中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

佳き、好き、善き手仕事で新年を迎える

2016年12月28日 | 工芸・アート
今年もあと僅かとなりました。
本日は仕事納めで昨日大掃除も済ませました~☆彡


工房内の棚のあるコーナーを床の間スペースに見立て、ささやかながら新年を迎える飾りとしました。


壁に飾られた作品は図書館などから廃棄される本の表紙を使った作品です。
✗印は寄贈者名などが記された箇所ですが、これはもともとあったものです。後は着色したり表面を蜜蝋でコーティングしてあります。国際的な美術家で本を使った作品を多く手がける西村陽平氏によるものです。この作品は今年スイスで行われた展覧会出品作品です。縁あって我が家にきてくれました。\(^o^)/


花は先日、造形作家の栃木美保さんから頂いた桂の落葉を使いました。
階段ワイングラス(大村俊一作)に塩とともに活けてみました。雪の下から芽を出し花咲かせる水仙をイメージしました。桂はとても香ばしい甘い美味しい香りです。(^ν^)
紬の卓布はショールを織った経糸を利用し、母が布団側を裂いてくれていたものを少しあしらったものです。ちなみにくるみの木の棚は斉藤衛作です。静かにそこに居てくれます。
立派な床の間がなくても自然物、自分の宝物や美しい手仕事を選び眺めるのは心楽しく気持ちが澄んできます。良い年が来るような気になります。

さて、一年を振り返ると、今年は3度も展示会があり染織の仕事としては肉体的にもかなり大変でした。でも新しいお客様との出会いもたくさんあり、手応えをいただきました。
紬塾も熱心な方々に引っ張られ、私もヒートアップして毎回時間オーバーで努めてきました。あと1回で今期は終了となります。

着物の世界も厳しいと言われて久しいですが、私の周りにはしっかりと着物関連の仕事に携わっている方、あるいはいいものをじっくり選んでとことん着ていこうとする方もいます。
手仕事系着物は作るのも着るのも手間もお金もかかりますが、額に汗しながらも心豊かに、充足して生きていく上で大切にしたいものです。

手仕事は片隅に追いやられ、人間をロボット化し、過剰な労働を強いたり、日々の暮らしも過剰な便利さに囲まれ、人が時間をかけ考え、工夫したり、研究したり、反復鍛錬し、時に失敗もし、悩み、苦しむ時間も与えないような流れがあります。
これでは上質な手仕事や文化が育つわけはありません。
しかし、一般の私達が諦め流されてはその動きを押しとどめることもできませんし、身近な小さなことから手を使ってものを作り、創意工夫し、ものを大事にしていくだけでもいいと思います。
また、プロの仕事も尊重し、いいものを選ぶ目も持ってほしいと思います。私も非力ながら紬織を通して、創ること、使うこと、未来に繋ぐ努力をしたいと思います。共感の善き輪が広がることを願っています。

今年もたくさんの方にお世話になりありがとうございました。
仕事始めは1月4日からです。

国内外、災害もあり大変な一年でしたが、ブログをお読みくださっているみなさまもどうぞそれぞれの良いお年をお迎え下さいませ。
来る年が良い年でありますように!!






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第9回紬きもの塾―― 自然で楽な着方とマイサイズ

2016年12月19日 | 紬塾 '13~'16
紬塾はいつものように終盤に入ってから着物の着方についての学びになります。
今期の方は全員が自分で着ることが出来るので、仮紐を使わない帯結の話だけサクッとで良いかと思っていましたが、、、けっこう大変でした~。(^。^#;)

やはり補正具や紐やゴム付きの帯板など、なくても済むものを使っていて、体型的に補正の必要のある方はそれでもいいのですが、判で押したようなシワひとつない着方はかえって着姿を老けさせ、布や着姿を生き生きしたものにしないように思います。

日常に着物姿を見かけることもなくなり、雑誌のモデルさんの撮影用の着付けが手本になってしまいましたが、補正下着でシワのない着方にこだわるより、自分にあった寸法で仕立てた着物をスッキリ着ることのほうが賢明かと思います。

ある和裁士さんは「着付けや所作を身につけ、短く作って長く使う」と言っておられます。名言ですね!

特に真綿系の紬の単衣などは身幅が大きめサイズですと、裾捌きも悪くなりますし、大島などのように滑る素材は腰紐をウエストで使うほうが着崩れしにくいですが、真綿系は腰骨で短めでもよいです。
また、単衣か袷かによっても若干の身幅などの違いも出てくると思います。

真綿系紬着物は紐やゴムベルト、補正下着などを使わずともその人なりの体型で楽に着るのが基本と思います。年代やその方が醸し出す雰囲気や、また時に応じてキリッとしたりゆったりしたり、それが出来るのが着物です。
また多少寸法の合わない着物も着方である程度はカバーできるのも着物の利点です。

裄の長さも今は妙に長くなっていますが、洋服の袖丈を図るように測りますと長すぎます。
袖の中で肘が曲がるわけですから腕に沿わせた筒状の洋服とは全く違います。
体は痩せているのに裄だけにこだわり長くすると肩幅や袖幅をギリギリ出すようなことになり、上身頃のだぶつきが出て着る時にその処理に手間取ります。

上記の和裁士さんは衣紋を抜くことで背中から袖口までバイアスが生まれ、肩周りや袖を長使え、またバイアスが生じることで身に沿い体型もスッキリ見せるとおっしゃってます。
繰越を大きくするより衣紋を抜いた着方をするほうが背から袖にかけバイアスが生じ肩周りも布がなじむわけです。

呉服屋さんに仕立てを40代半ばで頼んだ時に、「中年になったら繰越は大きい方がいい」と言われ、5分から7分にしてしまいました。肩の厚みもありませんし5分で良かったのだと今は思います。5分にこれから戻していこうと思っていますが、長襦袢の兼ね合いもありますので悩ましいです。。

和裁は小幅(着尺巾)のバイアスをうまく利用して人の体に沿うような知恵も潜ませていたのですね。
四角い風呂敷が四隅を結ぶだけでいろいろな形のものを包めるのはバイアス利用の知恵です。

布を織る立場から言いますと、私は太めの節の多い糸を使って織っていますが、タテ・ヨコ密度のバランスを考慮した地厚だけれど柔らかく、それでいてバイアスがきれいに出るようにしています。
紬は固くて突っ張リ肩がこる、という方もおられますが、たぶんバランスの悪い布なのだと思います。素材感を観ることも重要です。

せっかく着やすく織られた布が仕立ての寸法などで着にくいというのは残念なことです。
“着物を着る”ということは着方や和裁、小幅の特性を無視した寸法ではない、賢いマイサイズを知らないといけないということだと思います。
サイズだけにとどまらず、奥の深いことで二年や三年で到達できることではないですね。

新しく作る時や仕立直しの時にはサイズを見直すチャンスですので、自分の着やすい着物を着た着姿写真と寸法表を自分で測って作り、照らし合わせるのが良いと思います。
私も自分の着物の寸法を総点検したいと思っています。
一応マイサイズで作りながら、着にくい、胸や衿のあたりに大きなシワやたるみがでる、うまく畳めないのがあります。。(-_-;)

帯の長さもマイサイズがあります。
とても細身の方が既成の帯を持て余していたのですが、全通柄であれば単に長さを詰めることができますし、自分に合う帯の長さ、巾を知ることも大事です。

とことん着ていくことを考えている仕立てには布の命を生かす知恵、合理があります。
それを生かしつつ自分の着物サイズと着方を磨きたいと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次回年明け1月は紬塾最終回です。受講者のかたは今までのことを振り返り、わからないことなど質問や感想もまとめておいて下さい。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「紬の会’16―冬の装い」終了いたしました

2016年12月15日 | 紬の会
「紬の会’16―冬の装い」櫻工房展示も終了いたしました。
ご来場、またお力添えをいただきましたみなさまありがとうございました。


工房内では午前中の冬の日差しが座敷の一番奥まで差し込んでいました。
そんな中で草木の色や節のある立体的な紬の風合いを視線や光線をさまざまな角度に変え、生き生きとしたものの命をご覧いただきました。

お手持ちの着物に帯や小物を取り合わせてご覧頂いたりもしました。
自然とものと自分とのせめぎあい・・・時間をかけ逡巡し、自分と真摯に向き合い出会いを確かなものにする。。。

創り手は本当にいいものとは何かを一生をかけ追求し、自然物がそこにあるように、そしてそれをも超えて自然体な創作物を提示する。ただそれだけに命をかける。

これからの制作に向け、ご来場のお客様から静かに、そして多くの力をいただきました。

また次の機会もご期待に添えるよう精進してまいります。ありがとうございました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「紬の会’16―冬の装い」工房展・・・着方ミニ塾

2016年12月12日 | 紬の会


「紬の会’16―冬の装い」工房展示に昨日ご来場くださった方の着姿をHPにUpしました。

着物初心者のかたでしたので、着方のミニ塾もいたしました。
画像はアドバイス後にご自分で着直した着姿です。
良くなりました!細かな点は慣れていくしかありません。写真を撮ってもらいチェックすると良いですね。
15日(木) まで櫻工房内(町田市・鶴川)で展示をしております。詳細はブログ前記事をご覧ください。

早めの時間帯は障子越しの光も差して、草木染の色もきれいです。初めての方もお気軽にご来場下さい。お待ちしております。(*^^*)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「紬の会’16―冬の装い」櫻工房展

2016年12月06日 | 紬の会
「紬の会’16―冬の装い」神楽坂での展示は終了致しました。
ご来場くださいましたみなさまありがとうございました。

今回の「紬の会」もまたドラマがいくつかありました。
初めて来てくださる方も多く、みなさん植物の色や布の不思議さ奥行き自然な美しさに魅了されているご様子でした。
2回来場する方はよくあるのですが、今回は3回の方が二人いらっしゃいました。
時間帯の違いによって色の見え方も違ってきますので、何度来ていただいても構いません。(^-^) 

古くからのお客様が初期の作品(独立して間もない35年ぐらい前の)を着てご来場下さいました。帯、帯揚げの染も私の手によるものです。
ご高齢ですが、とても可愛らしい雰囲気の方で今もよくお似合いです!!
「この着物を着ていると幸せな気持ちになる」とおっしゃられていました。嬉しい限りです!
やはり作品は若い感じですが、糸質もよく、素朴で力強くおおらかな紬らしい作品だと懐かしく思いました。初心を忘れずに‥です。
近日中にHPの着姿ページに詳細アップします。

さて、引き続き今週末 9日(金)~15日(木)まで櫻工房内でも展示を行います。内容は神楽坂と同様に冬の装いですが、少し手の込んだ公募展入選作品なども展示いたします。また工房コレクションの染帯、更紗、織帯も取り合わせてご覧頂きたいと思います。仕立て上がりの帯もあります。
そして糸や見本布をご覧いただき、着尺のセミオーダー(納期1年~)のご相談も承ります。

他に、草木染め帯揚げや草木染紬に合う色相の帯締めなども用意してありますので、お手持ちの着物や帯をお持ちになられて合わせて下さい。 
また、紬を着ることに関してのご相談ごとも受け付けます。一般論でもなくその方のニーズにあった答えをご一緒に見いだせたらと思っています。
きもの初心者の方の着方についてでも構いません。
ミニ紬塾@工房版も参考までご覧下さい。

この会期中限定でお仕立て代無料(裏地代別途)です。
工房割(5%引き)も併用できますのでぜひご利用下さい。※一部除外品もあり

10日(土)のみ9時半から12時までの受付となります。
それ以外は10時から16時まででご都合の良い時間帯をお知らせ下さい。
草木染めの紬は午前中の光が特に美しくご覧いただけます。
上の画像は11時ごろの工房内から庭を眺めた冬の日差しです。お早めにお出かけ下さい。
駐車スペース1台分ありますが、お車の方はその旨もお知らせください。
ご予約時に鶴川発のバスの時間や道順をお知らせいたします。タクシーですと1,000円ほどです。

ご予約と詳細はこちらから。不明な点などもお気軽にお問い合わせください。

ではお待ちしております。(*^^*)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする