中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第5回紬きもの塾 工房の桜で染める

2012年07月27日 | 紬塾 '9~'12


自分で紡いだ糸と、半衿や古い胴裏、ストールを工房の桜の枝葉を使って染める作業をしました。
今回は糸には葉を使い無媒染で、布には枝を使ってアルミ媒染で染め分けました。
それぞれ赤味を含んだきれいなベージュが染まりました。天気も良く乾きましたので、布はアイロン仕上げをするところまでできました。
染めあがったストールが顔の色ととてもよく映っていました。
桜は懐深く優しい色ですね。

草木で染めるのはチップにしたり、色を見ながら煮出したり、時間を要しますが、その時間もとても大切な時間なのです。


以前井上まさじさん(画家)が、彫刻家の砂澤ビッキのアシスタントをしていた時代に、柳の枝を使った彫刻を作るために山でたくさん採って来て、ビッキと二人でその皮を剥がす作業をしながら過ごした時間がとても楽しく今でも印象に残っていると語っておられました。
これからどんなものになっていくのか、手を動かしながら逡巡したり、淡々と、黙々と静かな時が流れていく。
私も一人で、手に豆ができ、背中は痛くなるほど黙々とチップ作りの作業をしてきましたが、不思議につらい時間ではなく、心が落ち着く時間なのです。



みなさんにはほんの一端でしかない体験ではありますが、見ていると一人ひとりが自発的に嬉々として作業をこなしているなぁと毎回思います。
人間の時間があります。

染色の時には水や、ガスのエネルギーを使いますが、私は技法書のやり方はしません。
自分なりの工夫をして無駄なく効果的に仕事ができるよう考えています。
火にかけている時間を短くして保温調理の仕方にヒントを得たやりかたをしています。



火からおろした後、蒸らし、放冷をします。むらにならないよう菜箸で動かしています。

水洗いもよく洗わなければならない時と、ざっと流せばよいときもあります。
残り水も洗いの程度によってうまく繰り回していきます。
創意工夫あるのみです。

ほかの仕事の時にも冷房は使いません。ヨシズ、緑陰、通風に頼ってます。
着衣もアッパッパに麻のステテコが一番涼しいです。昔子供のころは近所の友達のお母さんたちもみんなアッパッパでした。シュミーズ1枚とか大らかでしたね~!

NHKはニュースのたびに冷房の設定を28度以下にしてくださいと言ってますが、一日中そんな中にいると、かえって体を壊すのではないでしょうか?
ヨシズやブラインドを使いましょうとはあまり言わない。
ついでにいうと、、洗濯物情報とかで厚地のものは乾きにくいでしょうとか、折りたたみ傘を持って出かけろとか、今夜は毛布を1枚余分に掛けて寝ろとか、今シーズン何枚掛けただろう?と数えたことがありました。自分で判断します!!と言いたくなる。


子供の時から冷房が当たり前で育つ子供たちはかわいそうでなりません。
管理された中であせもにもならず、どんな素材の服を着れば少しでも涼しいかを学習する機会も奪われてしまうのです。
自然界で生きるのがますます下手になり人間もロボット化するばかりです。

高齢者や病人へは配慮が必要でしょうけれど、こうも一律で判で押したような発想しかできないのかと思います。
エネルギーを消費させやっぱり原発なきゃダメでしょ!といいたいのかな?

モノを作る仕事は毎日創意工夫の連続です。それが人の生きる喜びです。

今年はグリーンファンという扇風機を1台購入しました。柔らかな風が特徴です。
この夏を省エネで元気に乗り切りたいと思います。仕事を終えた後のビールの美味しいこと!



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着物でさようなら原発10万人集会のデモに参加して

2012年07月17日 | 自然環境・脱原発
赤字のところ7/21追記しました。You Tubeもご覧ください。笹山さんのブログもご覧ください。



グループの先頭を歩く着物の方は強い意志を感じます。



昨日の大変な暑さの中、前回お知らせした、さようなら原発10万人集会のデモに着物で参加しました。暑かったですが、風があったことで救われました。
腰の痛みもあり時間を遅らせ3時ごろ原宿駅近くの表参道の欅並木でまずパレードをする方々を見守りました。
すごい人でしたが、一般市民のみなさんは穏やかに手製のプラカードを掲げ、淡々とコールしながら歩いていました。
感動的でした。


この手拭いを首にかけた着姿は何かカッコいいと思いました。



信号待ちの間も団扇をかかげてアピールする若い女性。




この3枚の写真の方は靴を履き、一人で参加している様子でした。
しきりに沿道の人にアピールしていました。

「原発はいらない~」「福島返せ~」「農地を返せ~」「海を返せ~」「野菜が食べたい!」「魚が食べたい!」「牛乳がのみたい!」「電気は足りてる!」「子供を守れ~」「自然を守れ~」

私も道の際で写真を撮らせてもらいながら一人一人の表情を観ていました。
着物を着ていると目立つのでしょうか、ずいぶんたくさんの方が会釈をして手を振ってくださいました。
見ず知らずの方と手を振りあう――連帯の表明ですね。

30分ほどして木漏れ日が顔に当たってまぶしかったので沿道の少し陰になるところへ移動したとき、なんとわざわざ京都から集会に参加した知り合いが、行進の列の中から飛び出して握手を求めてきました。
びっくりしました。が、とても嬉しかったです。よくぞ気付いてくださいました!


沿道で30~40分見ているときに浴衣や夏着物で行進している人を6~7人見かけました。嬉しかったです。
女性が着物で声を上げてくれるのは特別嬉しいですね。一人での参加の方が多いように思いました。


現地へ着いてすぐに撮った写真でしたが、あとから気が付きました!着物の方は集会で司会役をされていた講談師の神田香織さんですね。奥は広瀬隆さん。僧衣の方は福井県小浜市の明通寺の住職中嶌哲演さんでした。集会の様子はYou Tubeでご覧ください。

下の写真の方はご高齢の方でしたが、毅然とした表情でした。


そしてその後には思いがけずに別の知り合いと合流でき行進に加わりコールをしながら歩きました。
途中離脱か?とも思いましたが、なんとか終着点の明治公園まで歩くことができました。



私は母の小千谷縮に自作の半巾帯です。
日傘は用意していたのですが、アスファルトの照り返しが強く、結局手拭いでほおかぶりの姿になりました。

千駄ヶ谷駅近くの緑に囲まれたカフェのデッキで美味しいビールの小瓶を1本だけ飲んで一休みして、みんなで帰りました。

それから昨日のデモでもらったチラシで知ったのですが、パブコメというのがひそやかに行われているのです。ご存知でしたか?
昨日も問題になっていた、仙台と名古屋の原発に関する一般市民からの聴取会に電力会社の人が入って発言したニュースはご存知の方も多いと思いますが、シナリオが3択になっていて真ん中を誘導して選ばせるための常とう手段とも。。
7月31日締切だったのが8月12日の締め切りに延びたということです。ぜひ参加したいと思います。
こちらもご参考まで。

私はもちろんパブコメ①0%を選びます。
心地よく暮らせる、省エネルギー、自然エネルギーに転換してほしいです。


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着物でさようなら原発

2012年07月12日 | 自然環境・脱原発
7月16日に東京・代々木公園でさようなら原発10万人集会とデモ行進が行われます。

私は人が人らしく生きられる世の中であってほしいと願っています。
経済という名のもとに、大量のエネルギーを使い、いつまで過剰にモノを作りつづけるのでしょうか?

原発は人々を本当に幸せにしたのでしょうか?
自然を汚し、ものを粗末にし、人を切り捨てる。消費の奴隷を作る――。
それが国民のためのはずはないです。
原発を推進して得をしたい人たちのために振り回されるのはもうたくさんです。

原発がなくてもやっていける社会に作りかえていくために、
今がラストチャンスととらえるべきだと思います。
私は手仕事がもう少し見直され、人間の速度に合わせた仕事が増えてほしいと思っています。
地に足をつけ幸せをかみしめて生きることができるからです。

いろいろな立場の専門家のかたがたもたくさん発信されていますので参考にしながら、
人として、一紬織の作家としても人任せにしないで考え、行動していきます。

16日はデモには参加したいと思っています。
ただ持病の腰痛が悪化していて長時間立っていたり歩いたりは出来ないのですが、
表参道から信濃町方向へのデモコースを沿道から見守るだけでもできたらと、
今養生しているところです。
できれば最後尾を少しでも歩きたいのですが。。。
2時ごろとにかく表参道へ行く予定です。

混雑状況や人の流れでどうなるかはわかりませんが、よかったら究極のエコな着物で参加しませんか?
私も夏着物でいきます(雨の場合は下駄はアスファルトの上では腰に負担がかかると思いますので無理かと思いますが。。)。
着物姿を見かけたら手を振りあいましょう!

着物は過去のものではありません。懐古趣味で着るわけではありません。
贅沢品と誤解をされている方も多いのですが、、、

今の時代こそ布を大切にする生き方をしなければならないと思います。
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いけばな作家 中川幸夫さんを偲んで

2012年07月04日 | 工芸・アート
中野みどりHP


中川幸夫「花」

いけばな作家の中川幸夫さんが故郷香川の地で去る3月30日に亡くなられました。
享年93歳でした。
私は4~5回お会いして少しお話を伺ったりしました。気さくな普通のおじさんの感じでしたが、本当の芸術家だったと思います。
前にご紹介した井田照一さんとはタイプは違いますが、フラットなものの見方や品格は同じだったと思います。

華道家はたくさんいますが、花の咲き始めから朽ちていくところまでを見つめ(時に腐らせ)、そしてそれを作品として昇華させていくひとはほとんどいないと思います。
花をただじっと見つめていくことから仕事が始まっているのです。
そして花だけでなく工芸、美術、写真、その他諸ジャンル、古典も現代のものも見続けていました。新聞も隅から隅まで読んでいたそうです。

あるいけばな作家が「花は蕾が開きかけた時が一番美しい。その一番美しいところをいける」と言い、牡丹や藤の花はよく使い、雑草といわれるようなものは使わない。
そうだろうか?と思ったことがあります。
蕾の開きかけも確かに美しいけれどその時だけが花ではない。また、大輪の花もいいけれど道端の草も小さな花をつける。
枯れすすきも中川さんの手にかかると根をさらされ、いのちの根源を表現する。

笹山さんが編集していた季刊誌『かたち』No.24に「一番小さい花で魅力的なイヌノフグリ、紫色の。あぜ道に咲いているのね、それは毅然たる主張で大きい花より見事に咲いているよ。」と中川さんはインタヴューに答え語っているのです。

人も子供には子供の美しさがあり、青年には青年の美しさ、中年も老いてシミやシワだらけでもも生きいきとした美しさには上下はない。

中川さんが80歳を過ぎ、体調を崩し中野のアパートから弟が暮らす香川のご実家へ戻られた頃の5月に、「かたち」の笹山さんと近くまで用事もあり、突然訪ねたことがあります。
8畳の和室に通されたのですが、床の間には中川さんの手によって花菖蒲が活けられ、座卓の上には来る途中で見かけた濃いピンクの花をつけた野草が何気なく、でも「ほほーっ!」という感じにしだれさせて活けられていました。
中川さんという人はここに活けられた花そのものだなあとその時に感じたことを記憶しています。
そして京都の若手の陶芸作家の作品についてあの人の仕事はいいと熱く語っていいました。
花を活けたくなるような作品だったのでしょう。

NHKが晩年の中川さんの仕事や姿を映像に納めているのですが、それをテレビで見た私の母は見終えて「すごい花だねぇ。言葉がない。流派の人たちはどう思うのだろう」と興奮して電話をしてきたことを忘れません。
母は紀州の山の中で自然を満喫して娘時代を過ごした人ですが花が好きでした。
中川さんの写真集を見せると何度も見返していました。
母はその年に亡くなりましたが写真集を見せてあげられたことはせめてもの親孝行と思っています。
私も初めて実作を見た日から1週間ぐらい血が体中を駆け巡っておさまらなかったですから。

笹山さんは毎週のように中川さんのアパートへ通っていたこともあり、季刊誌『かたち』でも何度か記事にしてきたのですが、かたちの会会誌の最新号(7月1日発行)に追悼特集を組んでいます。私も拙文ですが追悼文を寄せています。
流派を離れ上京し、中川さん37歳、夫人の半田唄子さん49歳の時に一合五酌の酒を酌み交わし結婚。
中野の6畳一間のアパートでともにいけばなの創作活動に命を賭けたお二人のことは忘れません。 合掌。

貴重な内容になっていますので是非お読みいただきたいと思います。
会員からもさすがに反響が5~6人から寄せられていました。

冊子のみを購入することもできますが、「文化は市民一人一人が作る」をスローガンにしているかたちの会へ是非ご入会をお勧めしたいです。私もボランティアで手伝っています。
入退会はご自由に。

かたち21の笹山さんにお問い合せください。
笹山さんのブログもご覧ください。

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