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中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第16期「紬きもの塾」開講しました!

2025年04月22日 | 紬塾’21~’25
第16期「紬きもの塾」がスタートしました。
今期も6名の方と行います。
みなさん熱心な方ばかりで、初回からその “気”をひしひしと感じました。

紬塾は知識を深めるというよりも、自分が観て触れて体感してもらうことを重視しています。
何か気づきや発見があればよいと思います。

自己紹介もしていただきましたが、興味深い話がいろいろあって、時間オーバーになってしまいました。




さて、昨年と同様、初回の私の装いは、修業時代の最後に、宗廣先生から一反分の真綿を頂き、母の為に夜なべでつむいだ太い糸で織った井桁絣の着物。染料は乾材の阿仙と丹殻、藍です。

木綿の紺絣の一番オーソドックスなものは井桁絣か蚊絣と思いますが、その基本技術を修業の最後に確認したかったのです。
基礎は何事においても大事なことだと思います。

着るたびに、しっかり織れていて、それでいて柔らかい着心地のよいものだと感じます。
織りの密度や糸の太さ、糸の性質などと関係します。
もちろん織り方の良しあしもありますが・・。
そういう技術の核心となる部分も含め、次回からお話しします。

帯は十数年前に、帯の花邑さんで頂いた明治期の経節紬地に、冊子文様藍型染帯です。
藍染めがとてもいい藍で気に入ったのですが、摩擦で着物に色移りしました。太鼓を作った時に背中に当たるあたりを先に布で擦って色を少し落としました。なので、着物に色移りすることもほとんどなくなりました。

この着物の解説が時間内で出来ませんでしたが、次回に改めて見てもらいます。
この着物にも、辻が花、バティック、織帯、半巾帯など、色々合わせてきています。
HPの着姿集にも帯回りも含め追加しましたのでご覧ください。


床の間の生け花とも言えない枝の投げ入れは、庭木のリンゴなのですが、1月に剪定して、染色用に使用し、残りをバケツに生けておいたものが、花咲かせていたので、床に生けておきました。取り合わせる植物もなく変ですが、、リンゴの花を見てもらいたく、飾りました。水だけで3か月以上経過しているのに生命力があります。

今期も充実した会になるよう務めますので、参加のみなさまよろしくお願いいたします。



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第16期「紬きもの塾25」受講生募集のお知らせ

2025年03月17日 | 紬塾’21~’25
第16期「紬きもの塾25」の受講生を募集します。
日程、詳細はHPの「紬きもの塾」に公開しました。

申込受付は3/20(木・祝)午前8時から。
定員になり次第締め切ります。
※定員は5名 ※定員に達し締め切りました

参加希望の方は、当ブログ「紬塾」のカテゴリーから、過去の塾の様子をよくお読みいただき、趣旨、内容をご理解の上お申し込みください。

不明な点は遠慮なくお問合せ下さい。

お申込みの際はメールにお名前、郵便番号、ご住所、電話番号を明記してください。
お申込み受付後、一両日中に空き状況や詳細をお知らせします。
一両日中の返信が無い場合は電話でご連絡ください。

毎年、熱心に通ってくださる受講生の方々ですが、
「着物の知識や先入観などは一旦置いてください。無垢な目で素直にものを観察するところから紬塾は始まります。」と、初回にお伝えしています。

これから始めたい方も、着物に慣れている方も、素直なピュアな気持ちで参加して下さる方をお待ちしています。(*^-^*)

トップ画像は昨年度の2回目の糸のワークショップの様子。
ブログに塾の様子の画像を上げる場合、受講生の許可を得て使っています。写さないで欲しい方には配慮しています。




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第15期 紬きもの塾24の受講生のレポート

2025年01月25日 | 紬塾’21~’25
昨年4月にスタートして1月まで、8回の講座を1セットとし、「紬基礎コース」として開催しました。
今期は関西方面から3名、埼玉、東京など、6名の方の参加となりました。

時間は2時間半ですが、内容は盛りだくさんで、全てを吸収することは無理だとは思います。
ただ、何か大事なことを感じ取っていただければそれでいいと思います。

知識も大切ですが、私は感性を目覚めさせることのほうがもっと大事だと思っています。刷り込まれた情報を一度捨てて、無垢な目、こころで臨んでもらいたいと初回にもお伝えしました。
こちらもなるべく五感に働きかけるような、実際に見てもらう、触れてもらう、植物の匂いをかいでもらう、機の音を聴いてもらう、指先を動かしてもらうなどの内容にしています。

私たち日々の暮らしの中、ものを作ることも、文字を書くことも、歩くことも、自然に触れることも少なくなり、ネットや、SNSの自分の好みの情報、あるいは行動データに基づいたアルゴリズムに導かれ、多数へ流れ、流される。
ものを浪費し、使い捨て、目の前のゴミが無くなればきれいになったと勘違いし、考えたり、工夫したり、汗をかくこと、苦労したりすることもない。
簡単、便利、安いが人を幸せにするのでしょうか?

そんな中、手仕事だの、草木染だの、紬の着物だのと、優雅なこと(!?)を学びに来る人はよほど恵まれた人たちと思われてしまいそうですが、紬塾の内容は紬織の知識だけではなく、私たちはどう生きればいいのか―、着物とどう向き合へばよいのか―、というところまで辿りつきたいと、それを学ぶ講座です。
それは紬の着物を始め、善く着ること、着ると言うことは何か、までつながることです。

初回に、最後に学びのレポート提出をお願いしておりました。
文字数など制約を設けず、自由に書いていただきました。
長文が多いですが、自分で感じたことを自分で考え、自分の言葉で綴って下さっています。
表現はそれぞれ違いますが、講座の熱気、真剣さが伝わってくる内容だと思います。紬塾のエッセンスだけでも共有していただければ幸いです。
25年度も前向きに検討中です。
インスタグラム、当ブログでお知らせします。

以下、6名の方のレポートです。
お時間あります時に最後まで、じっくりお読みいただきたいです。
*******************

紬のこと、着物のことだけでなく、日々の暮らしの中での大切なことをたくさん学ばせていただきました。それは昔から日本人が大切にしてきた物事、生活の知恵、自然や環境を守ることなど多岐にわたり、その根幹にはそれらを作り出し大切に受け継がれてきた日本人の心があること。私たちはそれを大切にして未来に繋げていくために、今の自分の便利さを基準にせずに何が大切かを考え選び取っていく知恵と力を身につけることが大切であることを強く感じました。

『糸、色、織』では、繭から紡いだ糸を見せていただき、糸を取る体験させていただきました。繭から引く一本の糸の儚い細さ。けれど糸を引くときに感じる繭の重さは、蚕が命をかけて吐き出した貴重な糸であることを実感させてくれましたし、貴重な真綿と長年積み重ねられた人の技で紡がれ織られる着物の価値について改めて実感しました。

『とことん着つくす』は、先生が大切に使っていらっしゃる布を見せていただき、物を大切に使うための様々な工夫を知りました。運針で直線に縫われた古い布が生活の中で大切に引き継がれ使い込まれて力強く生き続けていることと、子どもが好きな服や柄を生活の中で使える形で残したお母様の愛情も大切に伝わっている素晴らしさにも感動しました。

『帯揚げを染める』
草木染めを初めて体験。工程は意外と簡単で楽しく、自宅の庭の木や葉を使って自分でもやってみたいと思いました。けれど作品作りとなると、色や濃さなどを素材に合わせて調整し思う通りに染め上げることは、とても神経を使う繊細な作業であり、作品として世に出せるまでに先生が重ねたご苦労を考えると、先生が作られた着物それぞれがどんなに貴重な一枚かを改めて考える貴重な体験になりました。

『運針で何かを縫う』
正しい運針を身に着けることが大切であることを教えていただきました。糸の使い方や縫う姿勢にも、日本の手仕事の知恵からくる美しさや無駄なく物を大切にする心が生きていることを学びました。

『日本の取り合わせ』
これはもう目から鱗。今までなんとなく同系色を合わせて安心していた私は、第7回以後、小物合わせが難しく頭を抱えてしまっていますが、それがまた楽しい! 自分のコーディネートに自信が持てないのですが、先生のブログや本も参考にセンスを磨いていきたいと思います。

『自然で楽な着方とは』
自然で楽な着付けについてのお話も聞くことができたこと、着物や帯の寸法や半幅帯の結び方のお話もありがたかったです。毎回、先生の素敵な着姿を拝見させていただけるのもうれしい時間でした。

手つむぎの糸を使い、染液を作り、染め、織りあげる。それを一人でされて作品を作られる先生の、紬に対する愛情を感じた9か月間でした。
作り手の人となりや、作品にかける思いも知って、良いものを見極められる目を持ちたいと思いました。
先生をはじめ、皆様にも心から感謝申し上げます。 (Y)

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茶道をきっかけに着物を着始めて、12年になります。きれいなかたちに着たいとがんばって着付けてきましたが、外側だけ整える着物との付き合い方に物足りなさを感じていました。仕事で疲れて心に余裕がないときほど「着物が着たい!」という叫びが体から響いてきて、もっと自分に根ざした着物との付き合い方を模索したくて、紬塾に申し込みました。

特に楽しかったのは、着物の更生の回です。先生のお父様の絣の泥大島が、先生の雨ゴートに変身した姿がとても新鮮でした。着物の更生とは、かたちを変えることで着物が前よりいっそうかがやくこと! と気づきました。
 
繭や植物、本当に上質な織物にふれたのも貴重なことでした。夜空に向かって深呼吸するような、見せていただいたお母様の古い弓浜絣の反物、深い藍色。また、桜で染めた先生の単衣紬の血のかよったピンクのうつくしさ。
着物は、体とたましいが帰る所、やすらぐ所と思いました。

「着物の寿命は自分の寿命より長い」という先生の言葉も大事な事実を含んでいます。いろいろなデザインの着物や反物に目移りしそうになっても、同じ着物をいつまでも飽きずに、心地よく着つづけることが本当の豊かさです。長く私の人生により添い、こなれるほど肌触りがよくなって、さいごは他のだれかに手渡したくなるような一着をもつ方が、ずっとぜいたくで幸せな着物との付き合い方だと思います。それは自分や着物と対話し、それらを知りつづける過程でもあります。

幸田文著「きもの」も、先生や他の受講者の気づきの話から、たくさん考えるヒントをもらい、良い織物を見て、みずみずしい植物からどんな色が出るかの冒険があって、そしてさいごの打ち上げは美味しくて! 
本当に良い機会をありがとうございました。 (S)

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綿から糸を紡いで草木染をし、機織りした布を着尺に仕立てるということを学んでいた頃に、先生の紬織りのインスタグラムに出会いました。様々な色合いの着尺や帯に心惹かれ拝見している中で、紬塾のことを知り滑り込みセーフで塾生になりました。

昔の生活では誰もがしていた手仕事。確かに非効率的だけど、素材から携わり一つ一つの工程をへて布や着物になる。時間はかかるけれどもとても心豊かなひとときで、手間暇かけるというのは贅沢な宝もののような時間。

その大事な布を、形を変えてでも最後まで使い切る、無駄にしない。生活全般において言えること。
紬塾で書ききれない大切なことを沢山教えて頂きました。なんでも工夫して少しずつでも生活に取り入れたいです。
先生、皆様とても楽しい時間をありがとうございました。 (D)

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一つ一つの講座が本当に充実していて、時間が経つのがあっという間でした。加えて、夏休みを過ぎた当たりから、その一つ一つが一本の線で結ばれて着物を着ることに向かって行くような感覚を実感し、どんどん楽しくなって張り切って出席しました。

①東洋的と西洋的
私は、第一回の自己紹介の時に、「決心しないとなんとなく着物を着て出掛けられない」、ということを話しました。この講座に参加するうちに、それは、もしかしたら洋服を着る心で和服を着ようとしていたからではないか、と思うようになりました。先生のお言葉の中に、キーワードがありました。再生、ありあわせ、着崩れることを恐れずに楽に着る、野暮と粋の取り合わせの違い、季節感、自然の色、植物の色など…。先生は俳句もされるそうで、そういう日本の伝統文化を通して、そのキーワードのことを学んでいきたいと切に思います。

②副読本「きもの」幸田文著
本を購入したのは、随分前ですが、小説としての読み方しかしておらず、どうやって読むのか不安でしたが、毎回、一人ずつ順番で読んで感想を言う中、先生がご指摘してくださることを頼りに、なんとなく着物を着ることの教則本のような読み方が出来るようになりました。色々なヒントが詰まった本だ、と改めて感じました。
るつ子にとってのおばあさんのような人が、私にも身近にいたら良いのに、と思いました。
衣替えのことが書いてある箇所があり、それはその家の主婦の家政技術を示すとのことで、「衣」がとても重要な時代だったと感じました。この本の時代設定は関東大震災前後なので今から100年位前、運針で家庭の女が着物を縫っていたことが、もう、日本昔話のようです。何だか、この100年の間に、大切な手仕事、手技を忘れて失ってしまったのだと悲しい気持ちになりました。

③運針
今回、受講するに当たり、運針は絶対にできるようになりたいことでした(過去に何度も挫折しているので)。実際に教えていただき、家でも動画を見ながら練習して、また針の長さを短いものに変えて、何とか型のようなものが出来るようになりました。とても嬉しいです。これからも、忘れないように日課にします。
私は運針というと、衿つけとか和裁に関係するものを縫うと思い込んでいましたが、先生が「布巾でも袋でも、なんでも縫えば良いのよ。」と言われて、目から鱗でした。それから、先生が、昔の着物は解くことを前提に縫われているとおっしゃって、それも縫い直してモノをトコトン使うことの表れだなと感じました。
 私も、色々工夫して作り替えて、ものを大切にしたいです。 (Mk)

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偶然(きっと必然)辿り着いた紬塾のブログ。その中で目にした先生のお着物の画像に、なんて素敵なんだろう、、、と心を奪われ「中野先生のお話が聴きたい!」と思い立ったのが紬塾参加のきっかけでした。

関西からいざ上京。
初めて先生の紬に袖を通した時の高揚した気持ちが思い出されます。初回の緊張感も吹っ飛んで舞い上がるような気持ちを皆さんと共有した瞬間だったように思います。着物を自然光で見るということ、光や角度でも色が違って見えることをこの時に教わりました。

草木染めでは、お庭で蚊と格闘しながら皆でチップを作ったり、キッチンで染液を煮だしたり、全ての工程が新鮮で楽しい経験でした。

取り合わせのワークショップでは、(帯揚げや帯締めの)微妙な色の違いでこんなにも雰囲気が変わるものかと、取り合わせの妙に驚いたり感心したり。そして素晴らしい紬のお着物や帯を前にうっとり、ため息の連続でした。

私が紬塾の中で特に印象深かったのは意外にも「着物の更生・運針」の回でした。「意外にも」と言うのは、私は取り合わせやワークショップの回をとても楽しみにしていたからです。
更生の回に見せていただいた写真集「襤褸の美」(額田晃作)は圧巻でした。ボロと美、貧しさと豊かさ、一針一針に込められただろう想いに感性が揺さぶられました。運針の回では、先生のお母様がてんとう虫のワンポイントを活かして作られた傘袋がとてもチャーミングでその後の創作意欲が刺激されました。
自分で縫った、端切れを利用した花瓶敷は不揃いながらも赤い糸の縫い目が気に入っています。
ものを大切に使い切ることは、買わずに我慢するといったマイナスの行為ではなく、とてもクリエイティブなことだと感じることが出来ました。

今回、紬塾を通じて着物文化や紬の奥深い美しさの「入り口」に立つことが出来ました。同時に創意工夫して日々の暮らしを楽しむこと、先人の知恵を受け継ぎ、人や物や自然を慈しむこと、といった大切な気づきを得て、着物を着ること、日本文化や手仕事文化に触れることがますます楽しみになっています。これからは鈍った五感をフル稼働させて毎日を豊かに過ごしたいと思います。
中野先生、素晴らしい学びの時間をありがとうございました。 (K)

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<受講の目的>
きもの雑誌に5年籍を置き、逸品に触れ基本的な染織知識も得られましたが、そこから自分の目指す「きも
ののおばあさん」になるまでに、見えない壁を感じました。
取材でお目にかかって、密かにあこがれた中野先生にヒントをいただければと、「今年で最後(かも)」と
いう言葉が一押しとなりました。

<各講義の感想>
■第1回 オリエンテーション
週末の楽しみとして比較的軽い気持ちで参加したため、先生の厳粛な雰囲気、受講生の生真面目な態度に緊張してしまいました。これは〝本気のやつ〟だと遅ればせながら気づいた次第。
■第2回 糸、色、織について
早くも欠席を申し出て皆様にご迷惑をお掛けしました。この頃は「全編通じてひとつの体系に触れられる」講座の特性が理解できておりませんでした。無事参加でき、ひとつの繭から皆がお土産の糸をいただき、ありがたみを感じました。いまも出窓にいるカバの置物にリボンとして飾っています。あのか細い糸が代々人間を守ってきたとは神秘的ですし、あのか細い糸から衣類を作りだした人間も驚異的です。
■第3回 とことん着尽くす
長年衣類が好きで、だからこそ和洋問わず次々と欲しいものが現れ、欲望に従い入れ替えてきましたが、その習慣を見直すことになりました。1度手に入れた布は最後まで生かし続ける責任がある。襤褸の迫力からそんな戒めを受け止めました。
■第4回 半衿、帯揚げを染める
わいわいと楽しかった思い出。意のままにならない植物染料を前に、慣れない生徒を抱え、手慣れた先生も焦り気味でいらしたのが面白かったです。半面、何度経験していても一回ごと真剣な先生のすごさもちゃんと感じました。
■第5回 運針で何かを縫う
第3回に続き、日々の生活へ戒めを感じた回です。「布目を通す」概念を初めて知りました。縫う前に真っ直ぐ整える姿勢が、思いのまま裁断する洋裁と対照的に感じます。
裁縫は下手でも嫌いではないので、よい暇つぶしとなり無事職場の先輩への贈り物が完成しました。
■第6回 日本の取り合せ
取り合せの前提として季節やシーンを明確にする教えに、きものは自己主張より調和のために着るとよいと感じました。
日頃「場に馴染むように」「同席の方に揃えて」という教えには共感しませんが、もっと広く「景色、自然、地球の一部である自分」を意識すると素敵だなあと。
■第7回 自然で楽な着方
紐を使わないお太鼓結びの方法にびっくり。現場では締められましたがそれ以降はうまくいきません。
しかし、補整具やプラスチックの衿芯やコーリンベルトなど、何となく違和感をもっていた道具を先生はやはりお使いにならず心強く感じました。
■第8回 上質の半幅帯を愉しむ・仕立について
半幅帯をキュッと結んで出る着慣れた感じに憧れますが、何度習っても、覚えられないのです。
そんなことより最終回は、打ち上げでの情感豊かな歌声とほろ酔いの会話が心に残りました。
<全体>
仕事上どうしても「新たにきものを買うこと」に興味が向いていましたが、それよりも「いまある布と向き合う姿勢」「きものが寿命を全うするまで共に生きる覚悟」が大切と感じました。
きものを着ることは、布の来た道を知り、着た後(自分が死んだ後まで)の処置を考える、そういう地味な責任を果たすことと一体なのだと思います。
しかし性懲りもなく、先生の美しい作品がやっぱり欲しい私です。 (My)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・THE END


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第8回 紬塾「上質の半幅帯を愉しむ・仕立について」(最終回)

2025年01月22日 | 紬塾’21~’25
紬きもの塾24も、最終回を迎えました。

内容は、前回の名古屋帯の続きで、寸法のことなどを詳しくやりました。
ポイント柄の場合の位置の確認や、体形によっては寸法を加減することなど。
柄がうまく出ないと思っている帯も、結び方で改善されることもあります。

半巾帯の結び方は動画が沢山ありますし、私は着付けの先生ではないので割愛しようと思っていましたが、意外と、普段はお太鼓ばかりで、みなさんからの切なるリクエストもあり、数種類実際にやってみました。
6人のお世話は大変でした。。^_^;

結び方はたくさんありますが、帯の生地の固さや、柄によって、着こなしによって選ぶと良いと思います。
生地感と結び方がちぐはぐにならないように・・。

お太鼓結びと違って、慣れるまで、手先の長さをどれくらいとればよいか、長すぎる、あるいは短すぎる帯の場合はどうすればよいのかなど、扱いが難しい点があります。時間をかけて研究するしかありません。
機械織の固い織りのものは結びにくいので、半巾帯には避けた方がいいです。
最初は2種類くらい決めて、慣れていくのが良いと思います。
半巾帯は簡単ではなく、むしろその人の布に対する見識など、技量が問われます。上質な生地を選びましょう。まずはそこからです!

洋服の上から練習する場合でも、長襦袢だけは着てやるか、伊達締めだけでも結んで、後ろへ回すときの滑りをよくしておくことが大事です。

トップの画像、この半巾帯はとても締めやすく、どれだけ使っているかわかりません。
いつも使うたびに新しさを感じるのはなぜでしょう・・。
仕立ててくださった方は亡くなられたのですが、芯の具合もとても良いのです。芯を入れて仕立てる場合は、仕立ての方の感覚も問われます。

そして、最終回は、副読本とした、幸田文著「きもの」の感想の締めとして、私からは、るつ子の母親が亡くなって、形見分けの話が出てきますが、この箇所を紹介しました。ここもとても大切な、多くのことを内包したところです。
着物を着ることは、次の代へバトンを繋ぐこと。そう思って着物を選び、着ていく。そして、何を遺せるかだと思います。

また、各回のまとめもしましたが、
1.布を見る力つける
2.自然な色をまとう
3.日本の取合せ文化
4.自分らしい自然な着姿
5.とことん着る
6.着物文化後進に繋ぐ
7.手仕事を大事にする
8.プロの仕事を尊重する
9.自然を大切にする
等をおさらいしました。

さて、次期紬塾に関しましては3月初旬にははっきりさせますので、しばらくお待ちください。

次回のブログで受講者6名の感想をアップします。





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第7回 紬きもの塾「自然で楽な着方」― 半衿の付け方・着物の仕立寸法

2024年12月13日 | 紬塾’21~’25
楽で時間のかからない着物の着方や、着物の寸法、また、下着類の素材についてもお話ししました。
私は、着付け教室は行ったことはありませんが、1回だけ公的機関での、無料の講習を受けたことがあります。
その方のやり方は、長襦袢に伊達締め1本、着物のおはしょりに腰紐1本、着物の合わせを抑えるための胸紐か伊達締め1本。補正タオルも使いません。帯も仮紐もクリップも使わないで締めます。

そのシンプルな着方は、紬塾で今まで見ている限りでも、着付けのできる方でも目からウロコのようでした。ポイントさえつかめばあとは自分で徐々に上手く着られるようになると思います。

あと早く着るために大事なのは、自分の着物サイズかどうかという事、また、滑りにくい紬や木綿と平絹のような滑りやすい生地、普段着とフォーマルなどでも違ってくると思います。
自分で着易さを探求することだと思います。


紬塾でも当日着ていらした着姿を拝見して、裄や身幅、身丈の確認を一人一人いたしました。


いつもそうですが、裄が長く、身幅も広い方が多いように思います。
裄丈を、洋服の袖丈を測るようにしていることがそもそも間違いだと思います。

この日着ていた藍の着物は太っていた時のサイズで、今度洗い張りの時には身巾を少し直したいと思っています。

衿芯に半衿を先に付けてから襦袢に取り付ける、自然な衿の形を作る方法もお話しました。差し込み式が多い昨近ですが、衿のカーブが不自然で、なぜこんな変なことになってしまったのでしょう・・?
私は三河芯の角っとしたのがいいと思います。

着物は絶対的な寸法もない代わりに、着方や年齢や体形や人となりなど、洋服以上に着姿に現れますね。奥が深いです。

次回1月の最終回は、半巾帯のことや、名古屋帯の寸法のことをやって、締めくくりになります。


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第6回 紬塾「日本の取り合せ」― 帯や小物の取り合せのコツ

2024年11月11日 | 紬塾’21~’25
紬塾、前半は素材のことや着物文化の普遍性などについて学び、後半3回で実際に「着る」ということについて学びます。
何もわからずにいきなり着方だけ学ぶのではなく、糸や色、織、布をとことん使う事などの上に成り立つ「着る」なのです。

さあ、何をどう合わせればよいのでしょう?
私のルールはこれだけは避けたい、という1点だけです。
基本自由な取り合わせが紬(洒落着)というものです。
自由というのは楽しいけれど、決まりごとがなさ過ぎて困ってしまうと思う方もあるかもしれません。
T.P.O.を守り、異なる色や素材を合わせればいいのです。
季節や時間帯、着ていく場所、場面(場合)を考慮するということです。

みなさんに紬と帯と小物の取り合わせを2パターン考えてもらうワークショップをしましたが、今期のみなさん素晴らしかったです!ブログで予習してきたのかな?というぐらい。
昨今よく見かける”お揃い”の合わせ方のような野暮な人はいませんでした。

日本の取り合わせは、着物はもちろん、庭園にしても、和食文化にしても素材や形、色、味覚、の違うものを合わせて一つの世界を作るセンスなのです。
Oneトーンにするなら、それぞれが吟味された特別な何かでなければ単調なだけです。
着物から一色とった帯締めとか野暮の極みです。

さて、話は変わりますが、今年の夏に、以前お世話になった板橋の瑞玉ギャラリー、オーナーが90歳で亡くなられ、お仏壇にお参りさせてもらいました。

いつも伺うと温かく迎えてくださり、手仕事を愛する方でした。
車椅子になっても店に出ていらしたそうで、息子さんが後を継いでらっしゃいますが、「とても寂しい」とおっしゃられていました。

そして、20数年前、私の紬の縞帯を結城紬に合わせたいとお求めいただいたりもしました。沢山の作り手、使い手を支えてきた方だと思います。 
ご冥福を心よりお祈りいたします。 合掌

トップ画像は、弔意を表したく、紬にシックな陶画更紗の帯、紫の帯揚げ、灰白に滅紫ぼかしの帯締めで伺いました。襦袢もグレージュにしました。

帯締め一つで悲しみも表せる着物の取り合わせ、奥が深いです。
着姿詳細はこちら


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第5回紬塾「運針で何かを縫う」

2024年10月11日 | 紬塾’21~’25

現代社会においては「運針」のできる方もわずかになりました。
その運針を身につけ、家にある古布から何かを縫っていただくという課題を出しました。

古い服も着物も、古布というものが家にない方がほとんどで、かなり悩まれたように思います。
どう見てもこの回は乗り気ではなかったと思います。。(-“-)

こちらで新しい布を用意して、麻の伊達締めを縫うほうが私も楽と言えば楽なのですが、今回はじっと我慢で各自に考え抜いてもらいました。

結果、いただきものの手ぬぐい2本を接ぎ合わせ、バッグ用の保管袋を縫う人、晒の布巾の端を三つ折りにして縫う人、草木染の小さな麻生地で花瓶敷のようなものを縫う人、七五三で使った「しごき」を使って腰紐を縫う方、ショートパンツの形を生かして袋物にリメイクする方、家にあった麻生地を丈を接いで伊達締めを縫う方、様々でした。

運針も完璧ではないものの、なんとか形になったと思います。  
でも終わって感想を聞くとみなさん工夫することや、運針の楽しみも発見してくれたようで、家でまたやりたいとおっしゃる方もあり、やってよかったです。

大きな裂から何かを縫うという発想だけではなく、接ぐことの良さを知ってもらいたいのです。
同じ布が足りなければ、異なる布を接ぎ合わせれば、そこから「取り合わせ」、というものが始まります。「継ぎの美」です。

買えばいくらでも良いものがある時代ですが、自分で手縫いしたものを身近で使うのはこころも安らぎ良いものです。
今まで紬塾の方々を見てきて、かなり頭が固くなっているように思いました。
創意工夫は着物を着るうえでも、とても大事なのではないでしょうか?

布の思い出というものがあります。赤ちゃんのおしめに始まり、布なしに人は生きられません。たくさんの布を纏ってきました。
布への関心、布を大切にすることを深めたいですね。
紬塾の「とことん着る」と、この「運針で…」の回はセットなのです。

そして、運針の針目は不思議に魅力のあるものです。
今後も続けてもらえたら嬉しいです。

この日の私の着姿は、崩し縞の単衣紬(初期の作品)に壺の文様のジャワ更紗、鉄納戸色の帯締めを合わせました。

更紗は、ずっと以前に更紗の展示会で生地を見つけたのですが、接ぎ合わせ、足し布をしても、長さ9尺2寸しか取れませんでした。


でもこんな結びならできました。



受講生からお庭の秋草をいただきました。
塾終了後に、サクッと床の間に活けました。


イトススキ、シラハギ、ミズヒキソウ、フジバカマ・・。
花器は升たか作です。


小さな草花は棚の上にも飾りました。

写真がピンボケですが…、野草は大好きです!
お庭に草花が沢山あっていいですね、うれしい贈り物でした。

次回は11月の「日本の取り合わせ」です。


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紬塾 第4回 「帯揚げを染める」―草木の色とは

2024年07月25日 | 紬塾’21~’25
今まで帯揚げの染は、染織実習コースの方達だけにしていたのですが、来年度に染織実習コースが出来るか不透明ですので、今期の基礎コースの方達には特別に、染色の回を増設しました。

まだ梅雨の明けきらないどんよりとした日の染色実習となりました。
本来は晴れの日にしたいところですが、遠方の方が3名いらして、早目のチケット予約の都合もあり、それでも工夫をすればなんとかやれると判断し決行しました。

草木染は天日に干し、早く乾燥させたいので、ただ室内で乾けばいいというものではなく、色を見極める際の光も欲しいので、曇りの中ではその判断が難しいのです。
染めるということは染液に浸け、加熱し、色を付けるだけの行為ではありません。

染めるということは、植物の採集時期や、チップの作り方、煮出し方、染液を直ぐ染めたほうが良いもの、時間を置くほうが良いもの等の違い、また糸や布の湯通しや洗い、加熱を止め、温度が下がっていく時間も、天日に干すこと、空気酸化による変化の時間なども含まれます。

生木による草木染は本当はとても難しいものです。45年以上続けても難しいです。
しかし、一般の方にも身近な自然物にこんな不思議な生き生きとした深い色の世界があるのだということを、ほんの一端でも知ってもらいたく続けてきました。

色名では語れない、自然な生きた色。色とは何なのでしょう?

以前、武蔵野美術大学工芸工業科テキスタイルデザインの学生たちに桜染の糸を見せたら、みんなとても感動してくれて、ある学生は見たことのない色と言っていました。
講義の後の感想に、「草木染めの色の話がとても興味深かったです。普段、パソコンや染料や絵の具をまぜて色を作っているけど、植物に宿っている無限の色を引き出すという草木染めの感覚はそのどれとも違っていて、本当におもしろいと思いました。日本の四季をこれまで以上に感じ、色の感覚を大事にしていきたいと思いました。」と綴ってくれました。

パソコンでも自由に色は作れるけれど、そんなことではない、根本的な質の違いがあるのです。
私達は自然物のありのままの色にもう少し目を向けてもいいのではないでしょうか?
あんな色、こんな色が欲しいとかではなく、まずはどんな色になるのだろう・・という気持ちが染色では大切です。

今まで参加のみなさんは柔らかな頭で、素直に染め上がる色を見詰めてくれたように思います。

今週末には、別グループで糸染めを含め、染の実習をやります。(;^_^A💦


媒染や、干している間の時間を使って、自宅で半衿や、無媒染でも染められる草木染のことなどレクチャーをしました。

今までの方でも自宅でも帯揚げや半衿を染めてみたという方もありました。
毒性のない、食用にもなる植物でしたら、キッチンのステンレスボールなどで染めることもできます。染色は料理の感覚が大切です。
工房の庭には食べられる実のなる植物が沢山あります。
※媒染剤をキッチンで使う場合は取り扱いに十分注意が必要です。染色の基礎を学んでからにして下さい。

上の画像の竿に掛けている薄いピンクの柿の染は、曇り空でしたので少しでも早く乾かすためにエアコンの送風と扇風機を当てています。あらかた乾くのを待ち、2回目の染に入りました。



こちらは桜で、3枚ともアルミ媒染のものです。
1回目の染めでは、1煎目だけを使い、2回目の染めで少し赤味の多い2煎目を足しましたので、オレンジ系になりました。湿度高く、乾ききりませんでしたので、家で各自、干してもらうことにしました。

私は薄い色の帯揚でも2工程、3工程と何日もかけ染め重ねるのですが、半日の講座ではそれはかないません。ただ、もし褪色などがあれば、その時また染め重ねることもできます。生地は丹後の上等のものですので、長く使ってほしいと思います。

内容などは過去の紬塾、染織実習のブログもご覧下さい。
2023.7月 2018.07月


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真綿から糸をつむぐ

2024年07月02日 | 紬塾’21~’25
染織実習コースの方に、真綿から糸をつむぐことをしてもらいました。
つむぎ方も幾通りかありますが、久米島式のつむぎ台を使っています。

真綿4g(一反分の緯糸の約1/100の量)から着尺より太い糸をつむいでもらいました。
久米島式は真綿が平らに開いていますので、太い糸もつむげます。
また、糸を切るということもほとんどなく引き出せます。
結城の工芸士さんにも糸つむぎを習ったことがありますが、結城の方式では糸を引き出すのに張力が掛かるので、特に経糸に向いていると思います。

安定した太い糸をつむぐことは初心者にはとても難しいのです。
太かったり、急に細くなってしまったりはしましたが、みなさん1.5~2時間でつむぎ終えました。


今期の方の中に、養蚕から真綿を作るところまでしている方があり、その方は別途個人指導の時間を取り、一人でもつむいでいけるよう、ご自分の真綿(上の画像の)でも4gほどつむいでもらいました。


この時は着尺用の太さでつむいでもらいました。
光沢のあるとても強い真綿で経糸もつむげそうです。



単純な道具を使うので、その人の感覚がよく出ます。
糸つむぎを見ると大体の力量や性質が分かると宗廣先生も仰られていました。
本当によくわかります。^_^

ただ細いだけではない、身体のリズムと真綿と一体になっておおらかな糸をつむぎたいものです。
織っていて、惚れ惚れするような糸のかたち、表情、景色に出会うと嬉しくなります。


私は、もうつむがなくても染めた糸がたくさんありますので、ここ15年程はまとまった糸つむぎはしていません。それでも手本を示しながら糸をつむげば、こころは落ち着きます。
糸つむぎのような微調整の仕事は得意な方です。(^^)/

以前のブログにも書きましたが、
ただ、大事なことは、「麻にせよ、木綿にせよ、紬にせよ、布を織ることや、糸つむぎは、今の時代は趣味的なことのように捉えられがちですが、機械的なものが出てくる以前は、生きるためのとても厳しい、時間のかかる過酷な仕事でした。」
そして、主に女性たちがその過酷な仕事を担わされてきた歴史もあり、低賃金で糸はつむがれてきたのです。
着心地の良い真綿紬の価値がもう少し真に評価され、末端の人も報われて欲しいです。そうしないと、技術も紬も未来へ繋がらないからです。
もう紬をわかる人がこの業界でも少ないのではないでしょうか?


紬塾で「糸つむぎ」をやるのは、紬の着物を着る方にも手つむぎ糸を引くことの難しさ、大変さを身体を通して知ってもらいたいからです。
文化は市民一人ひとりが育てていくものですから。

過去のブログもご参照ください。
2018.6.252019.6.072023.6.16 など。



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紬塾 第3回「とことん着尽くす」― 着物の更生・運針

2024年06月22日 | 紬塾’21~’25
紬塾では、環境や、エコの問題を話題にします。みなさんからも日々エコのことで工夫していることを伺ったりするのですが、紬とエコが繋がらない方もあるかもしれません。
紬のことや着物のことを学びに来たのに・・。

紬の前身は“絁(あしぎぬ)”と呼ばれる絹織物と言われています。
節のある織物で武士や僧侶などが着ました。
平安時代の法令集「延喜式」の中にも“絁”が出てきます。
学生時代に平安時代の衣の文化についての課題があって、調べた時に「絁」の文字を覚えています。

諸説あるのでここには書きませんが、いずれにしても、所謂生糸の平絹織物ではなく、繭を一度に沢山引き出す節糸や、出殻繭から直接引き出すずりだし糸や、繭を真綿にして引き出す真綿紬糸など、節は出るけれども無駄なく使い、織られたものです。
堅牢な織物として、その風合いや、野趣味、柔らかさも人々に愛され、今日では紬として続いているのです。
そこにはひと手間も、ふた手間もかけた創意工夫があって出来るものなのです。

また、着物の和裁の知恵というものも凄いものがあります。
昔は解くことを前提に縫われていて、ミシンのようなきつい縫い目ではなく、玉止めを取ればすうっと糸が抜けるようにできています。
衿肩明きだけ鋏が入っていますが、前身ごろと後身ごろを逆に使うこともできるのです。
この日着ていたこの紬も前後を入れ替えて仕立てかえてあります。
前身ごろに大きなシミをつくってしまい、表裏を返し、更に前後も入れ替え帯でカバーできるようになったのです。(^^ゞ

堅牢に織られた紬は3代に渡って着ることもできると言われていますので、これこそとことん使う究極のエコではないでしょうか?



襤褸(ぼろ)の写真集、「襤褸の美」(額田晃作)をいつもお見せするのですが、凄まじいものがあります。
何十枚もの継ぎ当てのある布団側や野良着。
しかしある種の美も湛えているのです。
日頃の自分のエコ意識などの生ぬるさを突きつけられるような思いになります。


私の母も着物地や子供たちの学生服のズボンやスカートで普段使いの座布団側を沢山縫っていました。
上の画像で私が手に持っているのは、扇風機を保管する時のカバーを古い母の夏のスカート(母が自分で縫ったギャザースカート)から作ってありました。

他にも沢山リメイク品があるのですが、運針だけで縫っているものがほとんどです。
子供の頃の銘仙の着物で縫った風呂敷も沢山あります。
今のようにビニール袋や衣装ケースのない時代、衣服を風呂敷で包んで茶箱に保管していました。


上の画像は、銀行の粗品の手拭いで、子供たちが飯盒炊爨の時に持って行くお米を入れる袋も作っていて、お見せしました。

母は自分用に、自家用に作っただけで、まさか娘が他人に見せるとは思ってもなかったでしょう。苦笑いしているでしょう。(#^^#)

秋にはみなさんにも何かあるもので創意工夫して縫ってもらうべく、夏休みには運針練習をしてもらうことになっています。
布を見詰める良い機会になればよいと思います。

エコ意識はクリエイティブな世界に繋がっています。
安いものをたくさん買って捨て続けるのではなく、気に入ったものを大切に修繕しながら使うことは、ものへの愛情も深まり、自分の気持ちも安定します。創意工夫は脳の活性化にもつながります。



五本指のお気に入りのソックスは二度三度とアップリケ状に継ぎを当てて履いています。
靴下の継ぎ当ても楽しいですよ!








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第2回 紬塾「糸、色、織」― 紬織りの糸・草木の染色・織の映像を交えて

2024年05月15日 | 紬塾’21~’25
いつものように第2回の紬塾は「糸、色、織について」の内容でした。

話だけではなく、実際に繭から糸を黒い紙に巻き取ってもらったり、真綿を道具を使わずに引き出してもらったり、ワークショップ付きで行いました。

糸はどんなかたちをしていたでしょう?
織物をしている人でも紬の糸についてどれだけ観察をしているでしょうか。
蚕から吐き出された最初の糸のかたちを美しいものとして、認識しているでしょうか?
その美しさを損ねないように染めたり糸巻をしたりしているでしょうか?


紬塾に参加の方には、真綿から糸を作ることがどんなに高度で繊細な手わざか、その一端でも感じてもらいたいと思います。

1回の体験では難しいかもしれませんが、1回目だからこそ感じ取れることもあるはずです。
上手く引こうとして、真綿を制圧するようなやり方ではなく、真綿に従えばいいだけのことなのですが、、。


そして、糸の美しさや特性を最大限に生かしながら、染め、洗い、絞り、叩き(風を入れる)に気を配り、糸を巻き、整経をし、織りに入ります。

その織る様子は私のビデオを見てもらいながら説明しました。
10丁の緯糸を入れる角度の違い、筬打ちのタイミング、耳糸の絡め方など、専門的すぎる話もしましたが、要は織り前を真っ直ぐ、無理なテンションをかけずに風合いよく、耳を綺麗に織ることが反物の良し悪しを決めるということを知ってもらいたいと思います。

今日の話には出せませんでしたが、踏み木の踏み方も大事です。柔らかく踏みこんだところで筬打ちします。最後はしっかり踏んで次の杼を入れます。
2段階で踏むことで経糸を毛羽立たせないようにしています。

身銭を切って買った反物の背縫いが割れてこられたらたまりません。
ワカメ(反物の耳側が波立っていること)になった反物はいくら上手な仕立士さんでもスッキリと仕立てることはできないでしょう。

使い手がしっかりとものを見る目が無ければならないのです。



さて、この日の浅葱色の紬は35年以上も着続け、洗い張りもし、裏返しもした色褪せた藍の小格子ですが、地割れや腰が抜けるなどは全くありません。



季節のポピーの型染めの帯を取り合わせました。
この帯地は経節紬でベースにも表情があります。
シックな中にも大人っぽい華やぎも感じられます。
ポピーの風に揺れる様子が、いく通りかの動きのある花弁で表現されています。

5月の爽やかな季節ですので、単衣紬を愉しみたいです。
薄くて硬い単衣着物よりも、空気の層がある真綿紬は放湿性があり、涼しく着ることができます。
真綿紬は洗い張り後に毛羽が取れ、滑らかさも出て格別です。

長く着られる単衣向け作品もございますので、色柄、価格等はお問合せください。
工房で随時ご覧いただけます。




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第15期「紬きもの塾'24」開講しました!

2024年04月25日 | 紬塾’21~’25
紬塾は15期目を迎えました。
敷居の高い紬塾へようこそ。(*^_^*)

毎回、様々な年齢、立場の方が参加して下さっていますが、違いこそあれ、紬や織物や着物を着ることを知りたい、深めたいという方ばかりです。

今期は定員オーバーとなり、少し窮屈ですが、6名の方と一緒に紬織りを中心に、着物の文化について、また自然のこと、環境についても考えを深めていきます。
関西方面からも3名の参加ですし、交通費がかかってもそれでも尚!と、決心をされているのだと思います。

前年度の時にも書きましたが、
「紬塾の内容はブログには書けないことがたくさんあります。
その場に、一座建立してこそ伝えられることがあります。紬塾はそういう場を設けているだけです。そこに集まる一人ひとりが作っていく場です。」

場を設けることで、対話が始まります。私の仕事の姿勢にも触れてもらうことができます。
プロ、アマ問わず、この織物大丈夫??というようなものが沢山出回ってしまっている染織業界。
名のある、ない、○○会会員とか、そんな冠をかぶせても、ものの善し悪しとは別です。
自分に、ものの真贋を見分ける力を育てなければならないのですが、私はむしろ無垢な目を持つ人の中にいると思っています。

観ることの重要性は以前から言っていることですが、今期はその点を特に力を入れて伝えていきます。

ネットに上がっていないものは、ないものにされている現代ですが、染織の歴史はそんな底の浅い世界ではないはずです。

6名中、宗廣力三作品を見たことがある人はいませんでしたので、宗廣先生の仕事についても作品集を見てもらいながら解説しました。初期から晩年まで、作風の変化はありますが、根底には紬織りの原点を大切にした仕事をされた方です。
郡上紬の風合いの良さを語る方は多いですが、私の仕事はその骨格は受け継ぎ、見た目や色は私なりの感覚を取り入れています。



さて、初回の私の装いはいつものように、修業時代の最後に、母の為に夜なべでつむいだ太い糸で織った井桁絣の着物。染料は阿仙と丹殻、藍です。

木綿の紺絣の一番オーソドックスなのは井桁絣か蚊絣と思いますが、その基本を修業の最後に身に付けておきたくて、敢えて素朴な木綿柄を織ったのです。
我ながら、見る度に思うのは、シンプルゆえに絣のずれは目立つのですが、経も緯も絣が綺麗に合っていて、若いエネルギーの真剣勝負の仕事だったと感心しています。もう出来ません・・(*^_^;)

帯は僅かな残糸の絣を駆使した半巾帯で、地糸ももう手に入らない太くて荒くて扱いにくい赤城の節糸です。長さも短いので、矢の字結びにしました。

今日の取り合わせは、ありあわせ、残りものだけれど、力強いエネルギーに満ちたもの同士です。
更に帯留めも自作ですが、これも銀の板の端材を拾ってきてハンダ付けしたものです。
以前のブログにも取り上げた、イタリアの画家ジョルジョ・モランディは自然界は丸と四角と三角で出来ていると言っていましたが、普遍的なもののかたちは見る人が自由に想像を膨らませることができます。私はそういうものが好きです。
オール手前物!オール中野で簡素にまとめてみました。(#^^#)

紬きもの塾が「紬」や「きもの」という既存の概念に囚われるのではなく、また先入観や刷り込まれた知識で捉えるのでもなく、自分の目で素直に、自然を見詰め、見極められる目を養うことができれば、あるいはそのきっかけになればと思います。
紬塾では一人ひとりが自分で感じ、考えながら進めていきましょう。
本物と出会いましょう。





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第7回 紬塾「上質の半幅帯を愉しむ・仕立について」&受講生レポート

2024年01月31日 | 紬塾’21~’25
※24年度の「紬塾」開催につきましては、3月中頃に詳細をお知らせします。

14期の紬塾「基礎コース」が最終回となりました。

最後の回は、総まとめ&半巾帯結び、名古屋帯の寸法、柄付けについて確認しました。
ポイント柄の場合は太鼓中心がズレた結びや、前柄が上手く出てないなど、たまに見かけます。
基本の柄付け位置を確認しました。
帯によって、昨近はその位置も長めに取られていたりで、慣れた自分の結びだと、若干ズレることもあり、調整が必要です。

今は何でも長め、大き目の寸法になりましたが、注文できる時は帯巾や長さも自分の体型に合うものにすると良いと思います。

また、羽織丈や乳の位置、羽織紐のタイプについても話題に上りました。
最近は羽織紐の位置が下になり、上等の羽織が茶羽織のようになっているのも見かけます。私は帯揚げの少し上が粋で可愛くて好きです。
羽織紐も短い「女短」と呼ばれるものが好きです。
長羽織なら、蝶結びのもバランスは良いかもしれませんが・・お好みで。

自分の体型や好み、ものによって、様々で一概に言えないのですが、私なりの考えはお伝えしましたので、参考にして、自分の感覚も加えれば良いと思います。
ネットの情報しかない時代、身近にアドバイスをしてくれる人も少なく、テキトーなSNS情報もたくさんありますので、その真偽をよく見極めていくしかないのです。

半巾帯も普段着と決めつけないで、上質のものを一本持っておくと重宝します。慣れるまで、案外お太鼓より難しい面がありますが、慣れてしまえば、蒸し暑い季節に帯揚げ無しでもいいので楽です。
五十肩とか腕が後ろへ回らないときにも前で結べますし、良い点も沢山あります。

さて、紬塾をまだ続けて欲しいと仰ってくださる方もあるのですが、エネルギーをかなり使って開講しています。
体力的なこと、今後の最後の仕事のことなど、考える時間を少し頂きたく思います。
15期の紬塾開催の有無に関しましては、3月中旬位にお知らせします。



この日の私の装いは、桜染めすくい織の着物に、抽象柄の半巾帯です。
詳細はHP着姿集で。

受講者のかたは4月から1月まで全7回に渡って本当に熱心に通ってくださいました。関西方面から列車を乗り継ぎ、泊まり込みの方もありました。
お一人は途中体調を崩されたり、家庭の事情など、残念ながら最後までの参加は出来ませんでしたが、また機会があればご参加ください。

そして、真摯に自分と向き合ってくれた受講者のレポートを下記に載せますので、紬塾に興味のある方は参考になさってください。
少し長いですが、体験したことをそれぞれの言葉で振り返り綴ってくれました。みなさんのレポートに私も、開催して報われる思いがします。良き方達との出会いに感謝します。↓

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私にとって着物を着るとは、装うことでした。
がっちり補正に不自然なくらいに型の決まった襟の抜き。
着付け教室に通うも、いつまでたっても着物に着せられている感がある自分の着姿を見て、これはどうにかせねばならない・・・と思い悩んでいた折、紬塾とのご縁をいただきました。

先生から「着物はもっと身近に自分なりに着てよい」との教えを受けて、私には「着る」ということに積極的な姿勢が必要なのだと感じました。

まずは今の自分のことを良く知ること。自分の顔、体形を直視し、仕草や発する声の調子、雰囲気もどんなものかを見つめてみて、等身大の自分に違和感のないものを身につける。型にはまった着方が自分に合うとは限らない。
「着ものはその人自身をあらわす」とのこと。
それを知ってしまえば、着ることに責任を持たなければ・・・と少し気負いますが、でも積極的に関わる能動的な生活が1つ始まると思うと、わくわくするような喜びも感じます。

これからは着物を着る機会を増やし、自分なりの自然な着方を涵養していきたいです。

取り合わせの回では大変勉強になりました。
今まで着物地の一色から同色を、帯、帯締め、帯揚げに選んでおり、その取合せに「これなら大丈夫」とどこか安心している自分がいましたので、同色を選ばないコーディネートはとても斬新でした。講義での私の取合せ(紺地の反物+染めの青い花柄の帯)は先生からNGをいただき、内心ショックを受けながらも異なる世界を絶妙に合わせる「日本の取合せ」のご教授に感銘しました。

それこそが着物を粋に着たいと高く目標を掲げている私に大きく響きました。日本の取合せは面白いです。見渡せばほぼ西洋文化に浸かっている暮らしの中で、日本の取合せを見ることは難しくなっていますが、自分の中で意識していきたいテーマの出会いとなりました。
      
着物は、繭や真綿より引き出された細い1本の絹糸が織りなされて面になり、人の身に沿われて立体になります。できあがるまでにどれだけの人の手と想いを経るのでしょうか。絹糸になるまでには蚕の命の授受もあります。紬塾で学んだことを時間がかかるかもしれませんが理解を深めて、とことん着つくすことで、着物の作り手の方々へ敬意を表したいと思います。       

中野先生、密度の濃い貴重なご教授を有難うございました。(K)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

全7回の講座を受講し終わり、とても盛沢山で充実した時間だったと感じております。

きものというキーワードを通して、布の事、着る事、縫う事、取り合わせの事、仕立ての事等はもちろん、日本の昔ながらの物を大切にする思想や生きる事、そして現代社会で忘れがちな大切な哲学的な事に至るまで。
様々な事を知ったり、思いを馳せるきっかけをいただけた機会でもありました。
日本の美しい文化がどうか未来に残ってゆくよう願ってやみません。

実際に着物を着るという事についても沢山の事を教えていただきました。
サイズや取り合わせの事など、昨今の風潮とは異なる昔ながらの考え方を教えていただけた事は、他で知る機会がなかなかない貴重な経験だったと思います。

特に印象に残っているのは、着物と帯、小物はリンクさせるのではなく異なるものを合わせるという事。
着物と帯締めの色を合わせる、色を拾うという事は、普段当たり前のようにしている事であり、通常の洋服のコーディネートと同じように、むしろそれが良い事のように思っておりました。
新たな視点と気づきで今後の取り合わせに活かしてゆきたいと思います。

そして、運針も今までなんとなくでやっていました所、きちんとしたやり方をご指導いただき、まだまだではありますが本来のやり方が分かり勉強になりました。
手縫いの良さにも改めて気づきましたので、今後活用してゆきたいと思います。
昔の人の知恵や、解くことを前提に着物が作られている事など、とことん布を大切に使う事につながり、大量生産・大量消費が当たり前の時代に改めて考えさせられる時間となりました。

先生の長年のご経験と知見がこもった講座を受けさせていただき、とても感謝しております。本当にありがとうございました。(I)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中野先生の展示会等に行った事も無く、参加させて頂くのには勇気がいりましたが、もっと着物というものを知りたいと思い参加させて頂きました。

絹織物は、蚕の繭から作られることは知っていましたが、蚕の口から吐き出された糸は、とても細く、ウェーブのかかった物でした。桜の木から染められた糸も色々な色があるのにも驚かされました。光の取り入れ方によっても色の見え方は変わり、着物は様々な表情を見せてくれました。
(初回に)先生の私物の紬を羽織らせて頂きましたが、纏う人によって印象が異なり、その人に寄り添うようです。

毎回季節に合わせて、先生が着物を召されるのも楽しみの一つでした。
帯合わせや、小物の取り合わせも勉強になり、着物を仕立てかえ着ておられるのも参考になりました。

着物は特別な日に着る物だと思っている所がありましたが、考えてみれば、西洋の文化が伝わる前には、日常着だったという当たり前のことに気付かされました。

生活様式が変化して着物から洋服へと変わり、色合わせも同系色の物が取り入れられ、若い人は黒を好み、スーツと言えば黒となってしまいました。
着物には洋服にない帯や帯揚げ、帯締めと形は決まっていますが、小物を上手く使い、色の組み合わせや素材を変えれば、それぞれの個性を表現できるのかと思います。

講座の中で副読本として使われた幸田文さんの「きもの」には、日々の生活の知恵、着物の役割り、親から子へと受け継がれるべき事が書かれていて、忘れてはならない物だと感じました。
着物の布は、解いてはコートや帯にも仕立てられますが、布団や袋、紐にと形を変え、無駄なく使っていくことが出来ます。
日々の暮らしの中でもっと身近に着物を着ていけたらと思います。

今回、中野先生の生き方から学ぶ事も多く、その人柄に触れることが出来たこと、一緒に学ぶ事となった方々との出会いもかけがいの無いものとなりました。多くの事を学ぶ場を頂いたことに感謝申し上げます。(Y)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私が紬塾に参加したのはただ着物の知識を深めたいそんな軽い気持ちでした。
それが7回の講座と一緒に学んだ友人達のおかげで想像以上にいろいろな事が学べ感謝しております。
それぞれの講座について振り返り印象に残ったことを述べさせていただきます。

第一回
中野先生の作品に触れ実際に羽織らせていただきました。ふわっと軽くて着心地が良く自然の色の優しさや肌馴染みの良さに感激。

第二回
繭から糸を引きだしたり真綿から糸をつむぐ体験をさせていただき、改めて糸作りの大変さや奥深さを知りました。また草木の染色や織についても教えていただき、実際目で見る貴重な体験をさせていただきました。

第三回
古い着物や譲り受けた着物の活かし方、更生の知恵など教えていただきました。
私の周りには着物を着る身内があまりおらず、唯一人ずっと着物で過ごしていた祖母は体が小さくサイズが全く違ったので、亡くなった時にサイズが合わないからとすべて体の小さな叔母達に譲り、この知識を知っていれば祖母の形見として大切に身近で使えたことを知りました。このことは私にとって益でしたし、サスティナブルである着物がどれだけ幅広く使えるかということを、他の方々にもお伝えしたいと思いました。

第四回
前回初めて和裁の運針を教えていただき伊達締めを縫いました。不器用で、先生が熱心に教えてくださる指導にお応えできるような技術は身につきませんでしたが、和裁の知識をわずかながらも知ることができました。

第五回
日本の取り合わせについて学びました。洋服のコーディネートとはまた違った、糸作りや染織もなさる中野先生ならではの美学を教えていただき、なるほどと思いました。この講座を受けてから私の着物の取り合わせがより自然な感じに変わったように感じています。

第六回
自然で楽な着方について学びました。美しく着るだけでなく、着ていて楽で早く着れるというのは、より着物を着るハードルを下げてくれました。

第七回
より気軽に身につけることができる半幅帯についてや、最後に先生が着物についてぜひ知っておいて欲しいと思うことを話してくださいました。
半幅帯はあまり身につける機会がなく使用することに消極的でしたが、素敵な結び方を教えていただき活用してみたくなりました。

そしてこの講座を通して先生がぜひ読んで感想をと言われた幸田文さんの「 きもの 」と言う本が、着物が日常着だった頃の代々伝えていきたいような大切なことがたくさん散りばめられており、何度も読み返しました。

このように着物について、たくさんの気付きや学びをいただき、講座に参加して本当によかったと思っています。
また、先生や一緒に学んだ方々とも素敵なご縁ができ嬉しく思います。
学んだことを生かせるよう精進していきたいと思います。
ありがとうございました。(S)





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23’紬塾染織実習 小さな布を織る(最終回)

2023年12月22日 | 紬塾’21~’25
糸をつむぐこと、染めること、織り物設計をすること、そして今回最終回の織ることを4回に亘って行いました。

先日の半巾帯を織り上げた経糸が少し残り(予定外でしたが)、それを使って一人2~3寸ずつ織ってもらいました。

自分でつむいだ糸(柿の小枝で染めた白茶)を最大限活かすことと、もう1~4色の色糸(私の方で用意している色糸)を選び、混ぜながら一枚の小さな布を織ってもらうのが実習の趣旨です。

たての縞がはっきりした、凝ったものなので、初心者には難しいかと思いましたが、
多少アドヴァイスもしながらですが、案外いい感じに出来上がりました。
織は初めての方がほとんどでしたが、耳も出来る限り意識して綺麗に織ってもらいました。
良い布になり、私もホッとしています。

織った順番に、それぞれ紹介します。布の手前が、織り始めです。


T.K.
設計通りに焦げ茶でスタートしましたが、途中色の変更や混ぜ方を臨機応変に変え、進めました。力強い温かみのある布になりました。




I.M.
柔らかな色を選び、やはり予定を少し変更しながら織り上げました。
ピンクとグリーンをランダムな段で織りましたが、薄い色の段なので、たての縞が生きた優しい布になりました。




K.M.
暖色系の中に寒色のグレーが生きています。互いの糸がハーモニーを醸して洗練された大人可愛い布になりました。




O.Y.
規則的なグラデーションはほぼ最初の設計通り、迷わず織り進めていました。
色糸を2段に分けて、スッキリしたグラフィック的な布になりました。




I.K.
機の最後で経糸が短くなり、織りにくかったのですが、不平不満も漏らさずに黙々と織ってくださいました。
今回の趣旨と少し外れましたが、ご自分の好きな色を入れたいという強いご希望があり、色を中心にした元気な布になりました。中程は白糸で七子織も入れました。

終わって、バスの時間まで少しあったので、「織る時に大事にしていることは何か」という質問を受けましたので、お答えしました。
「自分の表現は最後でいい、まず素材を観ること」と答えました。
目をまるくされていました。°_° 

この実習を通して、真綿の糸の感触や糸を混ぜながら奥行きを出していく紬織物の世界を少しでも体感して頂ければと思います。
また、経糸に複雑な節のある糸を使っていることで、布の深味が増すことも知ってもらえたらと思います。

紬というものが曖昧になってしまった昨近ですが、たて糸に節があり、柔らかな真綿の糸の風合いを活かしたものが野趣のある本来の紬だと思います。

みなさん基礎コースもしっかり受講し、更に実践でも紬の世界を深めてもらったと思います。
私も実のあることをしてもらいたいと、採算は度返しで務めたつもりです。
技術は拙いながら、こんなに高度な布はそうはないと、自信を持って言えます。

来年は紬塾が出来るか否か、全く未定です。
3月初めには開催の有無を決めますが、検討中の方はHPの「問い合わせ」よりメールでご連絡をいただければ、開催の有無が分かり次第ご連絡します。




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第6回 紬塾 「自然で楽な着方」― 名古屋帯の結び方・半衿の付け方・着物の仕立寸法

2023年11月25日 | 紬塾’21~’25
すっかりブログの更新が遅れておりますが、半巾帯の制作に集中しております。終了の目途は立ってきましたが、休みも取らずに仕事をしていたら、腰痛も始まってきました。

無理は禁物。急がば回れですね。。そこで、ブログの更新を。
今月初旬に行われた紬塾の報告です。

今期の方はみなさん着付けは出来る方ですので、特に着方などはしませんでした。
ただ、いろいろ補正をしたりで、着るのに30分以上かかるとのことでしたので、着付けの時短の為の話をしました。

先ず、補正の必要もないのに思い込みでしている方もあります。
私は補正肌着や補正もしませんので、ゆっくり着ても30分はかかりません。
また、帯も袋帯や地厚なもの以外は仮紐なしで捻じるだけなので早いです。
ただ、私の苦手が帯揚げで、何故か帯揚げは雑です。。(>_<)
でも写真に撮ると案外目立つので、もう少し丁寧に結びたいとは思っていますが。(^-^;

帯結びと、着物の寸法(マイサイズ)に時間を掛けました。
着方と寸法は大いに関係がありますので、一人ひとりの寸法を確認しました。
裄が長い方、身丈が長い方が多いですね。洋服の寸法の採りかたなのですよね。着物は広幅から型紙で作るわけではないのですから。
次回も補足説明します。

あと、差し込み式のプラスチックの衿芯も紬などには特に不自然ですので、三河芯で付けるやり方も話しました。

2016年12月19日 の紬塾のブログに詳しく書いています。

この日、私は身丈も裄もギリギリの、小さめマイサイズの着物でした。着るのは楽です。
身幅は狭すぎて(若い頃の体型)、外へは着て出れませんが。。(^-^;

そしてイマイチ顔映りのよくない着物なのですが、草木染は化学染料のような単純さはないので、ピンク系、オークル系の肌にどちらも合せ易いのですが、更に合う調整としては、小物や帯は似合う色を持ってくると良いです。
私はカラー診断では冬から春のカラーが合うのですが、この着物は「草紅葉」と題したように、黄茶系なのです。
藍の縞帯と、ボルドー系の帯揚げ、焦げ茶の帯締めは肌映りが良いので合わせてみました。

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さて、話題が変わりますが、受講生の方から浦野理一さんの縞帳から作った素敵なピンクッションを頂きました。銀座の灯屋さんで買われたそうです。大好きな色糸効果の網代や刷毛目も入っています。とても気に入りました。


私の修業時代に「ミセス」に浦野さんの着物や帯が連載されていて、今でも切り抜きをファイルしています。特別に太い玉糸の紬はシンプルで力強く斬新でした。
浦野さんの型染めの帯は私も持っていますが、染織界の一時代を作られた方です。

紬塾の最終回は1月に変更になりました。
受講生の方は、今までの講義を振り返り、最後に質問などあれば纏めておいてください。


コメント
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