今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

山で道に迷うと沢に行く法則

2018年08月15日 | 時事

山口県・周防大島での2歳児行方不明事件が、3日後に無事解決してなによりだった。

発見者は、前日にやってきたアカの他人である78歳の老人。
だがその正体は、ボランティア界では”師匠”と呼ばれる、凄腕の捜索請負人。

その人に注目する前に、まずは行方不明になった当人の方を問題にしたい。

といっても行方不明の翌日に2歳の誕生日を迎えた幼児なりたての年齢。
対象関係論的には母親に対する「再接近期」を迎え、母への愛着が再燃する頃。
なので、母でない親族との同行を嫌がり、母の元へ戻ろうとした。
ところが、慣れない親族宅で、帰り道も行きとは違っていたため、
家にたどり着けなかった(それを放置した祖父が責められても仕方ない)。

その後は、年齢的に行動力がなかったこともあり、
道を大きく踏み外すことはないものの、どんどん道なりに山に入り込んでしまった。

小学生くらいになれば、迷ったら来た道を引き返すという判断もできたろうが、
そういうメンタルマップ(脳内地図)はまだ形成されていない
(そういえば「となりのトトロ」のメイも 道迷いに2度も陥った)。

発見されたのは、道脇にある沢(小さな川)。

またもやだった。
山で道に迷うと人は沢に向ってしまう
(5月に東京奥多摩で家族とはぐれた男児も、同月新潟の山で遭難死した父子も)。
経験も判断力もない2歳児でもそうするとは、どうやらこれは本能的な行動なようだ。
そしてそれが深い山だと沢相が険悪なので致命的になるが、
幸い今回は人里近くの森の中の小さな流れ。
むしろ、水の確保と暑気の回避になった。 
あともう一つ大事なことは、3日間あまり動かなかったと思われる。
それによって絶食状態でも体力を消耗せず、 また転落などの危険に遭遇するリスクも減る。

さらに幸いなのはこの間、天気が安定していたこと。
接近中の台風、いや数日前に私が経験した一過性の雷雨であっても、
沢は増水し濁流と化していたろう。
それにびしょ濡れになって体温が奪われる。 

ついでに、今回の出来事をこの子は心に刻むだろうか。
そうはならない可能性が高い。
私の甥が2歳の誕生日の前日に、皆でイタリアに行き、
あちらにいる姉一家と盛大な誕生会をやったのだが、
後年それを含むイタリア旅行自体を覚えていないという。

確かに、私も2歳の時の記憶はない。
この年齢では、エピソード(出来事)についての長期記憶機能が成熟してないためだろう。
でもこんな大事件だったら、トラウマになって忘れないはずと人は思うかも知れない。 

フロイトが言うには、ごく幼い時に体験したトラウマは、抑圧され、
さらには何でもない出来事に置換えられて記憶されるという。
そこでフロイトは、人が思い出す最初期の記憶(たいていなんでもない情景)を
あえて「隠蔽記憶」と名づけた。
なので、この子もこの出来事を忘れてしまう可能性が高い。 


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