中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第4回 紬塾「伊達締めを縫う」

2023年09月19日 | 紬塾’21~’24
報告が遅くなりましたが、先々週の紬塾では麻(ヘンプ)の伊達締めを縫いました。
通常は9月後半に行いますが、コロナのこともあり、換気の出来る内にと思い、暑い時期ですが、前倒しで行っています。

色々な生地(麻)を試してきましたが、ヘンプ麻の程よい厚みのある生地を探すのに苦労しました。
ヘンプのステテコや肌襦袢より気持ち地厚感があります。



まず、広幅の生地を地の目に添って裁つところからしてもらいましたが、経て糸を抜いて、切りやすいようにしました。


上がりが9cm幅で、2m20cmの長さにしました。印はつけずに布端から7~8mの所を待ち針で留めるだけで運針します。
袋状に縫いひっくり返して最後は矩け縫いで綴じました。

みなさん夏休みの間に運針練習をしてくださったのか、なんとか縫いあげました。

この伊達締めは着物の上に使うものではなく、長襦袢の上に使います。
滑りにくい生地ですのでこの伊達締め1本だけで緩みません。
また、汗もよく吸いますので、汗取りの役目も果たします。
洗濯も炭酸塩や石鹸で手洗い出来ます。皺は霧をかければ、すぐ取れます。

紐1本、伊達締め1本にも素材による違いが有ります。
次回の紬塾でそういった小道具のこともお話しします。


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第3回染織実習「織りの準備」― 糸の糊付け・設計

2023年09月14日 | 紬塾’21~’24
残暑の中、四方の窓を開け放ち、冷房無しで、紬塾の実習の方と小さな布を織るための準備に入りました。


先日染めた緯糸に布糊と生麩を合わせた糊を付けました。
糊付け3年と言われるくらい、天候によっても左右される難しいものです。
付けた後は天井の方へ高く振り上げ、ストンとテーブルに打ちつけ、糸をばらばらにほぐします(画像は以前に私の仕事を撮ったもの)。
絹糸本来のウェーブがもう一度蘇り、それを糊で固めると良い風合いの布が織れます。


織物設計は私からの課題は、一貫して同じです。
自分の糸を使い切り、もう一色の地糸と混ぜながら、自分の糸はどんな形なのか、紬らしい糸味を見てもらいたいのです。

今期の方は私の説明をよく理解して下さり、時間内に方針が立ち、糸量の計算もスムーズでした。
条件は同じなのにみなさんちょっとの組み合わせの違いで、全く違う布が生まれてきます。来月の織りの実習が楽しみです。

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設計の後は、工芸美術評論の笹山央さんのレクチャー「観ることの優位性」を聴いてもらいました。
創るためには見なければならないし、そのことに能動的に向き合うことは大事だと思います。

1.「観照」について
   ・古代ギリシャの思想―――観照(テオレア)、制作(ポイエーシス)、実践(プラクシス)
  ・日本文化の根底は「眺める」
    
2.ヴィジュアル・アートを先導していくのは、「観る」立場の人間

3.「観る」訓練
  ・いいものを数多く見る
  ・考えながら観る(知識は前提にしない。子どもの心で観る)
  ・実践する(自分でも制作してみる。作者の話を聞く)
  ・感じたことを言葉にする(間違っていてもよい)
   
みなさん熱心に聴いてくれて、最後に感じたことを言葉にしてもらいました。

「観たり眺めるのは好きだけれど、考えたり、客観的に言葉にしたりはサボっていたかな・・」という感想もあったのですが、それに対し、笹山さんは「受け身ではなく、積極性をもって観る。そこを工夫して観る。理解するには自分から働きかけていく。」などとアドヴァイスがありました。

和歌にしても「眺める」所から表現は始まるという点を改めて確認した。言葉にすることしていなかった、などの感想もありました。

観て、言葉にする訓練は、鑑賞を深めることにもなるので、私も若いころから、感想を日記に付けたりしてきましたが、今後も感じたこと、考えたことを言葉にすることを続けていきたいと思います。

笹山さんのブログも参考まで。
「アリストテレスーー西洋的“観照”の原点」20.3.27



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