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夢逢人かりそめ草紙          

定年退職後、身過ぎ世過ぎの年金生活。
過ぎし年の心の宝物、或いは日常生活のあふれる思いを
真摯に、ときには楽しく投稿

志賀高原・発哺温泉滞在記 《中》 【2008.10.21.~10.23..】

2008-10-24 14:38:29 | 
     第2章 秋山郷往還記

私が秋山郷の名を知ったのは、遅ればせながら20数年前の頃であるが、
新潟県の大河の信濃川に注(そそ)ぐ中津川の奥まった処であり、
新潟県と長野県にまたがった渓谷沿いにあるので、
自動車を所有しない私は、はなはだ遠方すぎ、未知の地となっていた。

今回の志賀高原の発哺温泉滞在の2日目に、秋山郷の周遊があったので、
私達夫婦は魅了させられて、団体観光バス・ツアーの参加の理由のひとつとなった。

そして私は、江戸後期の商人、随筆家として、『北越雪譜』などを遺(のこ)された鈴木牧之に興味を深め、
磯部定治・著の『鈴木牧之の生涯』(野島出版)を読み始めたりし、『秋山紀行』も知り、
そしてネットで秋山郷に関してそれなりに調べたりした・・。

http://www.akiyamago.com/


このような思いで、私は中型バスに乗車して、宿泊先の発哺温泉から旅立った。

奥志賀高原までの上る道程、そして緩(ゆる)やかな下り道、
いずれも狭くカーブの多い奥志賀林道、そして雑魚川林道から、秋山郷の最上流の切明までは、
1時間半ばかりの車窓からの情景は、まさに錦秋の世界であった。

道路沿いに薄(ススキ)の群生は穂先が白さを増し、
落葉樹の圧倒的に多い黄色に染められた色合いの中、
所々(ところどころ)に散見できる朱色の色模様は、鮮やかな色合いとなっていた。

このような中で、陽射しを受けたり、枝葉の木漏れ陽は地上や周辺をゆらめき、
そして、ときおり微風が吹くと、黄色に染められた葉が空を舞いながら、
地上に落下していた。

私は思わず、
『夢のような情景だね・・
林道ではなく・・夢街道だね・・』
と隣席の家内に云ったりしていた・・。


私達は、中津川を下るように秋山郷の集落の『切明温泉』、山源木工の付近に
ある『蛇淵の滝』を観たり、
そして『前倉』は渓谷となり、対岸に聳える岩は錦繍に染められ、一幅の絵画となっていた。
この景観を眺めながら、昼食となった。
自由食であったが、地元の食材を加味したお握(にぎ)りと茸(きのこ)汁が
私達と同行した人が多かった。
私達夫婦は、炉辺で焼かれている岩魚をそれぞれ2匹づづ頂き、
私はワンカップの地酒、家内は煎茶で岩魚を誉(ほ)めたりした。

その後、秋山郷の入り口に当たる『見玉不動尊』で、
眼病に良いと称せられているので、私は丁重に参拝した後、
清流があふれるように流れていたので、小岸で私は顔を洗ったりしたのである。


このような戯(たわむ)れも多かったのであるが、
江戸時代の後期に鈴木牧之・著の『秋山紀行』のような過酷な環境と違い、
現在は豊かな田畑や里山の情景となっている。

『結束』集落にある石垣の田圃(たんぼ)は、
津南町観光協会の発刊した『秘境 秋山郷 ~人が抱く本来の故郷~』に寄れば、
【・・
江戸時代、秋山郷では、穀物をはじめ、農作物の収穫が極めて少なく、
天明・天保の飢餓では多くの村が滅びてしまった。

そんな背景の中、明治時代の始め、「石垣田」の開田が始まった。
それまでは粟(あわ)や稗(ひえ)が主食だったが、
「米を食べたい」その一心で、
石だらけの急斜面地を村人たちは競うように開拓したようだ。

重機などない時代、作業は難航した。
中には、5人がかりで3日間もかけて動かした巨石もあると言われている。
その石垣は積み方も工夫が施され、現在でも殆ど当時のまま残されている。
・・】

そして、樹木はブナ、トチノキ、白樺(シラカバ)、
片栗粉の原料となる片栗(カタクリ)の花は大切にされている、
と記載されたりしている。

最近の民宿に於いては、
白米のご飯、黍(きび)ご飯、
鹿(シカ)肉、岩魚(イワナ)があり、
山菜としては、行者大蒜(ギョウジャ・ニンニク)、ゼンマイ、蕨(ワラビ)、
コゴミ、ウド、ミョウガ、
茸(きのこ)としては、舞茸(マイタケ)、ナメコ、椎茸(シイタケ)
そして、里芋(サトイモ)、山芋(ヤマイモ)、筍(タケノコ)、豆腐(トウフ)などが、
食膳として頂けると聞いたりしたのである。

このような食材であったならば、都心の高級食事処より、
遙かに健全で確かな美味に頂ける、と確信したりしたのである。


宿泊地への帰路、ふたたび雑魚川林道を通った時、
バスのドライバーのご厚意で、臨時停車となり、
錦繍の美麗な情景を私達は鑑賞できたのである。
数多くの人も私もカメラで写し撮ったが、
その人なりの心に残る思いに、勝(まさ)るものはない、と私は実感したのである。

秋晴れの中、日中の大半に於いて、錦繍の世界に酔えた私は、
私達と同行した多くの方は、行いの良い人ばかり、
或いは強運の人ばかり、と私は微笑んだりしていた。


                            《つづく》


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志賀高原・発哺温泉滞在記 《上》 【2008.10.21.~10.23..】

2008-10-24 07:49:17 | 
    第1章 親愛なる信州の地に

志賀高原の落葉樹の黄色、朱色に染められた錦繍の景観を観ようと、
団体観光のバスツアーで新宿を出たのは、21日の8時半であった。

高速道路の関越自動車道の渋川伊香保ICを降り、
吾妻川沿いの渓谷が観える頃からは、淡い朱色、黄色に染められた情景となり、
長野原から草津温泉への昇り道になると、色合いを深めた錦繍の世界となった。

草津温泉から白根火山、横手山の付近を通り、そして志賀高原までの道路は、
高原スカイラインと命名したくなるほど、起伏に満ちた雄大な景観の中を、
雲もなく秋晴れの陽射しの移ろう高原のスロープの光景を車窓から眺めると、
あたかも一幅の絵が次々と展開するようであった。

まもなく雪の季節が訪れると、この周辺一体は道路は閉鎖となる、
と道路の脇の公示板があった。


http://www.town.kusatsu.gunma.jp/cgi-bin/odb-get.exe?wit_template=AM020000

私は横手山周辺の渋峠を通り抜けた時、
群馬県さようなら、そして長野県こんにちは、
と心の中で呟(つぶや)いたりした。

そして志賀高原の中心地の丸池付近を通過する時、
『志賀高原の銀座四丁目だよね・・』
と私は戯(たわむ)れで家内に云ったりしていた。

そして、周囲に点在する観光ホテル、高原ロッジを眺めていた時、
私達は3月に結婚し、新婚まもない時、
初めての夏の旅行が蘇(よみがえ)ってきた・・。


昭和51年の夏季休暇の折、避暑地として奥志賀高原のホテルに2泊3日で訪れた。
あの当時は、上野駅から湯田中まで特急があり、
湯田中から路線バスで奥志賀高原に向って、丸池、蓮池、そして発哺温泉を通過して、
奥志賀高原に到着した。

ホテルの周辺を散策していた時、家内の妹が見合い話を躊躇していた話題をし、
『男は・・顔じゃないよ・・心だょ・・』
と私は家内に微笑みながら話したりしていた。
翌日、丸池までバスで降り、琵琶池を散策していた時、
数多くの赤トンボが舞っていたので、早くも初秋の情景に驚いたりしていた。

帰路は白根火山の周辺を散策し、長野原駅から上野駅に帰京した。

翌年の夏は、長野県の青木湖のホテルに2泊3日で滞在した。
新宿駅から松本まで特急で、松本を散策した後、大糸線でやなば駅で下車し、
ホテルに向った。
猛暑の中、少し塩の道を歩いたり、
そして穂高駅に行き、わさび畑まで貸し自転車で往復したりした。

この頃の大糸線の各行列車は、出入り口のドアが手動だったり、
座席の背もたれが板張りで、私達は初めての体験で、微苦笑したりしていた。

そして穂高駅でやなば駅の列車を待っていた時、
新宿駅から白馬駅までの特急列車があり、徐行しながら特急は通過したのであるが、
この中のグリーン車に乗った高校生ぐらいの令嬢らしき人が、
白い帽子とワンピースの容姿が心に残ったりしていた。

この時代は、良くも悪きも国鉄の時代のおもかげとして、
私は今でも心の片隅に残っている。


この後も、私達夫婦は長野県にたびたび訪れているが、
何かしら信州という名の方が、愛惜感があるのか、
心の波長が合うのである・・。


このような思いを馳せ、家内と信州の思いで話をしながら、
バスの車窓から志賀高原の秋の情景を眺め、
宿泊先の発哺温泉に午後の2時前に到着した。

http://www.kumanoyu.co.jp/yakushi/index_yakushi.html

部屋で洗面した後、周辺の情景はスキー場のゲレンデが数多く観られ、
私達はゴンドラリフトに乗車し、東館山の頂上の付近で下り立った。

3月下旬の頃から10月の初旬の頃までは、『高山植物園』で、
それぞれの時節に応じた高山植物の彩(いろど)りが観られるが、
既に終わりを告げていた。

http://www.shigayamalift.co.jp/

私は周辺にノハラ・アザミの枯れかけた花を見つけ、
デジカメで数枚を撮ったりしたが、2000メートルのこの高山は、
晩秋からまもなく雪の時節を迎えようとしていた。


                              《つづく》


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