伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

数え日に

2011年12月26日 | エッセー

 恒例の「今年の10大ニュース」、数え日には大掃除と同じく大事な区切りだ。朝日新聞がウェブサイトでのアンケートをもとに25日、早々と載せていた。引用してみる。
〓〓「2011年の重大ニュース」
第1位 東日本大地震発生
 3月11日、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生。大津波も起き、死者・行方不明者が約2万人に 
第2位 福島原発事故
 被災した福島第一原発で爆発が起き、高濃度放射能が検出された。炉心溶融も確認され、深刻な事故とされるレベル7に
第3位 なでしこジャパンが世界一
 7月17日、サッカーの女子ワールドカップドイツ大会決勝で、日本代表が世界ランク1位の米国をPK戦で破り、初優勝した
第4位 ビンラディン容疑者を殺害
 5月1日、オバマ米大統領は、国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者を米軍が殺害したと発表した
第5位 タイ、洪水で甚大な被害
 10月から大雨による洪水被害が拡大した。交通や流通に深刻な影響が出て、日系企業の工場も相次いで操業停止に陥った
第6位 カダフィ大佐が死亡
 10月20日、リビアの反カダフィ派国民評議会のゴガ副議長が、カダフィ大佐(69)の死亡を発表
第7位 地デジ移行
 7月24日、岩手、宮城、福島を除く44都道府県でアナログ放送が終了、地上波デジタル放送に移行した
第8位 大坂ダブル選挙、維新圧勝
 府知事選と大阪市長選が11月27日に投開票され、新市長には、橋下徹・前知事が当選した
第9位 スティーブ・ジョブズさん死去
 10月5日、米アップル社の共同創業者、スティーブ・ジョブズさんが56歳で死亡。伝記がベストセラーに
第10位 タイガーマスクのプレゼント
 プロレス漫画「タイガーマスク」の主人公・伊達直人を名乗る人物からのプレゼントが各地で見つかる〓〓
 今月17日の金正日総書記死去以前の調査だろう。以後であれば、3位ぐらいに入ってくるであろうから、4位以下は繰り下がり、タイガーマスクは外れただろう。
 第1、2位の大震災、原発事故については、本ブログで幾度となく触れた。3位の「なでしこ」は、2度語った。5位の洪水も、9位のアップルも取り上げた。7位の地デジには、無駄な抵抗と節操のない屈服を一昨年の1月と11月に記した。4・6位のビンラディンとカダフィの死亡、第10位のプレゼントには、触れていない。片や極悪、片や善意、それで片付けるのはステレオタイプに過ぎないか。8位の大阪についてはペンディングである。ただ一点だけいえば、橋下氏の掲げる「教育改革」には嫌悪感を覚える。こういう形で『維新』政治の「見栄え」を狙うなら、とんだ大間違いだ。
 筆者が番外で挙げたいのが、8月末の前首相退陣だ。もちろん吉報である。昨年11月、本ブログで「疫病神」と題して次のように綴った。
〓〓この男がアタマをとって以来、碌なことがない。
 まずは口蹄疫が襲い、参院選で大敗し(他人事ながら)、円高で苦しみ、尖閣で揉め、北方で揺れる。特にあとの二つはワン・ツー、ダブルパンチだ。そのほか巨細漏らさねば、紙幅が追いつかない。
 もうそろそろ気づいてもおかしくはない。つまるところ、この男は疫病神にちがいないのだ。人気ほしさのパフォーマンスとはいえ、四国お遍路が一の得意。憑いた疫病神を落とそうとでもいうのだろうか。それにしてもしょぼい。可哀想なくらいしょぼい。
 もし国会で「君は疫病神か?」と糺せば、「論理的な、まともな質問をしてください。聞くに耐えない!」と抗うだろう。
 昨今の窮まった荊蕀(ケイキョク)は、論理の及ばないところに投げ込むしかないのだ。この状況、推移を括ろうとすれば、「疫病神」を持ち出すのが最も相応しい。逆に、なぜこうも災厄が続くのか、論理的な説明ができるものならしてほしい。
 比較するのもおこがましいが、秀吉の天下統一と時を同じくして日本中の山野から湧くように金銀が出た。これは吉事だが、論理的に説明がつくか。所詮は、人物の徳(その時期に巡り合わせた幸運も含めて)に帰するしかあるまい。
 疫病神が死神にランクアップするまでに、なんとかせねばならない。エクソシストにお出まし願おうにも、宗旨がちがうと効き目はなかろう。さて、いかに。〓〓
 「疫病神が死神にランクアップ」は、あろうことか4ケ月後に的中した。報道によると、みんなの党の渡辺喜美代表が「事故の調査は国会の事故調査委員会で徹底して原因究明、責任追及をやるべきだ。菅直人元首相も含めて(証人喚問し、偽証するなど)場合によっては牢屋に入ってもらうところまでやるべきだ」と述べたそうだ。先日触れた国会の「事故調」である。間接的にではあるが、国勢調査権を行使できる。委員にはノーベル化学賞の山田耕一さんもいる。容赦ない解析、分析をお願いしたい。
 当時の経産副大臣が手記の中で、「視察(引用者註:事故直後の)を終わって、総理がこの時期に現地視察をしたことと、現地での総理の態度、振る舞いについて、指導者の資質を考えざるを得なかった」と語っている。側近がそこまで断じる人物である。「国会事故調」の審議を通じて、宰相としての資質と言動について厳格な鉄槌を下すべきであろう。二度と同じ選択の失敗を繰り返さないために。

 さて、次なる年だ。「2012年問題」といわれる。これは恒例の「地球滅亡説」の類いではない。その手のものにはとっくに食傷している。第一滅亡したら、次の滅亡が唱えられなくなる。
 12年には主要な国々で指導者の交替(もしくは再任)がある。それが「2012年問題」だ。
  1月 台湾総統選挙
   3月 ロシア大統領選挙
   5月 フランス大統領選挙
 10月 中国共産党総書記交代
 11月 アメリカ大統領選挙
 12月 韓国大統領選挙 
 これに実態的にノースコリアが加わるであろう。まさに目白押しである。トップの移行期間は、とかく政治空白と停滞を招きやすい。これが、「問題」たる由縁の一つだ。さらにこれほど大掛かりであると、相互の関係も複雑で展望が読みにくい。これが二つ目の「問題」だ。明か暗か、明であることを、ひたすら祈りたい。
 前述の一覧に筆者がぜひとも追記したいのが、日本である。衆院の任期はあと2年あるとはいえ、もう待てまい。衆院選挙は十分条件ではないにせよ、日本の未来にとって必要条件であるのは確かだ。今度こそは選ぶ側が賢明であらねばならない。変な『政権互助会』に肩入れすると酷いしっぺ返しを喰うと、肝に銘ずべきだ。
 昨年末からの「ジャスミン革命」でチュニジア、エジプト、リビアで圧政が覆された。ヘッドシップは軒並み追放された。ヨーロッパではEU危機でギリシャ、イタリアでトップの更迭があった。リーダーシップが厳しく問われる趨勢である。民間でさえ社長が替われば、会社は変わる。一国ならなおさらだ。さらに大国なら、それも重なれば、変わらないはずはあるまい。「問題」が問題にならず、好転の大きな節を刻むことを願うばかりである。

 地球の公転を1年とする以上、年の区切りが人為であろうはずはあるまい。かといって天為に一任したのでは、人間の意志は失せてしまう。ならば数え日に後ろをきっちりと振り返り、前をしかと見据えて新年を迎えるのは、大事な区切りとなるのではないか。 □