中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

真綿から糸をつむぐ

2024年07月02日 | 紬塾’21~’24
染織実習コースの方に、真綿から糸をつむぐことをしてもらいました。
つむぎ方も幾通りかありますが、久米島式のつむぎ台を使っています。

真綿4g(一反分の緯糸の約1/100の量)から着尺より太い糸をつむいでもらいました。
久米島式は真綿が平らに開いていますので、太い糸もつむげます。
また、糸を切るということもほとんどなく引き出せます。
結城の工芸士さんにも糸つむぎを習ったことがありますが、結城の方式では糸を引き出すのに張力が掛かるので、特に経糸に向いていると思います。

安定した太い糸をつむぐことは初心者にはとても難しいのです。
太かったり、急に細くなってしまったりはしましたが、みなさん1.5~2時間でつむぎ終えました。


今期の方の中に、養蚕から真綿を作るところまでしている方があり、その方は別途個人指導の時間を取り、一人でもつむいでいけるよう、ご自分の真綿(上の画像の)でも4gほどつむいでもらいました。


この時は着尺用の太さでつむいでもらいました。
光沢のあるとても強い真綿で経糸もつむげそうです。



単純な道具を使うので、その人の感覚がよく出ます。
糸つむぎを見ると大体の力量や性質が分かると宗廣先生も仰られていました。
本当によくわかります。^_^

ただ細いだけではない、身体のリズムと真綿と一体になっておおらかな糸をつむぎたいものです。
織っていて、惚れ惚れするような糸のかたち、表情、景色に出会うと嬉しくなります。


私は、もうつむがなくても染めた糸がたくさんありますので、ここ15年程はまとまった糸つむぎはしていません。それでも手本を示しながら糸をつむげば、こころは落ち着きます。
糸つむぎのような微調整の仕事は得意な方です。(^^)/

以前のブログにも書きましたが、
ただ、大事なことは、「麻にせよ、木綿にせよ、紬にせよ、布を織ることや、糸つむぎは、今の時代は趣味的なことのように捉えられがちですが、機械的なものが出てくる以前は、生きるためのとても厳しい、時間のかかる過酷な仕事でした。」
そして、主に女性たちがその過酷な仕事を担わされてきた歴史もあり、低賃金で糸はつむがれてきたのです。
着心地の良い真綿紬の価値がもう少し真に評価され、末端の人も報われて欲しいです。そうしないと、技術も紬も未来へ繋がらないからです。
もう紬をわかる人がこの業界でも少ないのではないでしょうか?


紬塾で「糸つむぎ」をやるのは、紬の着物を着る方にも手つむぎ糸を引くことの難しさ、大変さを身体を通して知ってもらいたいからです。
文化は市民一人ひとりが育てていくものですから。

過去のブログもご参照ください。
2018.6.252019.6.072023.6.16 など。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紬塾 第3回「とことん着尽くす」― 着物の更生・運針

2024年06月22日 | 紬塾’21~’24
紬塾では、環境や、エコの問題を話題にします。みなさんからも日々エコのことで工夫していることを伺ったりするのですが、紬とエコが繋がらない方もあるかもしれません。
紬のことや着物のことを学びに来たのに・・。

紬の前身は“絁(あしぎぬ)”と呼ばれる絹織物と言われています。
節のある織物で武士や僧侶などが着ました。
平安時代の法令集「延喜式」の中にも“絁”が出てきます。
学生時代に平安時代の衣の文化についての課題があって、調べた時に「絁」の文字を覚えています。

諸説あるのでここには書きませんが、いずれにしても、所謂生糸の平絹織物ではなく、繭を一度に沢山引き出す節糸や、出殻繭から直接引き出すずりだし糸や、繭を真綿にして引き出す真綿紬糸など、節は出るけれども無駄なく使い、織られたものです。
堅牢な織物として、その風合いや、野趣味、柔らかさも人々に愛され、今日では紬として続いているのです。
そこにはひと手間も、ふた手間もかけた創意工夫があって出来るものなのです。

また、着物の和裁の知恵というものも凄いものがあります。
昔は解くことを前提に縫われていて、ミシンのようなきつい縫い目ではなく、玉止めを取ればすうっと糸が抜けるようにできています。
衿肩明きだけ鋏が入っていますが、前身ごろと後身ごろを逆に使うこともできるのです。
この日着ていたこの紬も前後を入れ替えて仕立てかえてあります。
前身ごろに大きなシミをつくってしまい、表裏を返し、更に前後も入れ替え帯でカバーできるようになったのです。(^^ゞ

堅牢に織られた紬は3代に渡って着ることもできると言われていますので、これこそとことん使う究極のエコではないでしょうか?



襤褸(ぼろ)の写真集、「襤褸の美」(額田晃作)をいつもお見せするのですが、凄まじいものがあります。
何十枚もの継ぎ当てのある布団側や野良着。
しかしある種の美も湛えているのです。
日頃の自分のエコ意識などの生ぬるさを突きつけられるような思いになります。


私の母も着物地や子供たちの学生服のズボンやスカートで普段使いの座布団側を沢山縫っていました。
上の画像で私が手に持っているのは、扇風機を保管する時のカバーを古い母の夏のスカート(母が自分で縫ったギャザースカート)から作ってありました。

他にも沢山リメイク品があるのですが、運針だけで縫っているものがほとんどです。
子供の頃の銘仙の着物で縫った風呂敷も沢山あります。
今のようにビニール袋や衣装ケースのない時代、衣服を風呂敷で包んで茶箱に保管していました。


上の画像は、銀行の粗品の手拭いで、子供たちが飯盒炊爨の時に持って行くお米を入れる袋も作っていて、お見せしました。

母は自分用に、自家用に作っただけで、まさか娘が他人に見せるとは思ってもなかったでしょう。苦笑いしているでしょう。(#^^#)

秋にはみなさんにも何かあるもので創意工夫して縫ってもらうべく、夏休みには運針練習をしてもらうことになっています。
布を見詰める良い機会になればよいと思います。

エコ意識はクリエイティブな世界に繋がっています。
安いものをたくさん買って捨て続けるのではなく、気に入ったものを大切に修繕しながら使うことは、ものへの愛情も深まり、自分の気持ちも安定します。創意工夫は脳の活性化にもつながります。



五本指のお気に入りのソックスは二度三度とアップリケ状に継ぎを当てて履いています。
靴下の継ぎ当ても楽しいですよ!








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第2回 紬塾「糸、色、織」― 紬織りの糸・草木の染色・織の映像を交えて

2024年05月15日 | 紬塾’21~’24
いつものように第2回の紬塾は「糸、色、織について」の内容でした。

話だけではなく、実際に繭から糸を黒い紙に巻き取ってもらったり、真綿を道具を使わずに引き出してもらったり、ワークショップ付きで行いました。

糸はどんなかたちをしていたでしょう?
織物をしている人でも紬の糸についてどれだけ観察をしているでしょうか。
蚕から吐き出された最初の糸のかたちを美しいものとして、認識しているでしょうか?
その美しさを損ねないように染めたり糸巻をしたりしているでしょうか?


紬塾に参加の方には、真綿から糸を作ることがどんなに高度で繊細な手わざか、その一端でも感じてもらいたいと思います。

1回の体験では難しいかもしれませんが、1回目だからこそ感じ取れることもあるはずです。
上手く引こうとして、真綿を制圧するようなやり方ではなく、真綿に従えばいいだけのことなのですが、、。


そして、糸の美しさや特性を最大限に生かしながら、染め、洗い、絞り、叩き(風を入れる)に気を配り、糸を巻き、整経をし、織りに入ります。

その織る様子は私のビデオを見てもらいながら説明しました。
10丁の緯糸を入れる角度の違い、筬打ちのタイミング、耳糸の絡め方など、専門的すぎる話もしましたが、要は織り前を真っ直ぐ、無理なテンションをかけずに風合いよく、耳を綺麗に織ることが反物の良し悪しを決めるということを知ってもらいたいと思います。

今日の話には出せませんでしたが、踏み木の踏み方も大事です。柔らかく踏みこんだところで筬打ちします。最後はしっかり踏んで次の杼を入れます。
2段階で踏むことで経糸を毛羽立たせないようにしています。

身銭を切って買った反物の背縫いが割れてこられたらたまりません。
ワカメ(反物の耳側が波立っていること)になった反物はいくら上手な仕立士さんでもスッキリと仕立てることはできないでしょう。

使い手がしっかりとものを見る目が無ければならないのです。



さて、この日の浅葱色の紬は35年以上も着続け、洗い張りもし、裏返しもした色褪せた藍の小格子ですが、地割れや腰が抜けるなどは全くありません。



季節のポピーの型染めの帯を取り合わせました。
この帯地は経節紬でベースにも表情があります。
シックな中にも大人っぽい華やぎも感じられます。
ポピーの風に揺れる様子が、いく通りかの動きのある花弁で表現されています。

5月の爽やかな季節ですので、単衣紬を愉しみたいです。
薄くて硬い単衣着物よりも、空気の層がある真綿紬は放湿性があり、涼しく着ることができます。
真綿紬は洗い張り後に毛羽が取れ、滑らかさも出て格別です。

長く着られる単衣向け作品もございますので、色柄、価格等はお問合せください。
工房で随時ご覧いただけます。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第15期「紬きもの塾'24」開講しました!

2024年04月25日 | 紬塾’21~’24
紬塾は15期目を迎えました。
敷居の高い紬塾へようこそ。(*^_^*)

毎回、様々な年齢、立場の方が参加して下さっていますが、違いこそあれ、紬や織物や着物を着ることを知りたい、深めたいという方ばかりです。

今期は定員オーバーとなり、少し窮屈ですが、6名の方と一緒に紬織りを中心に、着物の文化について、また自然のこと、環境についても考えを深めていきます。
関西方面からも3名の参加ですし、交通費がかかってもそれでも尚!と、決心をされているのだと思います。

前年度の時にも書きましたが、
「紬塾の内容はブログには書けないことがたくさんあります。
その場に、一座建立してこそ伝えられることがあります。紬塾はそういう場を設けているだけです。そこに集まる一人ひとりが作っていく場です。」

場を設けることで、対話が始まります。私の仕事の姿勢にも触れてもらうことができます。
プロ、アマ問わず、この織物大丈夫??というようなものが沢山出回ってしまっている染織業界。
名のある、ない、○○会会員とか、そんな冠をかぶせても、ものの善し悪しとは別です。
自分に、ものの真贋を見分ける力を育てなければならないのですが、私はむしろ無垢な目を持つ人の中にいると思っています。

観ることの重要性は以前から言っていることですが、今期はその点を特に力を入れて伝えていきます。

ネットに上がっていないものは、ないものにされている現代ですが、染織の歴史はそんな底の浅い世界ではないはずです。

6名中、宗廣力三作品を見たことがある人はいませんでしたので、宗廣先生の仕事についても作品集を見てもらいながら解説しました。初期から晩年まで、作風の変化はありますが、根底には紬織りの原点を大切にした仕事をされた方です。
郡上紬の風合いの良さを語る方は多いですが、私の仕事はその骨格は受け継ぎ、見た目や色は私なりの感覚を取り入れています。



さて、初回の私の装いはいつものように、修業時代の最後に、母の為に夜なべでつむいだ太い糸で織った井桁絣の着物。染料は阿仙と丹殻、藍です。

木綿の紺絣の一番オーソドックスなのは井桁絣か蚊絣と思いますが、その基本を修業の最後に身に付けておきたくて、敢えて素朴な木綿柄を織ったのです。
我ながら、見る度に思うのは、シンプルゆえに絣のずれは目立つのですが、経も緯も絣が綺麗に合っていて、若いエネルギーの真剣勝負の仕事だったと感心しています。もう出来ません・・(*^_^;)

帯は僅かな残糸の絣を駆使した半巾帯で、地糸ももう手に入らない太くて荒くて扱いにくい赤城の節糸です。長さも短いので、矢の字結びにしました。

今日の取り合わせは、ありあわせ、残りものだけれど、力強いエネルギーに満ちたもの同士です。
更に帯留めも自作ですが、これも銀の板の端材を拾ってきてハンダ付けしたものです。
以前のブログにも取り上げた、イタリアの画家ジョルジョ・モランディは自然界は丸と四角と三角で出来ていると言っていましたが、普遍的なもののかたちは見る人が自由に想像を膨らませることができます。私はそういうものが好きです。
オール手前物!オール中野で簡素にまとめてみました。(#^^#)

紬きもの塾が「紬」や「きもの」という既存の概念に囚われるのではなく、また先入観や刷り込まれた知識で捉えるのでもなく、自分の目で素直に、自然を見詰め、見極められる目を養うことができれば、あるいはそのきっかけになればと思います。
紬塾では一人ひとりが自分で感じ、考えながら進めていきましょう。
本物と出会いましょう。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第7回 紬塾「上質の半幅帯を愉しむ・仕立について」&受講生レポート

2024年01月31日 | 紬塾’21~’24
※24年度の「紬塾」開催につきましては、3月中頃に詳細をお知らせします。

14期の紬塾「基礎コース」が最終回となりました。

最後の回は、総まとめ&半巾帯結び、名古屋帯の寸法、柄付けについて確認しました。
ポイント柄の場合は太鼓中心がズレた結びや、前柄が上手く出てないなど、たまに見かけます。
基本の柄付け位置を確認しました。
帯によって、昨近はその位置も長めに取られていたりで、慣れた自分の結びだと、若干ズレることもあり、調整が必要です。

今は何でも長め、大き目の寸法になりましたが、注文できる時は帯巾や長さも自分の体型に合うものにすると良いと思います。

また、羽織丈や乳の位置、羽織紐のタイプについても話題に上りました。
最近は羽織紐の位置が下になり、上等の羽織が茶羽織のようになっているのも見かけます。私は帯揚げの少し上が粋で可愛くて好きです。
羽織紐も短い「女短」と呼ばれるものが好きです。
長羽織なら、蝶結びのもバランスは良いかもしれませんが・・お好みで。

自分の体型や好み、ものによって、様々で一概に言えないのですが、私なりの考えはお伝えしましたので、参考にして、自分の感覚も加えれば良いと思います。
ネットの情報しかない時代、身近にアドバイスをしてくれる人も少なく、テキトーなSNS情報もたくさんありますので、その真偽をよく見極めていくしかないのです。

半巾帯も普段着と決めつけないで、上質のものを一本持っておくと重宝します。慣れるまで、案外お太鼓より難しい面がありますが、慣れてしまえば、蒸し暑い季節に帯揚げ無しでもいいので楽です。
五十肩とか腕が後ろへ回らないときにも前で結べますし、良い点も沢山あります。

さて、紬塾をまだ続けて欲しいと仰ってくださる方もあるのですが、エネルギーをかなり使って開講しています。
体力的なこと、今後の最後の仕事のことなど、考える時間を少し頂きたく思います。
15期の紬塾開催の有無に関しましては、3月中旬位にお知らせします。



この日の私の装いは、桜染めすくい織の着物に、抽象柄の半巾帯です。
詳細はHP着姿集で。

受講者のかたは4月から1月まで全7回に渡って本当に熱心に通ってくださいました。関西方面から列車を乗り継ぎ、泊まり込みの方もありました。
お一人は途中体調を崩されたり、家庭の事情など、残念ながら最後までの参加は出来ませんでしたが、また機会があればご参加ください。

そして、真摯に自分と向き合ってくれた受講者のレポートを下記に載せますので、紬塾に興味のある方は参考になさってください。
少し長いですが、体験したことをそれぞれの言葉で振り返り綴ってくれました。みなさんのレポートに私も、開催して報われる思いがします。良き方達との出会いに感謝します。↓

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私にとって着物を着るとは、装うことでした。
がっちり補正に不自然なくらいに型の決まった襟の抜き。
着付け教室に通うも、いつまでたっても着物に着せられている感がある自分の着姿を見て、これはどうにかせねばならない・・・と思い悩んでいた折、紬塾とのご縁をいただきました。

先生から「着物はもっと身近に自分なりに着てよい」との教えを受けて、私には「着る」ということに積極的な姿勢が必要なのだと感じました。

まずは今の自分のことを良く知ること。自分の顔、体形を直視し、仕草や発する声の調子、雰囲気もどんなものかを見つめてみて、等身大の自分に違和感のないものを身につける。型にはまった着方が自分に合うとは限らない。
「着ものはその人自身をあらわす」とのこと。
それを知ってしまえば、着ることに責任を持たなければ・・・と少し気負いますが、でも積極的に関わる能動的な生活が1つ始まると思うと、わくわくするような喜びも感じます。

これからは着物を着る機会を増やし、自分なりの自然な着方を涵養していきたいです。

取り合わせの回では大変勉強になりました。
今まで着物地の一色から同色を、帯、帯締め、帯揚げに選んでおり、その取合せに「これなら大丈夫」とどこか安心している自分がいましたので、同色を選ばないコーディネートはとても斬新でした。講義での私の取合せ(紺地の反物+染めの青い花柄の帯)は先生からNGをいただき、内心ショックを受けながらも異なる世界を絶妙に合わせる「日本の取合せ」のご教授に感銘しました。

それこそが着物を粋に着たいと高く目標を掲げている私に大きく響きました。日本の取合せは面白いです。見渡せばほぼ西洋文化に浸かっている暮らしの中で、日本の取合せを見ることは難しくなっていますが、自分の中で意識していきたいテーマの出会いとなりました。
      
着物は、繭や真綿より引き出された細い1本の絹糸が織りなされて面になり、人の身に沿われて立体になります。できあがるまでにどれだけの人の手と想いを経るのでしょうか。絹糸になるまでには蚕の命の授受もあります。紬塾で学んだことを時間がかかるかもしれませんが理解を深めて、とことん着つくすことで、着物の作り手の方々へ敬意を表したいと思います。       

中野先生、密度の濃い貴重なご教授を有難うございました。(K)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

全7回の講座を受講し終わり、とても盛沢山で充実した時間だったと感じております。

きものというキーワードを通して、布の事、着る事、縫う事、取り合わせの事、仕立ての事等はもちろん、日本の昔ながらの物を大切にする思想や生きる事、そして現代社会で忘れがちな大切な哲学的な事に至るまで。
様々な事を知ったり、思いを馳せるきっかけをいただけた機会でもありました。
日本の美しい文化がどうか未来に残ってゆくよう願ってやみません。

実際に着物を着るという事についても沢山の事を教えていただきました。
サイズや取り合わせの事など、昨今の風潮とは異なる昔ながらの考え方を教えていただけた事は、他で知る機会がなかなかない貴重な経験だったと思います。

特に印象に残っているのは、着物と帯、小物はリンクさせるのではなく異なるものを合わせるという事。
着物と帯締めの色を合わせる、色を拾うという事は、普段当たり前のようにしている事であり、通常の洋服のコーディネートと同じように、むしろそれが良い事のように思っておりました。
新たな視点と気づきで今後の取り合わせに活かしてゆきたいと思います。

そして、運針も今までなんとなくでやっていました所、きちんとしたやり方をご指導いただき、まだまだではありますが本来のやり方が分かり勉強になりました。
手縫いの良さにも改めて気づきましたので、今後活用してゆきたいと思います。
昔の人の知恵や、解くことを前提に着物が作られている事など、とことん布を大切に使う事につながり、大量生産・大量消費が当たり前の時代に改めて考えさせられる時間となりました。

先生の長年のご経験と知見がこもった講座を受けさせていただき、とても感謝しております。本当にありがとうございました。(I)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中野先生の展示会等に行った事も無く、参加させて頂くのには勇気がいりましたが、もっと着物というものを知りたいと思い参加させて頂きました。

絹織物は、蚕の繭から作られることは知っていましたが、蚕の口から吐き出された糸は、とても細く、ウェーブのかかった物でした。桜の木から染められた糸も色々な色があるのにも驚かされました。光の取り入れ方によっても色の見え方は変わり、着物は様々な表情を見せてくれました。
(初回に)先生の私物の紬を羽織らせて頂きましたが、纏う人によって印象が異なり、その人に寄り添うようです。

毎回季節に合わせて、先生が着物を召されるのも楽しみの一つでした。
帯合わせや、小物の取り合わせも勉強になり、着物を仕立てかえ着ておられるのも参考になりました。

着物は特別な日に着る物だと思っている所がありましたが、考えてみれば、西洋の文化が伝わる前には、日常着だったという当たり前のことに気付かされました。

生活様式が変化して着物から洋服へと変わり、色合わせも同系色の物が取り入れられ、若い人は黒を好み、スーツと言えば黒となってしまいました。
着物には洋服にない帯や帯揚げ、帯締めと形は決まっていますが、小物を上手く使い、色の組み合わせや素材を変えれば、それぞれの個性を表現できるのかと思います。

講座の中で副読本として使われた幸田文さんの「きもの」には、日々の生活の知恵、着物の役割り、親から子へと受け継がれるべき事が書かれていて、忘れてはならない物だと感じました。
着物の布は、解いてはコートや帯にも仕立てられますが、布団や袋、紐にと形を変え、無駄なく使っていくことが出来ます。
日々の暮らしの中でもっと身近に着物を着ていけたらと思います。

今回、中野先生の生き方から学ぶ事も多く、その人柄に触れることが出来たこと、一緒に学ぶ事となった方々との出会いもかけがいの無いものとなりました。多くの事を学ぶ場を頂いたことに感謝申し上げます。(Y)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私が紬塾に参加したのはただ着物の知識を深めたいそんな軽い気持ちでした。
それが7回の講座と一緒に学んだ友人達のおかげで想像以上にいろいろな事が学べ感謝しております。
それぞれの講座について振り返り印象に残ったことを述べさせていただきます。

第一回
中野先生の作品に触れ実際に羽織らせていただきました。ふわっと軽くて着心地が良く自然の色の優しさや肌馴染みの良さに感激。

第二回
繭から糸を引きだしたり真綿から糸をつむぐ体験をさせていただき、改めて糸作りの大変さや奥深さを知りました。また草木の染色や織についても教えていただき、実際目で見る貴重な体験をさせていただきました。

第三回
古い着物や譲り受けた着物の活かし方、更生の知恵など教えていただきました。
私の周りには着物を着る身内があまりおらず、唯一人ずっと着物で過ごしていた祖母は体が小さくサイズが全く違ったので、亡くなった時にサイズが合わないからとすべて体の小さな叔母達に譲り、この知識を知っていれば祖母の形見として大切に身近で使えたことを知りました。このことは私にとって益でしたし、サスティナブルである着物がどれだけ幅広く使えるかということを、他の方々にもお伝えしたいと思いました。

第四回
前回初めて和裁の運針を教えていただき伊達締めを縫いました。不器用で、先生が熱心に教えてくださる指導にお応えできるような技術は身につきませんでしたが、和裁の知識をわずかながらも知ることができました。

第五回
日本の取り合わせについて学びました。洋服のコーディネートとはまた違った、糸作りや染織もなさる中野先生ならではの美学を教えていただき、なるほどと思いました。この講座を受けてから私の着物の取り合わせがより自然な感じに変わったように感じています。

第六回
自然で楽な着方について学びました。美しく着るだけでなく、着ていて楽で早く着れるというのは、より着物を着るハードルを下げてくれました。

第七回
より気軽に身につけることができる半幅帯についてや、最後に先生が着物についてぜひ知っておいて欲しいと思うことを話してくださいました。
半幅帯はあまり身につける機会がなく使用することに消極的でしたが、素敵な結び方を教えていただき活用してみたくなりました。

そしてこの講座を通して先生がぜひ読んで感想をと言われた幸田文さんの「 きもの 」と言う本が、着物が日常着だった頃の代々伝えていきたいような大切なことがたくさん散りばめられており、何度も読み返しました。

このように着物について、たくさんの気付きや学びをいただき、講座に参加して本当によかったと思っています。
また、先生や一緒に学んだ方々とも素敵なご縁ができ嬉しく思います。
学んだことを生かせるよう精進していきたいと思います。
ありがとうございました。(S)





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

23’紬塾染織実習 小さな布を織る(最終回)

2023年12月22日 | 紬塾’21~’24
糸をつむぐこと、染めること、織り物設計をすること、そして今回最終回の織ることを4回に亘って行いました。

先日の半巾帯を織り上げた経糸が少し残り(予定外でしたが)、それを使って一人2~3寸ずつ織ってもらいました。

自分でつむいだ糸(柿の小枝で染めた白茶)を最大限活かすことと、もう1~4色の色糸(私の方で用意している色糸)を選び、混ぜながら一枚の小さな布を織ってもらうのが実習の趣旨です。

たての縞がはっきりした、凝ったものなので、初心者には難しいかと思いましたが、
多少アドヴァイスもしながらですが、案外いい感じに出来上がりました。
織は初めての方がほとんどでしたが、耳も出来る限り意識して綺麗に織ってもらいました。
良い布になり、私もホッとしています。

織った順番に、それぞれ紹介します。布の手前が、織り始めです。


T.K.
設計通りに焦げ茶でスタートしましたが、途中色の変更や混ぜ方を臨機応変に変え、進めました。力強い温かみのある布になりました。




I.M.
柔らかな色を選び、やはり予定を少し変更しながら織り上げました。
ピンクとグリーンをランダムな段で織りましたが、薄い色の段なので、たての縞が生きた優しい布になりました。




K.M.
暖色系の中に寒色のグレーが生きています。互いの糸がハーモニーを醸して洗練された大人可愛い布になりました。




O.Y.
規則的なグラデーションはほぼ最初の設計通り、迷わず織り進めていました。
色糸を2段に分けて、スッキリしたグラフィック的な布になりました。




I.K.
機の最後で経糸が短くなり、織りにくかったのですが、不平不満も漏らさずに黙々と織ってくださいました。
今回の趣旨と少し外れましたが、ご自分の好きな色を入れたいという強いご希望があり、色を中心にした元気な布になりました。中程は白糸で七子織も入れました。

終わって、バスの時間まで少しあったので、「織る時に大事にしていることは何か」という質問を受けましたので、お答えしました。
「自分の表現は最後でいい、まず素材を観ること」と答えました。
目をまるくされていました。°_° 

この実習を通して、真綿の糸の感触や糸を混ぜながら奥行きを出していく紬織物の世界を少しでも体感して頂ければと思います。
また、経糸に複雑な節のある糸を使っていることで、布の深味が増すことも知ってもらえたらと思います。

紬というものが曖昧になってしまった昨近ですが、たて糸に節があり、柔らかな真綿の糸の風合いを活かしたものが野趣のある本来の紬だと思います。

みなさん基礎コースもしっかり受講し、更に実践でも紬の世界を深めてもらったと思います。
私も実のあることをしてもらいたいと、採算は度返しで務めたつもりです。
技術は拙いながら、こんなに高度な布はそうはないと、自信を持って言えます。

来年は紬塾が出来るか否か、全く未定です。
3月初めには開催の有無を決めますが、検討中の方はHPの「問い合わせ」よりメールでご連絡をいただければ、開催の有無が分かり次第ご連絡します。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第6回 紬塾 「自然で楽な着方」― 名古屋帯の結び方・半衿の付け方・着物の仕立寸法

2023年11月25日 | 紬塾’21~’24
すっかりブログの更新が遅れておりますが、半巾帯の制作に集中しております。終了の目途は立ってきましたが、休みも取らずに仕事をしていたら、腰痛も始まってきました。

無理は禁物。急がば回れですね。。そこで、ブログの更新を。
今月初旬に行われた紬塾の報告です。

今期の方はみなさん着付けは出来る方ですので、特に着方などはしませんでした。
ただ、いろいろ補正をしたりで、着るのに30分以上かかるとのことでしたので、着付けの時短の為の話をしました。

先ず、補正の必要もないのに思い込みでしている方もあります。
私は補正肌着や補正もしませんので、ゆっくり着ても30分はかかりません。
また、帯も袋帯や地厚なもの以外は仮紐なしで捻じるだけなので早いです。
ただ、私の苦手が帯揚げで、何故か帯揚げは雑です。。(>_<)
でも写真に撮ると案外目立つので、もう少し丁寧に結びたいとは思っていますが。(^-^;

帯結びと、着物の寸法(マイサイズ)に時間を掛けました。
着方と寸法は大いに関係がありますので、一人ひとりの寸法を確認しました。
裄が長い方、身丈が長い方が多いですね。洋服の寸法の採りかたなのですよね。着物は広幅から型紙で作るわけではないのですから。
次回も補足説明します。

あと、差し込み式のプラスチックの衿芯も紬などには特に不自然ですので、三河芯で付けるやり方も話しました。

2016年12月19日 の紬塾のブログに詳しく書いています。

この日、私は身丈も裄もギリギリの、小さめマイサイズの着物でした。着るのは楽です。
身幅は狭すぎて(若い頃の体型)、外へは着て出れませんが。。(^-^;

そしてイマイチ顔映りのよくない着物なのですが、草木染は化学染料のような単純さはないので、ピンク系、オークル系の肌にどちらも合せ易いのですが、更に合う調整としては、小物や帯は似合う色を持ってくると良いです。
私はカラー診断では冬から春のカラーが合うのですが、この着物は「草紅葉」と題したように、黄茶系なのです。
藍の縞帯と、ボルドー系の帯揚げ、焦げ茶の帯締めは肌映りが良いので合わせてみました。

********************
さて、話題が変わりますが、受講生の方から浦野理一さんの縞帳から作った素敵なピンクッションを頂きました。銀座の灯屋さんで買われたそうです。大好きな色糸効果の網代や刷毛目も入っています。とても気に入りました。


私の修業時代に「ミセス」に浦野さんの着物や帯が連載されていて、今でも切り抜きをファイルしています。特別に太い玉糸の紬はシンプルで力強く斬新でした。
浦野さんの型染めの帯は私も持っていますが、染織界の一時代を作られた方です。

紬塾の最終回は1月に変更になりました。
受講生の方は、今までの講義を振り返り、最後に質問などあれば纏めておいてください。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第5回 紬塾「日本の取り合わせ」――ものの力を合わせる

2023年10月20日 | 紬塾’21~’24




" 木犀に帯締めながら目をやりぬ  星野立子 "

半巾帯の連作に集中しながらも、庭の金木犀、銀木犀がふっと香ってきます。

初旬に行いました紬塾「取り合わせ」についての報告です。

毎回盛り上がる着物の取り合わせワークショップ。
T.P.O.を考え、一人2パターンずつ取り合わせを発表してもらいました。
着ていく場や、季節、どんな心持で着るのかなども話してもらいます。

反物と帯、帯揚げ、帯締めをセレクトしてある中から、自由に選んでもらいましたが、みんな違う組み合わせでした。それぞれが真剣勝負で向き合ってくれました。

取り合わせに沢山のルールなどありません。一人ひとり条件が違いますから。
私は日本文化として、取り合わせで気を付けなければならないのは、「異なるものを合わせる」1点だけです。揃える合わせ方は、取り合わせとは言いません。それは単なる色合わせです。

俳句でも取り合わせという言い方をしますが、いかにも予定調和のようなものは評価されません。意外性を持ちながらもハッとさせる関係性を持ち合わせている。

あとはもののクオリティの高いものを下着類から小物に至るまで、選ぶことです。ものの力を合わせることです。

そして、着物は人が着るもの。飾っておくものではありませんので、自分との取り合わせとして、肌映りのよいものを選ぶことがもちろん大事です。
でも、合わないものや、年齢で変わってきたりしますが、その場合も小物や帯で似合う色を使うことで、幾らかカバーできることなども詳しく話しました。



私のこの日の取り合わせは、前にも「羊歯文帯」で書きましたが、拙作を何点かお求め頂いたご高齢のお客様から、もう着ることはないので、引き継いで欲しいということで頂いた着物です。
30代後半の仕事だったと思います。シンプルですが、地が崩し縞になっていて、布に奥行きが有ります。
太めの糸で織られていますので、単衣に仕立て替え、真冬を含め長く着たいと思います。

寒色系の中に、帯揚げだけは暖色の赤紫を使って、秋の色を加えました。

HP着姿を更新しました。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第4回 紬塾「伊達締めを縫う」

2023年09月19日 | 紬塾’21~’24
報告が遅くなりましたが、先々週の紬塾では麻(ヘンプ)の伊達締めを縫いました。
通常は9月後半に行いますが、コロナのこともあり、換気の出来る内にと思い、暑い時期ですが、前倒しで行っています。

色々な生地(麻)を試してきましたが、ヘンプ麻の程よい厚みのある生地を探すのに苦労しました。
ヘンプのステテコや肌襦袢より気持ち地厚感があります。



まず、広幅の生地を地の目に添って裁つところからしてもらいましたが、経て糸を抜いて、切りやすいようにしました。


上がりが9cm幅で、2m20cmの長さにしました。印はつけずに布端から7~8mの所を待ち針で留めるだけで運針します。
袋状に縫いひっくり返して最後は矩け縫いで綴じました。

みなさん夏休みの間に運針練習をしてくださったのか、なんとか縫いあげました。

この伊達締めは着物の上に使うものではなく、長襦袢の上に使います。
滑りにくい生地ですのでこの伊達締め1本だけで緩みません。
また、汗もよく吸いますので、汗取りの役目も果たします。
洗濯も炭酸塩や石鹸で手洗い出来ます。皺は霧をかければ、すぐ取れます。

紐1本、伊達締め1本にも素材による違いが有ります。
次回の紬塾でそういった小道具のこともお話しします。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第3回染織実習「織りの準備」― 糸の糊付け・設計

2023年09月14日 | 紬塾’21~’24
残暑の中、四方の窓を開け放ち、冷房無しで、紬塾の実習の方と小さな布を織るための準備に入りました。


先日染めた緯糸に布糊と生麩を合わせた糊を付けました。
糊付け3年と言われるくらい、天候によっても左右される難しいものです。
付けた後は天井の方へ高く振り上げ、ストンとテーブルに打ちつけ、糸をばらばらにほぐします(画像は以前に私の仕事を撮ったもの)。
絹糸本来のウェーブがもう一度蘇り、それを糊で固めると良い風合いの布が織れます。


織物設計は私からの課題は、一貫して同じです。
自分の糸を使い切り、もう一色の地糸と混ぜながら、自分の糸はどんな形なのか、紬らしい糸味を見てもらいたいのです。

今期の方は私の説明をよく理解して下さり、時間内に方針が立ち、糸量の計算もスムーズでした。
条件は同じなのにみなさんちょっとの組み合わせの違いで、全く違う布が生まれてきます。来月の織りの実習が楽しみです。

********************************************************



設計の後は、工芸美術評論の笹山央さんのレクチャー「観ることの優位性」を聴いてもらいました。
創るためには見なければならないし、そのことに能動的に向き合うことは大事だと思います。

1.「観照」について
   ・古代ギリシャの思想―――観照(テオレア)、制作(ポイエーシス)、実践(プラクシス)
  ・日本文化の根底は「眺める」
    
2.ヴィジュアル・アートを先導していくのは、「観る」立場の人間

3.「観る」訓練
  ・いいものを数多く見る
  ・考えながら観る(知識は前提にしない。子どもの心で観る)
  ・実践する(自分でも制作してみる。作者の話を聞く)
  ・感じたことを言葉にする(間違っていてもよい)
   
みなさん熱心に聴いてくれて、最後に感じたことを言葉にしてもらいました。

「観たり眺めるのは好きだけれど、考えたり、客観的に言葉にしたりはサボっていたかな・・」という感想もあったのですが、それに対し、笹山さんは「受け身ではなく、積極性をもって観る。そこを工夫して観る。理解するには自分から働きかけていく。」などとアドヴァイスがありました。

和歌にしても「眺める」所から表現は始まるという点を改めて確認した。言葉にすることしていなかった、などの感想もありました。

観て、言葉にする訓練は、鑑賞を深めることにもなるので、私も若いころから、感想を日記に付けたりしてきましたが、今後も感じたこと、考えたことを言葉にすることを続けていきたいと思います。

笹山さんのブログも参考まで。
「アリストテレスーー西洋的“観照”の原点」20.3.27



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第2回染織実習「糸を染める」― 工房の庭木を使って糸や半衿、帯揚げを染める

2023年07月27日 | 紬塾’21~’24
今年は5名の方と染織実習をしていますが、梅雨明けしたその日に染色をしていました。
写真は、たまたま参加のみなさんが撮ってあった写真を提供いただきました。私は指示を出して、お手本を見せたりするだけでも手いっぱいで、写真を撮る暇もありませんでした。

34度越えの狭いキッチンで、ガスコンロ3口使って、エアコンなしで、マスクをしての作業。私は慣れていますが、みなさん大変だったのではないかと思っていたら、案外「涼しい」「風が気持ちいい」などと言われてました。確かに風がよく通るところではありますが。


工房兼住まいを選ぶ時には、エアコンなしでも仕事ができるように、風が良く抜けることを必須条件にして来ました。染色以前に大事なことです。

前回つむいだ真綿の糸と、帯揚げ、使い古しの半衿を庭木で染めました。
桜と柿を使いました。媒染は灰汁と鉄と無媒染の3通り。

桜は枝と葉を分けたのですが、結局2回目の染色で混ぜることになり、その違いを明らかにすることは出来ませんでした。

それでもきれいなピンクと鉄を掛けたグレイッシュピンクが染まりました。
生木の無媒染はコツがありますが、堅牢性と、色の落ち着きを考慮すると、淡い色でも染めて干すを2回は繰り返したいです。
無媒染の半衿もとても良い色に染まり、お肌の色も良く見えそうです。

室内で1週間ほど空気酸化させたのちに、アイロンで各自仕上げてもらいます。

トップの画像は夕方、1工程を終え干しているところです。
半日では十分な染はできませんが、何とか自家用なら使えます。

今までもたくさん書いてきましたので繰り返しませんが、まとめとして、草木染は簡単なようで、奥の深い難しいものです。
染色の基礎+実践に基づく創意工夫、研鑽が必要です。短時間で習得できるものではありません。マニュアル化も出来ないです。
また、料理やお茶を美味しく入れるやり方に共通点をたくさん見出せます。

媒染材はきちっと量を測り、多すぎないようにしないといけません。中には劇薬もあります。取り扱いに注意が必要。
2018年のブログも参考まで。

でも、生木で染めている時の生命感のある色や匂いにみなさん感嘆の声を上げていました。その実体験は大きいと思います。
家庭でも無媒染やアルカリ剤の媒染ならできますので、そのやり方もお話ししました。半衿や帯揚げの鮮やかすぎるものなどを染め重ねると良いと思います。

今年は今までで最も暑い夏となりました。
異常気象は今後も進むのでしょう。世界中で温暖化対策をしているとはいえ、もう時すでに遅し、という気もします。
世界で災害が多発しています。
7/28配信で、グテレス国連事務総長「地球沸騰化」と警告を発した。 
温暖化ではなく地球沸騰化の時代と言われ始めました。

しかし、企業や国は勿論ですが、温暖化防止に少しでも出来ることは今からでもしなければなりません。
庭のある方は木を植えましょう。遮光や、涼しい衣服でエアコンの設定温度を少し上げましょう。
近くの買物などは車を使わずなるべく歩きましょう・・それぞれの方で出来る事をやりましょう。

しかし、この時代にまだ再開発と言って、大木を伐る某大企業のエゴに憤りを覚えます。それに賛成する都知事、政府やゆ(野党と与党の間)党にもうんざりです。表向きSDGsを掲げ、やっていることは真逆のことをしています。

東京だけでも高木が多数伐採されます。神宮外苑、井の頭公園、日比谷公園など、都民の憩いの場であり、多様な動植物の生息の場であり、気温を下げる働きのある高木を伐採するのは犯罪としか言いようがありません。
全国的にもあちこちで開発と称して、木の伐採、強剪定が行われています。

伐採計画反対の声も大きく、私も神宮外苑以外のたくさんの反対署名をしましたが、ご存じない方は、ネットでいろいろ調べて身近なところから是非反対の声を上げましょう。
これ以上環境破壊が進むことは、大げさでなく人類の存続にかかわること。経済が活性化するはずはありません。
原発事故からも、コロナから何も学ばない企業、経済界、政府自民党とその補完勢力。

憲法25条で保障された、健康で文化的な最低限度の生活を守るには、草木染や天然素材の織物、着物を大切にしたいなら、自然環境、民主主義は守らなければなりません。
美しい夏の着物も着続けられるか分からない状況です。
民主主義はお上の言うなりでは育ちません。自分で調べ、考え、現状に声を上げていかなければなりません。

次回9月の染織実習は織り物デザインに入ります。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紬塾 第3回「とことん着尽くす」  ― 着物の更生・運針

2023年06月24日 | 紬塾’21~’24
いつものように着物の更生方法や、私物でその実例を見てもらいました。
また日常の暮らしの中でも、ものを大事にしていくことなど、みなさんが普段気をつけていることなども話し合いました。
トップの写真は、額田昇作コレクション『ぼろの美』を見てもらっているところです。凄まじい図録です。

山育ちの母が戦争中に一番困ったことは、食べること以上に、着ることだったと語っていました。配給も無かったと。
そういうこともあって、布を大切にとことん使う人でした。

ものの溢れる時代ですが、ただ節約とか、始末に暮らすとかだけではない、人と布の関係性なども話しました。

以前のブログ、2016年06月13日2018年08月30日などにも綴っていますので参照ください。



秋に麻の伊達締めを縫いますので、最後に運針練習もしました。
今回は糸を付けずに、針、指ぬきの扱いなど、運針の型の練習でした。
秋まで、家で練習してきてもらいます。

母のぼろの遺品の多くは、並縫いで接ぎ合わせたものがほとんどです。
立派なものを作ろうという野心はなく、手元にある布を慈しみ、布のいのちを全うさせてあげようというものばかりです。
運針は暮らしを、人生を豊かにするものだと思います。



この日の私の着物は、大きなシミをつけてしまい一旦は着るのを諦めた着物ですが、洗いも自分でやって、身ごろを前後入れ替えたり、表と裏も返しているものです。
一番大きなシミの箇所は背中ですが、裏から見るとわかるのですが、表からはほとんど分からなくなりました。(^-^;

帯は越後上布の着尺から仕立替えたものです。30年くらい前に、そごうの横浜美術館から出て、エスカレーターで下る時に、催事場で偶々見つけ、引き寄せられたものです。これは私が引き継がねば、、と勝手に思って購入しました。(*^_^*)
格子の藍は黒に近い勝色で、とてもいい色です。
糸も本当に綺麗です!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、コロナの5類移行に伴い、定点把握で感染者の状況が見えなくなっていますが、第9波に入って、拡大傾向が続いています。検査や治療薬などが有料となり、検査を受けない方も多いと聞きます。
家庭内感染が増え、入院ベッドも塞がりつつあるようです。

政府の無為無策もここまできて、とどめを刺した感があります。
NHKはマスク外しの政府キャンペーンを後押しし、公共放送が、国営放送になるというのは先の大戦でしたことの繰り返しになります。

6月に身内も、紬塾の参加者にもコロナに罹った人もいます。
マスク、換気、手洗いなど対策を緩めずにいきましょう。
政府は全く関心ないみたいですが・・

Twitterなどで、誠実な正確な情報発信をしてくださっている方もたくさんあります。是非チェックしてください。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紬塾’23染織コース― [真綿から糸をつむぐ]

2023年06月16日 | 紬塾’21~’24
23年度の染織実習コースが始まりました。

5人の方に2グループに分かれてもらい、真綿4.5gから糸を、久米島方式でつむいでもらいました。
初期の方たちは2gぐらいでしたが、何故かだんだん増えて、大変なことになってきました。。(^-^;


まずは真綿を台に掛けるところから。

4.5gというのは着尺の緯糸だけの重さの約1/90程ですが、全てつむぐのに2時間近くかかりました。

秋に小さな布を織るための、着尺糸の2~3倍の太さで、つむぐのは難しい太さです。単純な道具で、あとは人の感覚を働かせるだけの仕事ですが、現代人には、なかなかこれが難しい。。普段使わない脳の刺激になったと思います。





過去のブログもご参照ください。
2018.6.252019.6.07 など。

大事なことは、原始から人は布を織るように生まれてきているのですから、その糸をつむぐのも当然のことです。
大変ではありますが、紬塾に糸つむぎも加えているのは、根源的なところから体験してもらいたいからです。

麻にせよ、木綿にせよ、紬にせよ、布を織ることや、糸つむぎは、今の時代は趣味的なことのように捉えられがちですが、機械的なものが出てくる以前は、生きるためのとても厳しい、時間のかかる過酷な大仕事でした。

でも不思議に、今まで指導してきて、途中で投げ出す人も、いい加減な仕事をする人もいませんでした。
みなさんが無心で真綿と向き合っている姿に、人の根源的な仕事であることを再確認します。機械ではできない人のなせる技です。

私は紬の道を選んで良かったと、こころの底から思います。


今期もかなり、、、たくましい糸が引けましたので、織り上がりも楽しみです。^_^


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第2回紬塾「糸、色、織について」

2023年05月25日 | 紬塾’21~’24
第2回はいつものように、紬の一番基本となる、糸や草木の色、織物の経糸の重要性、堅牢性など、繭や真綿から糸を引き出すワークショップ付きで講義をしました。

紬と言っても使われている糸は様々で、その特徴をよく見て選んでいくと良いと思います。
生糸系、玉糸系、節糸系、真綿系、そのブレンド等、風合いも着心地も様々ですが、専門知識がなくとも、「違いがある」ということをまず頭に置いて、触れたり、纏ったりしてみるとよいでしょう。

トップの写真はお湯で煮た繭から1本の糸を引き出していくワークショップの、最初の糸口を引いているところ。
この後、みなさんに順番で黒い紙に巻き取ってもらいました。
蚕は頭を左右に大きく振りながら糸を吐き出しますが、それをゆっくり繭から解いてゆく体験です。ただ糸が細いというだけでなく、吐き出した時の糸のかたち、ウェーブが見てとれます。繊細な命の営みのかたちです。


みなさんが引き出した後、私が残りをゆっくりと木枠に巻き取ったものが上の写真。小さな綛になりました。


真綿からも、太腿の上で糸を纏めながら、少し太めの糸をつむいでもらいました。原初的なずりだし方式です。
この方法は、道具に頼らない分、技量が問われます。

他にも私が10丁の杼を使い、柔らかなよこ段を織っている映像を見てもらいながら、織り方の重要な点を説明しました。
着る人こそ、経糸の重要性、バイアス(密度)、反物の耳の重要性なども知ってもらいたいと思います。

後半は、草木の色のこと、染のこと、盛りだくさんでしたが、講義の内容は過去の当ブログ、カテゴリー「紬塾」も参考にしてください。
次回、最初におさらいと、話し足りなかった点を補足をします。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第14期「紬きもの塾'23」開講しました!

2023年04月26日 | 紬塾’21~’24
紬塾は一年お休みをいたしましたが、今期は5名の方と一緒に紬織りを中心に、着物の文化について、また自然のこと、環境についても考えを深めていきます。

コロナのこともあり、ずっとブログも読みながら、この機会を待ってくださっていた方もいらっしゃいました。関西からお越しくださる方もいらっしゃいます。紬のことをもっと深く学びたいという熱い思いはみなさんに共通しています。

なんの宣伝らしきものもなく、秘密結社ではないですが、、たまたまネット検索で辿りつくような、敷居高く、気軽には入れない…と思われると思うのですが、、よく勇気をもってお申込み下さったと思います。

初回の自己紹介でそれぞれの方の思いの一端も伺いましたが、充実した時間を過ごせそうで、嬉しく思いました。みなさんが帰られてから、Beerで祝杯を上げました。

紬塾の内容はブログには書けないことがたくさんあります。
その場に、一座建立してこそ伝えられることがあります。
紬塾はそういう場を設けているだけです。そこに集まる一人ひとりが作っていく場です。私も内容に磨きをかけて望みます。


僅かな時間ではありますが、いつも初回には草木の染の基本的な色であるピンク系、黄色系の糸質の違う単衣(私物)を羽織ってもらいます。
(写真のピントが合ってませんで、、(^-^; 無地に見えますが、細い縞です)
強い媒染剤を使わずとも自然に染まる色です。
私から先回りして知識は刷り込まないように、各自で色や風合いを感じてもらいます。
いろいろな感想が聞かれましたが、この実感からスタートし、色や風合い、紬とは何かの話を次回から進めていきます。



初回の私の装いはいつものように、修業時代の最後に、母の為に夜なべでつむいだ太い糸で織った井桁絣の着物。
帯は藤の文様の辻が花染を合わせました。十数年前に買ったこの帯は、ベースの生地に昔の赤城紬を彷彿とさせる経緯糸に強い節のある生地で、その力強さに惹かれました。今はもうこういう糸も、これを織れる機械もないのではないでしょうか?機械でも、ゆっくりでないと織れないからです。とても締めやすい生地です。昨近は本当になんでもツルツル、ピカピカ、ペラペラ、それでいて固いですから。。

しっかり噛んで、味の出てくる食べもの食べないと、ゼリーとスナック菓子だけでは育つもの育たないです。
紬塾では一人ひとりが自分で感じ、考えながら進めていきましょう。


玄関のニッチには北海道の方から頂いた、庭の日本鈴蘭の一株だけ活けてお迎えしました。慎ましくも、香り高く大好きな花です。
東京の高温多湿に合わなかったのか、僅かな株が、ひょろひょろと残っているだけですが、見守って育てたいと思います。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする