中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第3回紬きもの塾'13 とことん着尽くす・麻の伊達じめを縫う

2013年06月20日 | 紬塾 '13~'16
着物の仕立て替えや染め替えなどの私物の実例を見てもらいながら話を進めました。
着物は本当に合理的に考えられていて先人の知恵に頭が下がるばかりです。
この文化をもう一度現代の暮らしに生かしたいものです。
着物は高額なものと思われていますが一概には言えないのでは?

大正の初めの生まれの伯母の着物が染替えられ母の羽織になり、その余り布を私が見つけ出し、繋ぎ合わせてもう一度私の丈の長い羽織に仕立て直し、今も健在で私が着ているのですから。。。

前身ごろをワイン染めにした(元は桜染めなんですけど…^^;)自作の着物を漂白剤と炭酸塩で洗って、表裏を返して前見頃と後ろ身頃を交換してよく着ているピンクの着物があるのですが。。。。←意味わからない?
とにかく更生がきくところがきものは凄いのです!!


後半は麻の平織りの襦袢地から伊達じめを1本縫ってもらいました。
何種類かの麻生地を使ってきましたが、今回の麻の平織りの生地が硬すぎず、柔らかすぎず、ちょうどよさそうです。

運針を一人ひとり見ていきました。ほとんどの方が習ったこともなくできなかったのですが、
少しずつ格好がついてきまして、右手の親指と人差し指の中に溜まってくる縫われた布を、針を抜かずに右手だけでシュッと糸こきが出来るまでになりました。

コツをつかめばなんということもないのですが、私は高校生の頃、母の運針と糸こきを見ながらなんとも不思議で、やってみても始めはうまくいきませんでした。
「そうじゃないよ、こうやるの」と何度もやって見せてくれました。
お陰で今はなんなくこなせてますが親とはありがたいものです。



縫い上がった人から2尺指しで表へ引き抜いているところ。

多少難アリ… ^_^;ではありましたが、縫い目にキセをかけるとそれなりによくなりました!
キセでごまかしてはいけませんが和裁はうまいことできてますね!
キセってスゴイ!品や床しさを感じます。

針は絹用の「四ノ三」を用意し使ってもらいましたが、縫うときに力が入ったのか折れてしまう方も二人いました。
指の長さなどもありますので自分に合う長さ、生地によっての使い分けも必要だとは思います。

木綿針ですとこの麻の襦袢地には太くて滑らず、並縫いをするには縫いにくかったのですが、初心者には太いほうが安定して縫えたようです。
私ももう少し針のこと研究してみます。

せっかく指ぬき(並縫いには革製がすべらずよいです)も当てて運針ができるようになったのですから、手ぬぐいを縦に二つ折にして端から端まで運針の練習をするとよいのではないでしょうか?

並縫いさえできれば腰紐や着物を包む風呂敷なども古布や端切れを接ぎ合わせてオリジナルのものを作ることもできます。
そんな機会も持てると楽しいのですが。。。












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「布の美展」ご来場者の着姿から

2013年06月07日 | 着姿・作品
先日の可喜庵で行われました「布の美展」へは着物でご来場くださる方も多かったのですが、中には仁平幸春さんの染帯、西川晴恵さんの麻の八寸名古屋帯、私の紬の着物などをまとってご来場いただいたお客様もおられました。





中野の灰緑の単衣の紬に仁平さんの糸目友禅帯「観葉小花」を締めてご来場いただいた方。

「久しぶりの着付けであまりうまく結べなかった…」とご本人。
いえいえ十分格好がついてますよ!

こういう時は作り手冥利に尽きる思いがします。ありがたいことです。
身につけてもらえるように制作しているわけですからどんなふうな着姿になるのか最終チェックとしてもとても興味があります。その時こそがその作品の完成でもあります。


さて男性のお客様でも特に印象に残った方がいます。



まだ40歳ぐらいの方と思うのですが…西川さんの角帯を締めてとても自然体でいらっしゃいました。
この角帯は両面、そしてタレと手を使い分けると4通りに使えるそうです。
片ばさみという結び方ですね。カッコイイです!
上質の手織りの帯はかたちも決まりやすいのです。

単衣の紬の着物はお祖母さまの着物だったそうです。
これもまた素晴らしくて私の大好きな網代織りです。
糸質がツヤがあり、真綿紬糸の味わいがとても良い糸でした。
黒と白の2色で織られたものですが、黒は比較的均一な糸で白はふっくらしています。
色糸効果がより効果的に出るよう計算されていると思います。
ご本人はその布の景色が「さざ波のようだ」とおっしゃられていました。
作為に満ちたさざ波ではなく、ある予測のもとに効果的な計算のある文様で、見る人が自由に楽しめる織物です。

この着物に西川さんの麻の力強い帯を取り合わせたところに、この方の器量を見ます。

私も数年ぶりに網代の着尺を織ってみたくなりました。
男性、女性を問わずお召いただけますからね。
男性にももっと着物を着て欲しいです。

上質の布を二代三代と受け継いでいくということは人の気持ちも落ちつかせ、豊かな時間が与えられるということなのでしょう。
とてもよい表情をされた方でした。

前からの画像も西川さんが送ってくださいました。



手にしている小道具もいいですね!

ご本人からも畳んだ状態で西川さんの角帯にピントを合わせた画像をお送りいただきました。
まさしく今回の企画の笹山央さんの言うところの「ものの美」です。

いい着物姿を拝見させていただき制作の意欲も湧いてきました。



6月9日(日)午後4時まで櫻工房にて「布の美展」継続中です。

工房は自然光がたっぷり入り、より自然に、美しくご覧いただけます。
ご予約の上ご来場ください(前回のブログを参照下さい)。
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