ち動いてくださる方たちに心から敬意と感謝の気持ちを表したいです。
私のできることはわずかですが、後方でやれることの支援をしていきます。

今回は初おろしの絞りの浴衣で行きました。他にも4名の浴衣姿をみかけました。
笹山さんの「モノ・語り」に詳細があります。
1枚の手仕事の浴衣を纏うこと、これも脱原発への力になってほしいと願っています。微々たるものですが。。。
浴衣の詳細は後日。。。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする