中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第4期紬きもの塾第10回(最終回)

2013年01月24日 | 紬塾 '9~'12


第4期の最終講義は半幅帯の結び方、半衿のつけ方を中心にしました。

半幅帯も布地に合う結び方というのがありますので幾通りかの結びをマスターしておくといいですね。
まずは文庫結びからしましたが、タレの畳み方でかなりアレンジの表情が変わります。
私は一般的な、すのこたたみ(タレ先が中に隠れる)ではなく屏風たたみにしてタレ先が上に出るように結びます。
また長い帯の場合も屏風たたみにすると2枚羽根になりボリュウムが出て、アレンジもできます。

他にも貝の口、矢の字、吉弥、角だし風など7~8種類をやってみました。
また参加者のお一人が当日締められていた角だしアレンジ結びも素敵でしたので教えてもらいました。

初めての方にとっては覚えきれないかもしれませんが、一度やっておけば本を見たり、ネット動画でも見ることができますので服の上からでも伊達締めだけ付けて練習すると良いと思います。
とにかくそんなに大変なものではないことを経験してもらいたいのです。

半幅帯は気に入った布から作るのも良いですが、半幅結びの時こそ上質の手織りの半幅帯をお使いいただきたいと思います。
緩まず締めやすく見た目も貧弱にならないです。

あとは紬塾のテキストとして使っている『きもの』幸田文著の感想や気づきを毎回(6回)一人ずつ発表してもらいましたが、まとめの話もしました。
着物を着ることが当たり前だった時代の、着物や布に対する人々の心持ちが描かれているのですが、着物を着始めてから2回、3回と再読をしていくと発見があり、より深く理解できると思います。
着ることは生きること、生きることは着ること――
今後二度と書かれることのない、着物を着ることの奥深さをお腹の底から知ることのできる名著だと思います。

他にも話の流れで靴下やボロズボンの繕い作品!?をお見せするハメになってしまいました~。
洗濯物を灰汁で洗う昔のやり方に近いすすぎが楽な炭酸塩の洗濯方法についても話ました。

靴下の穴を別のハギレで塞いだり、古毛糸を使ってカラフルにステッチしたりしてます。

また布の汚れに応じた洗濯の仕方もやってみると新たな発見があり楽しいものですよ。
全自動洗濯機は私は好きではありません。

モノと自然環境を大切にして、暮らしそのものも見直していくことが着物文化から学べる大事なことだと思います。

この日は時間いっぱい3時間通しで講義をしました。
そのあとはささやかにワイン&ティーパーティーで、受講しての感想など伺いました。

以下にまだ揃っていませんが、感想を送ってくださった方をご紹介させていただきます。

尚、第5期の紬きもの熟の詳細は2月22日に日程などブログでお知らせします。
開催日は土曜日か日曜日になります。
お申し込み受付は3月中旬を予定しています。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆ ☆ 

思い返そうとすると、毎回が印象に残る授業でした。
実技授業はたとえ短い時間のことでも、体に残っています。
紬糸を紡いだときの感触、皆で染め上げた糸を干した風景、
高織で織ったときの感覚は、今でもつい先日のことのように感じます。
他にも次々とその時各々の様子が浮かびます。

先生や他の受講生の方に、手助けばかりして頂いていた着付けの回では、
何もわからない恥ずかしさの反面、人から学ぶことのできるはじめての機会に、
これから着物を選び、慣れていこうとする気持ちを見守られ、後押しされ、
それを持ち帰ったような思いがあります。
人から教わることによって意味が深まり、
大げさに言えば、人がいることで文化が伝えられ、人と人との関係がなければ、
文化が消えてしまうのかもしれないということも、実感することができました。

先生が着物や自然、社会とまっすぐに向き合い暮らしてきた中からお話してくださった言葉には、
自分の視線や気持ちを、すうっと上に持ち上げられるような感覚になりました。

以前にはもう少し、日々や自然と向き合いながら過ごしていたつもりだったけれど、
続けていられなければ意味がないと思いました。
反省しつつ、これから軌道修正していこう、と心に決めています。

少し不思議だったのは、作家として、作り手としての先生のお話をきいていたとき、
先生の著書をよんだときのことです。

既に立松和平さんの本で、先生のことを少し読ませて頂いていたからかもしれませんが、
感嘆や敬意を抱きつつも、はじめて聞く、知ることばかりではなく、
ひとつひとつ、確かめておさらいするようにお話を聞いていました。

ただ、それは私が頭でばかり、印象でばかり物事に触れてきていたからかもしれません。

今後、紬塾で先生から伺ったお話や言葉たちを、どれくらい鮮明に思い返し、少しでも多く理解したり実感できるかは、
これからどれ程自分が着物や染織と向き合えるかと比例しているように思っています。

課題の本『きもの』にあったように、一生のうちに着る着物や布たちの、どれもを大切に思えるような日々を過ごしていけたなら‥

前向きな気持ちとともに、たくさんの課題をいただきました。
着付けや道具選びから、私の課題は山積みのようですが、頂いた機会や気付きを無駄にしないよう努めます。

一年間、半人前すぎる私にもあたたかくご指導くださり、本当にありがとうございました。
また先生にお会いできる日を楽しみに、時間はかかるかもしれませんが、自分の着物を見つけたいです。 
                                               I.M



着物について学ぶというのは、
糸について、学ぶことであり

着物を大切に着るという、日々受け継がれてきた日本人の生活を知ることである。
と、学んだ一年でした。

そして、実際に着物を着て講義をされる中野先生や
毎回のように着物を着て講義を受けていらっしゃる生徒さん達の
着物への意識の高さに、毎回感銘を受けました。

美しいものに触れると、
心が優しくなるものですね。

ほっこりとする時間を過ごさせていただきました。

ありがとうございました。   K.E



この1年間紬塾を受講させていただいて、
自身の未熟さを痛感するとともに、
先生のものづくりへ注がれる迷いの無い「情熱」に触れることができて、
それは発見でもあり、また課題として受け止め今後に役立ていきたいと思いました。   W.Y


紬塾の講義からいただいたもの。
それは、かつて自然に寄り添いながら生きてきた日本人の暮らし、
布をとことん最後まで使い尽した豊かな文化を見直すことでした。

「お蚕さんが吐きだす糸のゆるやかな波の形を意識して」 染織の講義では、
糸を紡ぎ、染め、布を織るすべての工程で、絹糸本来の波形を生かすことが、
着心地の良さや美しさにつながることを教えていただきました。

草木の一滴、一滴を慈しみながら丁寧に染められる糸は、
同じ樹木でも季節によって色や明るさに違いがあり、
染めの仕事は自然の営みとともにあることを実感しました。

織りの実習では、堅牢性がありしなやかな布を作るために、
紬糸を経糸に使うことをはじめ、打ち込みの力加減、杼の持ち方など
細かな配慮が行われていることを知るとともに、
常に着る人の立場にたった先生のものづくりの姿勢に感銘をうけました。

伊達締め作りや半衿付の講義では、
お裁縫の初歩である「運針」から学びなおすとともに、
縫う前に糸の長さを考えて使うこと、糸を再利用すること、
後始末をしやすいように縫うことや結ぶことをはじめて知りました。

知ってしまえば当たり前のことですが、
こんなちょっとした暮らしの知恵って、本には載っていないことなのです。
着物が日常であった時代は、母から子へ、子から孫へと
当たり前のように受け継がれてきた知恵の積み重ねを
私たちの世代は、受け継ぐことなく消費文化の中に暮らしていることに、改めて気づかされました。

気に入った上質の布を大切にしながら使い切ることによって生まれる
布への慈しみや安らぎの時間、布のもつ力強さと凛とした美しさ。
先生は、ご自身の日々の暮らしや生き方から身を以て語ってくださいました。
それは、私にとって活字からは決して得ることのできない貴重な経験であり、
今の暮らしそのものを見直すきっかけにもなりました。

講義をご一緒した皆様と出会いもかけがえのないものでした。
その機会をあたえていただいたことに感謝するとともに、
皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。 A.J




先生に教えていただいたたくさんのことを心に留めて、

毎日の暮らしや今後の人生の糧にしたいと思います。

着物のこと、糸のこと、染めのこと、織りのこと、紬のこと、

暮らし、自然、着付け、人、文化・・・。

いつか私が織るものも、先生が作る美しい布に少しでも近づけるように

がんばって精進していきたいと思います。

1年間、一緒に受講していただいたみなさまからも

いろいろなことを教えていただきました。

生涯、忘れられない思い出になることと思います。

先生、みなさま、ほんとうにありがとうございました。 N.H



誰しもが日本文化のすばらしさは感じつつ、
被服に関しては着物を着 る習慣をごく一部の人を除き、捨ててしまった日本人。

私もその中の一人で、祖母、母が残したものがあるとはいえ、
日常に着 るには、やはりかなりの力が必要であることを実感しました。

ただ、10回の講義を受け、このままでいいの? 
はては、自分の生き方をもう一度見直してみるという、大きな
課題をいただきました。すぐに答えは出ませんが、
丁寧に生活しよ う!(着物ライフも入ってます)を目標にがんばります!! O.Y







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糸を灰汁で練る

2013年01月16日 | 自然環境・脱原発




昨日、今日とたくさんの糸の精錬をしました。
今日は柿の木で染にも入りました。

うすいピンクが柿を無媒染で2工程染めたものです。

寒中の染は寒くて大変なのですが、糸も人間も身が引き締まる感じです。

よく寒中水泳とかしてるのをテレビで見るとこの寒いのによくやるな~~と感心(なかば呆れて)してますが、気持ちが引き締まるのでしょう。

新春以降の光のせいか「色は黒いが味がある」とうたわれる赤城の節糸も、
灰汁で洗われ色白になってふっくらと輝いてとても美しいです。
 
糸を練るというのは絹糸の周りを覆っているセリシンという膠質の固いものを灰汁、またはアルカリ剤などで煮ながら柔らかくして取り除くのですが、私は主に灰汁を使ってきました。

樫などの木の灰をお湯で溶きその上澄みを漉して使います。

その灰も3.11以降は放射能の影響もあるわけで、出どころのわからないものは使うことはできません。
在庫がなくなり困っていたのですが、ネットで調べ、放射能の影響を受けていない鹿児島県枕崎市の灰を使うようにしました。
灰は濃縮されるので200倍のセシウムの量になるとのことです。

必要な方は検索してみてください。媒染剤としても使いますが、発色も悪くなさそうです。
単なるアルカリ剤とは違うふわっとした命ある発色に染めるには樫やクヌギなどの灰は欠かせないと思います。

日本人は木を燃やしたあとの灰も有効活用して暮らしに活かしてきました。
すべてが循環していた暮らしに戻ることは今となってはできませんが、自然が導いてくれることと向き合い恵みを享受したいです。

自然とともに生きることのなかにしか豊かさを私は見いだせません。
人に大事なのは原子力より原始力です。



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第5回アート鑑賞いろは塾のお知らせ

2013年01月04日 | かたち塾、アート鑑賞いろは塾
新しい年が始まりました!
今年もどうぞよろしくお付き合いのほどお願い申し上げます。

12日(土)にいつもの鶴川の可喜庵でアート塾が開催されます。
テーマは「ものの美について」というものです。
「ものの美」という言い方はあまり聞きなれませんが、今回も鑑賞力を高めるための根源的な話を聴けるのではないか・・と思います。

ブックマーク「モノ・語り」からお申し込みいただけます。
同ブログには「ものの美」について書いた記事もあります。
私の帯の写真が参考例として出ています。(^-^)/

初めての方も歓迎しますので是非ご参加ください。

前回のアート塾は光が心地よい鈴木工務店のモデルハウス、家の展示館和室で「取合せの美」というテーマで行われました。
その感想を可喜庵のスタッフ畑さんが床の間の話を中心にブログに書いてくださってますのでご覧ください。

伝統的な床の間がなかったとしても部屋の片隅に小さな床の間スペースを作り、自分の心を置けるようなモノを探してみることは、愛すべき自分を発見したり自分を磨くチャンスを得ることになるかもしれません。

私は着物で参加しますがどんな取合せにしようか思案中です。
着物を着るということも心の置き場所としての床の間につながることです。
TPOに応じて床の間にモノを取り合わせるように、、、

さて、お正月は朝からお酒が飲めるのが何よりの楽しみですが、帯が短くなっている!?かもしれません。。。心配です~。
あっ!新年ですので屠蘇散入りのお屠蘇用意してお待ちしてま~す。


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