<政 治>
●普天間県内移設反対の県民大会
沖縄県選出の与党議員らが計画し、約2万人が参加(8日)
―― やっと辿り着いた政権ゆえに、勢い余っての勇み足か。早い話が、寝た子を起こしてしまったようだ。この上は、虎の尾を踏まぬが肝心だ。
それにしても、事の進め方が余りにも稚拙で拙速だ。今の条件下ではどう転んでも弥縫策でしかない。合意は粛々として進める外あるまい。別途、先ずは腰を落ち着けて、国内、対米ともにグランドデザインを論議してはどうか。4年も猶予はある。首相の持論である「駐留なき安保」を俎上に載せるのもいい。コンダクターを気取っていないで、自分で演奏することだ。ただ、楽器が法螺貝では困るが。
●事業仕分け始まる
9日間で来年度予算要求から約1兆6千億円を「仕分け」(11日)
―― 11月12日付本ブログ「金さんはすっこんでろい!」で取り上げた。
付け加えると、仕分け人たちが付けていたイヤホンは一体何だろう。会場まで仕分けしたのか、ワンフロアーをグループの数に区分けしたものだから声が交じる。その対策らしい。まるで国際会議と見紛うばかりの演出だ。中身も設(シツラ)えもパフォーマンス満載であった。大山鳴動鼠一匹。95兆円の2%にも届かない。騒ぎの割に実入りが少ない。まことに少ない。レンホウおばさんのヒステリックな金切り声と、エダノ君の舌足らずで思慮足らずな間抜け声ばかりが残った茶番であった。
●オバマ米大統領初来日
鳩山首相と首脳会談、普天間移設で合意履行求める(13日)
―― ノーベル平和賞はすぐだ。しかしSTART2は儘ならない。つなぎの条約もできず仕舞い。START1が切れた今月5日から、核超大国の間で綱渡りの空白が続いている。
ならば、だからこそ、大統領はこの時機を逃さず広島を訪れるべきだった。電撃訪問である。米国の世論は煮え滾(タギ)るだろうが、それぐらいの大見得は切ってほしかった。自国の国是を振り切ってでも、核廃絶に嘘はない。言わば、オバマにとってヒロシマは踏み絵だった。好機を逸したのではと、悔やまれる。
<経 済>
●政府がデフレ宣言
月例経済報告で06年6月以来3年5カ月ぶりに認定(20日)
―― 牛丼チェーンで値下げ競争が始まった。01年デフレ宣言の時も、同じ動きがあった。デフレと牛丼とはなんらかの相関関係にあるのか。興味深いテーマだ。一ついえるのは、ファーストフードは生来、安売りが武器だ。いざ勝負で、伝家の宝刀を抜かぬ手はないだろう。牛歩どころか、こちらの反応は速い。
ものの値が下がることは一見好ましいが、実は怖い。体温が下がるのと同様に、経済活動がシュリンクしている表れである。微熱程度のインフレが最適だという学者が多い。シュリンクの果てには凍死、壊死が俟つ。表面的な原因は過当な価格競争、値下げ競争である。深層には売れない現実、つまりは経済の不活性化がある。
経国済民、経済の舵取りは至難ではあるが、国の基だ。カン君、藤井の爺さん、大丈夫かい。この御時世に能天気にもデフレ宣言をする事自体、政治的センスが疑わしいのだが。
<国 際>
●米陸軍基地で銃乱射
イスラム教徒の軍医が13人殺害(5日)
―― 戦争は悪だ。人間を殺人鬼に変えてしまう。心を引き裂いてしまう。だから絶対の悪だ。
いま米兵に厭戦が拡がっているらしい。精神を病む兵士が増えているそうだ。痛ましい事件だ。撃ったのは彼だが、撃たせたのは彼ではない。
●初代EU「大統領」選出
首脳会議常任議長にファンロンパイ氏(ベルギー前首相)(19日)
―― つまり大統領である。27ヶ国、4億9千万人の代表である。名誉職ではない。これからだが、権限もやがて備わってくる。一時はブレア英国前首相の名が取り沙汰されたが、ユーロ未加入もあり結局は選に漏れた。ベルギーはEEC六ヶ国時代からの老舗である。穏当な人選であろう。併せてEU外相も誕生した。大きな一歩にちがいない。
EUは人類の歴史的挑戦である。いまエリアは古代ローマ帝国の版図に五するのではないか。国家を超える国家。山また山の連続だが、カントが夢に描いた世界連邦を考えれば、胸が弾む。
<社 会>
●リンゼイさん事件で市橋達也容疑者逮捕
2年半の逃避行後、大阪市内で発見(18日)
―― 根が世故いからか、賞金一千万の行方が気がかりだ。やはり名古屋の美容整形外科医からの情報で一気に事態が展開したのだから、件の医者であろうか。何にしても2年半、よくぞ逃げたものだ。さらに海外への逃亡も企てていたらしい。ひょっとしたら、女にでも化けるつもりではなかったか。そうなると、行く先はモロッコか。これも、下衆の勘ぐりだが。
●奈良・纒向(マキムク)遺跡で3世紀最大の建築跡
邪馬台国の所在地、畿内説に弾み(10日)
―― 弾みにはなっても、具体的な物、つまり決定打に欠けるらしい。
中国史では魏の時代である。それから遙か500年近く前、秦の始皇帝陵が築造された。発見された兵馬俑は偉容をそのままに残す。片や日本、「魏志倭人伝」当時の国の所在さえいまだに謎だ。文明の厚みの違いに、今更ながらたじろぐ。しかし、謎もまたよし。謎もロマンだ。
●亀田興毅が新王者
WBCフライ級タイトル戦で、王者内藤大助に判定勝ち(29日)
―― 攻守逆転の試合だった。内藤は血気に逸り、亀田は冷静だった。内藤は文字通り出鼻を挫かれた。亀田は別人のように成長していた。一敗地に塗れ、臥薪嘗胆し、そして捲土重来を果たし、王座を奪い取った。見事だった。
「士別れて三日なれば刮目して相待すべし」若者は伸びる。極めて平明な理屈に膝を打った。
<哀 悼>
●森繁久弥さん(俳優。舞台「屋根の上のヴァイオリン弾き」や映画、テレビなどで活躍。戦後芸能界の最前線に立ち続けた)96歳(10日)
―― まったくの偶然であるが、訃報を聞く1週間前、妙に「知床旅情」が聴きたくなってCDを買った。森繁版ではなく、おトキさんで聴いた。
この曲を聴くと、学生時代に通った馴染みの喫茶店が目に浮かぶ。入って出るまでの小1時間のうちに、ジュークボックスに必ず1回や2回はこの曲が掛かった。もちろんおトキさん版である。後に森繁版がオリジナルであることを知り、才能に舌を巻いた。滋味のある歌い方はもちろんだが、特に2番の歌詞だ。
〽旅の情けか 酔うほどに さまよい
浜に出てみれば 月は照る波の上
今宵こそ君を 抱きしめんと
岩影に寄れば ピリカが笑う〽
この色香には参った。並な叙情でも、ご当地ソングでもない。この辺りに氏のエスプリがあったにちがいない。なお「ピリカが笑う」には諸説あるが、海鳥が上空から冷やかしているというのが一番しっくりくるのではないか。
追憶談で黒柳徹子女史が語っていた。「お会いするたびに、今度、一回どう?っておっしゃるんですよ」この破天荒が長寿の秘訣でもあったのだろう。しかし80を越えたころであったか、「長生きのコツは男女の交わりを断つことです」と宣(ノタモ)うたらしい。機知も溢れるほどあった。こうやって人を喰っては生き抜いたのであろうか。とびきりの喰えぬ爺さまがひとり、鬼籍に入った。本物が、また消えた。
(朝日新聞に掲載される「<先>月の出来事」のうち、いくつかを取り上げた。すでに触れた話題、興味のないものは省いた。見出しとまとめはそのまま引用。 ―― 以下は欠片 筆)□