中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

栃木美保さんの「春のまなざし」展を見る

2011年03月29日 | 工芸・アート
昨日(28日)練馬区の小さなギャラリー水・土・木で開催されている
栃木美保さんの「春のまなざし」展へ行ってきました。






小さな和紙2枚を星形に折ったものを1000個作り、天井から吊り下げています。
アロマセラピストでもある栃木さんが調香した香りがほのかに漂ってい、
床にはヨシ(葦)の葉が敷かれています。
1月に亡くされたご尊父への祈りの折り紙は、このたびの大災害で
亡くなられた方々への追悼へと重なりました。












奥の部屋(ギャラリーのある川村邸応接間)の床の間には、
1年かけて集めたという植物の実や種子が、
花として小さな和紙の器に活けられています。

今回のさまざまなことで心がふさがる思いでしたが、
また季節はめぐって芽を出し、花を咲かせ、実を結び巡っていくような、
透明な「気」が私を立ち上がらせてくれるような気がしました。


ギャラリー水・土・木のホームページはこちら
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自然に対して謙虚に、暮らす、生きる。

2011年03月19日 | 工芸・アート
中野みどりのHP



東北関東大震災から8日がたちました。
被災された方々に心からお見舞い申し上げます。

さらに震災に加えて原子力発電所の爆発などで二重の災難が降りかかりました。
東京の町田市にいても不安は募ります。一刻も早い解決を願います。
天災によるものとはいえ、ただ「想定外」だったと言い切れない面もあると思います。
それに原発による電力は、「いくらでもあるクリーンなエネルギー」とは言えません。

円高のニュースで、テレビに映った証券マンたちの
ワイシャツ一枚で腕まくりや半袖シャツ姿の人たちと、
東北の避難所で暖もなく、毛布一枚にくるまるしかない人々の姿とのギャップに、
いろいろな思いがよぎります。私はふだんから節電して暮らしてますが、
なお一層の節電に努めるべく、部屋の中でもさらに厚着をして過ごしてます。
昔、ラジオを聴きながら仕事をしていたときに、一般の方の俳句の投稿が紹介されたことがありました。
今も忘れられない一句です。
「ストーブの余熱のうちに日記付け」
つつましやかな暮らしは豊かな時間を与えてくれるのですね。

この事態の中、彫刻家 岸野承さん(水墨画家 岸野魯直さんの三男、京都府在住)の、
木彫仏像を中心とした展覧会を見に、銀座まで足を運びました。
地下1階にある画廊の通りに面した入口に、被災した人々へのお見舞いの言葉を
毛筆でしたためた和紙が貼ってあり、その下に小さな木彫りの仏像が置かれていました。

会場で承さんにその仏像についての感想を述べたところ、
個展の準備をしている時に震災のニュースを聞き、
亡くなられた方々や避難されている方々への祈りを込め、何ができるのかと自問しながら、
小ぶりの茶の木を使って彫り上げたということでした。
彫刻家として、ラジオのニュースやテレビの映像に心を痛めながらも、
坦々と仕事をされたのだと思います。
20日の日曜日まで開催しています。是非ご覧いただきたいです。
会期:開催中~3月20日(日)会期中無休11:00~20:00
会場:Gallery NOAH銀座3-9-2 銀座ノアビルB1 
   松屋裏、マロニエ通り沿い TEL:03-3248-2277

(承さんの知り合いではなく、たまたま入口の仏像が写ったチラシに誘われて
会場に入ったギャラリストの方もブログで紹介されています。
http://nakama-blog.com/ )

わが工房では特に大きな被害はなかったですが、
高いところにおいてある荷物は下に下ろしました。
そしてふだんとあまり変わりなく、目の前にある仕事をして過ごしました。
自分用の半巾帯を織りに来ている人がいるのですが、その人とも、
こういう時こそ平常心で機に向かうことが大事だと話し合いました。

また私の桜染めの紬の着物を着てくださっている方から、
今月末に娘さんとレストランへ行く時に着たいと思っていたけれども、
こんな時なので着ていくのは控えましょうかというメールをいただきました。
もちろん非常事態ですから配慮は当然のことですが、
このきものは決して華美なものではなく、自然素材と手仕事によるものです。
きものを贅沢品というイメージだけで見てはいけないと思うのです。
この災害のショックから立ち直っていくためにも、
「自然」が与えてくれる癒しを大切にしたいと思います。

レストランは娘さんからのプレゼントということですから、
何か記念となることがあるのでしょうか?
是非お召しになってお出かけいただき、周りの方へも少しでも喜びや希望、
やすらぎが生れるならば、作り手としてこの上ない喜びです。
私に何ができるのか。
自然を大切に、染め、織る。
自然に対して謙虚に、暮らす、生きる。それだけです。

それぞれの方が、それぞれの立場で震災の被災者の方々を案じ、
配慮をしながら、自分にできることをされていると思います。

さて、紬塾’11にお申込みくださいました方々、ありがとうございます。
この災害を踏まえ、改めて、着るもの、着ることをご一緒に考えていきたいと思います。
計画停電など不便なことがあるかもしれませんが、工夫して頑張りましょう。
初回、楽しみにお待ちしています。

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