風邪をひいた。尋常ならざる高熱で、3日間寝込んでしまった。嗤われそうだが、高熱といっても37.4度。なにせ平熱が低く、かつ、ついぞ熱など出たことがない。記憶する限り、ここ5、6年風邪で臥したことがない。夏風邪だからと『定説』を振りかざす向きもある。梅雨明け前であることを理由に『定説』に該当しないと強弁してみたが徒労に終わりそうだ。
そもそも梅雨は春か、夏か。筆者としては、この際、春に入れてほしい。それが叶わぬなら、梅雨に明確な市民権を与え、四季と言わず五季と呼んでほしい。ユーラシア大陸の東端に位置し、その位置ゆえにわが国は絶妙な季候を織りなす。わずか四つの季節で括るにはもったいなくはないか。世の有徳の方々に告ぐ。「春、梅雨、夏、秋、冬。五季の移ろい」と言おうではないか。日本文化のためだ。
それにしてもだ。季節外れの風邪はなにかと面倒だ。まず、家人との折り合いが付けにくい。筆者は寒い。しかし、家人は暑いという。天の邪鬼である。かつ我が儘である。狭い家だ。同室で床に就かざるを得ない。苦渋の選択だ。季節がどうあろうと、筆者は寒いのだ。古い唄に「こころ一つで、温かくなる」とあった。住居は狭くとも、心は広くありたいものだ。
W杯以来、睡眠に障害をきたしていた。夜寝る、という極めてノーマルなサイクルが崩れていた。これが風邪に追い風となったようだ。微少ではあるが床ずれができるくらい寝た。しかし、爽快感のある眠りではない。錘に引きずられて眠り、錘を引きずりながら目を覚ます。何度繰り返しても、錘の呪縛は解けない。かの発明王・エジソンは、睡眠は人間にとって無駄なもの、と考えていたそうだ。ナポレオンも寝なかった。天才は睡眠をねじ伏せるのか。凡人には叶わぬことだ。まさに、夢のまた夢だ。
タバコの味が変わる。ほしくなくなる。ついには、吸えなくなる。「男の嗜み」から遠ざけられる。口は呼吸と食事という即物的な働きと発音という知的な働きを担う。たまに噛みつくという武器になることもあるが、それは極めて希だ。しかしそれだけでは万物の霊長としては物足りない。紫煙を燻らすという、より高次な働きを求めるべきだ。悪態をつくために口はあるのではない。息をするためだけでも、モノを喰らうのみでもない。もっと高級な使い方をしてあげなければ口が可哀想だ。
もう一つ、接吻があった。日本でこれを大々的に為した人は坂本龍馬らしい。偉人はすべてにプログレッシブだ。学者によると、脳が身体の器官を意識する割合は口(特に唇)が圧倒的だそうだ。手足とは比較にならないくらい割合が高い。肝臓などはゼロだ。少しでもあれば二日酔いを防げるだろうに。つまり、脳みその中は口だらけといってよい。恍惚はここに起因する。
ともあれ、肺ガンの主因はタバコ、などという石油メジャーの流したデマゴーグに紛動されることなく、男なら、厳としていたいものだ。「嗜み」を忘れたら男が廃れようというものだ。
それが、できない。いかんともしがたい。扁桃腺が腫れて、空気さえ通りづらい。早く健康になってタバコが吸いたい、と切に願い続けたものだ。
体温が1度上がっても大変、地球温暖化も同じなんです。これは、よく聞く話だ。節々が痛む。ただでさえ回転の遅い頭脳が失速した独楽のようにフラフラになる。食欲が落ちる。すべてに不調和をきたす。たしかに1度の上昇でさえ耐え難い。だから地球の温暖化に擬える。しかし、うまい話には気をつけた方がいい。立花隆氏によれば、今地球は寒冷期に向かっているという。温暖化とは逆の話だ。現に、南極の中心部では氷が厚くなっているという観測結果もある。温暖化はガイアの自己調節機能ではないか、との意見もある。46億年のリズムは人為を凌駕して流れる。はたして人知が及ぶか。
ただ、この鬼の霍乱(この度、このように『診断』してくださった『名医』がいる。感謝に堪えない)に限っていえば、十分に人知の射程内だ。体温計の37が、なぜ赤字で表記されているのか。尋常ならざる数値なのだ。体温の上昇が確実に心身を蝕む分水嶺だ。風邪はひかぬが華だ。□
そもそも梅雨は春か、夏か。筆者としては、この際、春に入れてほしい。それが叶わぬなら、梅雨に明確な市民権を与え、四季と言わず五季と呼んでほしい。ユーラシア大陸の東端に位置し、その位置ゆえにわが国は絶妙な季候を織りなす。わずか四つの季節で括るにはもったいなくはないか。世の有徳の方々に告ぐ。「春、梅雨、夏、秋、冬。五季の移ろい」と言おうではないか。日本文化のためだ。
それにしてもだ。季節外れの風邪はなにかと面倒だ。まず、家人との折り合いが付けにくい。筆者は寒い。しかし、家人は暑いという。天の邪鬼である。かつ我が儘である。狭い家だ。同室で床に就かざるを得ない。苦渋の選択だ。季節がどうあろうと、筆者は寒いのだ。古い唄に「こころ一つで、温かくなる」とあった。住居は狭くとも、心は広くありたいものだ。
W杯以来、睡眠に障害をきたしていた。夜寝る、という極めてノーマルなサイクルが崩れていた。これが風邪に追い風となったようだ。微少ではあるが床ずれができるくらい寝た。しかし、爽快感のある眠りではない。錘に引きずられて眠り、錘を引きずりながら目を覚ます。何度繰り返しても、錘の呪縛は解けない。かの発明王・エジソンは、睡眠は人間にとって無駄なもの、と考えていたそうだ。ナポレオンも寝なかった。天才は睡眠をねじ伏せるのか。凡人には叶わぬことだ。まさに、夢のまた夢だ。
タバコの味が変わる。ほしくなくなる。ついには、吸えなくなる。「男の嗜み」から遠ざけられる。口は呼吸と食事という即物的な働きと発音という知的な働きを担う。たまに噛みつくという武器になることもあるが、それは極めて希だ。しかしそれだけでは万物の霊長としては物足りない。紫煙を燻らすという、より高次な働きを求めるべきだ。悪態をつくために口はあるのではない。息をするためだけでも、モノを喰らうのみでもない。もっと高級な使い方をしてあげなければ口が可哀想だ。
もう一つ、接吻があった。日本でこれを大々的に為した人は坂本龍馬らしい。偉人はすべてにプログレッシブだ。学者によると、脳が身体の器官を意識する割合は口(特に唇)が圧倒的だそうだ。手足とは比較にならないくらい割合が高い。肝臓などはゼロだ。少しでもあれば二日酔いを防げるだろうに。つまり、脳みその中は口だらけといってよい。恍惚はここに起因する。
ともあれ、肺ガンの主因はタバコ、などという石油メジャーの流したデマゴーグに紛動されることなく、男なら、厳としていたいものだ。「嗜み」を忘れたら男が廃れようというものだ。
それが、できない。いかんともしがたい。扁桃腺が腫れて、空気さえ通りづらい。早く健康になってタバコが吸いたい、と切に願い続けたものだ。
体温が1度上がっても大変、地球温暖化も同じなんです。これは、よく聞く話だ。節々が痛む。ただでさえ回転の遅い頭脳が失速した独楽のようにフラフラになる。食欲が落ちる。すべてに不調和をきたす。たしかに1度の上昇でさえ耐え難い。だから地球の温暖化に擬える。しかし、うまい話には気をつけた方がいい。立花隆氏によれば、今地球は寒冷期に向かっているという。温暖化とは逆の話だ。現に、南極の中心部では氷が厚くなっているという観測結果もある。温暖化はガイアの自己調節機能ではないか、との意見もある。46億年のリズムは人為を凌駕して流れる。はたして人知が及ぶか。
ただ、この鬼の霍乱(この度、このように『診断』してくださった『名医』がいる。感謝に堪えない)に限っていえば、十分に人知の射程内だ。体温計の37が、なぜ赤字で表記されているのか。尋常ならざる数値なのだ。体温の上昇が確実に心身を蝕む分水嶺だ。風邪はひかぬが華だ。□