中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

真夏に小千谷縮で外出

2019年08月24日 | 自然環境・脱原発
 
お盆明けの、この夏一番暑かった日に着物で外出しました。
 
一瞬着ることをためらいましました、、が、その日は湿度が40%台になっていたこと、炎天下を歩くところはトータル6分位であること、行く先は冷房の完備した場所であること、帰りは夜になる。さらに絹上布をやめ、お太鼓結びをやめ、小千谷縮&半幅帯に予定変更、下着もヘンプ肌着、ステテコ、汗取り用ヘンプ蚊帳タオル、麻の長襦袢、麻の伊達締め、着物の上には伊達締めを使わず胸紐1本、帯もやや緩めに締め、ボール紙を切っただけの帯板。麻の日傘もさして、マイボトルももちろんしっかり持って、出かけました。
ボサボサ頭で決死の覚悟な後ろ姿ですが(カットに行かなければ、、これが一番暑苦しい‥)(>_<;。
 
小千谷は若いころ、織をしながら週末だけ勤務していた伝統工芸品センター(現・伝統工芸スクエア)で伝統産地の夏の着物展の時にB反として出されていたものを購入。以前にもブログに書きましたが紺地の近江上布と2反買いました。なけなしのお金で買える範囲の普段着ですが、それでも真夏の着物が欲しかったのです。
糸質は近江上布より張り感があり、しっかりした生地で着心地も良いです。
 
今こうして自作の半幅帯や小川郁子さんの切子の帯留めと共に装うということは想像だにしませんでしたが…。
 
大麻にせよ、苧麻にせよ麻という植物、素材は偉大です!人はこの植物の茎の繊維を晒し、割き、繋ぎ、撚りを掛け、糸にしてきました。
 
もっと日常の服や下着にも麻糸が使われてほしいです。麻のシャツやパンツは出ていますが、下着はほとんどないですね。私はもう穴が開いたグンゼの綿麻の肌着(廃番のもの)をいまだに着ていますし、綿麻の再利用の生地で、手縫いして室内用インナーにしています。これらが一番涼しいです。
 
来年の真夏のオリンピックは狂気の沙汰としか思えません(暑さと、湿気の「お・も・て・な・し」・・・)。
ミストシャワーとやらをお金をかけて設置しているらしいですが、木を植え、木蔭を作り、コンクリートを照り返しの少ない素材に変えたり、今後の温暖化対策も兼ねてお金を使ってほしいです。
また、麻の産地のシャツや下着をこの機会に製造、販売して熱中症予防に役立てたらいいのに・・などと今から無理な話ですが、、思います。(-"-);
 
父も麻の開襟シャツを夏に冷房のない家で、これが一番涼しいと言って着ていたのをよく覚えています。父の晩年、綿麻ですが、小千谷縮のシャツをプレゼントしたこともあります。
 
 
 さて、下の画像は麻のカットワークと刺繍の日傘はもう40~50年前の母のものです。
あまり使われてはなかったのですが、大事に桐のタンスに傘袋に入れて保管されていました。私はこの傘がとても好きでした。今は黄変やシミも若干あるのですが、麻生地の質もよく、着物の時にはよく使います。今は晴雨兼用、UVカットの商品がほとんどですが、このレトロな傘を大事に使いたいと思っています。
 
白い袋は、私が高校生の時に着ていたサッカー地の半袖ブラウスの胸の刺しゅうを生かして保管用の傘袋を母が作ったものです。付属のものもあるのですが、ピッタリすぎて入れにくかったからだと思います。母は手芸の趣味はありませんでしたが、なんでもあるもので工夫し、とことん使っていました。
八月が母の亡くなった月のせいか、お盆のせいか、あれこれ両親のことが思い出されます。
 
かつてそうであったように、夏の着物も楽しめる国土であってほしいし、自然環境、自然の恵みを大切にする人、国であってほしいです。
気を付けていますが、環境問題は個人では限界があります。
何より企業や国ももっと環境問題、エネルギー問題を優先事項にしてほしいです。
 
 
 
 
 
 
 
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「日本の素朴絵」展ー素朴さの中の大いなるもの

2019年08月22日 | 工芸・アート
 
 
お盆休みに三井記念美術館の特別展「日本の素朴絵」を観て来ました。(~9月1日まで.。9月21日~11月17日龍谷大学龍谷ミュージアム) かなり混んでましたが、愉しんできました。

まだ蒸し暑い中ではありますが、8月終盤、温度も湿度も管理された美術館でホッとされるのはいかがでしょうか? 
三井記念美術館は和服、浴衣の方は300円引きの1000円です。また金曜ナイトミュージアムも17時以降1000円です。70歳以上の方も1000円です。その他の割引はホームページでご確認ください。
 
最初の展示室1で「立体に見る素朴1」と題して古墳時代の埴輪から江戸期の陶製の狛犬までが点数は少ないながら素朴美を湛えるものとして展示されていて、その部屋が気に入りました。特に神像、懸仏が私のこころをとらえました。図録から少し紹介します。
 
 
 鏡像 子守若宮明神像(平安時代)
 
 懸仏「水分(みくまり)子守明神像」(平安時代)
銅造の打ち出しによるレリーフです。 女性が右手に扇、左手で子を抱く姿をざっくりと浮き彫りにしているだけのものですが、なんともとぼけた表情ですが、惹き寄せられる空気が実物からは漂います。  

男神・女神坐像(中世~近世) 
木造の神像たち。いろいろな表情に思わず笑ってしまいます。
素朴な手によるものですが、対象の核になるところをつかんでいて、一見真似できそうでそうはいかない、、何か純然たるパワーがあります。
 
三井記念美術館のHPの趣旨文によると
 [本展覧会では、ゆるくとぼけた味わいのある表現で描かれたこのような絵画を「素朴絵(そぼくえ)」と表現します。しかし、西洋絵画の「素朴派」とは異なり、「リアリズムを目指す表現の人為的・技巧主義的なものを超越した」という意味を含んでいます。]
とタイトルの定義づけがされています。
 
しかし、この展示を見ても思いますが、古代のものだからいいとか、作れたとかではなく、対象をよく観ているということが、あのようなゆるそうでいて大いなるもの、核になるものを内包している絵であり彫刻なのだと思うのです。
 
今までもこういったゆるい絵や彫刻も見てきていますが、あらあためて“素朴”を考える機会になりました。

例えば素朴な芭蕉布や丹波布などのような織り物も素直で飾らないものです。しかし、素材をよく見て、よく知り、生かし、シンプルな模様や簡素な色を調和させ、人の心をほっとさせる、和ませる力をもっています。存在感はあるけれど、見る側はゆるむのですね。そういうものを創りたいです。
 
“素朴”という使い慣れた、聞き慣れた言葉ですが、飾り気のない、素直な、無垢な、純朴な、簡素なという意味に実は普遍性をもった懐深い世界があると思います。
 
 
 
 
 
 
 
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梅シロップの実リメイク――梅酢漬け

2019年08月02日 | 紬きもの塾’17~’20


先日紬塾の染織コースの第2回「草木で糸や布を染める」を行いました。
桜と柿を使って、糸や帯揚げ、古い半衿を染めました。家でもできるよう、帯揚げの少しトーンを落としたいものなどの媒染材を使わない染め方も話しました。生木がなくても紅茶などでもできます。

梅雨寒から急な暑さになり、冷房を使わない中で作業ができるか心配されましたが、無事に染めることができました。今年は日照不足のせいか、桜の色も赤みが少なかったように思います。
チップを作りながら、「この作業をいつもなさるんですね。。」とつぶやかれているかたがありましたが、そうなんです!これが草木の生木で染めるときの苦労でもありますが、直に枝にハサミを入れてもらうと、植物がどんな風になっているかなどの観察にもなり、ただ染料で染めるだけの実習とは違うところです。樹皮と芯材とその間は随分色も繊維の状態も違うということをチップづくりの中で気付くと思います。観察がいい染をする上で大切です。

今期から以前受講された方も再受講可能になり、2回目の方がありましたが、染材の煮出し作業なども落ち着いてこなされていました。昨年の様子はこちらから。

さて、話はガラッと変わりますが受講者のお一人が、梅シロップを作った後の青梅の実を赤梅酢に漬けたものをお茶請けにと持ってきてくださいました。汗をかきましたので、夕方みんなでおいしく頂きました。

シロップ漬けですので甘いのですが、梅酢の塩と酸味が合わさって甘じょっぱく少し酸っぱくて、汗をかいた後にピッタリでした。疲労回復効果のクエン酸と塩分、甘み、梅の三味漬けです!

シロップ漬けの梅の実はそのまま食べたり、ジャムにすることが多いようですが、梅干しを漬けたときの梅酢さえあれば、火も使わずこれはとても簡単ですので梅干しを漬けている方、梅シロップも作って来年お試しください。

柔らかな果肉の梅でしたが、ご本人に伺うと、「梅シロップの作り方で、青梅を冷凍してから砂糖に漬けると組織が壊れて早くエキスを抽出することができるのですが、そうすると梅がしわしわになってふっくらしません。昨年の梅シロップは凍らせずに漬けたのでふっくらでした。ですのであのような仕上がりだったのです。」
また、漬け込む期間は「梅酢に漬けたのはひと月程です。ジップロックなどのビニール袋で真空状態にして漬ければ梅酢は少しで済むと思います。」とのことでした。冷蔵庫で保管です。

私は梅ドリンク、梅ゼリー、梅干しも奈良の王隠堂農園のものを生活クラブから購入していますが、この甘じょっぱいタイプの商品はありませんので、作るしかないですね。。(^-^;

もう都心はエアコンなしで暮らせない暑さになってしまいましたが、上手に汗をかくことも大切とよく言われてますね。本来は汗をかくことで体温調節の機能を人間は持っているわけですから。エアコンの普及で汗をかきにくくなっているようです。無理はよくありませんが、でもエアコンに頼りすぎないで、程よく気持ちよく汗をかき、この猛暑を乗り切りたいと思います。そんな時に梅の三味漬け!?や梅干しは最高です!!(^^)/

工房では暑さに馴れたお盆明けから染色に入る予定です。

さて工房は8月9日(金)~18日(日)まで夏季休業となります。オンラインショップのご注文の受付は致しますが、発送作業はお休みとなります。19日以降の発送となりますのでご了承ください。





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