今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

辛坊治郎氏の単独太平洋横断成功に思う

2021年06月19日 | 時事

私は、ラジオ番組「辛坊治郎ズーム そこまで言うか!」(ただしポッドキャスト版)を愛聴していることもあり、氏の、出演番組をすべて擲(なげう)っての、ヨットでの太平洋単独横断という暴挙、いや壮挙を、主役不在のそのラジオ番組を通して見守っていた。

そして無事、アメリカのサンディエゴ港に着岸したとのニュースを17日の朝に知り、その後、氏の生の声や映像を確認したので記事にしたい。

まずほぼ同世代として、氏の壮挙に勇気と鞭撻をもらった。
正直、この歳になると、はっきり言って、楽をしたくなる。
肉体が衰えるのは当然として、精神的にも”隠居”気分に傾き、無理をせず、楽に生きたくなる。
早い話、手を抜きたくなる。

そのような自分にとって、生きるか死ぬかの境地に身を置くことをあえてして、しかもそれをやりとげたことに勇気をもらい、そして安逸に堕していた自分に強い鞭撻ももらった。

後者まで感じるのは、アウトドア志向者だけかもしれないが、
生の自然の力と対峙したい、そこに在り方の”本来性”を感じるアウトドア志向の人間は、安逸の文明生活に堕している今の自分は本来的生き方をしていないという”後ろめたさ”を感じているのだ。

氏が、再チャレンジにこだわった気持ちは、心理学的には「ゼイガルニク効果」というもので、中途で終った課題は、頭から離れず、スッキリしたいために再びその課題に取り組みたくなる。
別の言い方をすれば、人は自分の”物語”を完成させたい意志を持つのである。

すなわち、この行為には、自分でも止められない強い”意志”が働いている。
でも大海を越えるというほどの冒険的意志は誰しもが懷(いだ)くものではない、といるかもしれないが、深層心理的にはどうだろうか。

そこで思い浮かべたのは、さらに数日遡って、中国南部で野生の象の群れが都市部を北上しているというニュースがテレビ朝日の「モーニングショー」で紹介された時の玉川徹氏(テレビ朝日社員)のコメント。
象の行動を強い本能的意志ではないかと推論する玉川氏は、そもそも、アフリカで誕生した人類もどうしたわけかどんどん北上して中東に達して、そこで東西に分散し、東に進んだ人類は、さらにシベリアからベーリング海峡を越えて新大陸に達し、さらに南下を続けて南米大陸まで達したと、人類も未知の大地を目指して移動し続けた過去を述べ、このような意志は象だけでなく人間にも共通するのではと語った。

そう、その意志を持ち続けた人類(当然ながら、女性も含まれる)は、陸路だけでなく、舟を作って海上に繰り出して、幾多の失敗(死)にもめげず、太平洋の島々にも到達した。

思えば、ユーラシアの東に浮かぶ日本の島にやってきた我々の祖先も、玄界灘やオホーツク海を越えてそのような壮挙をなしとげた人々だった。
そう、島国の民であるわれわれ日本人こそ、大洋を横断する意志を持ち、それを成功させた人たちの子孫なのだ。
なので、辛坊氏の壮挙を他人事でないと感じるのもむべなるかな。
それと山好きなのに”漂流記”が大好きな自分にも納得できた。

そもそも、”動く”ことを宿命づけられた動物は、植物のようにその場に留まる事をよしとせず、移動することそれ自体に己の存在の本来性を感じていてもおかしくはない(実存的実感を得るのに高度な知性は不要)
「餌を求めて」というのはその根源的衝動を正当化する理由に過ぎない。
動くこと自体が生きる意志なのだ。
大洋を回遊する魚も、大陸を越える渡り鳥も、そして農耕による定住生活に安住できない一部の人間も、その意志に動かされているといえまいか。