今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

府中の博物館見学

2022年08月20日 | 東京周辺

千葉県立博物館の充実ぶりに感動して以来(→記事)、小旅行で訪れる地の県レベルの博物館に行って、先ずはその県全体の地理・歴史を把握したいと思った。

早速足元の東京から始めたい。
まず頭に浮かぶのは上野にある東京国立博物館(東博)だが、東京と名がつくが国立だけに東京がテーマではない(来日した人が見学するのにふさわしい)。
東京がテーマなら、両国にある江戸東京博物館だが、残念ながら今は改築のため長期閉館中。

そこで対象を市区レベルに落としてみると、23区にそれぞれある区立の施設よりも、武蔵国(東京、川﨑・横浜、さいたま新都心を含む)の国府があった府中市の博物館が充実しているようだ。

確かに江戸時代以前は、律令時代から江戸よりも府中が格上だった。
その名残は現代にも引き継がれ、学生時代に接した府中出身者のプライドの高さは23区何ずるものぞという感じだった。

といっても区部(江戸・東京府)側から見ると、府中はあくまで”都下・多摩”にある市の1つ(隣の調布と同格)という認識だが、私自身、下町(台地下)よりも武蔵野(台地上)の方が好きなので、貧弱な区立博物館よりは、立派な府中市立の博物館を先に訪れたい。


とうわけで、強い日射のない曇天という外出日和の今日、京王線の府中駅に降り立ち、
先ずは、地元の蕎麦屋で軽く蕎麦を食べる(私にとって蕎麦以外は昼食として重すぎるので)。

ここから目指す博物館までは、距離があって最寄駅でもないのだが、大国魂神社の周囲に国府跡の史跡ができたので、武蔵国府に敬意を表して、それらから見学したい。

大国魂神社の東脇に最近オープンした「武蔵国府跡」(平成21年に国史跡に指定)なる所があり、狭いながらも整備された施設を見学できる。

ここから神社の参道を横切った先に、無料の「ふるさと府中歴史館」があり、先ずはそこで府中の歴史を概観する。
もちろん府中の鎮守たる大国魂神社にも参拝し、空いているので、本殿周囲の摂社群も見て回る。
境内には結婚式場があり、ちょうどウエディングドレス姿の花嫁がいて、記念写真を撮っていた。
教会でもそうだが、こういう慶事に出会(でくわ)すのも嬉しいものだ。


神社の西側の参道に出ると、府中街道の向かいに「国司館と家康御殿史跡広場」があり、国司の拝礼の場面がミニチュアで再現されている(写真:昼の間だけ公開)。
しかも徳川家康が、その跡地を御殿として使い、死後の遺体を久能山から日光に移送するときもここに滞在し法要を営んだという。

府中街道の御殿坂を南下して、大国魂神社に隣接する妙光院(真言宗:頭部の彫刻が詳細な十一面観音の石仏があった)と安養寺(天台宗)に立ち寄る。


坂を下ったところで東京競馬場の大きな施設の脇を西に入って、緑道に沿って多摩川につながる平地を進むと、府中市郷土の森という広い公園に達し、そこにプラネタリウムを併設している立派な郷土の森博物館がある。
こんな立派な博物館は、区部にも八王子にもない。

市外者として300円払って早速常設展を見る。
時代順の展示で、最初はなんと旧石器時代。
府中には2万3千年以上前から人が住んでいて、旧石器の矢じり(ナウマン象などを狩ったらしい)がたくさん出土し、それらがずらりと展示されている。
もちろんそれに続く縄文時代の土器や土偶(写真)も展示されている。
確かに西多摩にあった私の高校の近くでも、民家の畑に縄文中期の土器の破片が地面に露出していてつかみ取り状態で放置されていた。

そして国府が置かれた古代。
国府跡の発掘が進んでいることもあって、古代の国府(国衙)付近が大きなジオラマに再現されている。
国府の近くには「多磨寺」という東京最古の寺があったという。
※:”多磨”と書く地名は今でも府中市内にあり、そこに都立の”多磨霊園”があり、その近くに西武多摩川線の”多磨駅”がある。

中世は、なんといっても新田義貞と鎌倉幕府軍が戦った”分倍河原の戦い”がハイライト(短編動画になっている)。
この戦いで勝利をおさめた新田軍はさらに進軍して、鎌倉を攻め落とす。

小田原北条氏に代わって関東に入った徳川家康は、ここ府中に御殿を作る。
そして五街道の1つとして甲州街道が整備されると、府中は甲州街道の宿場町となり、家康の御殿跡もあって江戸からの観光地ともなる。
その近世の宿場町としての府も精巧なジオラマに再現されている。

この後は、江戸・東京の郊外の位置(野菜など供給)になっていき、京王線の開通で東京近郊の住宅地となっていく(地元の人は京王線に乗って「東京に行く」と言っていた)。

歴史巡りの次の間は、自然がテーマだが、武蔵野台地から二段の崖線で多摩川に降りる地形と、多摩川中流の限られた生物でおしまい(市レベルの博物館だとこれが限界だろう)。
なので見学時間は1時間強。
ただし、館外の森には、市内の古民家や古い建物が移築されていてそれらの内部も見学できる。


園外の公園には観光物産館があり、地元の野菜などを売っていて、私は府中の地酒「國府鶴 中屋久兵衛」を買った。

物産館の前にバス停があり、30分おきに分倍河原駅(さら府中駅)行きに乗れる。
幸い5分ほど待ってバスに乗れ、分倍河原駅に向かった。

次回の府中は、この分倍河原の西側に広がる古墳群を巡ってみたい(高安寺、善明寺、浅間山などは訪問済み)