中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

文庫結び

2012年06月30日 | 着姿・作品
中野みどりHP



半巾帯が活躍するシーズンですね。
先日の紬塾の時締めていた私の半巾帯は、もう10年以上前ですが、現代のジャワ更紗の布をみつけリバーシブルに仕立ててもらったものです。

結びは文庫結びですが、普通、手先を2回巻き付け余りを帯の中に入れますが、その2回目を入れずに外に出しています。ただ出しているだけです。
普通の文庫も可愛らしいですが、こうすると少しボリューム感がでますし、帯の柄を多く見せることになりますので、私はこの方法がほとんどです。

滑らない生地の木綿や紬の場合は緩んでくることもありません。

この帯は長さが短く、たれを引っ張り出すことはできないのですが、9尺5寸以上あれば中にたたむタレを長めにとり、結び目の下からから出すこともできます。
作品集『樹の滴』の中では手とたれ先を出した締め方をしています。

よかったらお試しください。

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第4回紬きもの塾 とことん着尽くす

2012年06月25日 | 紬塾 '9~'12
中野みどりHP

きものの更生などを中心に、実例も上げて見てもらいながら講義をしました。
襦袢にせよ着物にせよ素材の良いものを求め、染め替えたり、仕立て替えたりしながら大切に、愛着を持って着物をきてもらいたいという話しをしました。
襦袢も下に着るので見えないからと安物の生地を買うより1着目こそよい生地の、薄めの色を買い、だんだん濃い色に染め替えていくと汚れも目立たなくなり、新しさも出て気持ち良く使えるものです。



裏表で色が違う二重織の紗の母の着物から仕立て替えた雨コートを見てもらいました。長い時期着用できて重宝しています。

また、参加者の方が、モスリンの面白い柄の襦袢を持ってこられたのですが、虫に食われてしまってどうしましょう?という質問がありました。

もちろん正式な継ぎの当て方というのもあるのですが、私は穴の周りを色糸でかがってみては?と答えました。

塞ぐのもいいのですが、小さな穴でしたので、それ以上ほつれないようその穴をかがると、むしろ可愛く愛おしく感じられませんか?

身の回りの肌着や虫食いのセーターに私はこの方法でよく継ぎを当てて楽しんでいます。
靴下も何度でも継ぎを当ててすごいことになってるのもあります。
よそのお宅にもこういうのを履いて行って見せたりしてます。こうなると穴の開いた靴下もアート作品ですよ!

足袋の鼻緒ですりきれたところに並み縫いをチクチクしてるのもあります。
そのかわり買う時は良い生地の足袋を選ぶことにしています。
どうせ汚れるから使い捨て!ではなく薄汚れても大事に使うことを私は選びたいのです。

後半は麻の絽の襦袢地で伊達締め(平ぐけ)を縫いました。
長襦袢を着た上に使うと着崩れもしにくよいです。麻は吸湿性と発散性、放熱性にも優れていますので、夏には特に重宝します。

着物の上には博多などすべりの良いものがいいと思います。
そのほうが帯を締めやすいです。

しかし今期の方運針はできない(学んでない)方がほとんどでした。
6尺並み縫いをするのに難航しました。指ぬきも当然使えません。
 Before

After

でもなんとか基本を知ってもらい、恰好がついてきまして、ご覧の通り出来そうでしょ?
上の写真と下の写真の違いが分かりますか?

義務教育は読み書き算盤、運針!をお願いしたいです。

それから着物を着るのでしたら、和裁をしないまでも、クケ台と2尺と1尺指しは用意しておくとよいです。

 手前の方が使っているのはテーブルなどへ固定できるねじ式のクケ台

盛りだくさんの内容で講義は1時間の延長となりました。

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2012年06月17日 | 自然環境・脱原発
中野みどりHP



雨の季節を迎えました。
真夏の日照りを前に大地や木々はたっぷりと水を蓄える時です。
そしてこの時期には青や紫の花が咲き私たちのこころを落ち着かせてくれます。
工房の庭には5種類の紫陽花があります。少し時期を違えて咲き始めますので仕事の合間に目を休め、ひと月以上楽しんでいます。



経継ぎを終えたところの写真。グレー地に藍や緑の細い縞が入ってます。

今、機にかけている着尺も雨というか水を感じさせるものを創りたいと織り始めました。
季節に合わせて仕事をするようにしています。
自然が教えてくれる、導いてくれるように思います。
繊細なたて縞によこはシンプルに草色と赤味の薄茶を配しました。
「早苗」をイメージしてます。

日本は瑞穂の国といわれますが、水をうまく利用した先人の知恵を守りたいです。
安心して食べられるお米を奪わないでほしいです。  

原発がなければ生きていかれないような、脅しとも思える先日の大飯原発再稼働に関する首相の記者会見の発言には唖然としました。
原発事故は限定された地域だけの問題ではなく、空気を汚し、水を汚し、生き物の命を奪うもの。避難訓練をしても始まらない話です。それこそ生きていかれないのです。

前からお伝えしている「さよなら原発1000万人署名」は750万筆を超え、その分は首相あてで衆議院議長に届けられたそうです。

その先頭に澤地久枝さんが単衣の着物姿で立っています。
まだ署名は続いています。オンライン署名もできます。


もう一つの雨は、実践知塾「ドレミから始めよう」でも『あめ』谷川俊太郎作詞、松下耕作曲の練習をしています。

あめがふると つちのにおいがする
 あめがふると あしのうらがくすぐったい
 あめがふると まちがしずかになる
 あめがふると むかしのことをかんがえる

始めは、私のアルトのパートはド、ド、ド、ド、ド、ド、ド、ド…ばかりが続いてヘンな曲だと思ったのですがなかなか奥が深い曲だと感じてきました。
4パートに分かれているのですが、うまくハモれたらすごくカッコいい曲です。
いつの日か、You Tubeに投稿できる日が来るといいのですが。。。。。。。。

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第3回紬きもの塾  糸を「つむぐ」と「紡ぐ」

2012年06月07日 | 紬塾 '9~'12
中野みどりHP

真綿から糸を「つむいで」もらいました。

糸をつむぐ方法もいろいろありますが、今回していただいた方法は沖縄の久米島方式で、角真綿を丸い台の釘にかけ手前から真綿を引き出し、水または唾を指先につけ繊維を纏めていきます。

この方法は結城紬がしている「つくし」と言われる台に袋真綿を巻き付けてやる方法と同じで、糸に撚りはかかりませんので、「手紬糸」と表記されます。

人が手で紡いでも、紡ぎ機を使った糸は少し撚りがかかりますので「手紡糸」として分けられています。
また撚りのかからない糸をつむぐ場合はその行為自体も「つむぐ」と平仮名で分けた方がよいということを今回の作品集の校正の時に出版元の染織と生活社の方から指摘を受けました。
それに従うと今回の染織実習では糸を「つむぐ」ということになりますね。

でも、一般の方はあまり気にしなくてもよいのではないかと思います。「紡ぐ」は糸を紡ぐ以外でもよく使われる言葉です。丁寧に少しずつ作り上げていくようなことの喩として使われます。

ただ、手織りの紬で使われている真綿から作られる糸には無撚糸の「手紬糸」と(結城紬は経、緯すべて無撚糸)少し撚りのかかった「手紡糸」(多くの紬はこちら)があります。

糸をつむぐ行為は単調なように思うかもしれませんが、実は細部と全体の真綿の状況を見極めなければならず、熟練を要するものです。でも始めると案外やめられない面白さがあります。
本来は人がやるべき仕事だったのでしょう。



今回は着尺よりも太めの糸をつむいでもらいましたので、とても難易度の高いことを全くの初心者の方にしてもらいました。細い糸をつむぐほうが真綿を管理しやすいので楽です。
しっかりしたたくましい糸がつむがれています。



5人とも同じ条件でつむいでもらいましたが、ご覧のとおり様々な糸になりました。



もう一点参考までに、無撚では糸にならない木綿やウールなどは綿から糸車や紡ぎ機を使ったり、あるいは錘をぶらさげ回転させるようにして糸を作ります。これは自然に糸に撚りがかかりますので「紡ぐ」になります。


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よきモノ、よき人の輪

2012年06月02日 | 作品集『樹の滴』
中野みどりHP


作品集を出版し、反響もいただき、今までのこと、そしてこれからのことを考えているところです。

考えますと、体力的なことからすればあと10年が残された私の染織の時間といってもいいかもしれません。
もちろん命ある限りは仕事したいですが。。。

制作のことで言えば、ようやく私なりの染織の基礎編を積み重ねましたので、
少し「表現」の段階に入りたいと思っています。
表現と申しましても何か特別なことではないのですが、
もう一つ加えたい何かがあるように私自身が感じているのですが、、、
こんな柄いきを、こんな色使いを――というようなことでもなく、
具体的なことは書けませんが、今までの積み重ねにプラスαしたい何かです。
できるかどうかわかりませんが、目指していきたいです。

それと、日常の着物、現代の紬を一般の方とともに広めていきたいと思うのです。

手仕事の着物はそれなりに高価ですし、面倒なことや、
手間のかかること、また自分なりの鍛錬も要します。
でも心地よい布や美しい衣がいやだと思う人はいないと思うのです。
読者で、着物に関心のなかった方からも「素敵ですね~」「着物を着てみたくなった」との声もいただきました。
また3.11以降自分の生き方を問い直し、「着物を着よう」と着方をならいはじめていた60代後半の知り合いが、
作品集を読んで「応援してもらっているようで、この秋からは外へふみだします。」という手紙をいただきました。


先日、ある高齢の高名な方がテレビに映り「これほど悪い時代はない。
戦争中よりももっと悪い時代だ」と今の日本をなげいておられました。
確かに問題は抱えています。ただ、政治家や官僚にあまり期待はもてないように思います。

それより普通に生きる市民が世の中をかえていけばよいだけです。
世の中なんて変えられないと思うかもしれませんが、それはそんなに大変なことではなく、
モノを大切にさえすれば大きく変わってくるように私には思えます。
世の中を変えるというより自分を変えていくということかもしれません。

質の高いモノを大切にして、そのモノと向き合うことが人の心も経済も落ち着かせてくれるのではないかと思うのです。 
それは衣食住すべてのことに自分なりに向き合っていけばよいだけです。

良質の着物は人を育ててくれます。
私の着物を着てくださっている多くの方からよく聞く言葉で
「この着物に負けないよう自分を磨かなければ。。」という趣旨の発言があります。
決して着飾ってひけらかすような人は今まで一人もいませんでした。
むしろ着る側の方もとても真摯な気持ちで纏ってくださっていると確信しています。

今どき着物が経済をよくすると思う方はほとんどいないと思います。
私の仕事にしても決して楽ではありません。
またモノを大切にされたら経済が回らない、どんどん新製品を買ってもらわなければ企業は成り立たない。
大量生産、大量消費、大量廃棄のシステムではそうでしょう。
でもごみの量が少なくなればその処理にかかる税金は減るはずです。
また丁寧に生きることは心が安定しますので病気になりにくくなります。
医療費の削減になります。

機械の導入に多額の借金をして悪名高き銀行に金利を払うより、人にかけたらどうでしょうか?
手仕事を増やせば人手がいりますので雇用を生みます。
機械がやっていたことを少し人に回せばいいのです。
手に技がつき、働く喜びが生まれます。

つつましやかな生き方は貧しいのではなく、ものの本質に触れます。人やモノが見えてきます。
そんなに大儲けはできませんが真面目に、真っ当に環境や人に配慮した企業や事業者を支持していけば、
少しずつよき人たちの間でお金もまわり、よきモノがよき人を育て、
よき人がよきモノ作りを育て世の中が良くなっていけるように思います。
そしてよきモノがよき人を繋いでくれます。

環境にも人にも優しく、自由に幸せに人間らしく生きられるように思います。
周りの身近なところで、それぞれの方がそれぞれに、
小さなよきモノよき人の輪を作っていき、そのよき輪が広がるといいなぁと思います。

今回の作品集の出版はそういったことを含め一般の方に広く手仕事のご認識をいただきたく出版のかたちにしました。
私が織る紬は身一つの仕事で、いわば昔、家庭で家族のために織られてきた着物に近い点があります。
制作点数も少ないのですが、他にも良い物作りをしている方はおられると思います。
アンテナを張って手仕事系への関心を高めていただければと思います。

これからの染織、着物の世界のみならず、日本の復興への布石となればいいという願いを込めています。

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