中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

武蔵野美術大学特別講義――「紬きもの塾移動教室⑥」

2015年09月21日 | 「紬きもの塾」移動教室
先日、武蔵野美術大学工芸工業デザイン科テキスタイルの学生に特別講義を今年もしてきました。

毎年話の内容はほぼ決まっているのですが、今年は後半の着物を着ることについての話のところで、自分の半幅帯を持ってきた学生には、結び方を1回見てもらい、あとは自分で結んでもらうということをしました。

自分で結ぶのは初めての方が多かったのですが1回見ただけでなんとか形ができました。
もちろんきちっと結ぶには奥の深いものではありますが、誰かに頼らなければできないものではないことを、木綿や紬はそんなに着ることに関しては大変ではないことを学生たちにも知っておいてもらいたかったのです。

親も祖父母も着物を着ない。
振袖や浴衣を着るくらいでほとんど着物とは無縁に育ったわけですが、このクラスには「紡ぐ」は知っていても「紬」という言葉を知っている学生は一人もいませんでした。

この日は早朝から一日雨降りでしたが、いつもの単衣紬に半幅帯、雨コート、雨下駄で向かいました。
着物姿をぼんやりとでも見てもらうことが多少なりとも記憶に残り学びになってもらえたらと思いました。
人の着物姿、姿勢、立ち居振る舞いなどを見る機会がほとんど身近になくなっているのですから。

その日の様子を教務補助の方がたくさん写真に撮ってくれましたので一部ご覧ください。

繭一粒の話から始めました。

真綿をよく観察。

じーっと見つめる。

真綿から糸を紬いでもらいました。

なかなかいい感じです、

次は繭一粒から1本の糸を繰り出します。

黒い紙に巻き取ると糸の形がよくわかります。

絹糸の匂いを嗅ぐ。

草木で染めた糸の色を見てもらう。

織られた着物のサンプル布を見る。

半幅帯を結んでみる。

とりあえず結べたので記念撮影。(*^_^*)v

このあとは着物のたたみ方や物を大切に扱い次世代へつなぐことの話しもしました。

学生たちはとても素直に蚕の吐き出す糸の形を見つめているし、ずっと糸を繰り出していたいという学生も多いです。

また草木で染められた糸の美しさに感嘆の声を上げる。
私の紬に袖を通してもらうとみるみる表情を明るくいきいきと変える。

プロダクトデザイン系の学生ですが、美しい自然素材の糸の形や色の深さや手技を見れば、みんなそれなりのインパクトを受けているようです。

感想票の中にも[「物をよく見ること」大切にしてみようと思いました。]と書かれたものがありました。
よく観察し、そしてそのことから発見し、発想を広げ、暮らしや仕事に何らかの形で取り入れてほしいと思います。






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秋色の吉野格子帯を織ります

2015年09月04日 | 制作工程


工房では帯の制作を続けています。

春には春の、夏には夏の、秋には秋のもの・・を織るのが本当は一番好きです。

販売的にはもっと早く作ってシーズン前にお見せしないといけにのですが、^^;
作る立場になるとその「今」という時の光や空気の中でのギリギリの色糸の選定が出来るからです。
以前、立松和平さんの取材の折に「季節と一緒に織っていきたい」と話したことを思い出します。
私のやり方はたくさん糸を染めてある中からイメージしていくやり方ですので特にそうなのだと思います。もちろん長年の経験で予測をすることはありますが。。。

上の画像は“実りの秋”のイメージの吉野格子帯の縞糸です。
といってもこの帯だけで色を盛り込み過ぎないよう、あとは使う方が小物などで色を足していけるよう抑えてあります。
着る人の見立ての楽しさを残しておくことは作る上で大切なことだと思います。


経糸をチキリに巻き込んでいます。
吉野格子の太い縞のものは地糸と別々に整経をして別々のチキリに巻き込んで機にかけます。


茶の地糸と合わせます。

季節感は大切ですが、紬織りの場合は花柄や季節を限定する文様があるわけではないので、あとは取合せの着物や襦袢、小物たち一つで季節を変えて着ることができます。
そこが織りの着物の世界の醍醐味とも言えるでしょう。

この地色は桜染の茶で、縞のグレーは紅梅、紫はすももなどで染めたものです。
植物が蓄えている生きた色は深くて包容力があります。
この色自体が実りの秋の果実のようです。

秋の装いをあれこれ考えるのに良い季節になってきました。
工房でもまた帯を中心にしたイベントを予定しています。ご期待下さい。







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