伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

ホンマでっか!?

2011年07月29日 | エッセー

 「本当ですか?」は論外として、「うそっ! ホントに?」も「マジで!?」も、「それって、あり!?」も「へぇー!?」もシックリこない。やはり「ホンマでっか!?」しかない。いまや吉本を中心とする関西お笑い軍団が東京を席巻、占領した感があるが、この番組の独特のスタンスはこの関西弁に依る以外表現不能だ。
 知的なお遊び、諧謔性と探求心。トリビアリズムと博覧強記。正論と異論。常識と意外性、専門性。原則と応用、ハウツー。一般論と私論、我見。それらのギリギリの狭間で、「ホンマでっか!?」と括ってしまう。この洒落っ気を多量に含んだ鷹揚さが関西弁の妙味だ。
 出してきた品物が注文と違う。「これではありません」と全否定するのが東京。「これとちがいます(これとちゃいます)」と選択の余地を残すのが関西。商都ならではの言葉遣いである。

 フジテレビ「ホンマでっか!?TV」(毎週水曜日、夜9時~)。これが滅法おもしろい。
 司会は明石屋さんま。パネリストに磯野貴理子、マツコ・デラックス、ブラマヨなどの際物が並ぶ。
 コメンテーターは錚々たるメンバーだ。生物学の池田清彦、環境問題の武田邦彦、脳科学が澤口俊之、政治経済は宮崎哲也、教育の尾木直樹(尾木ママ)、軍事アナリストのテレンス・リー、経済の門倉貴史、イメージアップ戦略の谷澤史子などが一堂に会する。こちらもパネリストを喰うほどの個性派揃いだ。
 はじめは胡乱な番組だと見向きもしなかったが、なにかの拍子で見入ってしまった。毎年この時期、NHKラジオは恒例の「夏休み 子ども 科学 電話相談」を放送する。その伝でいけば、『水曜日 大人 よろず テレビ相談』とでもいえようか。
 なにせ池田清彦氏と言えば、構造主義生物学の大家だ。昆虫採集マニアでもあり、養老孟司御大とは旧いお友達。武田邦彦氏は環境問題のタフな論客。尾木ママは今やすっかり時の人だ。加えて、テレンス・リー。なぜ軍事評論家がいるのか。観れば判るのだが、彼は部門外の回答に妙な傍証役を演じている。これがウソっぽいくせに、なぜか納得を誘う。
 なにより、さんまが嵌まり役だ。タモリだと理屈っぽくなりそうだし、たけしなら大ウソになりかねない。やはり、居並ぶ多士済済を相手にできるのは彼をおいて外にはなかろう。あれほど自分を捨てて掛かる芸人はめったにいるものではないからだ。
 碌でもないバラエティが氾濫する中、どうせならこれぐらい捻らねば『目の肥えた』日本の視聴者にはインパクトがあるまい。ただ、鵜呑みにしてはいけない。「ホンマでっか!?」といなしておかねば、ばかを見る。第一この国は、トップでさえ平気で食言する。辞めるのなんのって、洒落にも冗談にもならない。それこそ、「ホンマでっか!?」だ。□