中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

木守り

2017年11月21日 | こぼれ話


今年は工房の柿が豊作でした。台風も2回も接近、通過しましたが、たくさん収穫しました。

柿の実は紬塾の参加者の方と共におやつに食べたり、ご近所にもお福分けもしましたが、サラダや白和えの料理にも、柿酒にも、さらには冷凍にもしました。柿は糖分が多く、そのせいか、、、2キロ近くまた太りました。(-_-;;)
でも今年は風邪を引かない気がします。(^^ゞ

柿が実る頃には母や祖母をいつも思い出します。

柿の実の絵がついた安価な徳利を「かきえもん」(有田焼の柿右衛門を意識して)などとふざけていっていた母、羽織の絣模様の色が柿の実の色に似ているのがあって、畳紙に「柿色の花の羽織」などと書き込んだものがありました。

子供の頃は柿の木に登ってお腹いっぱい柿の実を食べていたようです。
祖母は柿の実を家族が採っていると、「取り尽くすなよ!鳥にも残しておきなさい」といつも言っていたそうです。
そんな話を私にする時にはいつも故郷の三重の山中の風景を思い浮かべて語っているようでした。

自然の恵みに感謝して恩恵を受けるけれど、また来年も木が元気であるよう、鳥たちも元気で生きられるよう共存の姿勢、生き方は誰に教わるでなくても自然が教えてくれるものかもしれません。

工房の柿も私ばかり食べたのではなく、(~_~;)、野鳥たちにもたくさん残しました。
ムクドリの大群も詰めかけていましたし、ヒヨドリも、メジロも順番に来ていました。

雨が多かったので水分たっぷりトロトロになって随分地面にも落ちていました。
鳥たちも食べ尽くしたのでしょうか、上の写真の通りで数個の柿の実を残しています。


ぶどう棚の下に植えた小菊は長い間いい香りを放って咲いてくれましたがもう蕾はほとんどなく、最後の花たちが咲ききろうとしています。
小菊は大好きな花(特に白いのが好き)です。


ホトトギスも長いこと次々と咲いてくれました。挿し木で増やしたものです。


庭の隅の南天も実を鳥に食べられたのでしょうか?まばらになってます。


昨年ふた株鉢に植えたヤブコウジは元気にしています。
着物や蒔絵の模様にもよく使われますが、大好きな植物です。実はお正月までもってくれるでしょうか?野鳥達も好きみたいです、、。
栄養をつけて冬を乗り越えるのですね。


桜も葉を少なくしています。落ち葉掃きは家人の朝の仕事です。私は眺めています(#^^#)。

冬芽を膨らませています。

身の引き締まる冬の到来です。






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第8回紬塾「取合せの美」

2017年11月09日 | 着姿・作品
紬塾のカリキュラムでは染織実習コースが終わると、いよいよ実際に着ることの話になっていきます。
残りの3回にギューっと着るための大事な話が凝縮されています。
今回の「取合せの美」もそこに至るまでの肌着や腰紐、伊達締め、長襦袢などの素材選びの話などから始まり、最後は上モノの着物、帯、帯揚げ、帯締を実際に取合せてみるワークショップまで行いました。

毎回そうですが、話すことがたくさんあり、1時半から5時過ぎまで、途中の10分ほどの休憩以外はほとんど話し続けていて、終わったら喉が痛かったです。>o<

今期は全く着物を知らない方、着付け教室で着物の着方は習ったことのある人もほとんど詳しいことはわからない方ですので説明に結構難航します、、。(^_^;)


しかし、感覚的なものはお持ちですので取合せのワークショップでは素敵な取合せを考えてくださいました。
織り味のある2点の紬着尺と5本の帯を自由に選び、小物も取合せます。まずは頭の中だけのイメージで決めてもらいます。いつ、どこで、どんな心情、状況で・・。みなさん真剣に取り組んでいます。

相談などはしないで決めます。終わって全員のを発表、だまって見てもらいます。
次はもう一度一人ずつ改めて取合せた後に、私の方から補足やアドバイスなどさせてもらいました。

こころ落ち着かせて一人で外出の時、あるいはみんなで会食など楽しい時、梅の咲く頃のお出かけなど、、、それぞれが2パターンずつ考えてもらいました。

取合せも無限にありますが、たった2つの注意点だけ抑えることでとても良くなります。

色合わせに遊ぶだけではない、上質な力のあるもの同士を取り合わせることが最も重要な事です。
初心者ほど大事だと思います。今日話しきれなかったことは最終回で補足したいと思っています。


この日の私の取合せは、似合わない着物をカバーする時の参考例として度々着ている着物です。
着物が肌色と合わない場合も帯や帯揚げ、帯締を自分の肌と合う色に変えることでかなりカバー出来ます。着物姿は帯や小物にまず目が行くので、そこは洋服とちょっと違うところです。
草紅葉をイメージした着物に3シーズン使える藍の縞帯、ダークな色の帯締、帯揚げで秋の深まりを表してみました。

着物の取合せはまず自分の肌や髪の色との取合せから始まりますが、譲り受けた着物やいまいち似合わない着物、年齢で似合わなくなってきた着物を着ることもありますので参考にしてください。

日本の取合せは異なる素材や形、色、季節、場、心情などをものに託して静謐さの中にも深さや豊かさを盛り込みます。日本人の心意気や周りへの配慮なども含まれます。
そんな着物の取合せが出来るよう日々ものを見つめ、使いながら審美眼を磨きたいと思います。

着物は奥が深く簡単ではないけれど、必ず自分を成長させるものがあります。
紬塾で学ばれる方たちにはぜひ上質の着物をまとうことの一歩を踏み出してほしいと思います。
それはとても楽しいことです!


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裂織、繋ぎ糸織

2017年11月03日 | 着姿・作品

先日織り上げた帯の後に経糸が5寸ほど残りました。
経糸を捨てるのはもったいないので小さな卓布を裂き糸で織ってみました。何の裂かおわかりになりますでしょうか?


アップにすると小さな水玉です。修業に入る少し前の40数年前、気に入って着ていた赤茶色の細いボウタイのブラウスでした。生地は上質の薄手の綿です。バイアス仕立になっていました。

修業に入ってからは工房と家を往復するだけの毎日でしたので、擦り切れたGパンにトレーナーやTシャツ、インド綿のザックリしたシャツなど作業着で一年中過ごしていましたので、もうそのおしゃれなブラウスを着る機会もなくなり、年月が経ちしまわれていしまいました。

晩年の母は、私達が着なくなった服や、子供の頃に着ていた古い着物、布団側など、使えるものは生地として生かし、使えないものは布を裂いて玉にして置いてくれていました。裂けない生地は細くハサミで切ったものもありました。いつか時間が出来たら織りなさいと――。

ブラウスはバイアス断ちのものでしたので四角い布を裂いたのとは違う、裂き止まりのところが不規則にポコッと表れ、それが面白いと思いました。
着ることは一生のこと。洋服でも思い出はたくさんあります。織りながら若かりし日々のこと、母のことをたくさん思い出しました。

昔、擦り切れてどうにも使えない布は裂いてまた織って、仕事着や敷物やこたつ掛け、帯などにして使ってきた歴史があります。
若い頃からそうした古い裂織も博物館などで見てきましたが、今の恵まれた時代からは想像もつかない厳しさの中から自ずと生まれてきた布です。ただ、そこには貧しさやみすぼらしさということではない裂き織りならではの面白味や美の世界、アート性も時に表れてきます。
それはなぜなのかをずうっと考えています。いくつかの要因がありますが、今ここでは述べないでおきますが、裂き織りは新しい布を簡単に裂くものではないし、新たに再生させていくというきちんとしたコンセプトをもって臨まなければならないと私は考えています。




こちらは以前試作で作ったトートバッグで、私が冬になると使っているのですが、大学生の時に着ていたコットン、シルクの紬風チェックのワンピース生地を使った裂き織りです。
ベースの糸は赤城の1500デニールぐらいの節糸でしたが、この糸は手に入らなくなりバッグの制作も中断したままになっています。裂き糸を生かせるベースの糸も重要ですので。
現代の裂織にどんなメッセージを込め、いいものに再生できるか、今後の仕事の一つとして温めています。


織の最後には短い糸を繋いだものや僅かな残糸などで織り仕舞いのために1寸ほど織ります。経て継ぎ用に経糸を1尺残すためです。
繋ぎ糸も思いがけない模様が浮かび上がってきて、着尺や帯に意図的に使うことがあります。
実は今回織った帯も繋ぎ糸をアクセントにしたものです。現代感覚ですが、、。
また次の展示会でご覧いただきましょう。
この織り仕舞いの1寸の布も捨てません。これも裂き織りの材料になります。修業時代にこの端っこだけで卓布を織らせていただいたことがあります。裂くことは出来ませんので、ハサミで7ミリ幅ぐらいに切りました。ものすごく濃厚なものでした。

布や糸をとことん使いながら、その思いがけない面白み、味わいを現代にも生かしたいです。
ただ、そのもとにあった歴史もこころに留めておかなければいけないと思います。

いつか紬塾を修了の方たち向けに裂き織りの講座ができたらと思っています。
自分が使ってきた古布と向き合い、もう一度蘇らせるために。
布は何かの役に立ちます。簡単に捨てられないものです。捨てられないから何を買うかも問われてきます。
裂き織りがたくさんのことを教えてくれます。「布買ってくる、自分買ってくる」ですね。

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