中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

武蔵野美術大学特別講義「紬きもの塾移動教室⑦」

2016年07月06日 | 「紬きもの塾」移動教室

黒い紙に綾振り状にして巻かれた糸。


横から見ても美しい!!


真っ直ぐな巻き方もきれいです。


みなさん無心で繭から糸を引き出しています。

先月、武蔵野美術大学工芸工業デザイン科テキスタイルの学生に特別講義をしてきました。毎年、遠くて朝早くて大変だな~と思いながら、かれこれ7年になります。
いつものように絹糸の根本の話から始まり、染め、デザイン、織り、そして着物を着ること、着物をたたむことまで話しました。

親も祖父母も着物を着ない。
振袖や浴衣を着るくらいでほとんど着物とは無縁に育ったわけですが、今年のクラスも「紬」という言葉を知っている学生はほとんどいませんでした。


自分の半幅帯を持ってきてくれた学生に私の紬を着てもらいました。
そばで見ているスウェーデンから来た学生も一度見ただけでほとんど自分で半幅を結びました。
時間がありませんのでさっと纏ってもらうだけですが、二人とものみこみが良かったです。そして何より嬉しそうでした。
紬や麻、木綿の着物を着ることは誰でもできます!


着終わってから、着物を包んできた畳紙の上でたたみ方も見てもらいました。
教室の机の上の狭い場所でも、あの大きな着物をなんなくたためるのですから着物の仕立ての奥深いところです。

講義の始めはなんとなく聴いている感じですが、、、繭から糸を繰り、真綿をつむぎ、草木の色に触れ、紬の着物を着ることを目の当たりにし、狭い場所でもコンパクトにたためる着物の合理性を知るころにはみなさんの表情が確実に変るのを感じます。

素材や技術の話も大事ですが、使う文化があってこその着物、工芸、美術、モノです。
本当の意味で「使える」「使う」ということは作ることと同様に厳しくもあり、高度な感性も必要になります。

「作る(創る)」こと、「使う」ことは「生きる」ことそのものです。そして何より自分を高め豊かにしてくれる楽しみでもあります。

短時間ではありますが、作ることの根本から、使うことのトータルな話をしてきました。学生のみなさんの今後に役立ててほしいと思います。
 
終了後、講義の感想をまとめたものを送ってきてくださいました。
それぞれが特に印象に残ったことを書いてくれていますが似た感想が多いので、その一部をご紹介します。















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武蔵野美術大学特別講義――「紬きもの塾移動教室⑥」

2015年09月21日 | 「紬きもの塾」移動教室
先日、武蔵野美術大学工芸工業デザイン科テキスタイルの学生に特別講義を今年もしてきました。

毎年話の内容はほぼ決まっているのですが、今年は後半の着物を着ることについての話のところで、自分の半幅帯を持ってきた学生には、結び方を1回見てもらい、あとは自分で結んでもらうということをしました。

自分で結ぶのは初めての方が多かったのですが1回見ただけでなんとか形ができました。
もちろんきちっと結ぶには奥の深いものではありますが、誰かに頼らなければできないものではないことを、木綿や紬はそんなに着ることに関しては大変ではないことを学生たちにも知っておいてもらいたかったのです。

親も祖父母も着物を着ない。
振袖や浴衣を着るくらいでほとんど着物とは無縁に育ったわけですが、このクラスには「紡ぐ」は知っていても「紬」という言葉を知っている学生は一人もいませんでした。

この日は早朝から一日雨降りでしたが、いつもの単衣紬に半幅帯、雨コート、雨下駄で向かいました。
着物姿をぼんやりとでも見てもらうことが多少なりとも記憶に残り学びになってもらえたらと思いました。
人の着物姿、姿勢、立ち居振る舞いなどを見る機会がほとんど身近になくなっているのですから。

その日の様子を教務補助の方がたくさん写真に撮ってくれましたので一部ご覧ください。

繭一粒の話から始めました。

真綿をよく観察。

じーっと見つめる。

真綿から糸を紬いでもらいました。

なかなかいい感じです、

次は繭一粒から1本の糸を繰り出します。

黒い紙に巻き取ると糸の形がよくわかります。

絹糸の匂いを嗅ぐ。

草木で染めた糸の色を見てもらう。

織られた着物のサンプル布を見る。

半幅帯を結んでみる。

とりあえず結べたので記念撮影。(*^_^*)v

このあとは着物のたたみ方や物を大切に扱い次世代へつなぐことの話しもしました。

学生たちはとても素直に蚕の吐き出す糸の形を見つめているし、ずっと糸を繰り出していたいという学生も多いです。

また草木で染められた糸の美しさに感嘆の声を上げる。
私の紬に袖を通してもらうとみるみる表情を明るくいきいきと変える。

プロダクトデザイン系の学生ですが、美しい自然素材の糸の形や色の深さや手技を見れば、みんなそれなりのインパクトを受けているようです。

感想票の中にも[「物をよく見ること」大切にしてみようと思いました。]と書かれたものがありました。
よく観察し、そしてそのことから発見し、発想を広げ、暮らしや仕事に何らかの形で取り入れてほしいと思います。






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「ミニ紬きもの塾」講演をしてきました

2014年09月15日 | 「紬きもの塾」移動教室
先日あるグループの方からご依頼を受け、「紬織りと現代の暮らし」というテーマで講演をしてきました。

聴衆は、会社経営者、会社員、自営業者、工芸家、美術家、音楽家、大学教授など、たまたま懇親会の時に個別にお話をさせていただいた方だけでも様々なご職業の方でした。また年齢層も幅がありました。

日本の文化を中心にした内容の講演会を企画、2ヶ月に1度講師を招いて開催されているようです。
二十数名の初対面の方ばかりでやや緊張いたしました。

いつもの「紬きもの塾」はそれなりに着物や織物に関心のある方を対象に話をしますが、全く一般の方を対象に話をするのは初めてです。ただ呉服的な紬の話をするわけにはいきません。
興味を持って聞いていただかなければなりませんし、飽きずに^^;聞いていただけるか心配でしたが、、、

結局いつものように原初的な紬、それ以前の布の話をし、真綿から糸をずりだしてもらうワークショップ、染の話、そして私の紬の着物を羽織ってもらい、着物を畳むところまでご覧いただきました。
 
真綿から糸をずりだすワークショップではまずは真綿の感触、蚕が吐き出した一本の糸のかたちをみてもらいました。


真綿や繭に触れていただき、草木で染めた糸を見て触り、リアルに何かを感じ取っていただけたように思いました。
みなさんからも質問などもあり、熱心に耳を傾けていただき、ホットしました。

懇親会の時にはタンスで眠らせている着物を着てみようかな。。とおっしゃる方もいらっしゃいました。

また紬の着物からの学びとして、着物を着ないまでも自分が良いと思う服やものを選び、大切に使っていくことが現代においても大切ではないかということも話しました。


どこでも集まりは女性が多いですが、今回は夜の時間帯ということもありますが、半数近くが男性でした。とても素敵な大人のグループでした。

当日私が着ていた着物についてはまた次回ご報告します(と言ってもいつものですが・・・ ~-~;)。









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武蔵野美術大学特別講義――「紬きもの塾」移動教室⑤

2014年06月13日 | 「紬きもの塾」移動教室



ことしも武蔵野美術大学特別講義へ今年も行ってきました。
学生たちの感想が送られてきました。
感想に添えられた似顔絵、ボサボサ頭と鼻眼鏡、よく特徴を掴んでますね。

今年は時期を少し早めて、6月5日に行いました。
昨年の感想の中に、もっと早くこの講義を聴きたかったという学生の声もありましたので、秋に向かっての制作に役立ててもらえたらと早めました。

今年の学生はおとなしい(反応がイマイチ静か・・・!)というような噂も聞いていましたので、作戦を立てて行きました。

いつものように前半は糸や紬織りとは何か・・の話と糸取りの実習も進めていきました。
休憩をはさんだ後半は、染め、織り、デザイン、着物の取合せ文化などの話、最後に私の私物の紬をきてもらう・・というのがいつものパターンでしたが、今回は後半の始めのほうで先に私の紬を着てもらい、半幅帯も私のものを使って締めてもらいました。

「着物を着たい人、2名いませんか?」「はい!」「はい!」「はい!」「はい!」「はい!」おとなしい人たちのはずでしたが、、、5人が真っ先に手を挙げました。ジャンケンで2人を決めてもらい、さらにはピンク系の梅染の着物と黄色系のコデマリ染のどちらを着たいかも、やはりジャンケンになりました。

着始めると、周りで見守るクラスメートたちから「可愛いい!」「似合うよ~」「綺麗!」と声がかかり、パシャパシャとシャッター音も鳴り、盛り上がりは絶頂に!
着物をほとんど着たこともない人ばかりでしたが、纏った本人たちも喜びの表情でいっぱいでした。
寄せられた感想の中にも、「植物の自然な色は誰でも似合う色だ」というのもありました。
半幅帯の文庫結びも自分でやってもらいました。「わ~意外に簡単!」とも言ってました。

テキスタイル科の学生ですから、布染めや織りも実習がありますので、半幅帯ぐらいは自作してみてくださいと、長さや幅、寸法のことなども教えました。

着物には全く無関心そうな人たちでしたが、やはり風合いの良い布や自然な無理のない色合いは、先入観がないだけに直に触れてみると素直に受け入れられるように思いました。

今回は感想の中から特に着物について書かれたいくつかご紹介しましょう。

「親から子へ受け継ぎ、何十年も使える。人の手で織り自然の色を纏う、とても温かくて素敵だと思いました。」

「繭から1本の糸をつむぐこともすごく繊細な作業で、それを体験したあとに実際の糸(染められた)や着物を見ると、どれだけの時間がかかっているのか、すごく大切にする気持ちがわかる。
日本の文化や、物を大切にすることは着物だけでなく生活のいたるところにあって、今の日本でも忘れてはいけない・・・というより忘れたくない大切な文化だと実感。自分でも大切な一着を普段着として着られるようになりたい」

「この講義を受ける前まで着物のイメージは上品で高貴な方が着るもので、あまり自分が着るイメージはありませんでした。でも着物の着方、たたみ方など経験したことのないことができ良かったです。長く着続けることの着物に魅力を感じた講義でした」

「先生が着ていらっしゃったお着物もとても綺麗で、実際に触らせてもらって手触りが優しく、うつくしいなと思い、とても興味を持つことができました」

「草木染の方法と、着物の着付けは前から本当に知りたかったことなので嬉しかったです。先生もおっしゃっていましたが、着物は周りの人々を幸せにしてくれる力があるなあと改めて感じました。
成人式で着た振袖は母から受け継いだ絞りの素敵な着物です。早く私の娘にも着せたいなぁと思いました。着物に魅了された3時間でした。幸せな気持ちになりました」

「私は留学生として、韓国には日本の着物文化のようなものが有りませんので、すごくうらやましいです。今日は着物の美しさを再び感じました」

そしてさらには私がこの日着ていた着物や半幅帯、自作の銀の帯留めも「先生可愛い!」と好評で、学生との記念写真も一緒にと、撮られました。これは今回初めての経験でした。でも楽しかったです。


このあとの講義はみなさん真剣な表情で聴いてくれました。
作戦、成功!でした。

早いうちに質の高いものと出会えるように、大学側も、ものをいきなり作らせるのではなく、良いものをジャンルを問わずたくさん観たり触れたりする機会を学生にあたえてほしいと思います。

様々な素材や特性、技法、そして人々のあいだでどんなふうにものが作られ使われてきたのかなど、工芸の根本をもっと深く知ってもらうことが大切と思います。

これから現代の工芸が生き残れるのかは若い世代にかかっています。
質の高い手仕事を権威付け、ただ眺めさせるだけではなく、生きたかたちで市中の人々に知ってもらうことが何より大切です。

絶滅危惧種の「工芸」ですが、なくしてはいけないと思います。
それは人の仕事の原点だからです。

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武蔵野美術大学特別講義――「紬きもの塾」移動教室④

2013年12月02日 | 「紬きもの塾」移動教室


先月の7日に今年も武蔵野美術大学のテキスタイル,工芸工業デザイン科の3年生の学生に「紬織りと着物」をテーマに特別講義をしてきました。

この日、朝は雨が降っていまして、また少し遅くなってしまい、着物ではなく洋服で行こうかと、チラッと頭をかすめたのですが、多少遅くなっても普段着の着物姿を見る機会のない学生たちに見てもらうためにもやはり着物が良いと思い、着て出かけました。

案の定と申しましょうか、教務補佐をしている若い方が、私がこの日着ていた薩摩絣の着物が「綺麗!」と言ってたくさん写真を撮ってくださいました。修業を終えたあとの30年程前に、母からお金を借りて買った着物です。
なめらかな絹のような木綿の着物です。古びていないので、30年前のものと思えないということも言われたのですが、質の良い着物は古びないのですね。
帯は太い真綿引き出し糸(もう引いてくれる人はいないのですが)で織った自作の帯です。均質な着物地にザックリした帯の取合せです。

浴衣は着たことがある学生もいましたが、ほとんどの学生は「紬」を知りませんでした。

大学から、学生の感想と、講義風景の写真が届きましたのでほんの一部ですがご紹介します。



繭から1本の糸を引き出すために、箒草を使い表面の糸を集め、引き出し始めたところ。


黒い紙にゆっくりと糸を巻き取ってもらってます。しばし無言「・・・」でしたが、ようやく「美しい・・・」と声が漏れ聞こえてきました。「それが聞きたかったぁ!」と私からもお返し。


「よ~く糸を見てください」と最初に言ったのですが、目が寄ってますね。。。一人1個ずつ、小さなボウルにお湯と煮た繭が入ってます。


男子も夢中!


真綿からも糸を引っ張り出し、太ももで纏めるやり方もしてもらいました。
こちらの方が技量を要します。


この糸はなんで染めたと思いますか?この窓からも見えてますよ。「・・・」「・・・」


「この糸の色はどんな風にかんじますか?」「・・・」「・・・」「・・・」
「わかりました・・・私はちょっと休憩しますのでこの場を去ります・・・」


その直後にこんな光景がありました。^^


私の紬の着物を、「着たい!」と手を挙げた二人の学生に服の上からですが、手助けしながらですが、自分で着てもらうこともしました。
半幅帯は持っている人が家から用意してくれました
着てみると「軽い!色が綺麗!」と、とても喜んでくれてました。



最後の締めは畳み方。
省スペースでも畳めて、収納場所も取らず、重ねた着物の重みでアイロン替わりになることなど、着物の合理的な点をアピールしました。


感想もみなさんたくさん書いてくださったのですが、入力が大変ですし、重複している感想も多いので、一部の方のを代表として掲載します。読むのも大変ですね。^^;
若い無垢な方々の感想ですが、この気付きや感想を頭の片隅に留めてもらえたら嬉しいです。


N.S.
繭から糸を引く行為が非常に繊細で、蚕が口から出した自然の形をしていて、本当に美しかったです。
着物は普段の生活から少し離れたものと思っていましたが、案外簡単に着ることが出来て、収納も小さくなり、合理的に作られているんだなと思いました。着物を身近に感じられるようになりました。
先生の“着物は人が着るもの”という言葉が正に真をついていて、絵画的にしないというのはなるほどなと思いました。
とても楽しかったです。

O.M.
生木で染めるということにとても興味を持ちました。市販の植物染料で染めた経験もなくて、手をつけづらかったのですが、自宅の庭木でちょっと染めてみようと思います。
前回の課題で、私は和紙を撚って紙糸をつくってたのですが、、そのとき私も、先生がおっしゃっていたような糸のふぞろいな、不安定な美しさのようなものを実感できました。手でつくられたものものならではのよさはあると思います。

M.M.
真綿から糸をとる作業や繭から糸をとる作業、その糸自体も美しいですが、作業をすることに美しさを感じました。
さくらで様々な色に染まる糸の微妙な染まり方の違いがとてもきれいで、植物染を是非やってみようと思いました。とても興味深く、面白くて楽しかったです。

M.Y.
私は小学生の時に教室で蚕を飼っていたことがありました。その時はもちろん蚕の口から出ているものがそのまま糸になるとは思っていませんでしたし、白くて柔らかくてグロテスクだと思っているだけでしたが、先生が今日仰っていた、糸が真っ直ぐになっていなくて波打っている状態であることが、あの蚕が頭を振って繭を作っている過程でできたものだと知って、驚きました。
私は織りが苦手でテキスタイルの課題でもシルクスクリーンしかやったことがありませんでした。糸とウマが合わないという苦手意識があったので、今回の授業で先生が何回も連呼していた糸の美しさということが、なんとなくわかったような気がしました。
というより、蚕が生きていたその息吹が糸から感じられたのが、新鮮でした。
着物の着付けも、私は美容室に行って着付けもしてもらっていたので、今日の授業を見て、自分で是非着てたたむところまでやってみたいと思いました。単衣物の合理性も改めて知ることができたので、本当に有意義な時間でした。

S.Y.
着物と帯はセットで、着物のデザインをする時は、帯の入る余地を残すという話が印象に残りました。強い主張をして終わるのではなく、バランスを大事にするということ、また桜の染めや着付け~たたみ方までのお話を聴いて、常に無理をしない、逆らわない、自然に素直なままに手を動かすという、とても摂理にそったやり方だと思いました。
本来創作・制作というものは何かから力を得て、するものではないかと思います。その何かは命だったり、自然だったり、感情だったりさまざまで、、そのようなものを大事にしていかなければならないと感じました。


S.Y.
桜で染められた糸の色がとてもきれいでした。草木染には“この色”ということができない色が出てくる魅力があると思いました。私も染めてみたいと思いました。
繭から1本糸を引いていく行為は無心になり、ずっと続けられると思いました。管理された糸でない不揃いさがとてもきれいで、見ても触っても素敵なものだと感じました。
着物はあまり着る機会はありませんが、今日先生やクラスの2人が着ているのを見て、もっと身近にあるものであってもいいなと思いました。
今日は中身の詰まった充実した時間でした。

E.K.
糸がこんなに美しいとは思っていませんでした。繭から出る一本一本は細く白く、すごく魅力的でした。
草木染は今まで一回もやったことがなかったので、全然詳しく知らなかったのですが、桜で染めた糸を見てやってみたいと思いました。
周りにある草・木・花でやってみようと思います。
もっと早く中野先生の講義を聴きたかったです。

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武蔵美術野大学特別講義――「紬きもの塾」移動教室③

2012年12月07日 | 「紬きもの塾」移動教室
今年も11月30日に東京小平市にある武蔵野美術大学まで特別講義に行きました。

私のところからは遠いですね~。京都まで行く感じです~。
でも途中の多摩モノレールの高い車窓から見える木々の紅葉(武蔵野台地)は美しかったです。  


大学3年生の工芸工業デザイン科テキスタイル専攻の方に「紬織りと着物文化」について
駆け足で正味2時間半、糸引きから染、織り、デザイン、着物の着方、たたみ方の実技も加え話をしました。

とても熱心に聴講してくれ、質問もいろいろあり「楽しかった!」と声をかけてくれる学生もいました。私も楽しかったです。

蚕の吐き出す糸の形を見てもらうために繭を煮て黒い紙に巻き取ってもらったのですが、「そろそろ終わりに~~」と言ってもなかなか止めないでずうっと続けていたい様子でした。
「きれい!」「楽しい!」とのつぶやきも。

糸はただ真っ直ぐではないことに気付いてもらいました。
真綿から引き出す方が思うようにいかず難しいようでした。

また桜で染めた糸を自然光で見てもらいました。
こんなにたくさんの色が引き出されていることに驚いている様子でした。
生木の染であることと絹の光沢もあいまって糸が光を放っているのです。
その場でずうっと見ている学生も何人かいました。

またデザインも着物の場合は帯をはじめとして他の物との取合せがあり、やり尽くさないことも大切と話しました。

紬の着物も着てもらい半幅帯の結び方まで自分でやってもらいました。
思ったより苦しくないと言っていました。
振袖を着たときのイメージ=着物は苦しい――になってしまっているのですね。

着物のたたみ方も1回見てもらい、次にお一人にやってもらいましたがすんなりできました。
若い人はのみこみが早いですね。
たたまれた折り線どうりにやればいいだけです。

それから当日私が履いていた、鼻緒で擦り切れた足袋の繕いの部分を見てもらい、ソックスでも継ぎを当てて使うのは楽しいので皆さんにもお勧めしてきました~。
良いものを長く使おう!と。



学生から感想が送られてきました。
たくさんで入力が大変なので^^ごく一部の方だけ抜粋でご紹介します。

全体に糸の美しさや色の安らぎ、着物を纏ってみていいものだなぁという感想。
良いものを長く使うことへの気づきが感じられる内容でした。




自然をよく見つめ、自分を見つめ、自由(先入観をもたない)に着物を創り着て欲しいと思います。

                                


I.S.
様々な先生の糸や色に対する想いが伝わってきて、どうしようもない気持ちになりました。
うまく言葉にできないけど、季節が変わるにつれて、私たちは木や草の色を生きものの糸に染めて身につけてきた。
その感動と心の静けさは、昔も今も変わらないのだと感じた。先生が、「母を亡くしたときに色のものを着ることができなかった」でも、あるとき、このままではいけないと思い、前向きになったときに「黄色やピンクの色を着たいと思えた」という話が、色の持つ本当の美しさだと感じました。
泣きたくなりました。

「自然の持つ色は化学染料の持つ色とは違う」私はこのことを自分自身で実感したいと思いました。

色の持っている繊細な変化を、人生のどこかで受け止めたいと思いました。
あと、祖母にもらった着物を着れるようになりたいと思いました。


Y.I.
今日は草木染めの魅力を教えて下さって、自分の人生の価値観がより原初的に自然になじんでゆく気持ちになりました。ありがとうございます。
染めを通して、自分の生活を見直せることができることを、最近ひしひしと感じます。

私はまだ学生で、お金も無いですが、なるべくよいものを買って、長く使うことを心がけています。50年前のミシンを修理して使ったり、プラスティックのお弁当箱から曲げわっぱに変えてみたり……。
物が呼吸している気がするので、かんたんには捨てられません。
私は、自分の作品づくりも、そういうものを作れるように努力していきたいと強く感じました。
今日は、ありがとうございました。


U.K.
草木染めの色の話がとても興味深かったです。
普段、パソコンや染料や絵の具をまぜて色を作っているけど、植物に宿っている無限の色を引き出すという草木染めの感覚はそのどれとも違っていて、本当におもしろいと思いました。
日本の四季をこれまで以上に感じ、色の感覚を大事にしていきたいと思いました。


T.T.
桜の木を煮出した糸は桜色でなく、やわらかな人の肌のようだったり、赤土のよう色だったり、自然界のいたる場所に還元していくような、はかなさを感じました。
持ってきてくださった糸は手つむぎで、人が手でつむいだものの感じは大切だと思いました。


H.N.
草木染めの糸を見せていただいた時のお話、植物は染料になるために生まれてきたわけじゃない。
それぞれが本来の役割があって生まれてきていて、それぞれの様子をきちんと見ることが大事というのが、何か気付かされたような気がしました。
人々がなぜ色に名前をつけて、それらを必要とするのか、本来自然にあるべきことを、忘れてしまっていたのかもしれません。

着物の着方やたたみ方もとても勉強になりました。


T.M.
桜で染めている糸がとても綺麗で、バリエーションの豊かさに驚きました。
繭はとても繊細で、染めなくてもそのままで十二分に美しいと思いました。
一本で見た繭の糸はとても細く光沢があり、この糸で作られた着物は本当に贅沢なのだと思いました。
着物をすごく着たくなるようなお話でした。


W.R.
普段、着物を着る機会がなく、着物に対して遠い存在と感じてましたが、今回の講義で、とても興味が出ました。
草木染めのすてきな着物に触れて、改めてその良さを感じました。


N.M.
着物は取合せが大切とおっしゃていましたが、その通りだと思いました。
平安時代のかさねの色目も日本の四季が生み出した色彩感覚だと本で読んだことがあるのですが、着物もその文化をうけつぐものなんだなあと思いました。

消費、使い捨てのこの時代の中で、これからデザイナーが目指していくのは、長く使えて丈夫なものだなと思っています。とても勉強になりました。


S.T.
ずっと草木染めに興味があり、今日の講義で桜染めや梅染めを見て、一つの植物が無限にも色彩を含んでいることに、すごく魅力を感じました。
シルクの糸による独自の発色、季節を感じさせる色味というのは、私たちが生活する上で、自然界とともに生きている証のようなものです。


A.M.
良いものを長く使う。ほつれても繕って使うことにより、より愛着がわき捨てられなくなる。
本当にそうだろうなと思いました。
使えば使うほど美しくなるものはとても良いなあと、改めて感じました。
今後の制作や考え方に生かすことの出来ることを聞けてよかったです。



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「紬きもの塾」移動教室②―――――武蔵野美術大学にて

2011年12月19日 | 「紬きもの塾」移動教室


昨年に引き続き、11月30日に小平の武蔵野美術大学へ特別講義に行ってまいりました。
今年も紬糸のこと、植物による染めのこと、紬の織りのこと、着物文化、そしてミニ着物着付け教室も加え、最後はきものの畳み方で締めくくりました。
授業ですでにいろいろ染や織りを学んでいる方々ですが、着物については特にカリキュラムにないようです。

着ることについても、腰紐1本でおはしょりを決めることさえしっかりできれば、あとは半巾帯を前で結べば若い方はまずは充分だと思います。
若い人がきものはいろいろな意味で大変なもので自分には無理と決めて敬遠しないで、染も織りも心得があるのですから尚のこと、着物や布を大切に思ってもらえると嬉しいです。
昨年講義を聞いてくれた一人は(4年生)自分で糸を紡ぎ着尺を織り始めたところで見てほしいということで機場の教室で見てきました。細い美しい糸でしたが少し細すぎるようでアドバイスもさせてもらいました。

学生たちから感想をもらいましたので、その一部を抜粋して以下に載せます。

成人式で着物を着たのがとても楽しくて、
ゆかたも好きなのですが、自分で着たことがないので、
今日見せていただいたような日常で着れるものを、自分で着てみたいと思いました。

手仕事でいやだと思ったことがないと先生が言われていたのが印象的で、
私も手仕事を続けていきたいと思いました。


真綿から直接糸を引き出してもらう。

カイコがつくる1本の長い糸を、人間がまた巻き取って
そこから布をつくるサイクルが良い回転だと思いました。

中野先生の織った着物がとてもシンプルなのに、
色合いがとてもやさしくて、すてきでした。
是非来年のお正月には着物を着たいと思いました。

着物の考え方や構造がシンプルでとてもいいです。単純でありながら深みがあります。
草木染の出てくる色には嫌味がなく、なんだかスッとなじんでくるものがあります。

着物は今では一部の趣味の人が着たり、特別な時でしか着ないものと思って、
扱いにくいものだと思っていましたが、着方もそんなにむずかしくなく、
コンパクトにたためて、とても使い勝手のいものなんだなと思いました。
一枚で何世代にもわたって使えるし、とてもエコロジーですね。

初めて‘きもの’を着てみました!
ただ見ているだけのときは、おびでぎゅっとされている感じで、
歩いたり動いたりがちょっと難しいかなと思いましたが、
思ったより全然動きやすかったです。
きもののたたみじわって、きものを重ねてしまうときの重みで
自然にできているというのがすごく印象的でした。

植物染料の色は本当に美しいと思いました。
着物は思っていたものより身近なものなのかも、と思いました。


繭を煮て、蚕が吐き出した1本の糸を巻き取っているところ。

絹ってつやつやの糸のイメージしかなかったのですが、糸にする方法によっては
木綿のようにもなるということを知ってびっくりしました。面白かったです。
お湯につけると1本づつ糸がほぐれていくということも、
蚕のまゆが全部1本の糸でできているということを改めて実感できて感動しました。
それと、着物がとても着たくなりました――自分で着れるようになりたいです。
たたむとピシッとコンパクトになって、着物ってよく考えられて
作られてているんだなあと実感しました。

着物のとことん使う文化という話がとても興味深かったです。
今の世界は大量生産、大量消費の中にあって、
使い捨てのような薄っぺらいものが溢れているので
本当のよさを感じることができなくなっていて、悲しい世界だと思いました。
来年のお正月は祖母の着物を着て新年を迎えたいと思いました。
ありがとうございました。

着付け教室もありがとうございました!
ゆかたなら一人で着られるのですが、ほとんど変わらないのですね。
春先、着物で出掛けたいなと思いました。

すてきな着物を着させていただいて、すごく楽しかったです。
今度、自分でも着物を着てみたいです。


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「紬塾」移動教室--武蔵野美術大学にて

2010年11月28日 | 「紬きもの塾」移動教室





11月17日に東京都小平市にある武蔵野美術大学工芸工業デザイン科テキスタイルコースで、
3年生の学生を対象に特別講義をしてまいりました。
同大学の、すばらしいテキスタイルアートの作品を創られる田中秀穂教授からの依頼で、
「糸や布や着物をめぐっての普段の仕事の話をしてくれればいい」とのことでしたので、
喜んでお受けした次第です。
さながら「紬塾」の移動教室というところでした。


講義タイトルは『糸のかたち、布のちから』として、
このブログでも書いているようなことですが、真綿から一人ひとりにずり出しで、
糸を引いてもらうミニワークショップも交えてのレクチャーでした。


テキスタイルを勉強している人たちですから、染めや織りに日常的に触れているわけですが、
着物についての学習機会はこれまでほとんどなく、絹糸に触れることもあまりないようです。
20歳過ぎの若者が着物をどう受け止めるか、私にとっては未知の体験でしたが、
講義が進んでいくにつれて、学生たちはだんだんと興味を向けてきたように感じられました。





耳(布の端)がきれいに織れているとホメていただきもしました。^^;
さすがに着眼がいいようで……。
私は「耳がきれいに織れている布は真ん中もよく織れているはずです」と応えましたが、
うなずいてくれました。





最後には学生の一人に私の仮仕立ての着物をまとってもらいました。
「浴衣が着られれば、紬も簡単に着れます。半巾帯で文庫に結べばいいんですよ。
補整などしないで、自分なりの体型に合わせてきればいいのです。」
という私の説明に、学生たちの興味はぐっと高まってきたようです。
田中先生も「次回は着付けをやろう!」とノリノリでした。
「本当は着物大学があってもいいぐらいだね」ともおっしゃってました。
まったく同感です。

受講した学生から感想文をいただきました。
みなさん、さすがに感性がいいんです。
下に何人かの文章を紹介させていただきます。
若い人たちが思い思いにデザインし、手紡ぎの糸で着物を織り、
着てくれたらどんなにいいことでしょう。
卒業式には自分で織った着物で参加したら、素晴らしいですね!


[学生の感想文より]

「真綿を初めて見たので、ほわほわしていて面白く、今日一番印象的でした。」

「糸のこと、染色のこと、着物のこと、とてもおもしろい話が聞けました。着物はお正月に、ゆかたは夏に着るか着ないかでしたが、もっと着てみたいと思いました。何か気恥ずかしい気持ちがあるのですが、色とか柄とか、もっと見直してみたいです。Sちゃんの着物姿がかわいかったです。」

「桜の木で染めた布や糸を見て、一つの原料からあれだけ色数ができるなんてびっくりしました。
 色をあわせたり自分で木のチップをつくって煮出したり、やり込めばやり込むほど深いものだと思いました。」

「持ってきていただいた着物に触ったら、知ってるような知らないような不思議な触り心地で新鮮でした。
 着物を自分は着てないけど、前に母が持ってる着物を出しているの見たら、意外と何枚も持っていたから、ためしに着てみようかなと思いました。」

「着物も、とても気軽に着れるんだなあと思ったし、すごくすごくすてきに見えました。毎日着ることは確かに今はむずかしいけど、着物のあるくらしは絶対にすてきだとおもいます。」

「素材に触れて体験できたのがよかった。先生が話されたあの(蚕が吐き出した糸の)波状形が確認できた。
着物というものがどういう存在だったのか、少し垣間見ることができた。」

「季節を感じてそこから直感的・感覚的に色を決めたりするのも、草木染も、自然に密着というか自然の流れと一緒に創っているようで、とてもキレイだと思います。人の生活だとか、人が造ってきたものにすごく馴染んでいて、私は着物を着ないけど、親近感を感じました。」

「植物には植物の四季を通してのリズムがあり、それを読みとって染めることは合理的であるし魅力的なことだと思った。
着物文化はだいぶん変容しているし、着にくい時代だが、やっぱり着物は着たい。暖かいし、涼しいし、立派なエコであるし、長い時間かけて理にかなったつくり、構造になったと思う。
日本人が日本で暮らす日本人のために自然とできてきたもの、すっと未来にも、少しでいいから自分なりに大事なことを伝えていきたいと思った。」

「糸を紡ぐところから始めて、草木染など全て自然のものから生まれる着物はとても魅力的に思います。桜の木や花のみを使って染めた着物を着ることは、まるで桜の化身になったような、なれるような気がしました。昔の人は皆一からの工程で着物を、しかも人の数だけ作っていたと思うと、日本人の着物への執着や愛情を感じます。巷に安価で出回っている機械織りの着物は着物の意味が欠けてしまったような気がしてさみしいです。」

「私がやりたいと思っていることをすべてなさっていたので、私も先生みたいになりたいと思いました。しかし現実として食べていけるのかという問題があり、どうしようか迷っている部分もあります。
今日着てらっしゃった着物が素敵だと思いました。」

「ものと時間を大切に考えていくことを着物を通して学ぶこと。着物を着てみたいと思っていたので、今度母や祖母に教えてもらおうと思いました。」



コメント
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