中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

今年の締めくくりは――吉野帯と女わざ

2018年12月28日 | 女わざの会
今年も押し詰まってまいりました。
今年もたくさんの方にお世話になりました。ありがとうございました。
着物や私の紬織りに関心を寄せ、理解してくださる方との新たな出会いもありました。


今年最後の仕事は来年向けに緯吉野の帯の織り付けにかかっています。足し算をして、引き算をして、小物などの取合せを考慮しながら落とし所を探ります。
結果、、、大人な帯になりそうです。。(*^^*)

さて話は変わりまして、時々当ブログで話題に出る“女わざの会”代表の森田珪子さんから本が届きました。


森田さんたちが一年に1冊発行(1983~2007年)されていた女わざの会の会誌が一冊の本にまとめられました。
冊子の構成とは違って、内容を春夏秋冬に分類、再編集されています。

正直、本を見てがっかりしました。。。私は冊子のままを合本してほしかったのですが、冊子表紙のデザイン、絵もとても良かったので、どこかに表紙だけでもまとめて見せてくれるページも欲しかったです。
季節や衣食住、行事などに分けたりしないほうが、本来なのですが、初めて接する方には季節で分けるのが馴染みやすいと考慮されたのかもしれませんが、、。森田さんは編集にはタッチされてないようですが、以前にも一年を通しての流れを読んでもらいたいという趣旨のことを伺ったことがあります。

それでも内容はもちろんとても良いですのでぜひお正月休みにでもお読み下さい。学びがたくさんあります。単なるレシピ本ではありません。
森田さんたちが何をして、何を伝承、残そうとしているのか、私も一緒に考えたいです。
ネットでも購入できます。『女わざ』新泉社 2000円+税


その中の一つ「正月料理」の箇所だけ写真でご紹介します。文字と挿し絵は今は亡き夫君の森田純さんです。挿し絵を見るだけでも生き生きとした人々の様子を想像させてくれます。純さんの絵や文字、いい味してます‥。

おせち料理に込められたものは自然の恵みをその土地々々に与えて下さる神に供え共に食するとー。

また、年末に作り置くのは料理に携わる人も、鍋や釜、様々な身の回りの道具たちも休めてあげる思いやりの気持ちも込められていると私は思ってます。なので年末だけは毎年頑張ります。
左ページの大晦日のお膳も質素ですが滋味豊かでいいですね、、。ヘルシ~!

豆の味、昆布の味、芋の味、魚の味・・・海の幸、山の幸に感謝しながら、程々の飲物も(*^^*ゞ愉しみたいと思います。

それから“女わざ”は女性だけの仕事を言うのではなく、男性、女性、子供、大人などを分けているのではありません。
男わざも、子供わざも暮らしの中にあり、自然に見聞きし、伝わったはずです。
女わざの会は女性に家事を強いるようなレベルの会ではありません。男性にもぜひ読んでいただきたいです。
民俗学に興味の織る方も是非!お正月に改めてページを繰りたいと思います。

来年、櫻工房オンラインSHOPで女わざ冊子のほぼ全巻(多少欠番あるかもしれません)を一式で販売しますので、準備が整いましたらまたブログでお知らせします(→2月下旬頃の予定)。
こちらは希少な貴重な冊子です。 
紬塾は来年は11期目になります。
今期の最終回が2月3日に変更になりますが、2月下旬には日程などの詳細をUPし、3月中旬に募集を開始します。
ご検討中の方はカテゴリーより過去の紬塾ブログ、またはHPも参考にして下さい。

HPも少しずつですが更新していますので時々覗いて下さい。

さて、普段あまり家事をしない私も年末は流石に慌ただしく、溜め込んだ掃除や、手作りおせちの準備で忙しくなります。

今年の中盤に体調を崩しましたが、年齢的な身体の節目でもあると思っています。
好きな飲物も控えめに、、?、お正月を過ごしたいと思っています。(^^ゞ
染織の仕事をするしか脳がないのですから、健康第一です。

今年は自然災害、争いの多い年でしたが、来年は穏やかな平和な年でありますよう祈ります。

工房は29日から1月4日まで年末年始のお休みをいただきます。
読者の皆様も良いお年をお迎えくださいませ。




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第10回紬きもの塾「自然で楽に着物を着る」

2018年12月13日 | 紬きもの塾’17~’20
第10回目の紬塾は紬などの着やすい着物を「自然で楽に着る」というテーマでした。

まずは下着や小道具について素材を見ての選び方、扱い方、また、着物の洗い張りをいつすればいいのかと言うような質問もあり、私の見解を述べました。
袷着物は基本的に洗うようにはできていないのでまず汚さないように着ること。ファンデーションなど使う方は顎のあたりはあまり塗らないほうがが、、。化粧の後はよく手を洗わないと、油汚れは時間が経つと黄変のもとになります。
着方も人それぞれで、一様ではないですが、洗い張りに関しては八掛の裾が擦り切れたタイミングで手入れをすればよいのではないでしょうか?
立体感のある真綿紬は汚れにくいです。
肌着や長襦袢、半襦袢についてでは、肌襦袢の襟元をしっかり首元にかかるように着ると長襦袢も汚しません。

私は日々の洗濯の殆どが炭酸塩です。あとは純石鹸を使います。合成洗剤は使いません
肌襦袢、ステテコなど汗がついただけのものなど、よく落ちてすすぎが簡単な炭酸塩がオススメです。
長襦袢は普通の絹の縮みにくい織り地を選び、洗える仕様に生地を伸ばさない仕上げにしてもらえば自分で洗えます。
日常に着物があった時代なら、いくらでも生きた知恵があったのでしょうけれど、今は洗濯さえも機械任せで素材による扱いの違いなどを皮膚感覚、身体感覚で受け止められないようになっていると紬塾の中でも思うことがあります。



着方に関しては、着物は着られる方ばかりでしたので、名古屋帯を仮紐無しで締めるやり方を中心に説明しました。短い帯や、前帯を汚してしまった場合、ポイント柄を見せずに無地を出したいときなどの、太鼓から結ぶやり方も参考までデモンストレーションしました。
前柄がうまく出ない場合の確認方法や、体型による帯仕立て寸法について。
7号サイズぐらいの方が、今の標準寸法の太鼓幅8寸2分ですと大きすぎるように思います。太鼓の端が脇の方へ回り込んでしまう感じになります。反物から仕立てられるときは、帯もマイサイズで仕立てると良いと思います。ただ、マイサイズはジャストサイズという意味ではなく、全体のバランスや帯の柄、質なども考慮するとよいです。

着物は補正をする必要があればすればいいですが、補正をするものと思い込んでいる方もあります。
なるべくその方の体型に沿わせて着れば良いと私は思います。補正肌着はいきいきした着こなしを削ぐように思います。その方の体型そのものが神様が作ってくださった理想形なのですから。
着方や柄、色選びでもカバーできる点もありますし、着方をややこしくすると、ますます着るのが面倒になります。蒸し暑い時に肌着の上に綿のタオルを巻きつけると暑いです。

先日のワッツでの個展で会場にふらっと入ってこられた方が、着物は着たいのだけれど、着付け教室についていかれなくてこんなにめんどくさいならもう着物は諦めたと言っておられました。最初からややこしいことはせず、腰紐1本、胸紐1本で着ればよいのに、、と。慣れてきたら少しずつ自分の理想系にすればよいと思います。

着付けのお手本が身近な人になく、雑誌のモデルさん(人に着せてもらった姿)を参考にするしかなくなってしまったので仕方ないのですが、着物もいいなぁと思ってくださってるのに、着方のせいでやめてしまうのは本当に勿体ないことです。
撮影用の着姿と、実際に目の前で見る着姿は違います。カメラのレンズと肉眼のちがいも大きいです。

確かに自然で美しく、こなれた着方をマスターするには修練が必要であることは言うまでもないことですが、みんなお揃いのような着付けをしないといけないかのような雰囲気になっては悲しいことです。
私自身はグズグズの着方をしていて、、、もう少しピシッと着たいと思って毎回少しずつは気をつけるようにはしています。ただ、基本的に簡単、楽な着方が好きです。(^^ゞ

あと、着物の仕立寸法が着姿に大きく関係しますので、最終回の紬塾でその点をお話します。私も寸法が合わないまま着ている着物はどう頑張っても時間もかかり、スッキリしません。洗い張りのタイミングで直していきます。


上の画像は30代のアシスタントの着姿ですが、彼女も着付けを習ったことはなく、自己流で着ていましたが、紬塾も受講し、今は自然な着方をしています。たまにしか着ませんが、着付けも早いです。最初はリサイクルの着物を着ていましたが、この「木守り」と題した紬着物は私の下で織ってもらったものです。着物も帯も小物も数は数点しかないのですが、気に入ったものを大事に少しずつ増やしていけばいいと思います。帯は向かい鶴文様の和更紗です。帯揚げの芥子色は玉葱で染めたものですが、光によって見え方が大きく変わる色です。

ミニ紬きもの塾の工房版もありますので、私でわかることでしたら、紬を着るにあたっての個別のご相談も承ります。
ホームページからお問い合わせ下さい。





中野みどりHP






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第8回紬きもの塾ー紬はかたもの?

2018年12月08日 | 紬きもの塾’17~’20


個展終了翌日の日曜日は織りの実習「布を織る」でした。

今期3人の方も無事織り終えることができました。
受講者のみなさんももちろんですが、私もこの瞬間ホッとします。

設計通りの方、設計図を見ながら多少の変更を加えて織った方、メジャーは最初だけで、あとはほとんど即興で織った方、三人三様の布になりました。
真綿から自分でつむいだ白い糸と、工房にある色糸を自由に選んでいただきデザインを考えてもらいますが、真綿の太い糸の表情、面白さを見てもらうことが大きな目的です。
織り上げた布は私の方で湯通しをして糊を抜き、塾最終回にみなさんにアイロン仕上げをしてもらい切り離します。
この時3寸ほどの手紬布として完成します。




湯通しはヒタヒタぐらいのお湯の中でまず糊(布海苔、生麩)をふやかすために軽く押してしばらく置きます(あまり長くすると糊が逆に戻ってしまいます)。その後、水を替えて2度すすぎます。軽く脱水し干します。

紬は水の中で、木綿やウール、麻などのように糸そのものが縮むことはほとんどないのですが、糸にウェーブがあり伸縮性があります。
湯通し後はスチームアイロンでほぼ元のサイズにします。
ゴワゴワした硬い紬ではなく、ふっくらした柔らかな紬になります。


よく染めの着物を"やわらかもの"といい、織りは"かたもの"と言われますが、私の頭の中では紬は柔らかいものです。(^^ゞ  
いえ、本来の紬は、というべきかもしれませんが。。

硬い紬があったとするなら、強い糊が落とされてないか、細い糸を使い、織り密度が高く、糸の撚りも強いものです。
密度の高いものはいくら着ても、いくら洗っても柔らかくはなりません。

本来の紬は着るほどに、洗うほどに柔らかく体に馴染み、着やすいものです。
それでいて適度な張り感もあり、まとわりついてくるような感じはありません。

よく見もしない、よく分からないうちに、着物の知識(!?)として、染め物は柔らかく、紬は硬いというようま固定観念を持たないことが大切です。

硬そうで柔らかいのが本来の紬、柔らかそうでいて、密度高く、硬く織られているのが染生地というものだと思います。

タテ、ヨコのテンションを強く織ったものは硬く、収縮も強いです。
また、そうかと言ってゆるゆるのものは布として自立しません。

程よいテンションで糸を巻き、織ることが紬では大事です。
昔のいいものは、染め生地もしなやかでふっくらしているのは糸に無理がかかってなかったからでしょう。

布を見れば、あるいは布にに触れれば、織りでも染でも生地質、着心地の良さなどはわかります。感覚のいい人は瞬時にそれを判断できます。

先入観でものを見るのではなく、素直な感覚を意識して磨いていきたいものです。





中野みどりHP


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