中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第5回「自然で楽な着方」― 下着の揃え方・半衿の付け方・着物の仕立寸法

2021年11月25日 | 紬塾’21~’24
HP着姿も更新中! 12/4追記

工房では現在個展にご都合のつかなかった方、改めてご検討中の方などにお越しいただいております。草木染帯揚げ、帯締めなどの割引もありますのでこの機会にお出かけ下さい。
12月18日までお受けできますのでHPお知らせからお問合せ下さい。

勤労感謝の日は紬塾でした。
働けることに感謝した日でした…(^-^;

楽で自然で時間のかからない着物の着方をやりました。
下着類の素材や洗い方、三河芯に半衿を先に取り付けるやり方なども説明しました。


半衿付けの苦手な方は多いと思いますが、このやり方は最も簡単なのではないかと思います。私もあまり好きな仕事ではないですが‥


先に半衿を衿芯をくるむように取り付け、その後襦袢に襟肩開きのところだけまつり縫い、あとは大針か安全ピンでとめるだけです。
普通は長襦袢に三河芯を付け、半衿を縫い付けると思いますが、それでももちろんいいのですが、このやり方は縫うところが少ないのです。
衿芯ごと洗います。
差し込み式の衿芯はせっかくの着物姿を台無しにすると思います。風情がないです。

着付けは皆さんできる方ですが、意外と自分の着物の寸法などは初めに決めた寸法で、見直すこともなく着ているようでした。
なんというか、いきなり着付け教室とかで着方から入るというのは遠回りの始まりのようにも思います。
身近に適切にアドバイスをしてくれる人もなく、仕方ないかもしれませんが。

着物の寸法と着方についても少し話しました。着にくい着物の代表格が身丈が長い、身体は細いのに裄丈は長いでしょうか。
ジャケットの袖丈と着物の裄丈は構造が全く違います。
着物の本質を分からない人たちが関係者に多すぎます。

あと、単衣の紬などは身幅が広すぎると裾さばきが悪くなりますので、その辺も仕立て関係の方はアドバイスしてほしいです。
私は紬の単衣の裾さばきが悪いと思ったことないのですが、、。

着物や和裁の世界は本来はシンプルで合理的なものだったのではないでしょうか?そこに日本人の美意識が宿ってる。

私の着方を皆さんに見てもらいましたが、あまりにシンプルでえっ!という感じだったようです。私は着物のモデルさんではないので昔ながらの自然体の着方でいいと思っています。皺ひとつない木目込み人形みたいな着方は撮影用ならいざ知らず、街着にむしろ野暮、補正下着とか老けますね。。
作り上げたボディはなんとも不自然です。もちろん補正の必要な方もありますが、最小限にとどめたいです。

長襦袢に麻の伊達締め1本、着物にメリンス腰紐1本、短め胸紐1本、帯は仮ひもなしで結び、帯板はボール紙1枚、帯枕にガーゼは掛けない。以上です。
撮影用や礼装用の着方ではないのですが、普段街着にする程度ならこれで十分です。

また、染めの着物地と真綿紬地は同じ絹でも全く別物です。素材の違いで着方を変えるのも当然のことと思います。

今の時代は頭が先行、知識、情報ばかりで自分の身体感覚に欠けているように思います。それでいて知恵はないのです。(ーー;)
美意識や身体感覚は本来通じるものです。もう一度無垢な目でものを素直に観る、目を閉じてものに触れる。そういうことを最初の紬塾でも話したと思いますが、そこを気付き、鍛えないといい着物に出会うことも、いい着物姿になることも無理と思います。

次回、最終回になりますが、名古屋帯の関西巻きができないという方が多いようですので、なんでなのか?検証してみたいと思います。楽しみです。(^^♪


この日は、久米島に縞の帯を合わせました。
独立して間もないころに織った反物から作りました。
最初の個展で着物を揃える経済的余裕もなく、ツーピースにしたのですが、その残布とスカート部分を解いて、名古屋帯に仕立てました。写真は外光が強すぎて色が飛んでますが、産地の普段着とよく合います。
帯締めは緑を感じる青の寒色系を添えてバランスを取りました。

着物は少し古い時代のもので、以前にも書いたかもしれませんが、経糸が節があって素晴らしいのです。
呉服屋さんで、状態の良い上質の古いものも少し置いている店が以前あって、別件でお尋ねした際に棚の一番下にあるのを見つけ、見たときは今まで見てきた久米島とは違う糸質に釘付けになりました。
工房を維持するための支払いもあり、最極貧にあった時でしたが、とりあえず取り置いていただき、後に購入しました。八掛は茶がついていましたが、自分で濃い紫茶に染め替えました。

この糸を繰り、つむぎ、デザインし、絣を括り、染め、織り、砧打ちし、そして購入した方々への敬意をもって着続けたいと思っています。

HP着姿も更新中!



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45周年記念展来場者の方の着姿から

2021年11月18日 | 着姿・作品
先日の個展の会場へ私の着物や帯で来場くださった方がかなりいらしたのですが、写真は一部の方しか撮れませんでした。ギャラリートークの日は全く撮れませんでした。
またせっかく撮らせて頂いたものの、色があまりうまく出なかったりでした。
ゆっくり場所を設定するところから決めないといい写真は撮れませんので、残念ながら掲載できないものもありましたが、少しご紹介します。

まずは個展のギャラリートークで聞き手を務めてくださった「美しいキモノ」副編集長の吉川明子さんです。
この日は私の桜染めの紬に沖縄の紅型染めを合わせてくださってました。辛子色の帯締めも、本来紬にあまり使わない絞りの帯揚も吉川さんの明るいパワーが溢れて力強かったです。紬は自由に取り合わせられますのでそこが楽しいです。
着物は少し前(!?)の40代半ばの作品で、いい無地系はどうすればいいのかを追求していたころのです。濃淡のある色、色相の違う糸、糸質の違うもの、真綿の糸、玉糸、節糸をブレンドし立体感を出した作品です。
一色の無地は織ったこともないし、これからも織る気もしないのです。
静かそうで中は複雑な無地が好きです。


この着物の背中には桜の小枝の洒落紋があります。私が織りで使う草木染の経糸を職人さんにお願いして刺してもらいました。桜の葉が持つ複雑な色相にしてもらいました。


こちらの着物「秋麗」も遠目に無地のようでかなり複雑です。この方も紅型のざんぐりとした帯と合わせてくださいました、いつも型にはまらない自由な少し調子を破るような取り合わせをされている方です。前のアップは撮り忘れましたが、帯締めが柔らかなココア色の茶で抑え、かなり高度な選び方と思いました。とても素敵でした!帯揚げはクリーム色。作品集「樹の滴」にも掲載されています。



こちらの方は着物と帯と帯揚と帯締めも私のセレクトで一式揃えてお出掛け頂きました。オリーブグリーンのような茶にピンクが入ってとても凝った組紐です。
帯締めも草木染の帯に馴染むように1本ずつ慎重に選んできますが、私の帯をお使いの方には随分ご利用いただいてきました。


白地も単純な白ではなくもちろん数色を混ぜています。「真珠の彩」と銘を付けましたが、光線でピンク系にもブルーグレー系にも、本当に真珠を感じさせる紬です。この着物は実作でないと良さがわかりにくいと思います。
白地の着物は秋は寂しいかと思いましたが、ビワで染めた赤味の茶で、真綿糸の帯が暖か味を添えていました。この帯も無地のようで無地にあらず、、です。


帯を使ってくださっている方もご紹介します。
以前にご紹介したモッコク染めの薄ピンクの「御身衣」の姉妹で「御身衣II」です。花織の模様の出方が少し違います。
染めの着物と合わせてくださって、アイボリーの帯揚も私の染を使ってくださっています。帯も色々な着物に合いますとおっしゃってくださってました。
安心の一本になってお役に立てればと思います。



こちらは半巾プロジェクトのシリーズを名古屋帯になさった方です。
型染めの紬と合せて下さいました。帯揚も紫味の梅染のグレーです。濃い紫の帯留めは小川郁子さんです。半衿も刺繍が入ってますが、それぞれの色や素材が異なりながら、静かに調和しています。


この日は前を関東柄を前に出されていますが関西巻きではピンクベージュの縞が出るようになっています。着物で使い分けて頂ければと思います。



この方も半巾帯プロジェクトに参加して下さった方です。
「山笑う」をお手持ちの大島に合せてくださいました。
大島の濃厚さに程よく添う感じです。
着物をたくさんお持ちですので、色々な結びで合わせて頂ければと思います。

かるた結びにされています。
よこ吉野を配していますので、半巾でも重みがあります。貫禄あります!
私はあまりかるた結びはしてきませんでしたが、いいですね。私も練習します。

ここでご紹介できない方の分もHP着姿集に順次上げていきますのでご覧ください。

私自身も毎日違った取り合わせで出ていたのですが、1枚しか撮ってもらう余裕なく終わってしまいました。。

それにしてもコロナで外出も控え、気持ちも塞がっていた方が多いでしょうに、個展でお会いした女性たちの着ることへの意欲はすごいものがあります。
それは着飾るだけではない、まずものを観るということ、そして着るということへの真摯な眼差しであり、着ることは善く生きることなのだという意思、自律した女性の根源的強さを感じました。

私も個展の残務が済んだら自分の着ることを真剣に考えたいと思っています。(;'∀')/


工房では現在個展にご都合のつかなかった方や、取り合わせを改めてお考えの方などにお越しいただいております。12月中頃までお受けできますのでHPお知らせからお問合せ下さい。
帯揚、帯締めも色数が少なくなってまいりましたので、工房での販売に関して帯締めは20%offで販売いたします。帯揚げは10%お引きできます。もし合うものがあればご利用ください。


上の写真は、個展初日からお問合せを頂き、遠方の方に通販で対応させて頂きました。
何度も確認しながら一式お選びになりましたが、画像のやり取りとはいえ、すでに私の帯を2本お持ちの方ですので大体の色のイメージがお分かりになるのだと思います。
こちらである程度合うものを選び、その中から最終決定をしていただきました。
ビデオ通話でお話ししたりしましたので、メールだけではないお人柄もある程度分かりますので、私の目から見てもベストなチョイスだったと思います。

ご遠方でも何かございましたらHPよりお問合せ下さい。


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中野みどり紬織45周年記念展終了しました

2021年11月11日 | 個展・展示会
45周年の個展は初冬の晴天に恵まれ無事終了しました。
最終日の午後だけ一瞬時雨ましたが、丁度良いお湿りになりました。

多くの方と作品について話したり、実際に新たに着物や帯を引き受けてくださる方も多く、大変充実した会になりました。ありがとうございました。

私の着物や帯で来場して下さる方も多かったのですが、写真を撮ったり、インスタに上げたりする時間の余裕もほとんどなく過ぎていきました。お客様の着姿はまた後日少しですがご紹介できると思います。

トップの画像は7日ギャラリートークの日の私の取り合わせです。
ピンクベージュ桜染めのすくい織り着物に吉野格子の帯です。小川さんの緑の魚々子の帯留めもしました。



ギャラリートークも定員を越える方に参加して頂きました。
聞き手の「美しいキモノ」副編集長の吉川さんの軽妙な問いに私も話しやすく、ギャラリートークというより普段通りの会話のようになりました。。
上の写真は一瞬マスクを外して。私はノーメイクの乱れ髪、、で失礼します。
左が吉川さんです。ヘアメイクもこの日のために朝から予約してくださって恐縮です。。
吉川さんの紬は洒落紋入りで私の作ですがまた改めてご紹介します。


江戸切子の小川郁子さんも控えめな方ですが、言うべきことはおっしゃる方で作り手として尊敬できる方です。
写真は制作に関して意気投合しているところを動画から切り取りました。
着物を着るようになって、そのことは作品作りにも良い影響があったと以前お話を伺いましたが、着こなしも自然体で素敵です。気持ちよく仕事をさせて頂きました。現代彫刻のような帯留めも多くの方にお使いいただくことになりました。

トークの録画を見返しましたら、マスクをして話しましたので、前半は聴き取り辛い箇所があり、申し訳ありませんでした。

さて、まだ個展の残務や仕立ての手配、取り合わせのご相談など来房の方々もあり、12月上旬まで作品はしまわずにおきます。個展でも展示してないものもありますので、もしご覧になりたい方、取り合わせる着物や帯のご相談などHPお問合せからご予約の上お越しください。どういうものをお探しか具体的にお問合せ頂けますと準備できますので幸いです。

ギリギリまでの制作、準備、そして個展に突入。短期間でしたが体力の衰えを身に沁みて感じました。少々くたびれました。。(>_<)

多くの方のお力添えで走り続けた45年でしたが、12月の最後の回の紬塾の後は、少し身体をほぐし、充電期間としたく思います。

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中野みどり紬織45周年記念展お知らせ<その4>3日13時半開場となります!!

2021年11月01日 | 個展・展示会
庭の白菊も咲き乱れ、むせるような香りを放っています。蜂も忙しそうです。
ブログ更新もギリギリになってしまいましたが、明日夕方の作品搬入、3日午前中に飾りつけです。
初日は13:30からですのでお気を付けください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
《中野みどり紬織45周年記念展》
会期:2021年11月3日(水・祝)~8日(月)
   11:00-18:30(初日は13:30から 最終日15:00迄)

会場:ギャラリーコンセプト21(東京都港区北青山3-15-16 ) 
出品品目:着尺、帯、ショール、草木染帯揚、袱紗、卓布、額装
       小川郁子作/江戸切子帯留め・切子小品

※7日(日)ギャラリートーク(13:30-14:30)
    キャンセル待ち     受付終了しました 
一般の方はなるべくこの時間帯を避けてお越しいただきますようお願いいたします。
※不織布マスク着用でお願いします。

中野みどりWebサイトお知らせもご覧ください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
45年の節目を迎え、振り返れば長かったような短かったような。
兎にも角にも時間は積み重なり、作品も休むことなく生まれ続けてきました。
命をかけて仕事したつもりです。その一端である最新作と、30年近く前の公募展出品作品などを3日からご覧頂きます。
大半の作品は手元を離れましたが、どなたかのお役にたてていればいいと思います。

作品はすべて販売可能なものです。身に当ててご覧になりたい方はスタッフにお申し付けください。男性向けの広幅、角帯もあります。
すべてが自然な植物の色から染めたものですので、なるべく外光のある時間にお出かけいただければと思います。

小川さんの帯留めや振り出し、蓋物などもまだ拝見しておりませんが、会場の様子はInstagramでご紹介できるかと思いますので、アカウントをお持ちの方はフォローをお願いします。アカウントお持ちでない方も時々チェックしてください。

帯をたくさん用意しましたので、小川さんの帯留めと合わせてください。
小川さんの帯留めと私の帯を使ってくださっている方も多いのですよ。(*^-^*)

切子の振り出し(一輪活けとしても)や蓋物にも合わせられるよう卓布や袱紗も準備しました。お部屋の彩にしていただければと思います。

会場へはなるべく1~3名でお越しいただければと思います。
スタッフも一人での対応ですので、お買い物の際にはお待たせすることもあるかと思います。私は午後13時から17時くらいまでは在廊するようにしますが、午前中の方はお声を掛けていただければ早めに出ますのでおっしゃってください。




上の画像、工芸評論の笹山央さんの会報『かたち』が最終号となります。
私もその最終号の6名の一人に取り上げてもらいました。
これ以上ない評論を書いていただきました。
個展の会場でも販売いたします。また郵送をご希望の方は工房宛のメールでも対応させて頂きます。お名前、ご住所をお知らせ下さい。
普通郵便で発送いたします。
送料込みで1300円です。HP「お問合せ」からお申込み下さい。

また、コロナも第六波も懸念されます。会場へは不織布マスクでお越しください。

では会場での新たな出会い、再会楽しみにしています。


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