中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第7回紬きもの塾  布を織る

2013年10月31日 | 紬塾 '13~'14
真綿から糸をつむぎ、染、織物設計もして、そしていよいよ織る段階に入りました。
順番に、3寸(約11cm)の長さを1時間ほどかけ織ってもらいました。
同じ条件で、こんなにも違うデザインが産まれてくるものですね。
ただ、経糸も表情豊かだけれど、とても織りにくいものなのですが、
それゆえにどれも味わいがある、奥行きのある布になったと思います。
糸や、草木の色の力のおかげでもあります。

この学びが、布を色や柄だけで見るだけではなく、糸の一本一本や、風合いということも感じ取れるようになると、布を見るときの助けになると思います。

たった3寸の体験で、細かいことをあれこれ指摘させてもらったのですが、
よくここまで学び取ってくれたなぁと有難く、やりがいも感じました。


みなさんの感想、気付きなどが揃いました。画像と共にご紹介します。

 
私は学生時代に一度織りを体験したことがあるくらいで、今回久しぶりに触れました。
まずは自分が織りたいデザインを紙の中で表現します。
これがとても難しく出来上がりの想像がいつまでたってもできませんでした。
どうにかこうにかこんな感じにというものが頭の中にあったので
何とか仕上げることができました。
先生にみてもらうとこれではグラフィックデザインだと指摘を受け、少し手直しして下さいました。
その時はまだ何のことやらで頭の中はクエスチョン(?)だらけでした。いざ織りはじめるとあっちにもこっちにもと神経を使い、緊張しましたが、とにかく楽しい。
当たり前ですがどの糸も色も違えば太さも違います。
糸の雰囲気が掴めてくると次第に紙に書いたデザイン通りではなく、次はこっちの糸がいいかなと織りながら変更したりと後半は楽しめました。
織り終えて全体的にみてみると、撫でたくなるような愛しい感じがして胸がいっぱいでした。
あの感覚ははじめての感覚で、ここで表現できないのが残念ですが、織ったことで、また自分で紡いで染めた糸に出会いたい、色んな糸に触れてみたいと思いました。
先生にアドバイス頂いた箇所は直して良かったと改めて思いました。
ベタではなく、個性を持った糸同士を交互に入れるとそれぞれの糸が活かされるんだなと。
ベタだけで織っていたらその糸の良さが際立たないんだと分かりました。
このような経験が出来て受講して良かったと改めて思いましたし、経験させていただいた先生に感謝の気持ちでいっぱいです。ほんとうにありがとうございました。 Aさん



とにかく夢中で取り組んだ1時間でした。
杼が手から手へうまく渡るように、耳の糸の具合を確認し・・・と、緊張で肩がガチガチになってしまいました。それでも手足が迷わず動いた瞬間があって、そんな時はリズムが生まれた様で、嬉しくてこのまま織り続けたいと思ってしまいました。
ひと越しずつ進んでいくにつれ重なって見えてくる色、単色の続きだけでなく色同士が作用して際立ったり、引き立てたり、一色で巻かれている時には分からなかった世界が現れて来ました。
よく見れば、緯糸と経糸が交差して細かな陰影が出来ていて、織りものは平面のようで実は立体作品なのだと、当たり前のことに気付きました。
また、設計通りに進まないのをやりくりしながら規定の幅に収めていくのも楽しいものでした。

今回は先生に機を全て準備していただいて、自分では緯糸を通して織っていくだけでしたが、自分で紡ぎ、染めた糸で織ることが楽しく、小さな端切れがとても愛しいものになりました。
神経を使い、手間をかけて糸を紡ぐことから織り上げるまで手掛けるということは魂を込めずして出来るわけがないとよくわかりました。そうして織り上がった布からは作り手の苦労と愛情が滲み出し、美しく、人を魅了するのだと思いました。  Jさん



実習もいよいよ最後、織りの日になりました。
秋晴れのさわやかなお天気の中、静けさが心地よい工房にて、さっそく実習が開始されました。
今までの作業を通してだいぶ絹糸の感触に慣れてきたようで、糸巻きのときに糸の太さなどを触知する左手の感覚が、ずいぶん鮮明になってきたように感じました。
次にいよいよ織りの作業です。
注意する点がたくさんあり、初めのうちはかなりてんやわんやしましたが、最後のほうは少しリズムがつかめたように思いました。
しかし、自分の欠点で、「調子にのると詰めが甘くなる」という性質がくっきりと表れ、苦笑いしてしまいました。
その結果、数越ずつやり直すことになりましたが、毛羽で絡みやすい糸を傷めないようにしながら元に戻す作業を通して、緯糸だけでなく経糸にも十分注意を払う意識を持てるようになったように思います。

織りの作業を終えて、まずはゴールまで到達できたことへの充実感でいっぱいになりました。本来の一反分から比べれば極々わずかな長さではありますが、自分が設計したメジャーをもとに設定したゴールに到達するということは、とても大きなことでした。
それから、やはり強く感じたことは、布の出発点は糸であり、織りあがった布という形になっても、1本1本の経糸、緯糸はそれぞれとても強い存在感を放つのだということでした。
以前より布が好きで、つい布があれば触ったりひっくり返したりしてしまうのですが、それはあくまで布として平面になった状態でとらえていただけでした。「糸」なのだ、という、いわば当たり前のことではありますが、改めて意識に刻まれる実習となりました。 Kさん


自分で糸を紡いで、草木で染められた糸で布を織る本物の経験をさせていただきありがとうございました。
ただ、私はせっかくの貴重な紬糸を上手く生かせないデザインを作成してしまいました。もっと色やつながり、組み合わせをよく考えれば良かったと思います。
織りの方も手順に意識がいき、加減が上手く出来ず、独特の風合いが出ていなかったように思います。
糸を優しく扱ったり、一つ一つの作業を丁寧に行うことの大切さを実感します。
とても反省の多い体験でしたが、先生のアドバイスを頂き、修正しながら織らせていただいたので、素敵なものになりました。布が出来上がった時は嬉しかったです。
今後、着物を着る時は関わられるすべてに感謝する気持ちが強くなりました。  Cさん


 毎回、講座を楽しみにしている中、織る実習は、実際に真綿を紡ぎ、
7月の青々とした桜の葉と枝から染めた紬糸を使ってデザインし、織って
いくので、一連の工程によって、布が生まれる事の尊さをあらためて
感じました。
自分でデザインしたものが、実際にどのような感じになるのか・・・
不安と楽しみが入り混じりながらも、一織り、一織りの糸の重なりを
見ていくと、薄い色調ですが、それでも色それぞれがお互いの色を引き
立ててくれているような気がしました。
1本、1本の尊い糸によって布が生まれる事が、何より神秘に
感じています。お蚕さんや草木の命と向き合った時間を大切感じて
います。
手紬ぎならではの、風合いの糸を取り入れられた事が本当に嬉しい
です。  Rさん



今回の紬きもの塾に参加させて頂き
「プロの仕事」を拝見させて頂きました。
染織の仕事の工程からみたらほんの一部で、
全ての工程の中に糸と真剣に向き合っている姿勢を
感じさせて頂きました。
明確な目的(風合いのよい紬)のために
考え抜かれた作業工程を、今回のお教室で
学ばせて頂いたことは本当に有り難いことと思います。  Tさん




最後の方は、経継ぎ用に残す8寸ギリギリのところまで織ってもらいました。




2つの画像でよくわかるように、緯糸の太さに合わせて、糸の傾斜を変えて織ることも説明しました。
一越ひとこしを見つめながら変えていきます。
幅や、色の出方もこれだけのことで違ってきます。




緊張が解け、織り終えてホッとした表情をみなさんが必ずされます。
そして何故か嬉しそうです。。。
私も一番神経を使うのがこの織りの回の時ですので、無事に終わってホッとしました。
みなさん、良く織り上がりました。








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櫻工房の柿

2013年10月19日 | こぼれ話


工房の庭には柿の木が1本あるのですが、選定した枝、葉を染によく使います。
枝を小窓まで伸ばしてあって(わざと伐らないで^^;)、夏は日よけにもなります。
その枝に、冬は野鳥が止まりますので部屋からバードウォッチングも楽しんでいます。

そして何より!収穫の秋が楽しみなのです。
毎年必ず作る柿を使った定番簡単料理を3品ご紹介します。上から簡単な順に。



<柿とルッコラのサラダ> 
このルッコラは先日ご紹介しましたTさんの畑の間引きのものです。
ルッコラ水耕栽培のものは味が薄いので、手に入れば地のもので。
ボールに柿(1個を16等分にクシ切り)とルッコラを入れ、塩、レモン汁(ワインビネガーなどでも)を適宜入れ、サクッと混ぜ器に盛りつけます。上からオリーブ油を適宜かける。これだけ。
生ハムやチーズを添えればワインとも合います。



<しめじと柿の和物>
しめじはみりんと醤油で含め煮にする(この日は酒を入れて煮たのですが汁が出てしまいますので、みりんだけのほうがいいです。汁も美味しいですが…)。
上から柿をすりおろしたものを乗せ、和えながら食べます。
Tさんの畑の黄菊がありましたので、さっと茹でたものを天もりにしました。
イカの糸作りを入れてもとても美味しいです。それぞれの滑り成分がよく馴染みます。



<柿と紅玉リンゴの白和え>
柿とりんごはいちょう切り。りんごは柿の半量ぐらいがいいです。
ごま(Tさんの金ごまは、すごく香りがよかったです)をすり、水切りした豆腐とすり合わせます。
白味噌(この日は信州味噌に砂糖少々)で味を付け、柿とりんごをサクッと和えます。
青味になにか入れるとなお良いです。この時は大根の間引き菜があって、柔らかくて美味しかったです。ほうれん草、小松菜をさっと湯がいたものでも。
金ごまも茶色で、味噌も信州でしたので、白くないですね。^^

どれもすごく簡単ですので、この秋、ビタミンCの豊富な柿をたくさん食べて、冬の寒さに備えると良いのでは・・・。柿は二日酔いにもよいそうです。

日々の献立に困ることはありません。
「芋、豆、菜っ葉、葉っぱ、ゴマ、海藻」を唱えて、足りない食材を思い浮かべると献立が自ずと出てきます。さらにキノコを加えれば完璧なバランスです。
「女わざの会」としてかたち21のブログでもご紹介していた、現在はNPO法人「女わざ」代表の森田珪子さんから教えていただきました。

旬のものをバランスよく食べて元気に仕事をしたいですね!









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ススキの花

2013年10月11日 | 自然環境・脱原発


昨日の夕方、近所に買い物に出かけました。
途中の道端にたくさんススキが穂を広げています。
丁度開花期のススキもあります。
風に揺れてうまく撮れないのですが、携帯カメラでパチリ!
黄色の葯(やく)が美しい!






亡き母が、今の私と同じ歳の10月に、以前住んでいた川崎市麻生区王禅寺という住宅地の空き地に咲くススキを採ってきて、穂の出始めたばかりのものと、花咲かせている穂をスケッチブックに収めていたことを思い出しました。

母は女学校を出る頃に戦争が始まり、絵を描く事などとは無縁できましたが、急に1983年の10月(30年前)から描き始めます。
スケッチブックと24色の色鉛筆、2Bの鉛筆を買ってくるよう頼まれました。
その1ページ目がこのススキです。

大人になって初めて描く絵だけれど、対象の美しさを捉えようと一心で描いていることはわかります。上手、下手ではなくて。

他にもセンダングサ、アカマンマ、ネジバナなど身近な植物が10枚ほど描かれています。
私が実家を出て、6畳一間のアパートを借り、一人織物に突き進んでいったその時から、
母は描き始めます。
子供が巣立って、やっと落ち着いて自分の世界、好きな世界と向き合い始めたのでしょう。

林業を営む家に生まれ、結婚するまでは三重県の山中で過ごしていました。

住まいの近くを流れる小川で遊んだこと、柿の木に登って柿の実をたくさん食べたこと、草花や野鳥のこと、自給自足の暮らしのこと、看護師をしていた祖母のこと、亡くなる間際まで話していました。
東京へ来て苦しいこともたくさんあったのに、澄んだ空気をお腹いっぱい吸って遊びまわっている母の笑顔だけが今の私には想像されます。
自然を友として生き抜いた母を尊敬し、私を今も導いてくれていることをありがたいと思います。

ススキやイネは風媒花ですが、古来より工芸品、着物、帯などの意匠にも使われてきました。

私が持っている大辞林の風媒花を引くと『花弁を持たず美しくない』と。
人の感性に違いはあるでしょうけれど、、、これは違うと思います。。。











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第6回紬きもの塾 「 織物設計」

2013年10月07日 | 紬塾 '13~'14

並んで糊付けした糸をほぐしているところ。


真剣な表情だけれど、難しい・・・


今回はいよいよ織りに入るための準備として自分が紡いだ糸の長さを確認し、9寸幅に織るために、
何越し分の糸があるのかを計算しました。

それからデザインに入りました。
条件は自分が紡いだ糸は全て使うデザインであること。
できれば1本1本の糸の形がわかるよう、ベタ使いだけではなく地糸と混ぜる箇所も入れて下さい、
というものでした。
赤や青などの色糸を使う使わないは自由。
毎回条件は同じです。

しかし、デザインというとどうしても自分の思いが強く出て、紡いだ糸のことは忘れてしまうようで、
思い通りにいかず悩んでばかりで前に進めません。
私は自己表現系の織物実習をしましょう!とは言っていません。

自分の紡いだ糸の形を見つめる布を織って欲しいのです。
まずは紬布の風合いや糸の力を知ってほしい。
色やデザインは後からでいいのです。

自分の糸を使い切った時に生まれてくる図案と出会えばいい。

真綿を引き出して生まれてくる糸の形はどうなんだろうか?
美しいのか?細いのか、太いのか?
そういうことと出会うための織物実習です。

自分の小さな頭の中だけで考えたり、どこかで見たような紬織りのイメージを真似てみたりの
観念的なことではなく、実践の中からの学びが大事です。

もっと自由に、柔らかな頭で受け入れてみる。
そこからアイデアが逆に生まれてくる可能性もある。
不自由を不自由と思わない自由。

そちらのほうがどんなにか自由で面白いと思うのだけれど。。。

今日、図案が出来上がらなかった人も実習日までよく考えて、あまりいいもの作ろう!とか気負わず、
素直に今ある自分の糸と向き合ってください。

目の前にある、旬の食材を生かして献立を考えたり、調理したりすることと、何ら変わりはありません。


太めに紡いだ緯糸を管巻機で巻いているところ。固く巻きすぎてしまう人もいましたが、糸を伸ばさないようほどほどに紡錘形にまきす。






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旬を食べ、旬を着る

2013年10月01日 | こぼれ話
週に1回ミネラルたっぷりの有機野菜を、紬塾にも参加してくださっていたTさんから配達してもらっています。
ご実家は農家でしたが、無農薬、有機栽培で昔の野菜の味を目指したいと、10世帯分ほどをほぼ一人で育てています。
原発事故以降、腐葉土、糠が使えなくなり、その入手にご苦労されているようです。
私にはそれでも美味しく感じられるのですが、ご本人は、以前より味は落ちていると言っておられます。

9月から10月にかけては野菜の端境期で量も種類も少ないのです。
先週末は空芯菜、米ナス、ナス(大小3個でしたが秋ナスは本当に美味しいです)、オクラ、九条ネギ、シシトウ、ピーマン、サツマイモ(小さいのが3本)、カボス、インゲン(今年はインゲンが上手くいかなかったそうで、たった1本でした~っ!でも、お味噌汁の彩に使いました。ありがたく噛みしめました)。

形がいびつだったり、大小不揃いだったり、量も少なかったりしますが、私は工夫しながら今あるものを大事に頂いています。
野菜の形や、量から、逆に献立が浮かんできます。
あれがなければ、これがなければ作れない料理はほとんどしません。
旬のものを食べるのが一番ですので。

着物の創作も私は染め上がった糸の色を見て構想を練っていきます。
この色がなければあの色がなければと求めません。
今の空気、季節を肌で感じながら今着たいものを考えます。
私の場合は、衣・食、一緒ですね。

着るものも今は端境期?ですね。合着、合服です。
でも洋服なら長袖シャツ1枚で軽やかに装える季節ですし、
着物も紬や木綿の単衣を軽快に着たいところです。
間違っても10月1日だからと袷の紬は着ない方が良いです。
胴裏に汗染みを付けつのが落ちです。

単衣の紬は着る時期が短いからとよく言われますが、
着物のルール本に書いてあるそのままではなく、着物も地風は様々ですので杓子定規にならず、
気候に合わせて、自分の着心地などで判断すればよいことです。
人のロボット化は着物を着る世界にまで及んでいるように思えます。




7mmの厚さに切り分けると11枚取れた新サツマイモの素揚げです。
Tさんに分けてもらっているミネラルたっぷりの塩でいただきます。
上は、夏の間何度も登場した空芯菜とニンニクの炒め物。今シーズンはTさんの畑では最後となります。
ニンニクも美味しいんですよ!



北海道産の秋鮭のホイル蒸し。カボスが入っていたのでこのメニューが浮かびました。



無花果は愛知産のものですが、このシーズンにはよく買います。
果物として食べることはなくて、日本酒、ワインのつまみにします。
昨日は水切りしたヨーグルト(5時間以上)とルッコラ、オリーブ油、塩でいただきました。
Tさんのルッコラだともっと美味しいのだけれど、、、と思いながら食べました。。


さて、紬塾も端境期?でしたが10月6日(織物設計)、秋からの講座スタートです!
お待ちしています。














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