中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

紬塾第8回  着物を着る

2010年12月27日 | 紬塾 '9~'12
中野みどりのHP



今期の受講のみなさんは「着物は着れます!」という方ばかりでしたので、
着付けの話は飛ばしていこうと思っていたのですが、
念のため、時間は何分ぐらいかけて着付けされているかを聞いてみました。
「1時間」「2時間」えーーっ!
これでは「着物は着れます!」とは言い難いですね。

なぜ時間がかかるのか、個人差はありますが、全体的に言えることは、
紐や金具付ゴムベルトなど5本も6本も使っていることや、補整の必要もない人が
補整具を使っていたり、雑誌のモデルさんのような、シワひとつない撮影用の、
他人に着付けをしてもらったような完璧さ!?を、刷り込まれていることにあると思うのです。

幸田文の小説『きもの』の中に、何本もの紐を使った着付けを
「下手がこしらえた小包のようでうすみっともない」と主人公の祖母が
話すところがあるのですが、手厳しいですが、確かに美しくないですよね。
箱を包装するにしても、上手な人はテープであちこち止めずに、きちっと包めていて、
最後の1箇所をはずせばパラッと解けるようにするものです(最近少なくなりましたけどね)。
「結ぶ」というのもそうです。
本結び(帯締めなどの結び)もきちっと結べているけれども、解くのも簡単です。
そこに物事の真理があるように思います。

自分の五感と身体感覚を使って、初めはぎこちなくとも、だんだん味のある、
人それぞれの着付け、着物姿がシンプルに磨かれていくのがいいのです。


ネルの腰巻からの余談


膝の上のがネルの腰巻

母が何枚ものネルの腰巻を遺していて、暖房が今のように完備していなかった時代には
冬場はなくてはならないものだったのでしょう。
この冬、私も使ってみたいと思います。
また、古くなったネルの腰巻で布ナプキン(生理用)を作って使ってみたところとても
肌当たりが気持ちよく、また自分の身体感覚と向き合うことにもなりよいものだと思い
ました。
当時織りを指導していたメンバーにも切り分けて使ってもらいましたが、
もうすでに使っている人も多くて、環境的にもよいことだと思いました。
洗濯も炭酸塩を使うときれいに落ちます。血液や皮脂がよく落ちます。
昔、洗濯に洗剤がなかったころ灰汁を使ったということですが炭酸塩も同じことです。
炭酸塩は普段の洗濯でも軽い汚れに使えます。私は洗濯物の半分は炭酸塩を使います。
すすぎも楽です。ネットで調べてみてください。私は生活クラブで購入しています。

古くなったネル地のパジャマやシャツなどお持ちでしたら作ってみてください。
ネルは布端をまつらなくても裁ちっ放しで大丈夫です。
サイズなどはネットで検索してもいろいろでてきます。



さて、展覧会のお知らせです。
来年1月、2箇所でかたち21の企画・主催の展覧会があります。
私はそのサブコーナーに新作の紬のショール、ストールを
出品する予定です(これから織ります…^ ^;)。

また会場の可喜庵での「さろん」のテーマは
「取り合せの美三題――床の間・わん一式・衣裳」というもので、
とても興味深い話になりそー、です。
日本の住宅から床の間が消えたことと、きもの文化が捨てられたことは関連しています。
心の置き場所である床の間と、人の精神を立てる着物。
「床の間奪回」は「きもの奪回」でもあるのです。

紬塾の方々も参加されます。
後半はささやかながらパーティとする趣向です。
是非、お早めにお申込みください。


展覧会についての詳細はこちらでご覧になれます。




次の更新は1月下旬の予定
コメント

第7回紬塾'10 「取り合せの美」

2010年12月10日 | 紬塾 '9~'12
当塾も染織の基礎学習から、いよいよ「着る」ための実践に入ってきました。
着物に関しては親からも学ぶ機会のなかった世代にとって頼りになるのは、
着物雑誌や、洋服で馴染んできた組み合わせを参考にしていくしかないのだと思いますが、
日本人の美意識の底には自然界の四季のうつろいということが深くかかわっていて、
着こなしにもおおいに取り入れられてきたものだと思います。
自然の微妙な変化に敏感に反応しながら、
布の風合いや色柄を使いこなしてきた染織文化(食、住もそうだと思いますが)が
私たちにはあるのではないでしょうか。
また取り合わせにしましても、単純ではない奥深さがあると思います。


知人から「何にしたらいいかしら?」と相談を持ちかけられた
昔の上質の珍しい着物地から仕立て替えしたものを見てもらう。
2本取れたので1本いただきました!ラメ入りで私のお気に入りの1本。
帯は何本あっても楽しいもの。上質のものであれば服地などからも作ることもできますね。
う~ん写真がピンボケでわからないですね。

講義の録音から、一部ですが紹介いたします。

[講義の記録から]

日本の「取り合わせの美」というのは、違うものをいかに絶妙に合わせるか、
全部違っていて、でもバラバラではない。
お茶事の懐石の器の取り合わせにしても全部違います。
染付もあって色絵もある、それから焼締のもの、塗りもの、
木地ものが入ってきたりと、全然世界の違うものが、ひとつの膳の上に揃います。

西洋的な統一させたものの見せ方ではなくて、毎回出てくるたびに「わあーっ」て思わせる、
一回性というのかな、あるいは一期一会というか、
そういったところで成り立つ美意識というものが日本人にはあると思います。
露地に生えている草花を茶室に生けるということはしないですよね。
一度見た花を茶室でもう一度見るという野暮はやらないわけです。

重ねないということがとても大事なことですが、
取り合わせのバランスをとろうとして、同系色でまとめがちです。
着物と帯と帯揚げと帯締めの取り合わせにしても、
私は重ならないようにということを意識して取り合わせを考えるんです。
ある意味崩すんですよ。破調の美といいますか、壊すわけです。
それが日本人の美意識としてあったと思います。

西洋の洋服の文化では、スーツは上下お揃いでなければおかしいし、
グレーのジャケットにグレーのパンツという組み合わせでも、
グレーの質が違ってると何かヘンな感じになりますね。
でも着物ですと、同じグレーでもちょっと質を違えて、
グレーとグレーの取り合わせを考えたりすることができるんです。
それが着物の世界なんです。

ちょっとだけはずす、統一しない。
着物も帯も帯締めも帯揚げもみんなが私が主役ですというふうにならないようにする。
脇役が悪いんじゃないんですね、脇役には脇役なりの光の当たり方がありますから…。
そういうことを意識してコーディネートするといいんじゃないでしょうか。


次回更新は12月下旬の予定です。



中野みどりのHP


コメント