中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

ビワ染めの帯揚げと枇杷俳句

2019年04月26日 | 制作工程


来月の工房展(5/28-6/3)向けにモッコク、リンゴ、ナシ、ビワなどで帯揚げを染めています。
モッコクはグレイッシュピンク、リンゴは黄色系、ナシはピンク系、ビワはオレンジ系を染め分けています。

今までビワの枝葉でピンク系(灰汁媒染)、グレー系(鉄媒染)、茶系(銅、灰汁媒染併用)など糸染めにも帯揚げにも使ってきましたが、今年は太い枝の剪定があり、樹皮と芯材を分けてピンクを染め分けようと意気込んでかかったのですが、樹皮からも芯材からも、灰汁をかけてもピンクは染まらず、最初はウコン染めのような濃い黄色になり、予定と違って、焦りました。。
しかし、生き生きした色ではありましたので、数回染め重ねをしていくと、帯揚げとして使える色になってきました。

上の写真はビワのオレンジ系で、まだ仕上がってはないのですが、これから更に重ねるか、あるいは化学染料と併用にするかなどしばらく眺めて決めていきます。今の段階でも落ち着いたオレンジ系のグラデーションになっています。
秋の単衣のころにも使えそうないい色です。茜ほど赤くない茶味を含んだ大人オレンジです。写真では伝えにくい色ですが、実物はもう少し茶味があります。

ビワの花について以前のブログにも書きましたが、地味な白い花を長く咲かせますが茎は茶色の産毛があり、甘い香りはあるものの、大きな葉に隠れるような感じで、あまり注目もされないと思うのです。
しかし、ゆっくり花を咲かせ続け、時間をかけてあの甘くみずみずしい独特の果肉をもつ実を熟れさせる枇杷に心惹かれます。

枇杷の実は俳句に詠む方も多いでしょうが、花は詠まれるのだろうか?と調べると、案外ありました。

枇杷の花は冬の季語で、実は夏の季語になります。それぞれ8首ほど選んでみました。
花は侘しさや寂しさが詠まれ、実になると、甘美さや生命感が詠われています。

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<枇杷の花>

くちそそぐ花枇杷鬱として匂ひ  橋本多佳子

輪番にさびしき僧やびはの花  黒柳召波

職業の分らぬ家や枇杷の花   正岡子規

むく犬はどこに眼ありや枇杷の花  中村草田男

医師もどり喪章をはづす枇杷の花  大島民郎

枇杷の花侘しき夕日とどめをり  椎橋清翠

枇杷の花薄日さす寺の古疊  鵜沢四丁

枇杷の花大やうにして淋しけれ 高浜虚子


<枇杷の実>

蜜着の枇杷の皮むく二人の夜   鷹羽狩行

黒衣より掌を出し神父枇杷をもぐ  津田清子

燦々とをとめ樹上に枇杷すする   橋本多佳子

枇杷買ひて夜の深さに枇杷匂ふ   中村汀女

枇杷啜る妻を見てをり共に生きん  石田波郷

木の上にひとり枇杷くふ童かな   正岡子規

一人居のともしび色の枇杷食べて  細見綾子

黒髪を持つ憂さ枇杷の熟るるころ   三木 照恵

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枇杷は古来漢方薬や民間療法にも使われたパワーのある、人にも有用な植物です。
煮出していてもとろみ成分がとても強く、チップと染液を分けるための濾す作業に時間がかかります。
しかしいかにも肌に良さそうなヌメリ感です。
染め上がった色も人の肌を生き生きさせてくれる色です。 

あとひと月もすると枇杷の実の熟す季節になりますが、実も薬効成分が高いようですので、野鳥と共にありがたく頂きたいと思います。(^q^)

さて、工房は世の中の10連休とやらとは全く関係なく日曜以外は仕事をしています。(^_^;) 
工房展の詳細は連休後半にお知らせいたします。
 





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梅染め「帯揚げ百彩」(続)

2019年02月01日 | 制作工程




前記事でも書きましたが、蕾のついたしだれ梅で帯揚げや糸を染色中です。
剪定枝の一枝だけ瓶に活けて部屋の中に置いておきました。
3日後に開花しました。桃色の八重咲きです。可愛いです!!芯の緑も効いています。
こんなに美しい花を私達に見せてくれる植物を染めさせてもらい、身にまとわせてもらえることは幸せなことです。
そして身につけると優しい気持ちになります。


中位の太さの枝は鉈でチップを作ります。タテの繊維に沿って“へぐ”ように薄くします。


材からはお湯を入れてすぐに色が出始めます。


煮出しの状態は小さなガラス瓶に入れ光に透かして色を見ます。煮出し時間はチップによっても部位によっても違いますので、よく観察します。
沸騰後2分が左、3分が右です。すぐ火を止め濾します。長く煮出せばいいというものではありません、、。
色が薄くなるだけではなく、濁りが出ることもあります。
色の観察は染めている最中や、火を止めて、留め釜の時にも吸収の状態を見ます。

紬塾の実習の時に染色をしている方たちから本に書いてるのと違う、習ったやり方と違う…、とよく言われます。
私の今までの経験、学び、発見したことに基づき、自分でよく観察、確認しながしながら進めるのが“技”というものだと思っています。


ショールや帯に使う少し太めの節糸も染めました。媒染前の色。


銅を使ってベージュより少し濃い茶系を染めています。乾くと色は半減しますので、それを見越して染めます。


帯揚げは梅だけでも20色染分ました。
室内の竿にかけて色を眺めながら染め重ねの必要があるかないかも見ながら、1週間ほど空気酸化させ、その後、湯のしやさんに出して幅出し、シワ伸ばししてもらい完成します。

枝はすべて使い切りましたが、まだ煮出した染液が少し残ってますので明日の朝の光で眺めて染め重ねを判断します。



冬の間だけパンくずや米、みかん、リンゴ、落花生、脂身など、野鳥たちに餌をやり、水を置いておきます。
この日はメジロのツガイが来ていました。メジロの緑の羽根は何で染めたのでしょうか?
森や林の中で目立ちすぎないよう、神様が絶妙な色に染めてくれたのでしょう。

野鳥の羽の色を見ていると、鮮やかではあるけれど、やはり灰味を含んだ色相です。
自然観察は本当に飽きることがありません。
仕事の合間に目を休めさせてもらっています。

3月6日~9日まで「紬と帯揚げ100彩」-草木の色を取り合わせて-
南青山のこまもの玖さんで着物、帯、帯揚げ、帯締めなどを取合せた展示をさせていただきます。
また、仕上げを済ませてからご紹介します。



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梅染め帯揚げ

2019年01月25日 | 制作工程

                             夕暮れの中の一点物^^;梅染帯揚げ

3月上旬の展示向けに帯、着尺、ショール、帯揚げの染を同時進行させています。
頭の中は毎回新たな仕事ばかりですので、いっぱいいっぱいですが、気持ちを集中させてかかっています。


近所で、しだれ梅の剪定したものを捨てるために束ねて置かれているのを偶然発見!!
家の方に伺うと、花咲く直前ですが、伸びすぎてしまったので、、ということでした。
バケツ1杯分だけいただいてきました。細い枝がほとんどですが、これで3Kgほどあります。帯揚げを染めるには十分な量です。糸も染められそうです。


今年の初染に固い蕾のついた梅の枝を染められるのは何と幸せなこと。。
固い蕾から、ほんの少し濃いピンクが覗いています。薄いピンクの花をつけるそうです。


ここ数年、長い間の手の使いすぎで指の関節が痛みます。
チップ作りは主にアシスタントやスタッフにしてもらいます。
煮出しの1煎目では梅酢のようなとてもいい香りがします。


まずは白生地を湯につけてよく洗います。梅の3煎目だけで3枚の生地を1回だけ染ました。
淡い赤みを含んだクリーム色です。手前は白生地のままのもの。

乾かしてから次の染に入りますが、まずは無媒染の状態の色をよく見て次の方向性を見ていきます。
この染材は赤みが強いのか、黄色味が強いのか‥など。
次は煎汁によって使い分けたり、媒染剤を選んだり、煎汁をすぐ使うか、一日置くかなどの判断もします。
ここから染め分けが始まります。

染材採集の時期、何煎目か、媒染剤の種類、染め重ね回数、生地の質感など、色は限りなく生まれてくるように思います。とは言っても身近な草木の多くの色素は黄色、赤、そして緑葉などから染めるうす緑系です。
しかし化学染料と違うのは、色素以外の成分などで、いろいろに絡み合ってくるところが、頭でイメージしたものではないものと出会えるから面白いのです。
外から教えてもらえるところがスゴイところです。

自分の好みとか、個性とか、そんなものありません。
こんな色にしてやろう!みたいな姿勢ではなく、どんな色が生まれてくるか、創意工夫はしますが、毎回新た。
ワクワク、ドキドキで飽きることはないのです。
ここには書けませんが、裏技も使いながら、色を見て、状態を見て数日掛けて一枚一枚染め上げていきます。

しかし、色の標本を作りたいわけではないので、データというものをほとんど残しません。
あまり意味がないと思ってます。
そして大事なことは、帯揚げとして、あるいは着物の糸として使えるかどうかを判断しながら染めることです。

国産の白生地も手紡ぎの糸も素材としてとても高価なものです。失敗は許されません。
しかし、いつでも、すべて上手くいくとは限りません..。なのでとても緊張します。
身も心も澄んだ健康な状態でないといい色は引き出せないようにさえ思います。

トップの画像は梅を染め分けて干している途中経過です。。
カラフルではないけれど深い、奥行きのある色を染め分けたいです。

夕方5時にまだ庭に日が残っています。日一日と日脚が伸びます。
寒中ではありますが、染色するには乾きも早くいい時期です。
しばらく梅の染め重ねをしていきます。

3月6日~9日まで「紬と帯揚げ100彩」-草木の色を取り合わせて-と題して、
南青山のこまもの玖さんで着物、帯、帯揚げ、帯締めなどを取合せた展示をさせていただきます。
また詳細はブログでお知らせします。


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真夏日の整経と工夫

2017年08月26日 | 制作工程
シンプルな縞の着尺+帯を整経しました。
整経としては同じ繰り返しの簡単なタイプのものです。

40年近く織り続けていますので真夏を40回過ごしたことになります。
この間冷房なしの環境で仕事を続けてきましたが、歳を取りましたので、そろそろエアコンを使おうか、、、と考えなくもないのですが、結局今年も冷房を使う気になれず扇風機やエアコンの送風で過ごしてきました。

今年は8月に入って雨降り、冷夏でしたが、この日は暑さがぶり返しとても湿度も高い日でした。朝9時から10時過ぎまで、一気に済ませました。

工房は風通しのいい所ですが、整経の時には節糸など毛羽の多い糸を使っていますので、風で糸が揺れて絡み合ってしまいます。
なので糸には風を当てないよう直接風が入る窓の障子も締めて行います。


扇風機を首振りにせず自分の身体にだけ当てますが、さすがに締め切った部屋は室温、湿度もかなりになります。キツイです。必死です!


整経で重要な綾取りも手の湿り気でいつものように早くは出来ません。


お尻を向けて失礼しております。。。
若い頃は正座クッションなどは使いませんでしたが、数年前から腰への負担を軽くするために使っています。


整経ムラを少なくするために足を開くように座り、身体の左右のブレを安定させます。


糸束をつかむ右手だけは濡れタオルで汗を拭いながら糸の滑りを悪くしないようにします。


節糸の中でも特に引っかかりやすいタイプの糸の木枠には皿を乗せ糸が出やすくします。


整経を終えたところ。
間違いがないか糸束を切り離す時、綾を整経台から抜く時、今でも心臓がドキ、ドキします。


整経が終わると糸束を台から切り離し、鎖編みにします。

糸の長さは20メートルにもなりますので、ダブルに編んでいきます。

右、左、交互に編みます。

集中力を保つために様々に工夫をしますが、衣類も重要です。
この日は25年以上着続けている袖口から風が抜けるフレンチスリーブの綿ブロードの開襟シャツに麻のパンツ。
下着は綿麻の薄手のラン型インナー1枚で(良品ですが現在売られていない‥)、通気、放湿性のよいものを身に着けます。下着は特に大事ですね。

整経の話に下着の話まで出てくるのは関係ないこと――ではなく、よい仕事をするためには集中できる身支度から始まっています。
着飾るお洒落用の着物を織っているけれど、布を生み出す現場は厳しいものです。アクセサリーを付けたり、お化粧をしたり、着飾って出来るものではありません。織物指導をしていた頃もそういうことから指導していました。

整経は織物の良し悪しの基礎、土台を決めるようなものですので、今でもとても緊張しますし、体調にも気をつけます。
このあと仮筬に通し、経糸を千切りに巻き込み機に上げ、経継、織付けと進めていきます。

良い整経、良い巻き込みは真っ直ぐな布を織る絶対必要条件です。
気温、湿度にも影響される難しい手延整経ですが、更に様々な工夫と技術の研鑽に務めたいと思います。




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櫻工房の庭木で染める・続

2017年07月19日 | 制作工程


櫻工房の庭木の枝葉を使っての染の作業も2週めに入っています。

東京は雨の少ない梅雨となっていますが、染色をするにはよく乾きますのでいいのですが、温暖化による地球規模の気象の異変が心配されます。

染色の時には水を使いますが、無駄にしないよう気を使いながら様々な工夫をします。
清水でよく洗うべき時には惜しまず使い、下洗いの時にはその水を順繰りに使いまわすこともします。
洗い水を捨てる前に必ずいいのかな?と自問してからにします。
染色のノウハウだけでなく、そういうことも含めしっかり身につくと仕事全般に無駄な動きがなくなるのです。アシスタントも身についてきました。

さて先週は淡い色系統から中間色でしたが、今週は中間色から濃色へと染色作業が進んでいます。
藍染にも少し草木を掛けて調整して使いやすい色にします。

濃い色は1回や2回では草木の生木の場合は染まりませんので、時間を掛けながら染め重ねていきます。
濃色処理剤もありますが、糸の芯まで色を含ませていきたいので私は使いません。
真綿の糸や普通練りの糸は染め重ねで糸を傷めてしまいますので、そのことは気をつけて見なければなりませんが。


生木での染色作業はまず染材のチップ作りからです。
細い枝は剪定バサミで斜めに切って切り口を大きくして抽出しやすくしていきます。


梨の樹皮は梨の果実の皮と一緒ですね。この枝からきれいなピンク系がでます。


枝が太くなりハサミで切れなくなると鉈の出番です。この枝はシラカシです。


こちらは桜の中くらいの太さの枝の樹皮です。桜のささがききんぴらでも作りたくなる美味しそうな感じです。
木によって堅さや匂いが違います。


この小さな鉈は30年近く前に知り合いから頂いた生け花で使うもので、片刃でとても切れ味が良くまだ研いだこともありませんが活躍してくれています。サクサク切れます。この小ささが女の手に合います。

知り合いのお義母様(渡辺と名入です)が生け花の先生で、その遺品を整理した際に出てきたものです。
この鉈を「染の仕事に使えるのでは・・」と送ってくださったことにとても感謝しています。


また、桜の木の切り株も住宅地の庭の八重桜が大きくなりすぎたということで強い剪定をされた時に出た幹です。

私が草木で染をしていることに関心を寄せてくださっていた方が声をかけてくださいました。
程よい大きさで扱いやすく、振り下ろされるこの鉈を受け止めてくれています。無くてはならない道具です。 

人の繋がりがあって、助けがあってモノも繋がれこれまで続けてこれたのだと今更ながら感謝の思いを新たにしています。

まだ来週もこれらの道具と共に染めの作業が続きます。






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櫻工房の庭木で染める

2017年07月11日 | 制作工程



庭木の剪定があり大量に枝が伐られました。上の画像は庭の真ん中にある桜の木の剪定中。
染めで使う分を取り除いた残りは剪定ゴミとして出します。束ねる作業をしてくださっています。町田市では堆肥にするようです。
森のような庭も好きなのですが、東京の住宅地ですので剪定をしないわけにはいきません。


この画像は柿、桜、モッコクなどを使って染め分けられた糸を干しているところです。
直射にもしっかり当てます。染め重ね堅牢にします。
限られた染材から様々な工程における工夫もして、色調の変化をつけていきます。

自然な無理のない美しい色に惚れぼれしながら仕事を進めています。
何色と言えません。優しく力強く気品のある色です。
自然界にあるこの色を身につけない手はありません。。

この後更に染め重ねや掛け合わせなどをして色数を増やしていきます。

あとはリンゴ、梨、シラカシもまだ手付かずですが、木蔭のバケツに活けて保管しています。生きた状態がやはりきれいに染まります。
最終的にどんな感じになるか私もワクワクしています。
帯揚げも同時進行で気合を入れて染めています。

梅雨明け前とはいえ暑い日が続いています。風もありよく乾きますので染め→干すの染め重ねをするには良いです。
少なくとも今月一杯は染めの作業が続きそうです。
工房は風通しは良いのですが、染色中は熱気、湿気で更に暑くなります。
水分補給や梅干しをしゃぶったり、熱中症に注意しながらの日々です。
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草木で染められた紬糸のストック

2017年07月05日 | 制作工程


新しく染めの作業に入る前に糸棚のチェックをしました。

上の画像は高さ1.6mほどの収納棚の糸ですが、左が真綿系(半つや消し)、右が座繰り糸(光沢あり)。
様々な染材で染められたものです。
ほんの少し残った糸は桐の文箱へ。帯を織る時などの差し色に結構出番があります。
僅かな残糸もとても大切なのです。
この棚は機の傍にあって扉を開けば糸が見渡せ、すぐに取り出せるようにしています。

普段から大量の糸を用意してあるのですが、展示会続きで染の時間をあまり取ることが出来ず、色の偏りもでてきました。
しかし、少なくなったと思っていましたが、改めて見ると結構ありますね。。。^_^;;
たくさんの草や木を染めてきました。自宅の植物ばかりではなく、ご近所でいただいたり、友人、知人が送ってきてくれた植物もあります。

草木は鮮度が大事ですので夜中まで一人必死になって染めていた頃を思い出します。
色々な工夫で一種類の植物からでも様々な色相に染め分けることもできます。キリがないのです。
何を織るでもなく取り敢えず染めずにいられないような時もありました。
ここに上げている色糸は身近な植物ばかりです。ごく自然な色です。


こちらの画像は1.8mの高さ、90cm幅のスチールラックは奥行きも深い棚ですが、上の扉の中はベースによく使う白茶系、ピンク系グレ-系などを中心にほぼ目一杯入ってます。 


桜染はスチール棚の深い引き出しに2杯分。かなり少なくなりましたが、、。


湿気は厳禁の鉄媒染のグレー系は桐の茶箱型衣装ケースに。


1~2綛の少なくなった糸は見やすいように帯箪笥の盆の中に。


二つ絣、四ツ絣や差し色的に使うことの多いコブナグサの黄色なども帯箪笥に。

この他に藍染は柳行李、紫根染め、茜染、ショールや帯などの太い糸は衣装箱や収納BOXにもあります。

デザインに関して、私は色糸(白を含む)を見ながらイメージを膨らませ織物設計を考えるやり方で、デザインが先にありきではないので微妙な色や糸質の違うものなどたくさん染めておく必要があります。

自分の中にある感覚だけではなく、外にあるもの(植物染の様々な色相、糸のかたち、糸質)に刺激され発想が膨らむといいと思っています。
色素としての色がそこにあるだけでなく、紬糸の素材感が生み出す色があるわけです。

更に織物はタテ、ヨコ合わさって生まれてくる織り色、布の風合いが生み出す陰影も最終的な色になります。
色が畳みかけられる重層的な世界が紬の場合は特にあります。

繊細さに気付く目と外にあるもので生じてくることの両方を大切にしながら意識して制作していかなければなりません。

植物でも媒染剤によっては鮮やかな強い色を染めることも出来ますが、私はナチュラルで微妙な色を中心にした紬を織りたいと思います。
強い色のものは取合せなどで使う余地も残さなければいけませんので。
この点が着るための現代の着物を織るということでは最も大切と思います。

今あるこの糸たちだけでも一人では一生かかっても使いきれませんが、すべて人の手で紡がれ、挽かれた糸ですから染めたからには無駄には出来ません。
自然で、着る方にとって自由度の高い紬を織りたいと思っていますが、着てくださる方がいるかぎりはどんどん織りたいと思います。。。(*^^*)

暫く染の日々が続きますが、今この季節にしか出ない色があります。
いつも植物が教えてくれる新たな発見があります。

生き生きした清き色が染まるよう祈るような気持ちで向き合います。









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絹糸の精錬と人の叡智

2017年06月30日 | 制作工程


梅雨の晴れ間をぬって節糸や玉糸の精錬をたくさんしていました。
蚕が吐き出した糸はすぐ使うのではなくアルカリ液の中で練る作業が必要です。

樫の灰から灰汁を作りその上澄みを使って練ります。
糸に触れた時の感触で練り具合をみます。
練り減り率をきっちり出します。

普通練り(セリシンを完全に取り除いた柔らかな絹糸の状態)は25%と言われていますが、草木で何度も染め重ねをする場合はやや若練にします。
私は若練の中にも練り具合を色々用意して織るものによって使い分けています。
未精錬の糸は固いので擦れ易く、筋切れすると聞いたことがあり私は使うことはありません。

当初はマルセル石鹸練りをしていましたが、灰汁練りに変えてから試行錯誤をしてきました。
今は精錬の釜の止め時を人差し指と親指の間で糸をきしませ、ヌメリや繊維の膨らみの感触でほぼ掴めるようになりました。
精錬は染る前の大事な工程であり、織物の骨格をなすものともいえます。色の発色にも影響します。

上の干してある画像は比較的おとなしめの玉糸です。
写真のピントが手前に合っているのでわかりづらいですが、左と右の糸の違いがわかりますか?撚糸の違いがあります。左が甘撚りです。ちょっとフワッとしてます。


こちらは左が正繭と玉繭との混じりの糸、右は赤城の節糸の若練。
枠はずしの節糸は白くはないけれど糸の波状形(営繭曲線)がしっかり残っていて力強い美しさです。この糸の形が本来の紬の美しさの原点だと思います。

それにしても蚕が吐き出した糸の回りは接着剤の役目のセリシンで25%も固められているのは繭を固く作る必要があるからですが、お蚕さんも偉いけれど、繭をお湯につければそこから1本の繋がった糸を挽き出していけることに気付き、またその糸を灰汁で煮ればしなやかな光沢のある繊維が取れることにも気付き、撚り合わせ、何千年も前から織物に利用してきた先人も偉いですね。

この神秘の糸を絶やさないよう微力ながら私も上質な織物を織ること、着ることを推進していきます。
時代は進んでも、太古の昔に思いを馳せものを作り使うことは大事だと思います。




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真っ直ぐな布を織る

2017年02月21日 | 制作工程
今年に入ってから二反分の着尺の設計、糸巻き、整経、経巻、織付け、柄決めと集中して進めてきました。間もなく織り上がります。
染織のどの工程も熟練を要し、またどれも手の抜けないものですが、特に整経と経巻が真っ直ぐな布を織るうえで最も重要で、最も難しい作業です。

   
整経をしているところ。少し足を開いて身体を固定、安定させて座ります。静電気が起きにくいよう冬は鍋の湯で保湿します。

整経ムラを出さないように整経をすることはもちろん大事で様々な注意を払いますが、手延整経でムラをゼロにすることはできません。


ムラは経糸を千切に巻き取る経巻の段階でほぼ完璧に修正します。緩めに巻くことで僅かなムラがわかりやすくなりますので、一回巻き取るごとに手のひらでテンションを確認し、緩んでいる場合は人手があれば手で引っ張ってもらいながら巻ます。一人でする場合はゴム紐で括ったり、軽く自分の手で引っ張りながら丁寧に巻き取ります。

経糸がきちっと整っていると織るのもスムーズで、織り上がった布も耳がワカメのようになったり、逆につれたりせず平になります。


節糸、真綿紬糸を使っていますので、巻き込みながら糸に捌きを入れます。不要に触らずに捌きます。

経糸は人生に例えると宿命などと言われ、自由に変えられない例えにされたりしますが、整経は建物で言えば柱を立てるようなものでしょう。長さが違ったり、斜めに建てられた柱で真っ直ぐな強固な家を建てることは出来ないように、織り方でなんとかしようと思っても不可能です。

織の基本を身につけるには、経と緯が直角に交わらなければならないという意識をもっていなければ何年やっても身につくものでもなく、ただ織るだけになってしまいます。テキトーでもなんとなく布にはなりますが、その良し悪しは一目瞭然です。

アシスタントにも絶えず織り前が真っ直ぐになっているか、機の中心に経糸がかかっているのかなどチェックをするように指導しています。チェックというとすぐにメジャーなど使いたがりますが、そうではなくまず自分の感覚で僅かな違いも「変だ‥」ということに気づけるようになることが大切です。

先日の五感のワークショップでもそうなのですが、染織の仕事でも視覚、聴覚、触覚は日々使います。
紬糸の複雑な形や撚糸の状態を見つめることは言うまでもありませんが、草木の生木で染められた色の複雑さの微妙な違いを見極め、機の音を自分で聴きながらテンションを決め打ち込みの加減をする。ルーペで糸の密度を数えなくてもいい状態で織り進んでいるかを感じ取る。
糸の糊付けの濃度を手で確認する。計量器で測るのではなく濃度の感触を身体で覚える。
機に糸をセッティンぐする際に先に尺指で測るのではなくまずは自分の目でまっすぐに左右の幅を見ながら掛ける。
確認のためにメジャーも必要ですが、目盛りを見間違えていても全体を自分の目で見ていなければ、「変だ‥」ということに気付けないでしょう。
大事なことは自分の身体にメジャーを持つことです。
意識し五感を通して糸や色や織ることと向き合うことが美しい善い織物につながるのです。

次世代に真っ直ぐな布を手織りすることを伝えるのは言葉よりも手本を示す姿を見せることです。
そしてそれをよく見て真似事でもいいので身体で覚えることが何よりも大切です。
師の、先輩の姿を見ておけることは幸せなことですね。

※次期紬塾の詳細は3月1日にUpの予定です。

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草木の色は無限

2016年06月29日 | 制作工程
 

身近な植物を煎じていくと、赤と黄色の色素が出てきます。
植物によって赤が多いもの、黄色が多いもの、その両方が拮抗しているもの、あるいは同じ植物でも部位によって、また煎じる回数、煎じ方によって赤味、黄色味の違いがでるものもあります。
数種類の植物からたくさんの色相を得るには、それらのことを考慮しながら染め分けていきます。

今月はヤマモモを中心にたくさんの色を染め分けました。
もちろん媒染剤の違いもありますが、部位の違い、煎汁の違い、同じ染液を染重ねていくなどによりかなり違いのある色を得ることになります。

一本のヤマモモの木の小枝や葉や少し太い枝の樹皮だけ、あるいは芯材だけと分けて染めたりもします。
またヤマモモの無媒染の色も私は自然な柔らかな色でよく使います。
染重ねていくと灰味が顔をのぞかせてきて、鉄媒染のグレーとは違う微妙な奥行きのある色合いになります。特に葉っぱに少し黒味も含まれているように思います。黒味も重要な色の要素です。その黒味が濁らず、深味になったところで染重ねをやめないといけません。

また、被染物としての糸や布の性質により、染めあがりの色が違うのは言うまでもありません。
どのような精錬方法かによってももちろん発色は違います。それも視野に入れて染を展開すると更に無限の色が染まるわけです。

そんなわけで、桜の色は何色かと問われても私には答えられないのです。
桜は桜としてその地で生きていくために地中から養分を吸い上げ、必要があって花を咲かせ、種を残すために葉を紅葉させ、落とし、来年へと繋ぎ生き抜いているわけです。

その枝葉の一部を私たちは使わせてもらい、身を包み、身を飾るためにその成分を糸や布に移します。
自然の営みを受け手もよく理解した上で使わせてもらいたいものです。私もまだまだ勉強不足ですが。。

人が“美しい色”と感じるのは何なのか・・・

あるファストファッションメーカーが30色の多色展開の服を広告に上げているのを見たとき、私にはある種の一色にしか見えませんでした。
奥行のない同じ性質のすぐに飽きのくる色の羅列にしか感じられませんでした。

草木で生き生きとした色を染めさせてもらうことを続けていますが、飽きることを知りません。
創意工夫を重ねていくと、毎回新たな発見が有り、心から美しいと思うことが多いです。もちろんうまく染められる時ばかりではありませんが。。。

草木の生木の状態での染色は何分煮るとか何%の染材、媒染剤でできるものではなく、絶えず状況を観察した経験を積みかさね、素材と実践で得られた知恵や経験則、環境や状況がいろいろ絡み合ってその時に生み出されてきます。
私は細かなデータを記録することにあまり興味はなく、どんな色が生まれるだろうかという毎回新たな発見への興味のほうが強いです。
また自分の思い通りにならない色をどう扱えるかがだいじです。思い通りの色などないのだと思います。

あとは織物であればそれらの無数の糸の組み合わせから生まれてくる色、紬糸であれば太細やネップなどの立体感による陰影からも色は生まれてきます。紬織りの糸染の色は平絹系の先染、後染とも違います。

色自体がもつ奥行き感と、糸や布の違い、光線の違いによって複雑に絡み合うのが色です。
色名や色の記号番号にとどまることはないわけです。

また、着物の場合は着る人によって、同じ着物が全く違ったように見えることもあります。
取合せの帯や小物でも違った雰囲気を呈します。

人種などの瞳の色によっても色の識別に違いがあるとのことですから一括りに色については語れないかもしれませんが、外国の方たちにも作品や糸を見てもらうことがありますが、みなさん一様に目を輝かせてその美しさに驚かれます。

トップ画像は右から9枚はすべてヤマモモで染めた帯揚げです。微妙な違いの色で写真には写しきれませんが、モニター画面を少し動かしてご覧頂くのも面白いかと思います。

薄い色でも灰味のあるなしで、着物の取合せの印象も違ってきます。
陰りのある色は秋の陽光の中で取り合わせていただくのも良いかと思います。


6月~9月にかけての絽目の帯揚げは灰味の少ないクリアーな色も染めています。
こちらの画像は左から、白樫、桜若葉、桜若葉、残り3枚は梨です。

美しい色やものは自然の理と深く関わっています。
梅雨空の中でも自然の色は心を和ませ落ち着かせるものですね。

これらの帯揚げも櫻工房内でご覧いただけます。
美しいものについて語り合えればと思います。
ぜひご予約の上、ご都合のよい時にお出かけください。

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手結い絣を織る

2016年01月30日 | 制作工程
工房ではシンプルな手結い絣の着尺を現在進行中です。
この写真はまだ織りつけ中のものです。
私はシンプルな絣が好きですが、シンプルゆえにごまかしのきかない難しさもあります。
お洒落着の紬ですので、絣と地糸を混ぜて織ることで柄が強くなりすぎず、奥行や陰影も生まれます。

年末に小綛にしてあった糸を正月明けに何日もかけ括り終えました。
1尺の幅に3分の括らない部分が2ヶ所あります。ほとんどを染めないということになりますので、梱包紐を使って防染する括りはとても時間がかかります。中に防染のためのシートも巻きつけています。
逆パターンの濃い地色に白や薄い色の絣の場合なら括りは早いのですが、逆は本当に大変です。
染め重ねをして、茶系にしました。染める時には留め釜をして括り際にも染液が浸み込むようにします。


手結い絣は設計図はシンプルですが、織り手の力量が試される、とても難しい技法です。
この絣は耳に遊び分の糸があり、引きずらして曲線や斜めの模様を織り出すことができます。
遊び分の耳糸を端で抑え、傾斜をつけ所定の位置に絣を合わせます。所定といってもこれも経糸の中で見え隠れする糸を見定めるのですから簡単ではありません。


完全に打ち込む前に、手前に寄せてきて絣の位置をきちっと決めるのですが、爪の先で調整をして、良しとなったら強く筬打ちします。絣合わせに気を取られて打ち込みが甘くなったりしがちですので気を付けなければなりません。また、経糸は節糸ですので、毛羽があり目飛びにも気を付けなければなりません。注意力も必要です。
絣を合わせるリズムをつかみ、細部と全体を瞬間的につかんでいくと早くきれいに織ることができます。粘り強さは必要ですが、無駄な動きで時間をとらないことです。
一柄織るのにかなり時間を要しますが文様が織り出され、連なっていくときの喜びはひとしおです。
この絣がきちっと描け、草の文様の味わい、風情も醸し出せたなら、織り手として力をつけたということになります。

私の師である宗廣力三先生はこの手結いの方法で今までになかった絣文様、それでいて洗練の域に達した絣文様を生み出し人間国宝に認定された方です。
手結い絣は素朴なだけではない、奥深い可能性を秘めた技法と言えるかもしれません。

この草文絣は東慶寺ギャラリーでの個展に間に合わせるべく頑張って織っています。

拙著の作品集「樹の滴」の中にも手結い絣の技法の作品が2点掲載されています。是非ご覧ください。

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節糸を巻く

2015年12月29日 | 制作工程
今年も暮れようとしています。
工房は本日が仕事納めです。

先月の染めの仕事の後は織物設計をし、あとは糸をひたすら巻き、整経、仮筬、巻き込み、経て継をしていました。

糸巻きは一番簡単で単純な仕事のように思うかもしれませんが、節糸の扱いはこれがなかなか難しいのです。この糸巻は時間がかかりますが、後の作業のすべてに繋がってきます。

まず糸に糊をつける前には綛の綾振りを正しい状態に直します。染めや洗いで糸が乱れているからです。綛を整えたうえでゆっくりと座繰りを回します。


フシの状態をよく見ながら巻きます。赤城の枠外しの糸は蚕が吐き出したウェーブが残っていて本当にきれいな形です。うっとり眺めることも・・


途中、糸の結び目が出てきます。写真では分かりずらいですが、この結びは玉結びになっていますので、

この段階で必ず機結びに変えます。織っているときに筬に引っ掛かり糸を切ることになるからです。


糸を持つ左手の指の腹で結び目を感じとります。糸は強く掴んではダメで、軽く当てているだけです。強く掴むとせっかくつけた糊を落とすことになりますし、糸を伸ばしてしまうことにもなります。伸ばされた糸は織りにくいです。風合いも悪くなります。


帯のやや太い節糸になるとさらに糸の表情は豊かで好ましいのですが、


取り除くフシと、とりあえずそのままにしておくものとを見分けます。
ちなみに上の写真の節はそのまま、こちらの小さな節は少し整理します。


さなぎの脱皮殻なども入っていて(写真中ほどの黒いところ)糸巻きをしながら取り除くことになります。


糸くず入れはこんな感じになります。


木枠に巻き取る時には整経に必要な回数を数えます。途中手を休めるときにはメモをしておきます。数が多い時は100回ごとにおはじきを置いたりします。急に人に話しかけられたりしてフッと忘れてしまうことがあるのですが、木枠に巻かれた糸の厚みで大体の量を掴むこともあります。数字だけに頼ってもいけません。

回転のカウンターを取り付けることも考えたことがあるのですが、頭の体操のためには糸のかたちを見ながら、数も数え、綾振りも自前でするのは同時にいくつものことを進めていく訓練にもなりますので今のところ頑張っています。電動の糸巻機に変えるつもりもありません。

今の時代にこんな悠長な仕事はどうなのかと思う方もあるかもしれませんが、この豊かな糸巻の時間を手放す気にはなりません。
機械化、工業化で良くなった点ももちろんあるのですが、効率を上げることばかりの時代は経済も行き詰り、自然や人の心を荒らし、壊した側面があったことを見逃すわけにはいきまん。
質の豊かさへシフトした慎ましやかな時間のなかの幸福に、上質の手仕事も重要な役目があると思います。


丁寧に糸巻きを終え、整経して鎖に編まれた格子着尺の経糸。


千切りに巻き込まれ、機に上がる出番を待ちます。


こちらはもう一反、ヨコ絣用に小綛にした真綿紬糸。アシスタントの仕事始めは絣の括りからです。

国内外、大変な時代ではありますが翻弄されることなく、こんな時にこそ人がやるべきことをやることだと考えます。
「善きもの、美しいもの」が私たちを救うのではないでしょうか。

さて、明年2月下旬に北鎌倉の東慶寺さんのギャラリーで個展をさせて戴くことになりました。頑張って制作に励んでいます。詳細はHP、ブログでお知らせします。
この時期、境内は梅も見ごろということですので是非お越しいただきたいと思います。

ブログ読者の皆様もどうぞ良いお年をお迎えくださいませ。


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冬樹を染める

2015年12月10日 | 制作工程
11月下旬から2週間ずうっと糸染をしていました。冬の色を染めています。

庭木の剪定を2回に分けてもらいました。染色するために、新しい染材を使いたいからです。
今回は木斛、桜、柿、リンゴを染めました。
現在部屋の中は空気酸化させるために竿にかけられた糸かせだらけです。


桜をチップにしています。まずは鋏の入る細い枝から使いますが、鋏では無理になってくると小さな鉈を使います。
冬の木はちょっと硬い感じもします。水分が抜けてきているのかもしれません。
鉈の振り方も木をそぐようにすると(繊維に添わせる)比較的サクサク作れます。
体が疲れてくるころに1キロほどになりますので、その分を煮出し始めます。


鉈を使うための台も桜の切り株です。


干している糸は以前染めた梅のピンクに木斛を重ねたものです。
染め重ねをすることで濃くもなりますが、色相を増やすことにもなります。


すぐに使わない枝は水を張ったバケツに活けておきます。
扱いやすいよう短くした枝ですが、冬芽を見て天地を間違わないように。


桜で樺色を染めています。


染めムラを作らないよう糸を繰ります。 
触れば触るほど真綿系の糸は毛羽立ちますので、繰るタイミングをつかみます。


次は途中で糸を絞ります。長いかせの場合は長さを二つ折りにしてざっと絞ります。


熱いので手早くやります。


次はかせを長いままきっちり絞り上げます。これが案外難しいのです。
そのあと軽くはたいて糸に風を入れます。
そしてまた染液に戻し沸騰まで時々糸を繰りながら染めていきます。


寸胴鍋をフル動員で次々に染めていきます。
放冷、留め釜する糸、天日干し中の鍋(1回使っただけでは染液は捨てません)、媒染中のもの、作業の組み合わせを考え無駄なく仕事ができるようにします。ガス台は床に1台、あとは普通のガスレンジもうまく組み合わせ順次効率よく作業します。
アシスタントとあうんの呼吸 ^o^!^_^?で手分けをしながらやります。


糸を取り込んで庭を眺めるとアジサイの黄葉が光にあたってきれいでした。


ジョウビタキのつがいも庭で餌を探していました。(部屋の中から撮影)
そろそろ庭に餌を撒く季節ですね。

本格的な冬の訪れの前に染めの仕事を終えホッとしています。冬の穏やかな色が染まりました。(*^。^*)







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秋色の吉野格子帯を織ります

2015年09月04日 | 制作工程


工房では帯の制作を続けています。

春には春の、夏には夏の、秋には秋のもの・・を織るのが本当は一番好きです。

販売的にはもっと早く作ってシーズン前にお見せしないといけにのですが、^^;
作る立場になるとその「今」という時の光や空気の中でのギリギリの色糸の選定が出来るからです。
以前、立松和平さんの取材の折に「季節と一緒に織っていきたい」と話したことを思い出します。
私のやり方はたくさん糸を染めてある中からイメージしていくやり方ですので特にそうなのだと思います。もちろん長年の経験で予測をすることはありますが。。。

上の画像は“実りの秋”のイメージの吉野格子帯の縞糸です。
といってもこの帯だけで色を盛り込み過ぎないよう、あとは使う方が小物などで色を足していけるよう抑えてあります。
着る人の見立ての楽しさを残しておくことは作る上で大切なことだと思います。


経糸をチキリに巻き込んでいます。
吉野格子の太い縞のものは地糸と別々に整経をして別々のチキリに巻き込んで機にかけます。


茶の地糸と合わせます。

季節感は大切ですが、紬織りの場合は花柄や季節を限定する文様があるわけではないので、あとは取合せの着物や襦袢、小物たち一つで季節を変えて着ることができます。
そこが織りの着物の世界の醍醐味とも言えるでしょう。

この地色は桜染の茶で、縞のグレーは紅梅、紫はすももなどで染めたものです。
植物が蓄えている生きた色は深くて包容力があります。
この色自体が実りの秋の果実のようです。

秋の装いをあれこれ考えるのに良い季節になってきました。
工房でもまた帯を中心にしたイベントを予定しています。ご期待下さい。







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綜絖通し、筬通し

2015年07月04日 | 制作工程


織物の仕事は細かな作業の連続です。
特に綜絖と言われる経糸を上下に開口させるための仕掛けの穴に綾から糸一本一本を取り出し順番を間違えないように通す作業は大変です。

単純な平織りの通し込みならまだ良いのですが、数枚ある綜絖の順番が複雑な変化組織のものや密度の高いものはちょっと厄介です。
集中してやるのですが、間違うこともあります。
織り始めて気づくとまた最初からやり直しです。
何度かこのショック!を味わいました・・・。(ToT)
間違いを避けるための工夫もとても大切です。
上の写真は綾竹がふた組ある二重チキリのセッティングで、地糸と縞糸を分けてあるものを割り込みながら通し込みをしてもらっています。


こちらはたて密度の荒いやや透け感もある帯の通し込みです。
綜絖子に経糸を通したあとは筬に糸を通します。真鍮製の筬通しを使って糸を2本ずつ筬の羽に押し込みます。
この筬は荒いのでさすがに間違うことはありませんが着尺用などの細かなものは一羽飛ばしてしまう空き羽や、逆に同じところに4本入れてしまう混み羽を作ってしまうこともあります。

苦労の連続ですが^^;集中力と根気でここを乗り越えないと布は織れないのです。

さてどんな織物になるかこの峠を越えてもまだ気は抜けませんが楽しみでもあります。(*^_^*)


チキリに巻かれた経糸。


織物の心臓部、経糸の綾。


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